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魔王と勇者と25

その日、浮竹は普通に過ごしていた。

京楽と一緒に、書類仕事をしていた。ふと、浮竹が天井を見上げる。

「エトナ神の声が聞こえる」

「え、なんて?」

「我が元にきたれ、愛児よ、と」

「それって‥‥‥」

その時、浮竹の姿が消えた。光り輝く12枚の翼を出したかと思うと、こう言って。

「エトナ神に呼ばれた。神界に強制転移させられる。すまない、戻ってこれるか分からない」

「浮竹!!」

京楽は、浮竹が残した羽を拾いあげて、青い顔になった。

「神界だって?戻ってこれないって‥‥‥浮竹、ボクはエトナ神であろうと君を渡すことはできないよ」

神界に行く方法を、魔神の元魔王の自分なら知っているだろうと、元魔王の京楽の元に転移する。

『どうしたんだい、君一人って珍しいね』

『勇者の俺は一緒じゃないのか?』

お茶を‥‥‥という雰囲気を消し飛ばして、京楽は元魔王の京楽につめよる。

「浮竹が神エトナの元に拉致られたんだよ。しばらく戻ってこれないかもと言っていた。魔神である君になら、神界への行き方が分かるんじゃないかって」

『神、エトナが自分の子を召喚したんだね。事情は分かったよ。神界へ行こう。危ないから、浮竹は留守番‥‥‥」

フェンリルの浮竹は頬を膨らませて、元魔王の京楽の服の袖をつかむ。

『俺も一緒に行く。勇者の俺を迎えに行く』

『はぁ、そう言うと思ったよ。でも、神界は‥‥‥』

『なにがなんでも行くからな!』

フェンリルの浮竹は、一度言い出すと止まらないようだった。

『分かったよ。君も連れていく』

フェンリルの浮竹は尻尾をばっさばっさ振る。

『ボクは魔神だからね。神界へも行けるんだ。ゲートを開くから、そこに入って』

京楽にそう言い聞かせて、元魔王の京楽は古代語で呪文を唱えると、ゲートを開いた。

「ごめん、この恩は必ず返すから!」

京楽がまずはゲートに入る。次にフェンリルの浮竹、元魔王の京楽の順で入り、転移した。


『ふあああああ』

神界は、桜の花が咲き乱れる美しい場所だった。

フェンリルの浮竹が、美しい光景に声をあげる。

「エトナ神、いるんでしょ!浮竹を返して!!!」

京楽が叫ぶ。

ゆらりと空間が揺らいで、とても美しい青年が姿を現す。

「浮竹は、我が子。愛児として愛し、力を与えて地上に返そうと思っていたのだが、わざわざ神階まできたのか」

「力なんてどうでもいい。浮竹を返して」

『そうだぞ!たとえ神にだって、勇者の俺を拉致っていいわけがない!』

フェンリルの浮竹は、エトナ神に噛みつかんばかりの勢いだった。

「私は創造の神。そちらの破壊の魔神と違って、傷つけたりはせぬ」

『ボクは確かに破壊の負を司る君の対極に位置しているけど、勇者の浮竹を返してくれないかな。場合によっちゃ、神界をめちゃくちゃにするよ』

「我が愛児は、愛されているのだな。力はさずげおわった。本来なら神界でしばらく過ごしてもらうところなのだが、神界に魔神がいるのは困る。連れて帰るのなら、好きにせよ」

すーっと、浮竹の体が現れる。

眠っているのか、意識はなかった。

「浮竹!!!」

「眠っているだけだ」

「今後、エトナ神だからって浮竹を勝手に連れて行かないでね。魔神のボクに頼んで、神界めちゃくちゃにしちゃうからね」

『綺麗な世界だけど、勇者の俺を返さないなら暴れる』

フェンリルの浮竹は、がるるるるると、エトナ神を威嚇する。

『落ち着いて、浮竹』

それを、魔神の京楽がなだめる。

『エトナ神、いかに君が勇者の浮竹の親とはいえ、無断で連れていかないでね。ボクが暴れて神界をめちゃくちゃにするのを、二人が願ってしまう。ボクも、返してもらえないと暴れるけどね』

「ふふ、私の愛児はたいそう愛されているようだ。連れて帰るがよい。力は受け渡した」

『エトナの神の力が濃くなってるね』

魔神の京楽が、意識のない浮竹に触れる。

京楽は浮竹をお姫様だっこすると、魔神の京楽に言う。

「帰ろう」

『そうだぞ。神界などぶっそうなところに長居は無用だ』

フェンリルの浮竹は、浮竹を撫でてから魔神の京楽の手を握る。

『転移して元の人間界に戻るよ。魔法陣の中らから、外に出ないでね』

魔神の京楽は、魔力で地面に魔法陣を描くとそこに乗り、京楽と意識のない浮竹、それにフェンリルの浮竹がそこに乗る。

気づけば、魔王城のバルコニーにいた。

「浮竹、力を与えられたって言ってたけど、大丈夫かな」

『エトナ神は、傷つけるような真似はしない。神の力が強くなるだけだよ』

『むう、エトナ神だかなんだか知らないが、勇者の俺を傷つけていたなら消し炭にしてやっていた』

『いや、相手は一応神だからね?無理だからね?』


「ん‥‥‥俺は?確か、エトナ神に呼ばれて‥‥」

「連れ戻しに、神界までおしかけちゃった」

「京楽!?なんて無茶を」

「彼らも、押しかけたっていうか、魔神のボクに神界まで連れて行ってもらった」

浮竹は、魔神の京楽とフェンリルの浮竹を見る。

『よかった、気がついたんだな!無事でよかった!』

フェンリルの浮竹をは、しっぽをばっさばっさ振って、浮竹に抱きつく。

「フェンリルの俺、かすり傷があるな。セイントヒール」

『え、俺怪我してたのか』

「エトナの力でわかる」

『すごいぞ、勇者の俺!』

浮竹は、魔神の京楽を見る。

「その濁った神気、清浄なものにかえてやろう」

『え、そんなことできるの?』

「キュアクリーン」

浮竹は魔法を唱える。

『わお。ほんとにまとう神気が魔神のものじゃなくなってる』

「ただ、お前は魔神だからいずれまた濁る」

『それでも助かるよ。濁った神気で少なからず浮竹に影響を与えていたから』

『ん、俺なら平気だぞ?』

『うん。でも、微妙に食欲落ちたりしてたでしょ。濁ったボクの神気の影響で』

『え、そうなのか?全然気づかなかった』

『全く、浮竹らしいよ』


京楽は、浮竹を抱きしめる。

「君がいなくなった時、このまま帰ってこないんじゃないかと恐怖を感じたよ。無事戻ってこれてよかった」

「エトナ神は、いずれ人間界に返す予定だったらしいが、1カ月は手元にいろって言っていたからな。俺も神界なんかにいたら、退屈で死にそうだ」

京楽と浮竹は、唇が触れるだけのキスをした。

『ええと、ボクたちはこれでお邪魔するね?』

『勇者の俺!魔王な京楽と仲良くな!』

浮竹は我に返り、京楽をはりせんではたく。

「なんで!?ボク、なんかした!?」

「とりあえず全部お前が悪い」

「なんでえええええ!?」

赤くなった浮竹は、魔神の京楽とフェンリルの浮竹を見送るのであった。






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