魔王と勇者と18
「いつまで経っても仕事は終わらないし、浮竹はモンスター退治した後に元魔王のボクとフェンリルの浮竹のところに行っちゃうし‥‥‥ああ、やめだやめだ。今日の仕事はここで終わり!」
「魔王様!まだ目を通していただかないといけない書類がこんなに!」
猫の亜人の大臣が、紙の束を抱えている。
「今日の仕事は終わり!ボクも浮竹のところにいってくる!」
「あ、逃げた!」
京楽は、毎日の仕事に飽きて、浮竹を追って、いつの間にか地下に設置された転移魔法陣で元魔王の京楽とフェンリルの浮竹の住む城にやってくる。
「浮竹だけずるい」
「いや、お前は仕事があるだろうから。仕事はどうしたんだ?」
「大臣に任せて放り出してきた」
「まぁ、毎日仕事ばかりだもんな。息抜きもしたくなるか」
「浮竹成分が足りない」
京楽は、浮竹を抱き寄せた。
「おい、見られてるぞ」
「見せつけてるの」
元魔王の京楽とフェンリルの浮竹は、そっちがその気ならといちゃつきはじめた。
『はい、あーん』
フェンリルの浮竹が、茶菓子のプリンを元魔王の京楽の口元にもっていく。
『あーん』
それを、元魔王の京楽が口をあけて食べる。
「ねぇ、浮竹」
「自分で食え。あれはしないぞ」
「くすん」
それでも、京楽は浮竹と一緒にいられるのが嬉しくて、にこにこしていた。
フェンリルの浮竹の尻尾が揺れているのを見て、思い出したとばかりにアイテムポケットから何かの薬を取り出す。
「なんだそれ」
「狼の耳と尻尾が生える薬」
「何そんなものもってきてるんだ」
「フェンリルの浮竹と双子みたいになりたいと思わない?」
「双子‥‥‥」
浮竹は悩んだ。
『俺は勇者の俺とお揃いになりたい』
フェンリルの浮竹は尻尾をぶんぶん振っていた。
『ボクも見てみたいかも』
皆に言われて、浮竹はしぶしぶ薬を飲んだ。
ピョコンと狼の耳が生えて、尻尾も生えた。
「服があわないな」
『俺のメイド服をやる。一緒にメイドになろう』
「いや、女装は‥‥‥‥」
『だめか?』
うるうるとした瞳で見つめられて、浮竹はあっけなく陥落した。
「着替えてくる」
『初めて着るんじゃ、着かたが分からないだろう。教えてやる』
フェンリルの浮竹に連れられて、浮竹は城の奥に入っていく。
数分して、メイド姿になった浮竹が現れた。
「おお、似合ってるね。そうしてると、ほんとに双子みたいだね」
『うん、悪くないね』
『ふふ、双子みたいだって』
「けっこう恥ずかしいんだが」
『慣れたら平気になる』
メイドの姿で、浮竹は京楽に紅茶を入れてフェンリルの浮竹の作ったラズベリータルトを出す。
浮竹の尻尾も、フェンリルの浮竹のように揺れていた。
「きゃう!」
京楽にいきなり尻尾を握られて、浮竹は変な声を出してしまった。
『大丈夫か、勇者の俺』
「京楽、この薬もしかして‥‥‥‥」
「あ、ばれた?性感帯になるの」
「あほおおおおおおおお!!!」
浮竹は、綺麗なアッパーを京楽に決める。
「ひゃう」
フェンリルの浮竹に耳をにぎにぎされて、また声を出してしまう。
「京楽、解毒剤は!」
「ないよ。ちなみに誰かと交わらないととれないから」
「ぐぬぬぬぬ、はめたな!」
浮竹は、くやしそうだが尻尾は揺れていた。
「げふふふふ。こうも簡単にひっかかってくれるとは」
『魔王のボクって‥‥…』
『京楽、きっと仕事のしすぎで勇者の俺とできなくてたまってるんだろう』
『部屋、貸してあげるけど?』
「いや、一度帰るよ」
京楽は、浮竹を姫抱きにして転移魔法陣に乗って、一度戻っていった。
2時間ほどどして、メイド姿だが耳も尻尾もない浮竹ががやってくる。京楽は上機嫌で、反対に浮竹はぐったりしていた。
『勇者の俺、大丈夫か!』
「性欲の権化の餌食にされた」
「おかげですっきりしたよ」
「この魔王め!」
「そうだよ、ボクは魔王だよ?あと魔族だから悪魔でも通じるかもね」
「悪魔めええええ」
『なんだかんだいって、仲がいいんだね』
『むう、せっかく双子のようになれたのに。少し残念だ』
「じゃあ、浮竹にもう一度薬を‥‥‥」
「誰が飲むか!」
京楽は、鳩尾に拳を入れられて、それでも嬉しそうににまにましているのだった。
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