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黒猫と白猫の亜人57

白哉に、見舞いの話が舞い込んできた。

それはいつものことで、恋次がいるので、白哉は断ろうと思っていた。跡継ぎがいない問題があるが、朽木家の分家の若い子供を養子にいずれ迎え入れるつもりであった。

「断る」

「そう言わずに。亡き奥方であった、緋真嬢にとてもよく似た娘でしてな?」

「緋真に?」

白哉の心が揺り動く

緋真を亡くして、もう7年以上になるが、それでも白哉は緋真を愛し続け、緋真の代わりにルキアを亡き妻の分まで愛していた。

「ルキアにも、似ているのか?」

「もちろんです。ルキアお嬢様と瓜二つで‥‥‥写真がありますが、見てみますか?」

白哉は、写真を見た。驚いた。ルキアと緋真に瓜二つで、髪型は腰に届くほど長いので彼女らと違うと見分けはつくが、とても似ていた。

「一度だけ。会ってみたい。名は?」

「ローズマリエットと申します。地位は低いですが、男爵家の愛人の子供だそうで‥‥身分には少々問題はありますが、平民だった緋真嬢を娶ったあなたなら、問題ないでしょう」

ローズマリエットのことを紹介した貴族の男は、しめしめと思った。

恋次は、白哉が見合いをすると聞いて、ぶち壊そうかと思ったが、様子を見ることにした。

「恋次君、いいのか?このままだと、白哉が見合いをしてしまうぞ」

「恋次君、相手は緋真ちゃんによく似た子だとか言ってたよ?」

「俺は、白哉さんを信じてます。俺のことを愛してくれてるはずだ」

「でも‥‥‥」

「信じます」

やがて、見合いの日がやってきた。

恋次は神殿を抜け出して、猫の姿で浮竹と京楽も、同じ猫の姿でローズマリエット嬢が、白哉の館に入り、見合いする場面をその場で目撃していた。

「白哉様は、無類の猫好きとか。そちらの、白い猫は綺麗ですね?」

令嬢に抱かれて、浮竹がにゃあと鳴いて、すぐに白哉の傍に戻った。

礼儀正しい、よい令嬢のように見えた。

「私は、まだ緋真をことを思っている。兄と見合いをするのは、兄の中に緋真を見ているからだ。兄は緋真ではない。分かってはいるが‥‥」

「あら、ご希望でしたら、私は緋真様のように振る舞います。正妻でなくともかまいません。妾でも。あなた様が、神猫様の大神官と通しているという噂は耳にしておりますの」

ぴくっと、赤猫の恋次の耳が動く。

「でも、どんなに愛し合おうと、男性同士の間に子は産まれませんわ。私を本気で愛さなくとも構いませんのよ?ただ、少しだけ情けをいただければ。私、男腹の一族ですの。婚姻はなくとも大丈夫です。一夜を共にするだけでも。必ず、あなた様の男の御子を産みますわ」

白哉は、困った顔をしていたが、ふうと息をつく。

「緋真は、気高く優しかった。一夜を共にするだけでいいと言うような、尻軽な女性ではなかった。兄は緋真ではない。私は、この恋次を愛している」

白哉は、傍で侍っていた赤猫を抱きしめて、人の姿になれと言う。

「白哉さん、俺‥‥‥‥」

「黙っていろ」

白哉は、ローズマリエット嬢の前で、人の姿になった恋次と口づける。

「私は、女性相手では勃たない」

「まぁ。仕方ありませんわ、父がどうしても白哉様の心を盗んでこいと言いますけれど、私にもプライドがあります。私の前で、情人と愛を確かめ合うような方の元にはいけません。それに女性相手ができないのであれば、なおさら私がいる意味はありませんね」

ローズマリエット嬢は、ヒステリーを起こすこともなく、帰ろうとする。

それを、ローズマリエット嬢を紹介した貴族の男が止める。

「ローズマリエット!白哉様の心を掴めない場合、娼館いきだということを忘れたか!」

「仕方ありませんわ、叔父上様。白哉様の心は、あの赤い髪の青年のもの」

ローズマリエット嬢の叔父は、ローズマリエット嬢をぶとうとして、白哉に止められる。

「白哉様!」

「この令嬢の身は、私が預かる。娼館いきになどさせぬ」

「し、しかし、この女は下賤な下町の産んだ女」

「私の亡き妻の緋真も、兄がいう下賤な下町とやらで生まれた。だが、素晴らしい女性だった」

ローズマリエット嬢を恋次に預けて、白哉はローズマリエット嬢の叔父を追い出す。

「兄は、平民として生きていく気はあるか?」

「娼館に送られるくらいなら、平民を選びますわ」

「そうか。では、兄にできるだけ財を与えて、一軒家を与え、私が選んだよき夫となる者の妻として、静かに暮らすがよい」

「白哉様‥‥‥‥ありがとうごいます」

ローズマリエット嬢は、数日白哉の家に滞在した後、白哉の家の使用人で信頼のおける男性と婚姻させて、平民として生きていくことになった。



「あの、白哉さん」

「今は、何も言うな」

白哉は、恋次を抱きしめていた。

浮竹と京楽は、猫の姿でにゃあにゃあとその周囲をうろうろする。

「どうした、チュールでも食べたいのか?」

白哉が、恋次を放置して浮竹と京楽の頭を撫でる。

喉をくすぐられると、浮竹も京楽も喉をごろごろと鳴らした。

「チュールくれ」

にゃあにゃあ言ってたのは、白猫と黒猫の亜人だということを、ローズマリエット嬢から隠すためであったが、もういなくなってしまったのだが、まだ癖でにゃあにゃあ鳴く時がある。

「ボクもチュール欲しいな」

「待っていろ。今とってくる」

「あああ、白哉さーーーん」

恋次が、白哉の後を追いかけようとして、ふりはらわれる。

「恋次君、見合いの場、最後まで我慢して偉かったぞ」

「うん。恋次君、見直しちゃったよ」

浮竹と京楽に褒められて、恋次は照れ笑いをする。

「へへ、そっすか?」

「うん。えらい」

浮竹が、恋次に抱きしめられながら猫パンチをする。全然痛くない。

「白哉さん、絶対俺を選んでくれると信じてましたから」

しばらくして、チュールをもった白哉が戻ってきた。

「あ、俺もチュールほしくなってきた」

恋次も猫になって、浮竹と京楽と一緒に、白哉の手からチュールをもらう。

恋次は猫の食事は滅多にしないので、チュールのおいしさに驚いていた。

「おいしい」

「だろう?」

「おいしいよ。特に白哉君の手から直接もらうチュールは、別格だね」

「魔王の俺と幽鬼の京楽からもらうチュールもうまいけどな!」

はっくしょん。

その頃、魔王城では魔王の浮竹と幽鬼の京楽が同時にくしゃみをする。

『ん、風邪か?』

『ボクも風邪かも』

二人はその日、念のため風邪薬を飲んで寝るのであった。

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