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魔王と勇者8

浮竹と京楽は、同じ元の世界の孤児院出身だった。

当時の京楽は浅黒い肌に青い瞳、金色の髪をしていた。今の白い肌、黒い髪、鳶色の瞳ではなかった。

一緒に孤児院にいた時間は僅か2か月であったが、幼いながらに二人はとても仲がよかった。

京楽が、異世界に魔王となるために召喚される前までは。

今から600年前、時空をこえて京楽は召喚された。魔族の器に、その精神は宿り、元の肉体は粉々になった。

孤児院にいた時代から、京楽春水と名乗っているが、浮竹は昔のことすぎて覚えていないようであった。

「君が、ボクの花嫁になってくれると言っていた、幼い頃の冗談を本当にする。君を第三夫人にする」

浮竹は、すうすうとよく眠っていた。

その頬に触れて、京楽は愛しそうに浮竹に口づける。

「ん‥‥‥京楽?」

「ああ、起こしてしまったんだね。なんでもないから、もう一度寝なさい」

「俺は、お前と何か大事なことを忘れているような気がする」

「ボクのこと、覚えてるの!?」

「へ、なんだそれは。俺はこの世界ではじめて京楽と会ったぞ?」

京楽の期待は粉々にされたが、京楽は少し悲しそうな顔をするだけだった。

「うん、そうだね。勇者としてボクを討伐しにきたのが初めての出会いだね」

それは、この世界での浮竹との初めての出会いであった。

京楽は、浮竹を見た時運命を感じた。同じ異世界召喚をされたからだ。

浮竹の場合、大人になっていたが、すぐに幼い頃一緒にいた浮竹だと分かった。幼い頃から、京楽は浮竹のことが好きだった。

だから、異世界なのをいいことに、第三夫人‥‥‥‥実質、第一夫人と第二夫人のスラ子さんと骨子さんは魔王になるために存在が必要だっただけで、意思の疎通もできないしいてもいなくても関係なかった。

それでも、一応夫人なので今のままの形でいた。

浮竹が望むなら、第一夫人も第二夫人も消してしまうだろう。

「ねぇ、君が第三夫人になってくれないのは、ボクに第一夫人と第二夫人がいるから?」

「それもあるが‥‥‥」

「じゃあ、第一夫人と第二夫人は消す」

「え?」

京楽は、第一夫人のスラ子さんと第二夫人の骨子さんを召喚して、魔法で灰にしてしまった。

「ほら、もう第一夫人と第二夫人はないないよ?」

「ばか!」

浮竹は怒った。

「浮竹?」

「モンスターでも生きていて、お前の夫人なんだぞ。もっと大切にしろ!」

「そうは言っても、意思の疎通もできないんだよ」

「え、そうなのか?」

「前にも説明したと思うんだけど」

「すまん、聞いてなかった」

「じゃあ、第一夫人になって?」

京楽は、改めて浮竹にプロポーズした。

「そんなに俺と結婚したいのか?」

「うん」

「俺は勇者だぞ」

「勇者だろうと関係ない。君がいいんだ。君は覚えてないだろうけど、元の世界の孤児院で、2カ月間だけど一緒に過ごしてたんだよ」

「え?」

浮竹派驚く。

「ボクは6歳の頃異世界召喚されて、こっちの世界にきて精神が魔族に宿った。見た目はこんなだけど、元は褐色の肌、金の髪、青い瞳をしていた。名前は京楽春水のままだけど」

「あ‥‥‥京ちゃんか?」

「ボクのこと覚えてるの!?」

「うっすらと」

「ボクは時空をこえて召喚されたからね。今から600年前に。君まで異世界召喚されたと知った時、運命を感じたよ。改めて、好きだよ、浮竹。ボクの伴侶になって」

「京楽‥‥‥‥」

浮竹は、真っ赤になっていた。

「返事は?やっぱり、だめかな?」

「俺を」

「うん?」

「俺だけを見て、俺だけを一生愛してくれるなら、伴侶になる」

「浮竹!」

京楽は、浮竹を思い切り抱きしめた。

「その、すぐに体を許すとかはないからな」

「君がいてくれるなら、体なんてどうでもいい。まぁ、結ばれたくはあるけどね。ボクも男だし」

「俺も男だぞ」

「ふふ、この世界では同性同士が結婚することは珍しくないんだよ?」

「ああ、道理で同じ同性のカップルが多いわけだ」

「そうと決まったら、結婚式を挙げよう。騒がしいのは嫌だろうから、二人だけの結婚式を」

「二人だけなら、結婚式挙げてもいいかな」

こうして、数日が経ち、浮竹と京楽は結婚式を挙げた。

神父だけを呼んで、二人で愛を誓いあう。

「汝、浮竹十四郎は京楽春水を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」

「誓う」

「汝、京楽取水は浮竹十四郎を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」

「絶対に誓うよ」

リンゴーンと鐘が鳴り花びらが降ってきた。

空はオーロラ色に輝いていた。

「綺麗だな」

正装をした浮竹を見て、京楽は微笑む。

「浮竹のほうが数倍綺麗だよ?」

「は、恥ずかしいことを口にするな!」

ハリセンではたかれたが、京楽のにまにまは止まらない。

「これで、君はボクのものだ。愛し、守りぬくから」

「俺は守られてばかりの弱い存在じゃないぞ。勇者だし、俺がお前を守ってやる」

「く~~~嬉しいねぇ。お互いを守りあおう」

「俺たち、ちょっとやそっとのことでは守る必要なんて思うのだが」

京楽が首を横に振る。

「ボクが魔王である限り、聖女教の刺客がくる」

「ああ、前の大神官イブラヒムのような相手か。あれくらい、楽勝だろう」

「でも、もっと強いやつがきたら」

「俺とお前でやっつけるといい。俺は聖女教に勇者として認められていないし、聖女教になるつもりもない」

「浮竹、愛してる!大好きだよ!」

「お、俺も愛してるし好きだ」

「これが夢落ちだったりして」



「京楽、京楽いい加減起きろ」

「ガーン。本当の夢落ちだった」

「何を言っているんだ。結婚しただろう?今日から新婚旅行に、トエイ帝国まで行く予定だろうが」

「夢落ちじゃなかった!」

京楽はがばりと起き上がると、浮竹を抱きしめてキスをする。

さらにその先をしようとして、浮竹にハリセンではたかれた。

「結婚はしたが、まだ体は許さない」

「え~けち~~」

「結婚が1カ月続いたら、抱いてもいい」

「まじで?」

浮竹は真っ赤になって、前言撤回をしようとする。

「浮竹が言ったんだからね。1カ月したら、君を抱くよ」

「はう」

浮竹は、己の軽はずみな言動を後悔するのであった。

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