魔王と勇者と7
「君は魔力が高いのに、魔法が使えない。それは基礎の魔法構築が間違っているからだよ。今日は、君に魔法を覚えてもらう」
「一応、ファイアアローくらいなら使えるぞ」
「唱えてごらん」
「ファイアアロー」
浮竹が魔法で出した魔法の炎の矢は、のろのろと地面をのたくった後、「ぎええええ」と叫んで消えていった。
「ほら、使えただろう?」
京楽は、笑い死にしかけていた。
「失礼なやつだな。使えと言ったのはお前だぞ、京楽」
「矢がのろのろの上に、どこをどうしたら悲鳴をあげて消えるんだろう」
「いや、これが普通じゃないのか?アリーナ王国で魔法の練習もしたけど、これでいいって言われたぞ」
「それ、絶対これは手に負えないって、遠巻きに言われてるようなもんだよ」
「じゃあ、京楽のファイアアローを見せてくれ」
京楽と浮竹は、魔王城で魔法を使うわけにもいかないので、近くの森にきていた。
「ファイアアロー」
京楽が唱えたファイアアローは、幾本もの木を貫き燃やしていく。
「す、すごいな。こんな魔法だったのか」
「ボクの場合、魔王だから威力は高いけど、基本炎の矢の形となって対象物に飛んでいく魔法だよ」
「俺の魔法の腕は、自慢じゃないがへっぽこだからな」
「ほんと、自慢することじゃないね。でももったいないよ。せっかく勇者として高い魔力を持っているのに、魔法が使えないなんて。君の場合、初めに教えた師が悪かったんだろうね」
「ううむ」
「まずは魔法の構築からスタートだよ。瞑想から始めようか」
幾度も違うと否定されて、それでも浮竹は基礎の魔法構築を続ける。
その日は、一日中魔法構築のやり直しで終わった。
次の日も、瞑想から入る。京楽が細かに教える魔法構築の仕方を何とかマスターし、浮竹は魔法を唱えてみた。
「ファイアアロー」
相変わらず炎の矢はうねうねしていたが、木に向かって飛んでいき、その木を燃やした。
「すごい!俺でも魔法が使えたぞ!」
「素質はあるようだから、もっといっぱい練習しよう。きっと、その魔力の高さなら禁忌の魔法さえ唱えれる」
「え、そんな物騒な魔法は覚えないぞ」
「まぁ、基本属性の上位魔法を習得するまで、毎日特訓だよ」
浮竹は筋がよく、火土風水の上位魔法を習得するまで1か月もかからなかった。
「嘘みたいだ。俺が魔法使えるなんて」
「あいかわず、魔法はうねうねしているけど、まぁ合格かな」
「やった!」
「その、魔法がうねうねするのはなんでだい?」
「分からん。最初に契約した精霊が名もなき精霊だったせいかも」
「名もなき精霊‥‥‥ああ、悪戯好きのアルカンテスだね。それなら納得だ。アルカンテスは精霊だけど、悪戯好きで契約した相手の魔法をおかしくさせる。今すぐ契約破棄しよう」
「分かった」
浮竹は、アルカンテスを召喚した。
「なんぼのもんやねんわれ。一度契約したんだ、取り消しはきかへんで」
「へぇ。そんなに、死にたいの?」
京楽が、魔力をこめた手でアルカンテスの頭をわしづかむ。
「ひええええ、魔王京楽!う、浮竹との契約は破棄するから、命ばかりはお助けをおおおお」
こうして、浮竹はアルカンテスとの契約を白紙にして、もう一度ファイアアローを唱えた。
「ファイアアロー」
炎の矢は、くねくね踊ってから、対象であった木を燃やす。
「あれぇ、なんでだ?ましになったけど、やっぱり変だ」
「あちゃあ。異界から召喚されたときに、ゲートに脳の一部がやられたのかもね」
「俺の魔法は、一生こうなのか?」
「うん」
「くすん。勇者の魔法なのにださい」
浮竹は、涙を滲ませる。
「ま、まぁちょっと個性的だけどちゃんと魔法としては成り立っているから」
「本当か?」
「うん。ファイアアローも、ちゃんと木を燃やしたでしょ?」
「ああ」
「もっと魔力をこめたら、もっと大きな魔法になる。ただ、浮竹の場合は怖いから、必要な時以外は魔法を使わないでね」
「せっかく訓練したのに」
京楽は、浮竹の頭を撫でる。
「モンスター退治の時とかなら使っていいから」
「本当か?」
「うん」
「じゃあ、もうちょっと魔法の腕、磨くな?」
「アルカンテスと契約できたってことは、精霊魔法も素質ありそうだね。シルフ、ウンディーネ、サラマンダー、ノーム、顕現せよ」
4匹の精霊が京楽の召喚によって姿を現す。
「契約できるか、ためしてごらん」
「どうすればいいんだ?」
「精霊に触れながら、契約の呪文を唱えるんだよ」
見本を京楽から見せてもらい、浮竹は4匹の精霊との契約に成功した。
「わお。4属性の適正ありかい。さすが勇者」
「契約できたってことは、召喚もできるんだよな?」
「うん。召喚してみる?」
「ああ」
浮竹は、風の精霊シルフを召喚した。
すると、出てきたのは風の精霊王だった。
「え、なんで精霊王が。ボクだって契約できてないのに」
「汝は、4大精霊王との契約を完了させた。下位精霊との契約であったが、その力は精霊王と契約するにふさわしいと判断して、勝手に契約させてもらった」
「わあ、なんかすごいことになってる!」
「浮竹はエレメンタルマスターなんだね。勇者だけど」
「そうなのか?」
「ボクは、魔王だけど職は縁者だよ。魔王や勇者っていうのは、ただの役職だからね」
「風の精霊王、浮竹を今後も頼むよ」
「承知した」
そう言って、風の精霊王は消えていった。
「おなかすいた」
ぐ~と浮竹が腹をならす。
「精霊の使役は魔力だけでなく、生命エネルギーも使うから、お腹もすくよ。無意味に精霊王を呼び出しちゃだめだよ。彼らはプライドが高いから」
「分かった。飯にしよう。腹減った」
「浮竹は、マイペースでいいね」
精霊王と契約できたことを自慢しようともしない。
浮竹と京楽は、転移魔法で魔王城まで戻り、少し早めの夕食をとった。
浮竹は、よく食べた。
「ちょっと、食べすぎじゃない?」
「腹が減るんだ]
「うーん、一気に4大精霊王と契約しちゃったせいだろうね。しばらく空腹が続くけど、あんまり食べ過ぎてお腹壊さないようにね」
「ああ、分かっている」
こうして、浮竹の魔法の修行は終わった。
魔法は普通に使えるが、ちょっと変で、エレメンタルマスターとなった。
エレメンタルマスターが貴重な存在であると知るのは、また別の機会であった。
「一応、ファイアアローくらいなら使えるぞ」
「唱えてごらん」
「ファイアアロー」
浮竹が魔法で出した魔法の炎の矢は、のろのろと地面をのたくった後、「ぎええええ」と叫んで消えていった。
「ほら、使えただろう?」
京楽は、笑い死にしかけていた。
「失礼なやつだな。使えと言ったのはお前だぞ、京楽」
「矢がのろのろの上に、どこをどうしたら悲鳴をあげて消えるんだろう」
「いや、これが普通じゃないのか?アリーナ王国で魔法の練習もしたけど、これでいいって言われたぞ」
「それ、絶対これは手に負えないって、遠巻きに言われてるようなもんだよ」
「じゃあ、京楽のファイアアローを見せてくれ」
京楽と浮竹は、魔王城で魔法を使うわけにもいかないので、近くの森にきていた。
「ファイアアロー」
京楽が唱えたファイアアローは、幾本もの木を貫き燃やしていく。
「す、すごいな。こんな魔法だったのか」
「ボクの場合、魔王だから威力は高いけど、基本炎の矢の形となって対象物に飛んでいく魔法だよ」
「俺の魔法の腕は、自慢じゃないがへっぽこだからな」
「ほんと、自慢することじゃないね。でももったいないよ。せっかく勇者として高い魔力を持っているのに、魔法が使えないなんて。君の場合、初めに教えた師が悪かったんだろうね」
「ううむ」
「まずは魔法の構築からスタートだよ。瞑想から始めようか」
幾度も違うと否定されて、それでも浮竹は基礎の魔法構築を続ける。
その日は、一日中魔法構築のやり直しで終わった。
次の日も、瞑想から入る。京楽が細かに教える魔法構築の仕方を何とかマスターし、浮竹は魔法を唱えてみた。
「ファイアアロー」
相変わらず炎の矢はうねうねしていたが、木に向かって飛んでいき、その木を燃やした。
「すごい!俺でも魔法が使えたぞ!」
「素質はあるようだから、もっといっぱい練習しよう。きっと、その魔力の高さなら禁忌の魔法さえ唱えれる」
「え、そんな物騒な魔法は覚えないぞ」
「まぁ、基本属性の上位魔法を習得するまで、毎日特訓だよ」
浮竹は筋がよく、火土風水の上位魔法を習得するまで1か月もかからなかった。
「嘘みたいだ。俺が魔法使えるなんて」
「あいかわず、魔法はうねうねしているけど、まぁ合格かな」
「やった!」
「その、魔法がうねうねするのはなんでだい?」
「分からん。最初に契約した精霊が名もなき精霊だったせいかも」
「名もなき精霊‥‥‥ああ、悪戯好きのアルカンテスだね。それなら納得だ。アルカンテスは精霊だけど、悪戯好きで契約した相手の魔法をおかしくさせる。今すぐ契約破棄しよう」
「分かった」
浮竹は、アルカンテスを召喚した。
「なんぼのもんやねんわれ。一度契約したんだ、取り消しはきかへんで」
「へぇ。そんなに、死にたいの?」
京楽が、魔力をこめた手でアルカンテスの頭をわしづかむ。
「ひええええ、魔王京楽!う、浮竹との契約は破棄するから、命ばかりはお助けをおおおお」
こうして、浮竹はアルカンテスとの契約を白紙にして、もう一度ファイアアローを唱えた。
「ファイアアロー」
炎の矢は、くねくね踊ってから、対象であった木を燃やす。
「あれぇ、なんでだ?ましになったけど、やっぱり変だ」
「あちゃあ。異界から召喚されたときに、ゲートに脳の一部がやられたのかもね」
「俺の魔法は、一生こうなのか?」
「うん」
「くすん。勇者の魔法なのにださい」
浮竹は、涙を滲ませる。
「ま、まぁちょっと個性的だけどちゃんと魔法としては成り立っているから」
「本当か?」
「うん。ファイアアローも、ちゃんと木を燃やしたでしょ?」
「ああ」
「もっと魔力をこめたら、もっと大きな魔法になる。ただ、浮竹の場合は怖いから、必要な時以外は魔法を使わないでね」
「せっかく訓練したのに」
京楽は、浮竹の頭を撫でる。
「モンスター退治の時とかなら使っていいから」
「本当か?」
「うん」
「じゃあ、もうちょっと魔法の腕、磨くな?」
「アルカンテスと契約できたってことは、精霊魔法も素質ありそうだね。シルフ、ウンディーネ、サラマンダー、ノーム、顕現せよ」
4匹の精霊が京楽の召喚によって姿を現す。
「契約できるか、ためしてごらん」
「どうすればいいんだ?」
「精霊に触れながら、契約の呪文を唱えるんだよ」
見本を京楽から見せてもらい、浮竹は4匹の精霊との契約に成功した。
「わお。4属性の適正ありかい。さすが勇者」
「契約できたってことは、召喚もできるんだよな?」
「うん。召喚してみる?」
「ああ」
浮竹は、風の精霊シルフを召喚した。
すると、出てきたのは風の精霊王だった。
「え、なんで精霊王が。ボクだって契約できてないのに」
「汝は、4大精霊王との契約を完了させた。下位精霊との契約であったが、その力は精霊王と契約するにふさわしいと判断して、勝手に契約させてもらった」
「わあ、なんかすごいことになってる!」
「浮竹はエレメンタルマスターなんだね。勇者だけど」
「そうなのか?」
「ボクは、魔王だけど職は縁者だよ。魔王や勇者っていうのは、ただの役職だからね」
「風の精霊王、浮竹を今後も頼むよ」
「承知した」
そう言って、風の精霊王は消えていった。
「おなかすいた」
ぐ~と浮竹が腹をならす。
「精霊の使役は魔力だけでなく、生命エネルギーも使うから、お腹もすくよ。無意味に精霊王を呼び出しちゃだめだよ。彼らはプライドが高いから」
「分かった。飯にしよう。腹減った」
「浮竹は、マイペースでいいね」
精霊王と契約できたことを自慢しようともしない。
浮竹と京楽は、転移魔法で魔王城まで戻り、少し早めの夕食をとった。
浮竹は、よく食べた。
「ちょっと、食べすぎじゃない?」
「腹が減るんだ]
「うーん、一気に4大精霊王と契約しちゃったせいだろうね。しばらく空腹が続くけど、あんまり食べ過ぎてお腹壊さないようにね」
「ああ、分かっている」
こうして、浮竹の魔法の修行は終わった。
魔法は普通に使えるが、ちょっと変で、エレメンタルマスターとなった。
エレメンタルマスターが貴重な存在であると知るのは、また別の機会であった。
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