オメガバース恋白読み切り短編10
椿茶屋。
そこに、朽木白哉という名の色子がいた。
年は二十を少しこしたあたり。
絹のような艶やかなやや長い黒髪と、黒曜石の瞳、白い肌をもつ、美貌の青年であった。
本来なら、陰間茶屋などにいないタイプだ。
気品と品格があり、彼が元上流貴族であることがうかがえた。
両親が事業に失敗し、貴族の位を剥奪されて莫大な借金だけが残った。
両親は、白哉と妹のルキアを残して自殺した。白哉が選んだ道は、ルキアを売られないために自分を売ることだった。
妹のルキアも美しく、花街に売られて花魁になる予定だった。
白哉は、それを防ぐために自分を売った。元上流貴族ともっている美貌もあいまって、花街でもどこの店も欲しがった。
理由があった。
白哉は、オメガだった。
オメガは普通、すぐにアルファの婚約者ができて、花街で売られない。
だが、白哉の両親は白哉がオメガであることを隠して育てた。上流貴族なのに、オメガが生まれてくるなど恥でしかないと。
妹のルキアはアルファだった。
アルファの花魁も、金になる。
白夜をオメガと知らない親戚の連中は、ルキアを売ろうとした。ルキアを守るために、白哉は自分がオメガであることを明らかにして、花街に売られるなら自分が行くと言った。
結果、椿茶屋の色子になった。
「ふ‥‥‥今日もまた、きたのか」
白哉は、赤い髪の青年を見る。
まだ成人したばかりで、白哉より年は3つほど下だったが、上流貴族で金回りのいい、白哉の上客だった。
「恋次」
「白哉さん‥‥」
「私をわざわざ買わずとも、美しい花魁がいるであろう」
「白哉さんほど美しい人はいません」
「また、そのような」
白哉は笑う。艶やかで、紅をぬっていないのに紅い唇が、印象的だった。
「今日もあんたを買う。そして、いつか身請けする」
「私の揚げ代は高いであろう。いかに上流貴族とはいえ、そうそう毎度買える値段ではないはずだ」
「いらない屋敷を一軒売った」
「私を買うためにか」
「そうです」
恋次は、真剣だった。
「あんたが好きです。俺の番になってください」
「今の私は色子だ。誰かと番になることはない」
「はい。だから、身請けします」
恋次は本気のようだった。阿散井恋次。白哉と違い、上流貴族でも4大貴族に最も近い、名のある貴族だった。
阿散井家の当主であり、金は自由に使えたが、それでも白哉の身請け金は高く、もっている屋敷などを売り飛ばして、資金を作るつもりであった。
恋次には、4大貴族の姫君の婚約者がいた。
白夜のことを知って、刃物を手に店に押し入ろうとしたことがあった。
恋次に婚約破棄され、その元婚約者は白哉のことを恨んでいた。
「私を身請けしたところで、婚約者がいたであろう」
「婚約破棄しました。あんたと一緒になりたいから」
「愚かな‥‥‥‥」
4大貴族を敵に回すことが、どんなに恐ろしいことなのか、恋次はまだ知らない。
もっとも、恋次の元婚約者は4大貴族とは名ばかりで没落寸前だった。
「あんたが、好き、です」
もう何百回目になるかも分からない言葉を受けながら、白哉は恋次に抱かれた。
「明日は仕事があるので、あさってまたきます」
「そんなに私を買っていると、いくら金があるとはいえ減っていくぞ」
「今、あんたを身請けする資金を作っています。もうちょっとだけ、待ってください」
「ふ、期待せずに待っておく」
「白哉さん」
「‥‥ん、恋次?」
夜を客と過ごし、昼に寝ていると名を呼ばれ、恋次かと思った。
「よくもあたしの恋次をたぶらかしたわね。あんたなんか、隣国に売ってやる!」
それは、恋次の元婚約者と金で雇われた荒くれ者たちだった。
「誰か!」
「無駄よ。みんな、薬で眠ってるわ。あんたは色子が嫌になって逃げだしたけど、他に食べていく方法がなくって、隣国でまた色子になるのよ」
「愚かな‥‥」
パンと、元婚約者は、白哉の頬を叩く。
汚したところで、色子だ。意味はあまりない。
「恋次に振られたことが、そんなに頭にきたのか」
「うるさい!お前さえいなければ、あたしは阿散井家の金で贅沢できたんだ!」
白哉は、荒くれ者たちに縛られて、馬車に押し込まれる。
「あはははは、あんたなんて隣国で死ぬがいいわ」
「恋次‥‥‥ルキア‥‥」
ただ、残していく恋次と妹のルキアのことが心配だった。
馬車が動きだす前に、花街の検査があった。足抜けをしようという者を探すためだった。
「ちっ、強行突破よ!」
「待て、そこの馬車!」
「椿茶屋に賊がはいったらしい!あの馬車が怪しい!止めろ止めろ!」
花街を抜けそうなところで、白哉は花街の男衆に助けられた。
「これは、椿茶屋の色子だな。おい、オメガの色子を攫おうとした罪は重いぞ!おまけに、この色子はもう身請けが決まっている!」
白哉は、目を見開く。
男衆に縄を解かれて自由になると、白哉は捕まった元婚約者の女を見た。
「兄は、そんなようだから恋次に婚約を破断にされるのだ」
「うるさいうるさい!お前になにが分かる!」
「分からぬ。だが、私よりは自由な身であっただろうに。こんなことをして、人生を台無しにするとは愚かとしか言えぬ」
「みんなあんたのせいよおおおお!淫乱な色子のくせに、あたしの恋次に手を出すから!」
「恋次は客だ。私が手を出したのではなく、あちらから私を買って、手を出してきたのだ」
「ああああああ!!!」
元婚約者の女は、狂ったように叫びながら、荒くれ者の仲間と一緒に連れていかれた。
「白哉さん!攫われそうになったって!怪我ありませんか!」
「ない。隣国に売る計算だったらしい。傷ものでは、値が落ちるからな」
「よかった‥‥無事で。もう、あんたを他の男に抱かせたくない。俺だけを見てほしい。あんたを、身請けします」
「本気か?」
「本気です。番にします」
恋次は、大金のかわりになる為替を店の主人に渡した。
「白哉、幸せにおなり」
[主殿‥‥‥」
恋次は、立派な馬車をもってくると、白哉を乗せて、後続の馬車に白哉の荷物を乗せて、花街を後にする。
「まさか、本当に身請けするとは‥‥」
「頑張って、資金ためました。財産の4分の1くらい吹き飛んだけど、どうってことないっす」
白哉は、恋次に連れられて、恋次の館にきていた。
「今日から、ここがあんたの家です」
「ふむ‥‥‥私をいつ抱くのだ?」
「う、え、いいなら今からでも!」
「番にするのであろう?この防止用の首輪は、もう不要だな」
白哉は、うなじを保護するための首輪に触れる。
「あ、鍵もらってきましたから。今、外しますね」
カランと音をたてて、首輪が外される。
「褥、用意してます。行きましょう」
「仕方ない‥‥‥‥」
白哉は、恋次の切ない思いにこたえることにした。
「あああああ!!」
貫かれ、揺すぶられて白哉は黒髪を乱す。
「俺だけのものだ‥‥‥」
「ひあう!」
「子種たくさんあげるから、俺の子産んでくださいね?」
「ひああああ!」
奥を抉られる。
「やあああ」
中いきを繰り返して、白哉は乱れた。
「アフターピル用意してないっすからね。孕んでくださいね?」
「あ、あ!」
恋次に貫けれるたびに、白哉が短く声をあげる。
色子として誰かに抱かれるのは慣れていたが、恋次は愛情でぶつかってくるので、白哉もいつもの数倍感じていた。
抱かれる前に飲まされた白湯に、媚薬が入っていたのだろう。
こんなに乱れるのは久しぶりだった。
「あ、早く」
「今、子種あげますからね」
「ひああああ!あああ!」
うなじを噛まれた。
「番になります」
もう一度交わりながら噛まれて、全身を電流が走りぬける。
「これで、正式にあんたは俺のものだ。白哉」
「あ‥‥‥」
胎の奥に広がっていく恋次の子種をたっぷりと受けとりながら、白哉は涙を零した。
番にはなったが、色子でなくなった。もう、客をとる必要はない。恋次だけに抱かれていればいい。
「ルキアを‥‥‥」
「承知してます。ルキアは阿散井家で引き取ります」
恋次が、ふと愛しいと思った。
自分のためにここまでしてくれるのだから。
「今、そなたに恋をした。愛している、恋次」
「ほんとっすか!」
「嘘などついて何になる」
「めっちゃ嬉しいです。番になっても、あんたの心を手に入れるのに時間かかると思っていたから」
「色子や遊女に恋はご法度だからな」
白哉は、美しい顔で言う。
「あんたはもう、色子じゃない。阿散井白哉だ」
「籍までいれるのか」
「あたりまえです。あんたは、正式な阿散井家当主阿散井恋次の妻だ」
「私は男なのだが」
「オメガなんで、性別とか関係ないっす」
「ふ‥‥‥そうか」
白哉は柔らかく笑った。
番になった恋次と共に、眠りにつく。
白哉は、ヒート期間がこないように椿茶屋にいた時は薬を飲まされていたが、恋次に身請けされて飲む必要もなくなり、ほどなくしてヒートがきた。
「あ、恋次。抱いてくれ」
「白哉さん‥‥」
「私を、そなたの色でそめあげろ」
恋次を誘う白哉は、艶やかで美しかった。色子の頃から変わらぬ美しさを、いや、恋次に愛されて恋次を愛して、より一層美しくなった。
「恋次、私を愛せ」
「もちろんです」
美しい専用にあつらえた白哉の着物を脱がしていく。
「あ‥‥‥‥」
胸にいくつものキスマークをつけられる。
「ん‥‥‥‥」
指でぬれている蕾を解され、ゆっくりと恋次がはいってくる。
「あ、もっと乱暴にしてもかまわぬのだぞ」
「いやです。あんたを大切にしたい」
恋次は、白哉が色子の時代から大切に大切に白哉を抱くことが多かった。
番になった時は、少しばかり羽目を外していたが。
「あ、奥にこい。恋次の子種が欲しい」
「ああもう、あんたあおりますね」
恋次は、白哉の快感を重視して奥に侵入する。
「ああああ!!!」
「きもちいいっすか?」
「や、聞くな」
「子種、たっぷりあげますからね。阿散井家の次期当主を、産んでくださいね」
「ひああああ!」
奥を抉られて、白哉は背を弓なりにしならせていってしまう。
「奥を抉られるの好きですよね?」
「やああああ」
「愛してます、白哉さん」
「あああ‥‥‥恋次‥‥‥」
白哉は、艶やかに微笑んだ。
「恋次の子を、産んでやろう。子種をもっとよこせ」
「ああもう、なんであんた俺をこんなにあおるの上手なんだ。大切にしたいのに」
「十分大切にしてもらっている。たまには乱れるのもいいであろう?」
「こんな風に、他の男にも抱かれてたんですか」
「色子の仕事をしていた時は、確かに乱れる時もあったが、心はなかった。今の私は、心も動いている。恋次、そなたを愛している」
白哉は、恋次に自分から口づける。
入れ墨がされた体に手を伸ばし、背に手を回す。
「はじめ、そなたの入れ墨を見た時は驚いたが、今はそれすら愛しくかんじる」
「たまにまた彫ってますよ」
「痛くはないのか?」
「少し痛いかも」
「ふふ、恋次でも痛みを感じるのだな」
「あんたが攫われたって聞いた時は、心が痛すぎて涙でそうになった」
恋次は、白哉を組み敷いて、白哉の最奥に子種を注ぎこむ。
「んあ‥‥‥‥」
淫らになる白哉を見れるのは、恋次だけだ。
「もっと?」
「あ、もっと‥‥‥ヒート期間なのだ。子種をもらうと、熱がおさまっていく」
「あんたが満足するまで抱きますよ」
「恋次、すまぬ」
白哉は、白皙の美貌をやや紅色に染めて、恋次を抱きしめる。
それにこたえるように、恋次は白哉の噛み痕のある番の証であるうなじにキスをする。
「幸せになりましょう」
「もう、十分幸せだ。ルキアまで保護してもらったし、私は色子ではなくなって体を売る必要もなくなった。今は、恋次のものだ」
「今度、式挙げませんか」
「身内だけでいいのなら」
「はい。あんたがそう望むなら、身内だけで挙げます」
恋次は、どこまでも白哉に甘い。
白夜が懐妊したと分かったのは、それから半月後のことであった。
残念ながら、一度目の子は流産してしまったが、その半年後にはまた懐妊して、無事跡継ぎとなる男児を産んだ。
ルキアにも、黒崎一護という伴侶ができた。
4大貴族の一人だ。
白哉は、色子であった時代を後悔などしていない。
恋次と出会えたのだから。
恋次のものになり、オメガとしてアルファの跡継ぎを産み、周囲からはいろいろ言われていたが、恋次が黙らせた。
白哉は、阿散井白哉として恋次と共に長い人生を歩んでいくのであった。
そこに、朽木白哉という名の色子がいた。
年は二十を少しこしたあたり。
絹のような艶やかなやや長い黒髪と、黒曜石の瞳、白い肌をもつ、美貌の青年であった。
本来なら、陰間茶屋などにいないタイプだ。
気品と品格があり、彼が元上流貴族であることがうかがえた。
両親が事業に失敗し、貴族の位を剥奪されて莫大な借金だけが残った。
両親は、白哉と妹のルキアを残して自殺した。白哉が選んだ道は、ルキアを売られないために自分を売ることだった。
妹のルキアも美しく、花街に売られて花魁になる予定だった。
白哉は、それを防ぐために自分を売った。元上流貴族ともっている美貌もあいまって、花街でもどこの店も欲しがった。
理由があった。
白哉は、オメガだった。
オメガは普通、すぐにアルファの婚約者ができて、花街で売られない。
だが、白哉の両親は白哉がオメガであることを隠して育てた。上流貴族なのに、オメガが生まれてくるなど恥でしかないと。
妹のルキアはアルファだった。
アルファの花魁も、金になる。
白夜をオメガと知らない親戚の連中は、ルキアを売ろうとした。ルキアを守るために、白哉は自分がオメガであることを明らかにして、花街に売られるなら自分が行くと言った。
結果、椿茶屋の色子になった。
「ふ‥‥‥今日もまた、きたのか」
白哉は、赤い髪の青年を見る。
まだ成人したばかりで、白哉より年は3つほど下だったが、上流貴族で金回りのいい、白哉の上客だった。
「恋次」
「白哉さん‥‥」
「私をわざわざ買わずとも、美しい花魁がいるであろう」
「白哉さんほど美しい人はいません」
「また、そのような」
白哉は笑う。艶やかで、紅をぬっていないのに紅い唇が、印象的だった。
「今日もあんたを買う。そして、いつか身請けする」
「私の揚げ代は高いであろう。いかに上流貴族とはいえ、そうそう毎度買える値段ではないはずだ」
「いらない屋敷を一軒売った」
「私を買うためにか」
「そうです」
恋次は、真剣だった。
「あんたが好きです。俺の番になってください」
「今の私は色子だ。誰かと番になることはない」
「はい。だから、身請けします」
恋次は本気のようだった。阿散井恋次。白哉と違い、上流貴族でも4大貴族に最も近い、名のある貴族だった。
阿散井家の当主であり、金は自由に使えたが、それでも白哉の身請け金は高く、もっている屋敷などを売り飛ばして、資金を作るつもりであった。
恋次には、4大貴族の姫君の婚約者がいた。
白夜のことを知って、刃物を手に店に押し入ろうとしたことがあった。
恋次に婚約破棄され、その元婚約者は白哉のことを恨んでいた。
「私を身請けしたところで、婚約者がいたであろう」
「婚約破棄しました。あんたと一緒になりたいから」
「愚かな‥‥‥‥」
4大貴族を敵に回すことが、どんなに恐ろしいことなのか、恋次はまだ知らない。
もっとも、恋次の元婚約者は4大貴族とは名ばかりで没落寸前だった。
「あんたが、好き、です」
もう何百回目になるかも分からない言葉を受けながら、白哉は恋次に抱かれた。
「明日は仕事があるので、あさってまたきます」
「そんなに私を買っていると、いくら金があるとはいえ減っていくぞ」
「今、あんたを身請けする資金を作っています。もうちょっとだけ、待ってください」
「ふ、期待せずに待っておく」
「白哉さん」
「‥‥ん、恋次?」
夜を客と過ごし、昼に寝ていると名を呼ばれ、恋次かと思った。
「よくもあたしの恋次をたぶらかしたわね。あんたなんか、隣国に売ってやる!」
それは、恋次の元婚約者と金で雇われた荒くれ者たちだった。
「誰か!」
「無駄よ。みんな、薬で眠ってるわ。あんたは色子が嫌になって逃げだしたけど、他に食べていく方法がなくって、隣国でまた色子になるのよ」
「愚かな‥‥」
パンと、元婚約者は、白哉の頬を叩く。
汚したところで、色子だ。意味はあまりない。
「恋次に振られたことが、そんなに頭にきたのか」
「うるさい!お前さえいなければ、あたしは阿散井家の金で贅沢できたんだ!」
白哉は、荒くれ者たちに縛られて、馬車に押し込まれる。
「あはははは、あんたなんて隣国で死ぬがいいわ」
「恋次‥‥‥ルキア‥‥」
ただ、残していく恋次と妹のルキアのことが心配だった。
馬車が動きだす前に、花街の検査があった。足抜けをしようという者を探すためだった。
「ちっ、強行突破よ!」
「待て、そこの馬車!」
「椿茶屋に賊がはいったらしい!あの馬車が怪しい!止めろ止めろ!」
花街を抜けそうなところで、白哉は花街の男衆に助けられた。
「これは、椿茶屋の色子だな。おい、オメガの色子を攫おうとした罪は重いぞ!おまけに、この色子はもう身請けが決まっている!」
白哉は、目を見開く。
男衆に縄を解かれて自由になると、白哉は捕まった元婚約者の女を見た。
「兄は、そんなようだから恋次に婚約を破断にされるのだ」
「うるさいうるさい!お前になにが分かる!」
「分からぬ。だが、私よりは自由な身であっただろうに。こんなことをして、人生を台無しにするとは愚かとしか言えぬ」
「みんなあんたのせいよおおおお!淫乱な色子のくせに、あたしの恋次に手を出すから!」
「恋次は客だ。私が手を出したのではなく、あちらから私を買って、手を出してきたのだ」
「ああああああ!!!」
元婚約者の女は、狂ったように叫びながら、荒くれ者の仲間と一緒に連れていかれた。
「白哉さん!攫われそうになったって!怪我ありませんか!」
「ない。隣国に売る計算だったらしい。傷ものでは、値が落ちるからな」
「よかった‥‥無事で。もう、あんたを他の男に抱かせたくない。俺だけを見てほしい。あんたを、身請けします」
「本気か?」
「本気です。番にします」
恋次は、大金のかわりになる為替を店の主人に渡した。
「白哉、幸せにおなり」
[主殿‥‥‥」
恋次は、立派な馬車をもってくると、白哉を乗せて、後続の馬車に白哉の荷物を乗せて、花街を後にする。
「まさか、本当に身請けするとは‥‥」
「頑張って、資金ためました。財産の4分の1くらい吹き飛んだけど、どうってことないっす」
白哉は、恋次に連れられて、恋次の館にきていた。
「今日から、ここがあんたの家です」
「ふむ‥‥‥私をいつ抱くのだ?」
「う、え、いいなら今からでも!」
「番にするのであろう?この防止用の首輪は、もう不要だな」
白哉は、うなじを保護するための首輪に触れる。
「あ、鍵もらってきましたから。今、外しますね」
カランと音をたてて、首輪が外される。
「褥、用意してます。行きましょう」
「仕方ない‥‥‥‥」
白哉は、恋次の切ない思いにこたえることにした。
「あああああ!!」
貫かれ、揺すぶられて白哉は黒髪を乱す。
「俺だけのものだ‥‥‥」
「ひあう!」
「子種たくさんあげるから、俺の子産んでくださいね?」
「ひああああ!」
奥を抉られる。
「やあああ」
中いきを繰り返して、白哉は乱れた。
「アフターピル用意してないっすからね。孕んでくださいね?」
「あ、あ!」
恋次に貫けれるたびに、白哉が短く声をあげる。
色子として誰かに抱かれるのは慣れていたが、恋次は愛情でぶつかってくるので、白哉もいつもの数倍感じていた。
抱かれる前に飲まされた白湯に、媚薬が入っていたのだろう。
こんなに乱れるのは久しぶりだった。
「あ、早く」
「今、子種あげますからね」
「ひああああ!あああ!」
うなじを噛まれた。
「番になります」
もう一度交わりながら噛まれて、全身を電流が走りぬける。
「これで、正式にあんたは俺のものだ。白哉」
「あ‥‥‥」
胎の奥に広がっていく恋次の子種をたっぷりと受けとりながら、白哉は涙を零した。
番にはなったが、色子でなくなった。もう、客をとる必要はない。恋次だけに抱かれていればいい。
「ルキアを‥‥‥」
「承知してます。ルキアは阿散井家で引き取ります」
恋次が、ふと愛しいと思った。
自分のためにここまでしてくれるのだから。
「今、そなたに恋をした。愛している、恋次」
「ほんとっすか!」
「嘘などついて何になる」
「めっちゃ嬉しいです。番になっても、あんたの心を手に入れるのに時間かかると思っていたから」
「色子や遊女に恋はご法度だからな」
白哉は、美しい顔で言う。
「あんたはもう、色子じゃない。阿散井白哉だ」
「籍までいれるのか」
「あたりまえです。あんたは、正式な阿散井家当主阿散井恋次の妻だ」
「私は男なのだが」
「オメガなんで、性別とか関係ないっす」
「ふ‥‥‥そうか」
白哉は柔らかく笑った。
番になった恋次と共に、眠りにつく。
白哉は、ヒート期間がこないように椿茶屋にいた時は薬を飲まされていたが、恋次に身請けされて飲む必要もなくなり、ほどなくしてヒートがきた。
「あ、恋次。抱いてくれ」
「白哉さん‥‥」
「私を、そなたの色でそめあげろ」
恋次を誘う白哉は、艶やかで美しかった。色子の頃から変わらぬ美しさを、いや、恋次に愛されて恋次を愛して、より一層美しくなった。
「恋次、私を愛せ」
「もちろんです」
美しい専用にあつらえた白哉の着物を脱がしていく。
「あ‥‥‥‥」
胸にいくつものキスマークをつけられる。
「ん‥‥‥‥」
指でぬれている蕾を解され、ゆっくりと恋次がはいってくる。
「あ、もっと乱暴にしてもかまわぬのだぞ」
「いやです。あんたを大切にしたい」
恋次は、白哉が色子の時代から大切に大切に白哉を抱くことが多かった。
番になった時は、少しばかり羽目を外していたが。
「あ、奥にこい。恋次の子種が欲しい」
「ああもう、あんたあおりますね」
恋次は、白哉の快感を重視して奥に侵入する。
「ああああ!!!」
「きもちいいっすか?」
「や、聞くな」
「子種、たっぷりあげますからね。阿散井家の次期当主を、産んでくださいね」
「ひああああ!」
奥を抉られて、白哉は背を弓なりにしならせていってしまう。
「奥を抉られるの好きですよね?」
「やああああ」
「愛してます、白哉さん」
「あああ‥‥‥恋次‥‥‥」
白哉は、艶やかに微笑んだ。
「恋次の子を、産んでやろう。子種をもっとよこせ」
「ああもう、なんであんた俺をこんなにあおるの上手なんだ。大切にしたいのに」
「十分大切にしてもらっている。たまには乱れるのもいいであろう?」
「こんな風に、他の男にも抱かれてたんですか」
「色子の仕事をしていた時は、確かに乱れる時もあったが、心はなかった。今の私は、心も動いている。恋次、そなたを愛している」
白哉は、恋次に自分から口づける。
入れ墨がされた体に手を伸ばし、背に手を回す。
「はじめ、そなたの入れ墨を見た時は驚いたが、今はそれすら愛しくかんじる」
「たまにまた彫ってますよ」
「痛くはないのか?」
「少し痛いかも」
「ふふ、恋次でも痛みを感じるのだな」
「あんたが攫われたって聞いた時は、心が痛すぎて涙でそうになった」
恋次は、白哉を組み敷いて、白哉の最奥に子種を注ぎこむ。
「んあ‥‥‥‥」
淫らになる白哉を見れるのは、恋次だけだ。
「もっと?」
「あ、もっと‥‥‥ヒート期間なのだ。子種をもらうと、熱がおさまっていく」
「あんたが満足するまで抱きますよ」
「恋次、すまぬ」
白哉は、白皙の美貌をやや紅色に染めて、恋次を抱きしめる。
それにこたえるように、恋次は白哉の噛み痕のある番の証であるうなじにキスをする。
「幸せになりましょう」
「もう、十分幸せだ。ルキアまで保護してもらったし、私は色子ではなくなって体を売る必要もなくなった。今は、恋次のものだ」
「今度、式挙げませんか」
「身内だけでいいのなら」
「はい。あんたがそう望むなら、身内だけで挙げます」
恋次は、どこまでも白哉に甘い。
白夜が懐妊したと分かったのは、それから半月後のことであった。
残念ながら、一度目の子は流産してしまったが、その半年後にはまた懐妊して、無事跡継ぎとなる男児を産んだ。
ルキアにも、黒崎一護という伴侶ができた。
4大貴族の一人だ。
白哉は、色子であった時代を後悔などしていない。
恋次と出会えたのだから。
恋次のものになり、オメガとしてアルファの跡継ぎを産み、周囲からはいろいろ言われていたが、恋次が黙らせた。
白哉は、阿散井白哉として恋次と共に長い人生を歩んでいくのであった。
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