魔王と勇者と2
魔王城は、無駄に広く豪華だった。
浮竹は、黄金の玉座を見てびっくりしていた。何せ、純金製なのである。
「魔王って、金持ちなんだな。質素な生活をしていた俺からすると、考えられない生活だ」
出された朝食、昼食、夕食と午後のお茶もどれもおいしく豪華なものばかりであった。
「全部、前の魔王の藍染が残したものだけどね。食事はまぁ、せっかく魔王になったんだから、おいしいもの食べたいじゃない」
「俺は食費は1日銀貨3枚までにしていた。ここの食事は金貨20枚は飛びそうだ」
「領地にして、自治を任せている王国とかからの献上金が無駄にあるからね。魔王の配下には十分な給料を支払ってるし、魔王が質素な生活してたら、配下の者も貧しい暮らしになるからね」
「ふむ」
「お風呂も天然温泉だからね。ご近所さんがお金払って入りにくる。お風呂は一般利用もできるようにしているから。食事もできるよ」
「そこそこの金をとるのか?」
「うーん、庶民に優しい金額にしてるけどね。天然温泉、食事つきで銀貨3枚」
「高くはないな。安くもない。まぁ、普通か」
浮竹は、納得したような顔をする。
「一緒に、魔王専用の風呂で湯あみしない?」
「へ、変なことしないだろうな?」
「しないよ。君がボクを受け入れてくれるまで、キスとハグまでしかしない」
魔王専用の風呂というのが気になって、浮竹はOKした。
「うわぁ、広いな。おまけにこっちの浴槽は純金製か」
「ああ、それは藍染が残したものだね」
「藍染って、趣味悪かったんだな」
浮竹が、先代の魔王藍染がいなくなったのは、今から5年前のことだと教えられたのを思い出す。アリーナ王国で、文字や歴史の勉強をしていた。
魔法や剣の練習もしていたが、異世界からきた浮竹はこの世界で生きていくために、知恵が必要だったので、読み書きを学んだりしていた。
「黄金の玉座もそうだけど、黄金の便器まであったんだよ。なんでも黄金にすればいいってもんじゃないけどね」
「前の魔王は、領地の国民から搾取していたそうだな」
「うん。ボクが魔王になってみんな喜んでたね。税を5分の1にしたから」
「お前が魔王になって、領地も広がったんだろう?」
「魔王の加護を受けたいと、領地になりたがる国が多くてね。魔王領になると、戦争をしかけられたら守るからね」
「ますます魔王らしくない」
浮竹は広い浴槽につかりながら、くすっと笑った。
「お前が魔王でよかった。無駄な血を流さずにすんだ。召喚されたアリーナ王国では、魔王軍は無慈悲で殺戮をしていると習ったからな。国民もそれを信じていたみたいだし」
「アリーナ国王は、鉱山で一生強制労働さ。命があるだけ、ましだよ」
「そうだな。重税を課して国民を貧困の生活をさせて自分だけ贅沢をしていたからな。まぁ俺のもてなしも国民の血税だっただろうが。この風呂はなんだ?いい匂いがする」
「ああ、それは薔薇風呂だね。気に入ったら、入るといいよ」
浮竹は、薔薇風呂に入った。
ほのかな甘い香りが浮竹を包み込む。
だんだん、眠くなってきた。
「眠いので、風呂からあがって仮眠する」
「うん。その薔薇風風呂は安眠効果があるからね。先に戻って寝ておいで」
浮竹は、風呂からあがってフルーツ牛乳を飲んでから、与えられたこれまた豪華な部屋の豪華な寝台で眠る。
「うーん、もう食べれないむにゃむにゃ」
浮竹を起こしに来た京楽は、浮竹のそんな寝言を聞いてクスリと笑った。
「浮竹、起きて。3時間は眠っていたよ?あんまり寝ると夜に眠れなくなるよ。夕飯の準備できてるから」
「ん、ああ、俺は3時間も仮眠してしまっていたのか」
「うん」
「確かに腹が減った。夕食にしよう」
その日の夕食も豪華だったが、いつも食べ残しがない量にされているので、浮竹も安心して食べた。もしも残すことになったら、もったいなさすぎるからだ。
「明日はアサインの町の視察にいくよ。よければくる?」
「いく。魔王城で厄介になってるが、モンスター退治以外暇だからな」
こうして、京楽と浮竹は、魔王領地の中でも港町として有名で繁栄しているアサインの町に視察にやってきた。
「魔王様だ!魔王様、新鮮な魚がありますよ!」
「魔王様、この葡萄酒飲んでいってください!」
「魔王様、泊まるんならぜひうちの宿に!」
京楽は、引っ張りだこだった。浮竹は、にこやかな京楽の笑顔に、こいつほんとに魔王なのかと思うほどだった。
民草にこれほど慕われる魔王も珍しい。
「食事にしようか。港町だから、海の幸がおいしいよ」
「ああ、分かった」
浮竹と京楽は、その日泊まると決めた宿で、食事をとった。魔王城で出される食事にはさすがに及ばないが、それでも美味だった。
京楽も浮竹も、葡萄酒を飲んだ。
しばらくすると、浮竹の様子がおかしくなった。
「うぃーーー。もっと酒もってこおおおい」
「ちょっと浮竹、酔ったの?」
「この魔王め!スラ子さんと骨子さんと結婚しておきながら、俺とも結婚しようだなんて、10000万年はやいわ!」
「浮竹、もうお酒飲むのはやめよね?」
「うるあああ、もっと飲む」
暴れ出す浮竹に、京楽は仕方なくスリープの魔法をかける。
「ふふ、酒に弱いんだね。新発見だ」
京楽は眠ってしまった浮竹をお姫様だっこして、泊まるスィートルームのベッドに寝かせた。
「ちょっとくらい、いいよね?」
京楽は、浮竹に口づける。
それから、長い白髪を手ですいて、それにも口づけた。
「やっと見つけた、浮竹。ボクのことは覚えていないだろうけど、ボクも君と同じく異世界から召喚されて魔族になったんだよ。君とボクは、きっと運命の糸でつながっている。世界を、時空をこえても、また会えたんだから」
浮竹は忘れてしまっていた。
京楽と浮竹が、元の世界で幼い頃、孤児院で一緒に生活していたことなど。
京楽が孤児院にいたのは2カ月ばかり。
浮竹とは仲が良かったが、子供の頃と今の見た目は違いすぎる。肌と髪と瞳の色も違う。名前は一緒だが、浮竹は幼かったので、きっと忘れてしまっているだろう。
「今度は、もう手放さない。ボクは、ずっと君の傍で君を守るから。おやすみ、浮竹」
京楽は、浮竹の額に口づけて、もう1つの寝台で眠るのであった。
浮竹は、黄金の玉座を見てびっくりしていた。何せ、純金製なのである。
「魔王って、金持ちなんだな。質素な生活をしていた俺からすると、考えられない生活だ」
出された朝食、昼食、夕食と午後のお茶もどれもおいしく豪華なものばかりであった。
「全部、前の魔王の藍染が残したものだけどね。食事はまぁ、せっかく魔王になったんだから、おいしいもの食べたいじゃない」
「俺は食費は1日銀貨3枚までにしていた。ここの食事は金貨20枚は飛びそうだ」
「領地にして、自治を任せている王国とかからの献上金が無駄にあるからね。魔王の配下には十分な給料を支払ってるし、魔王が質素な生活してたら、配下の者も貧しい暮らしになるからね」
「ふむ」
「お風呂も天然温泉だからね。ご近所さんがお金払って入りにくる。お風呂は一般利用もできるようにしているから。食事もできるよ」
「そこそこの金をとるのか?」
「うーん、庶民に優しい金額にしてるけどね。天然温泉、食事つきで銀貨3枚」
「高くはないな。安くもない。まぁ、普通か」
浮竹は、納得したような顔をする。
「一緒に、魔王専用の風呂で湯あみしない?」
「へ、変なことしないだろうな?」
「しないよ。君がボクを受け入れてくれるまで、キスとハグまでしかしない」
魔王専用の風呂というのが気になって、浮竹はOKした。
「うわぁ、広いな。おまけにこっちの浴槽は純金製か」
「ああ、それは藍染が残したものだね」
「藍染って、趣味悪かったんだな」
浮竹が、先代の魔王藍染がいなくなったのは、今から5年前のことだと教えられたのを思い出す。アリーナ王国で、文字や歴史の勉強をしていた。
魔法や剣の練習もしていたが、異世界からきた浮竹はこの世界で生きていくために、知恵が必要だったので、読み書きを学んだりしていた。
「黄金の玉座もそうだけど、黄金の便器まであったんだよ。なんでも黄金にすればいいってもんじゃないけどね」
「前の魔王は、領地の国民から搾取していたそうだな」
「うん。ボクが魔王になってみんな喜んでたね。税を5分の1にしたから」
「お前が魔王になって、領地も広がったんだろう?」
「魔王の加護を受けたいと、領地になりたがる国が多くてね。魔王領になると、戦争をしかけられたら守るからね」
「ますます魔王らしくない」
浮竹は広い浴槽につかりながら、くすっと笑った。
「お前が魔王でよかった。無駄な血を流さずにすんだ。召喚されたアリーナ王国では、魔王軍は無慈悲で殺戮をしていると習ったからな。国民もそれを信じていたみたいだし」
「アリーナ国王は、鉱山で一生強制労働さ。命があるだけ、ましだよ」
「そうだな。重税を課して国民を貧困の生活をさせて自分だけ贅沢をしていたからな。まぁ俺のもてなしも国民の血税だっただろうが。この風呂はなんだ?いい匂いがする」
「ああ、それは薔薇風呂だね。気に入ったら、入るといいよ」
浮竹は、薔薇風呂に入った。
ほのかな甘い香りが浮竹を包み込む。
だんだん、眠くなってきた。
「眠いので、風呂からあがって仮眠する」
「うん。その薔薇風風呂は安眠効果があるからね。先に戻って寝ておいで」
浮竹は、風呂からあがってフルーツ牛乳を飲んでから、与えられたこれまた豪華な部屋の豪華な寝台で眠る。
「うーん、もう食べれないむにゃむにゃ」
浮竹を起こしに来た京楽は、浮竹のそんな寝言を聞いてクスリと笑った。
「浮竹、起きて。3時間は眠っていたよ?あんまり寝ると夜に眠れなくなるよ。夕飯の準備できてるから」
「ん、ああ、俺は3時間も仮眠してしまっていたのか」
「うん」
「確かに腹が減った。夕食にしよう」
その日の夕食も豪華だったが、いつも食べ残しがない量にされているので、浮竹も安心して食べた。もしも残すことになったら、もったいなさすぎるからだ。
「明日はアサインの町の視察にいくよ。よければくる?」
「いく。魔王城で厄介になってるが、モンスター退治以外暇だからな」
こうして、京楽と浮竹は、魔王領地の中でも港町として有名で繁栄しているアサインの町に視察にやってきた。
「魔王様だ!魔王様、新鮮な魚がありますよ!」
「魔王様、この葡萄酒飲んでいってください!」
「魔王様、泊まるんならぜひうちの宿に!」
京楽は、引っ張りだこだった。浮竹は、にこやかな京楽の笑顔に、こいつほんとに魔王なのかと思うほどだった。
民草にこれほど慕われる魔王も珍しい。
「食事にしようか。港町だから、海の幸がおいしいよ」
「ああ、分かった」
浮竹と京楽は、その日泊まると決めた宿で、食事をとった。魔王城で出される食事にはさすがに及ばないが、それでも美味だった。
京楽も浮竹も、葡萄酒を飲んだ。
しばらくすると、浮竹の様子がおかしくなった。
「うぃーーー。もっと酒もってこおおおい」
「ちょっと浮竹、酔ったの?」
「この魔王め!スラ子さんと骨子さんと結婚しておきながら、俺とも結婚しようだなんて、10000万年はやいわ!」
「浮竹、もうお酒飲むのはやめよね?」
「うるあああ、もっと飲む」
暴れ出す浮竹に、京楽は仕方なくスリープの魔法をかける。
「ふふ、酒に弱いんだね。新発見だ」
京楽は眠ってしまった浮竹をお姫様だっこして、泊まるスィートルームのベッドに寝かせた。
「ちょっとくらい、いいよね?」
京楽は、浮竹に口づける。
それから、長い白髪を手ですいて、それにも口づけた。
「やっと見つけた、浮竹。ボクのことは覚えていないだろうけど、ボクも君と同じく異世界から召喚されて魔族になったんだよ。君とボクは、きっと運命の糸でつながっている。世界を、時空をこえても、また会えたんだから」
浮竹は忘れてしまっていた。
京楽と浮竹が、元の世界で幼い頃、孤児院で一緒に生活していたことなど。
京楽が孤児院にいたのは2カ月ばかり。
浮竹とは仲が良かったが、子供の頃と今の見た目は違いすぎる。肌と髪と瞳の色も違う。名前は一緒だが、浮竹は幼かったので、きっと忘れてしまっているだろう。
「今度は、もう手放さない。ボクは、ずっと君の傍で君を守るから。おやすみ、浮竹」
京楽は、浮竹の額に口づけて、もう1つの寝台で眠るのであった。
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