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オメガバース恋白読み切り短編10

椿茶屋。

そこに、朽木白哉という名の色子がいた。

年は二十を少しこしたあたり。

絹のような艶やかなやや長い黒髪と、黒曜石の瞳、白い肌をもつ、美貌の青年であった。

本来なら、陰間茶屋などにいないタイプだ。

気品と品格があり、彼が元上流貴族であることがうかがえた。

両親が事業に失敗し、貴族の位を剥奪されて莫大な借金だけが残った。

両親は、白哉と妹のルキアを残して自殺した。白哉が選んだ道は、ルキアを売られないために自分を売ることだった。

妹のルキアも美しく、花街に売られて花魁になる予定だった。

白哉は、それを防ぐために自分を売った。元上流貴族ともっている美貌もあいまって、花街でもどこの店も欲しがった。

理由があった。

白哉は、オメガだった。

オメガは普通、すぐにアルファの婚約者ができて、花街で売られない。

だが、白哉の両親は白哉がオメガであることを隠して育てた。上流貴族なのに、オメガが生まれてくるなど恥でしかないと。

妹のルキアはアルファだった。

アルファの花魁も、金になる。

白夜をオメガと知らない親戚の連中は、ルキアを売ろうとした。ルキアを守るために、白哉は自分がオメガであることを明らかにして、花街に売られるなら自分が行くと言った。

結果、椿茶屋の色子になった。

「ふ‥‥‥今日もまた、きたのか」

白哉は、赤い髪の青年を見る。

まだ成人したばかりで、白哉より年は3つほど下だったが、上流貴族で金回りのいい、白哉の上客だった。

「恋次」

「白哉さん‥‥」

「私をわざわざ買わずとも、美しい花魁がいるであろう」

「白哉さんほど美しい人はいません」

「また、そのような」

白哉は笑う。艶やかで、紅をぬっていないのに紅い唇が、印象的だった。

「今日もあんたを買う。そして、いつか身請けする」

「私の揚げ代は高いであろう。いかに上流貴族とはいえ、そうそう毎度買える値段ではないはずだ」

「いらない屋敷を一軒売った」

「私を買うためにか」

「そうです」

恋次は、真剣だった。

「あんたが好きです。俺の番になってください」

「今の私は色子だ。誰かと番になることはない」

「はい。だから、身請けします」

恋次は本気のようだった。阿散井恋次。白哉と違い、上流貴族でも4大貴族に最も近い、名のある貴族だった。

阿散井家の当主であり、金は自由に使えたが、それでも白哉の身請け金は高く、もっている屋敷などを売り飛ばして、資金を作るつもりであった。

恋次には、4大貴族の姫君の婚約者がいた。

白夜のことを知って、刃物を手に店に押し入ろうとしたことがあった。

恋次に婚約破棄され、その元婚約者は白哉のことを恨んでいた。

「私を身請けしたところで、婚約者がいたであろう」

「婚約破棄しました。あんたと一緒になりたいから」

「愚かな‥‥‥‥」

4大貴族を敵に回すことが、どんなに恐ろしいことなのか、恋次はまだ知らない。

もっとも、恋次の元婚約者は4大貴族とは名ばかりで没落寸前だった。

「あんたが、好き、です」

もう何百回目になるかも分からない言葉を受けながら、白哉は恋次に抱かれた。


「明日は仕事があるので、あさってまたきます」

「そんなに私を買っていると、いくら金があるとはいえ減っていくぞ」

「今、あんたを身請けする資金を作っています。もうちょっとだけ、待ってください」

「ふ、期待せずに待っておく」



「白哉さん」

「‥‥ん、恋次?」

夜を客と過ごし、昼に寝ていると名を呼ばれ、恋次かと思った。

「よくもあたしの恋次をたぶらかしたわね。あんたなんか、隣国に売ってやる!」

それは、恋次の元婚約者と金で雇われた荒くれ者たちだった。

「誰か!」

「無駄よ。みんな、薬で眠ってるわ。あんたは色子が嫌になって逃げだしたけど、他に食べていく方法がなくって、隣国でまた色子になるのよ」

「愚かな‥‥」

パンと、元婚約者は、白哉の頬を叩く。

汚したところで、色子だ。意味はあまりない。

「恋次に振られたことが、そんなに頭にきたのか」

「うるさい!お前さえいなければ、あたしは阿散井家の金で贅沢できたんだ!」

白哉は、荒くれ者たちに縛られて、馬車に押し込まれる。

「あはははは、あんたなんて隣国で死ぬがいいわ」

「恋次‥‥‥ルキア‥‥」

ただ、残していく恋次と妹のルキアのことが心配だった。

馬車が動きだす前に、花街の検査があった。足抜けをしようという者を探すためだった。

「ちっ、強行突破よ!」

「待て、そこの馬車!」

「椿茶屋に賊がはいったらしい!あの馬車が怪しい!止めろ止めろ!」

花街を抜けそうなところで、白哉は花街の男衆に助けられた。

「これは、椿茶屋の色子だな。おい、オメガの色子を攫おうとした罪は重いぞ!おまけに、この色子はもう身請けが決まっている!」

白哉は、目を見開く。

男衆に縄を解かれて自由になると、白哉は捕まった元婚約者の女を見た。

「兄は、そんなようだから恋次に婚約を破断にされるのだ」

「うるさいうるさい!お前になにが分かる!」

「分からぬ。だが、私よりは自由な身であっただろうに。こんなことをして、人生を台無しにするとは愚かとしか言えぬ」

「みんなあんたのせいよおおおお!淫乱な色子のくせに、あたしの恋次に手を出すから!」

「恋次は客だ。私が手を出したのではなく、あちらから私を買って、手を出してきたのだ」

「ああああああ!!!」

元婚約者の女は、狂ったように叫びながら、荒くれ者の仲間と一緒に連れていかれた。




「白哉さん!攫われそうになったって!怪我ありませんか!」

「ない。隣国に売る計算だったらしい。傷ものでは、値が落ちるからな」

「よかった‥‥無事で。もう、あんたを他の男に抱かせたくない。俺だけを見てほしい。あんたを、身請けします」

「本気か?」

「本気です。番にします」

恋次は、大金のかわりになる為替を店の主人に渡した。

「白哉、幸せにおなり」

[主殿‥‥‥」

恋次は、立派な馬車をもってくると、白哉を乗せて、後続の馬車に白哉の荷物を乗せて、花街を後にする。

「まさか、本当に身請けするとは‥‥」

「頑張って、資金ためました。財産の4分の1くらい吹き飛んだけど、どうってことないっす」

白哉は、恋次に連れられて、恋次の館にきていた。

「今日から、ここがあんたの家です」

「ふむ‥‥‥私をいつ抱くのだ?」

「う、え、いいなら今からでも!」

「番にするのであろう?この防止用の首輪は、もう不要だな」

白哉は、うなじを保護するための首輪に触れる。

「あ、鍵もらってきましたから。今、外しますね」

カランと音をたてて、首輪が外される。

「褥、用意してます。行きましょう」

「仕方ない‥‥‥‥」

白哉は、恋次の切ない思いにこたえることにした。



「あああああ!!」

貫かれ、揺すぶられて白哉は黒髪を乱す。

「俺だけのものだ‥‥‥」

「ひあう!」

「子種たくさんあげるから、俺の子産んでくださいね?」

「ひああああ!」

奥を抉られる。

「やあああ」

中いきを繰り返して、白哉は乱れた。

「アフターピル用意してないっすからね。孕んでくださいね?」

「あ、あ!」

恋次に貫けれるたびに、白哉が短く声をあげる。

色子として誰かに抱かれるのは慣れていたが、恋次は愛情でぶつかってくるので、白哉もいつもの数倍感じていた。

抱かれる前に飲まされた白湯に、媚薬が入っていたのだろう。

こんなに乱れるのは久しぶりだった。

「あ、早く」

「今、子種あげますからね」

「ひああああ!あああ!」

うなじを噛まれた。

「番になります」

もう一度交わりながら噛まれて、全身を電流が走りぬける。

「これで、正式にあんたは俺のものだ。白哉」

「あ‥‥‥」

胎の奥に広がっていく恋次の子種をたっぷりと受けとりながら、白哉は涙を零した。

番にはなったが、色子でなくなった。もう、客をとる必要はない。恋次だけに抱かれていればいい。

「ルキアを‥‥‥」

「承知してます。ルキアは阿散井家で引き取ります」

恋次が、ふと愛しいと思った。

自分のためにここまでしてくれるのだから。

「今、そなたに恋をした。愛している、恋次」

「ほんとっすか!」

「嘘などついて何になる」

「めっちゃ嬉しいです。番になっても、あんたの心を手に入れるのに時間かかると思っていたから」

「色子や遊女に恋はご法度だからな」

白哉は、美しい顔で言う。

「あんたはもう、色子じゃない。阿散井白哉だ」

「籍までいれるのか」

「あたりまえです。あんたは、正式な阿散井家当主阿散井恋次の妻だ」

「私は男なのだが」

「オメガなんで、性別とか関係ないっす」

「ふ‥‥‥そうか」

白哉は柔らかく笑った。

番になった恋次と共に、眠りにつく。



白哉は、ヒート期間がこないように椿茶屋にいた時は薬を飲まされていたが、恋次に身請けされて飲む必要もなくなり、ほどなくしてヒートがきた。

「あ、恋次。抱いてくれ」

「白哉さん‥‥」

「私を、そなたの色でそめあげろ」

恋次を誘う白哉は、艶やかで美しかった。色子の頃から変わらぬ美しさを、いや、恋次に愛されて恋次を愛して、より一層美しくなった。

「恋次、私を愛せ」

「もちろんです」

美しい専用にあつらえた白哉の着物を脱がしていく。

「あ‥‥‥‥」

胸にいくつものキスマークをつけられる。

「ん‥‥‥‥」

指でぬれている蕾を解され、ゆっくりと恋次がはいってくる。

「あ、もっと乱暴にしてもかまわぬのだぞ」

「いやです。あんたを大切にしたい」

恋次は、白哉が色子の時代から大切に大切に白哉を抱くことが多かった。

番になった時は、少しばかり羽目を外していたが。

「あ、奥にこい。恋次の子種が欲しい」

「ああもう、あんたあおりますね」

恋次は、白哉の快感を重視して奥に侵入する。

「ああああ!!!」

「きもちいいっすか?」

「や、聞くな」

「子種、たっぷりあげますからね。阿散井家の次期当主を、産んでくださいね」

「ひああああ!」

奥を抉られて、白哉は背を弓なりにしならせていってしまう。

「奥を抉られるの好きですよね?」

「やああああ」

「愛してます、白哉さん」

「あああ‥‥‥恋次‥‥‥」

白哉は、艶やかに微笑んだ。

「恋次の子を、産んでやろう。子種をもっとよこせ」

「ああもう、なんであんた俺をこんなにあおるの上手なんだ。大切にしたいのに」

「十分大切にしてもらっている。たまには乱れるのもいいであろう?」

「こんな風に、他の男にも抱かれてたんですか」

「色子の仕事をしていた時は、確かに乱れる時もあったが、心はなかった。今の私は、心も動いている。恋次、そなたを愛している」

白哉は、恋次に自分から口づける。

入れ墨がされた体に手を伸ばし、背に手を回す。

「はじめ、そなたの入れ墨を見た時は驚いたが、今はそれすら愛しくかんじる」

「たまにまた彫ってますよ」

「痛くはないのか?」

「少し痛いかも」

「ふふ、恋次でも痛みを感じるのだな」

「あんたが攫われたって聞いた時は、心が痛すぎて涙でそうになった」

恋次は、白哉を組み敷いて、白哉の最奥に子種を注ぎこむ。

「んあ‥‥‥‥」

淫らになる白哉を見れるのは、恋次だけだ。

「もっと?」

「あ、もっと‥‥‥ヒート期間なのだ。子種をもらうと、熱がおさまっていく」

「あんたが満足するまで抱きますよ」

「恋次、すまぬ」

白哉は、白皙の美貌をやや紅色に染めて、恋次を抱きしめる。

それにこたえるように、恋次は白哉の噛み痕のある番の証であるうなじにキスをする。

「幸せになりましょう」

「もう、十分幸せだ。ルキアまで保護してもらったし、私は色子ではなくなって体を売る必要もなくなった。今は、恋次のものだ」

「今度、式挙げませんか」

「身内だけでいいのなら」

「はい。あんたがそう望むなら、身内だけで挙げます」

恋次は、どこまでも白哉に甘い。



白夜が懐妊したと分かったのは、それから半月後のことであった。

残念ながら、一度目の子は流産してしまったが、その半年後にはまた懐妊して、無事跡継ぎとなる男児を産んだ。

ルキアにも、黒崎一護という伴侶ができた。

4大貴族の一人だ。

白哉は、色子であった時代を後悔などしていない。

恋次と出会えたのだから。

恋次のものになり、オメガとしてアルファの跡継ぎを産み、周囲からはいろいろ言われていたが、恋次が黙らせた。

白哉は、阿散井白哉として恋次と共に長い人生を歩んでいくのであった。







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