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魔王と勇者と

この世界には、魔王がいた。

誰もが恐れる魔王のはずであった。だが、魔王は優しかった。しかし、魔王は魔王。

アリーナ国では、勇者が異世界から召喚されていた。

全ては、魔王を打ち倒すために。

魔王の名は京楽春水。そして、勇者の名は浮竹十四郎といった。



「魔王、京楽春水、覚悟!」

浮竹は、聖剣エクスカリバーで京楽に切りかかる。

それを適当に受け流して、京楽は浮竹を抱き寄せた。

「な、何を!」

「君、綺麗だね?」

「だからなんだ!」

「ねぇ、勇者なんてやめてボクとのんびりスローライフ送らない?」

「何を言っている!」

「プロポーズしてるんだけど」

浮竹は真っ赤になって、京楽を押しのける。

「お、俺は男だぞ」

「うん、見ればわかるよ。ボク、男も女も両方いけるから」

「このけだもの!」

浮竹は、京楽の意外に強い力に、抱きしめられたままになっていた。

「ふふ、否定はしないよ。ボクの第三夫人になってよ」

「重婚だと!」

「一番目の夫人はスライムのスラ子さん。2番目の夫人はスケルホーンの骨子さん。どっちも会話できないし、何もできないんだよね。魔王には夫人が必須だけど、人間っていろいろじゃまくさいじゃない。君なら、勇者だしボクの名声もあがると思うんだよね」

「名声のためだけに、俺を夫人にするというのか!」

浮竹は怒った。

「ううん。君に一目ぼれした。人間でも、こんな綺麗な子いるんだなって」

「俺はハーフエルフだ」

「そうなの。じゃあ、長い時間を生きれるから、ボクが寿命をいじる必要はないね」

「何を先走って話している!俺はお前を討伐に!」

「一人で?アリーナ国はから書状がきてるよ。勇者を生贄にするから、アリーナ国には手を出さないでくれって」

「なんだと!」

浮竹は、その書状を見せてもらった。

間違いなく、国王の字であった。

「あのたぬきじじい‥‥‥‥‥こうなったら、勇者やめてやる!京楽、夫人にはならないが、お前の仲間になってやる。あのたぬきじじいをぎゃふんと言わせてやる」

「いいねぇ、大歓迎だよ。いずれ夫人になってくれると嬉しいな」

こうして、浮竹十四郎は異世界に呼び出されて1カ月もしないうちに、魔王京楽側に寝返った。


魔王側に寝返って数日が経った。

たくさんの人間が、京楽を訪れていた。

「いやぁ、魔王様の加護をもらうと農作物がよく育つからなぁ」

「あたしなんて、長年の腰痛が嘘みたいに消えちまったよ」

人々は京楽を口々にほめたたえ、感謝の言葉を述べる。

「今時の魔王って‥‥」

アリーナ王国の国王から、魔王京楽は残忍で魔族を率いて人の世界を蹂躙せんとする人物だと聞かされていた。

それがどうだろう。

魔族を率いて、災害に見舞われた地域の復興をしていた。

「京楽、お前はいい魔王なんだな」

「魔王によしあしもないよ。本気で殺しにかかってくる人間は殺してるし」

魔王は、やっぱり魔王だった。

優しいし人望もあるが、残酷な部分もちゃんともっていた。

「勇者やめたからな」

「別に辞めなくていいんじゃない?勇者のままで」

「ふむ。その手もあるか。アリーナ王国のたぬきじじいに勇者の称号を剥奪されるだろうが、この世界では俺は勇者として名前が通っている。勇者のまま、魔王に寝返るか」

「ふふ、毎日一緒に過ごせるね」

「へ、変なことはするなよ」

「夫人になってくれるまで、キスとハグくらいしかしないよ」

浮竹は赤くなって、京楽を見つめる。

「勇者、浮竹十四郎の名をもって、魔王京楽春水の配下に加わることを誓う」

「別に、そんなのいらないよ。アリーナの国王をぎゃふんと言わせたいんでしょ。アリーナの城を攻め落としてしまおう。なるべく血は流さずに」

京楽は、魔王軍を率いてアリーナ王国の首都に攻め入った。

人々は逃げ回るどころか、京楽に挨拶して城へ案内してくれる。

「アリーナ国王の重税に、苦しんでいるんだ。助けてくれ、魔王様」

「アリーナ国王は、勇者浮竹様を見限った」

アリーナ国王は大分だめなやつのようで、京楽は魔王の名の元に、アリーナ王国jの城に攻め入り、国王を捕縛するとアリーナ王国を魔王の領地にした。

「ああ、ありがたい。これで、俺らも魔王様から加護が得られるし、隣国から戦争をしかけられることもない」

「魔王って‥‥…」

浮竹は、異世界から召喚された。元に戻る方法は魔王を倒せば戻れると言っていたが、もうなんだか異世界での暇な生活がどうでもよくなってきた。

浮竹は、地下牢に閉じ込められた国王を一発殴って、頭をバリカンではげにして、小さくではあるが復讐はした。

命をとるのは勇者のすることではない。

アリーナ国王は、魔王領地で強制労働させられるそうだ。

「京楽、ありがとう」

「どういたしまして。ボクの第三夫人になる気になった?」

「それはまだない。だが、勇者としてお前の存在を認め、共存することを世界に発表する」

「うん」

勇者浮竹が、魔王軍の配下に加わったと世界中が知り、魔王京楽の名前は浸透していく。

「お前は、何故魔王になったんだ?」

「うーん、先代魔王が残忍だったからね。人間がかわいそうに思えて倒したら、歓迎されて魔王になちゃった」

「そうか。俺は先代魔王を知らない」

「藍染っていってね。倒したけど、死んではいないようだよ。しぶといから」

「しぶといのか」

「うん。まぁ、ボクと互角くらいの強さだし、今は新しい魔王軍もいるし、攻め込まれる心配はないと思うよ。ボクにケンカを売ってきたのは、君くらいだよ、浮竹」

「お、俺は何も知らなかったから‥‥‥‥」

「ねぇ、第三夫人になってよ」

「第一夫人と第二夫人はどうするんだ」

「そのままだよ。意思の疎通もできないからね」

「なんでまた、スライムとスケルボーンなんだ。お前なら、美女美男よりどりみどりだろう」

「ボクの心を動かす相手がいなかったから。浮竹が初めてだよ。本気で恋に落ちた」

「は、恥ずかしいことを言うな」

浮竹は真っ赤になってそっぽをむく。

「ふふ、かわいいね」

「うるさい」

魔王歴233年。浮竹十四郎は、勇者の称号をもったまま、魔王軍に入るのであった。




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