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魔王と勇者と3

月に一度、魔王城は一般公開される。

京楽は黄金の玉座に座って、訪れてくる人々に加護を与えて、病気やけがを癒したり、悪運や呪いをといたりする。

中には魔王領以外の国から加護を求めてくる人間もいたが、京楽は気にしない。

「魔王京楽、覚悟!」

訪れていた人の中から、若い男が刃物を手に飛び出してきた。

京楽は、盲目の老人の目を癒していた途中で、心臓を刺されていた。

「聖女教の者だね。悪いけど、ボクは心臓を刺されたぐらいじゃ死なないから」

「京楽、止血を!」

浮竹が顔を蒼くして、流れ出る京楽の血を止めようとする。

「大丈夫だよ、浮竹。自己再生できるから」

「でも、失血死したら大変だ!この男はどうする?」

浮竹が捕まえた若い男性は、「聖女様万歳!」と叫んで、あらかじめ用意していた毒薬を飲んで自殺してしまった。

「聖女教‥‥‥魔王は忌むべき存在。存在自体が罪」

「お、知ってるの?召喚されてまだ1カ月くらいでしょ」

「アリーナ王国にいた頃、この世界の歴史を習っていたからな。世界でも一番大きな宗教の聖女教。女神であり聖女であるアナスタシアを信仰する、魔王排斥派の宗教だろう?」

「その通りだよ。17代目アナスタシアとは会ったことはあるけど、いくら善行をつんでも魔王は魔王だから死ぬべきだっていばってったね。髪の毛をアフロにしたら、殺されそうになったけど。まぁ、聖女ごときでは死なないけどね」

「聖女をアフロに‥‥‥やるな」

「聖女教は厄介だねぇ。前の魔王の藍染のような魔王が多かったから、魔王は忌むべき存在であり、人間の敵だったんだよ。ボクが魔王になって、少し変わったけど」

浮竹は、自己再生能力で京楽の傷が癒えたのを確認して、京楽の血が染みたハンカチを京楽に渡す。

「血は、魔王にとって特別なんだろう?」

「うん。いろんな儀式に使うし、悪用されたら大変だからね」

訪れていた人々は、突然の事態に今回の魔王城一般公開と魔王による無料治癒が強制中止されて、聖女教に不満をぶちまけていた。

「魔王様を殺そうとするなんて」

「聖女教がなんだ!聖女なんて信仰しても、何もしてくれない。魔王様は無償でけがや病気を癒してくださる!」

「魔王様、私たちは魔王様の味方です!」

「そうだそうだ!」

「うん、ありがとね」

京楽は、失った血は取り戻せないので、輸血することにした。

魔王城の寝室に横になり、血液型が同じということで名乗り出た浮竹の血を輸血してもらった。

「ごめんね、いきなりごたごたに巻き込んで」

「いや、不測の事態というやつだ。京楽、無償で人の治療をするのはいいが、もっと警護を増やせ」

「うん。来月からそうするよ」

「危なっかしいから、俺も守ってやる」

浮竹は、顔を僅かに赤くしながらそう言う。

「ふふふ、ありがと。でも、ボクは君を守りたいな」

「俺は勇者だぞ!守る立場だ!」

「うん、そうだね。ねぇ、時間がかかってもいいから、第3夫人のこと、真剣に考えてくれないかな」

「そ、そのうちな!」

浮竹は、京楽の背中をばんばん叩いて、照れ隠しをしていた。

「あいたたた、自己治癒能力があるとはい、痛みは消えてないのでやめて」

「す、すまん」

浮竹は赤くなったままだった。

「ゆ、夕飯ができてないかシェフに聞いてくる」

逃げるように、浮竹が京楽の寝室から出ていった。

「ふふふ、かわいいなぁ。近いうちに、君は絶対第三夫人になってボクのものになる。そうしなきゃ、この世界では生きていけないから。召喚された者は、召喚された者と結ばれなければ死んでしまうから」

京楽も、はるか昔に召喚され、当時は魔王ではなかった。賢者だった。

同じく召喚された賢者の少女と結ばれて、生きながらえた。

浮竹は、召喚の掟を知らない。

「君は、ボクが守る。絶対に」





「聖女であり女神であるアナスタシア様」

「なぁに?」

その美しすぎる少女は、オッドアイの瞳で信者を見る。

「魔王京楽の討伐に失敗しました」

「あら、またなの。魔王はこの世界の悪。滅んでもらわなくては」

アナスタシアは、うっとりと傍らにいる男に身を委ねる。

「ねぇ、あなたもそう思うでしょ、藍染」

「ああ」

生死不明の藍染は、5年前から聖女教のアナスタシアを虜にして、魔王という存在をこえて魔神になろうとしていた。

「愛しているよ、アナスタシア。私の、かわいいお人形」

「ふふふ。京楽春水‥‥‥魔王らしくあればいいのに、無駄に人間に人気があるからいやね」

「京楽は、結構狡猾な男だ」

「あら。そうね、いずれ大神官を派遣いたしましょう」

聖女であり女神であるアナスタシアは笑う。はたして、藍染に利用されているのか、それとも利用しているのか、それは誰にも分からなかった。


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