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冬(1期)

寒いと思ったら、ちらちらと雪が降ってきた。
傘はもってきていない。そもそも、大嫌いな地上に降りるのだって、ロックオンと一緒でなければ拒否しただろう。

今は、刹那の家を借りている。
アイルランドのロックオンの生家には何度か行ったことがあるが、冬の季節は雪が本当によく降って、寒すぎて凍えそうな気持ちになる。
暑いのは嫌いだが、寒いのも嫌いだった。

トレミーの、一定に保たれた温度に慣れすぎてしまっているのだろう。

「待たせて悪かったな」

ロックオンが、急ぎ足でこちらに向かってくる。
ティエリアは、つんとした態度で反応した。

「別に、待ってなどいない」

待ち合わせの場所を、経済特区東京のある公園でしたのだが、寒くてティエリアは少し震えていた。いつものカーデイガン姿では薄着だった。
ロックオンはというと、装いも冬のものに完璧に着替えていた。

「ほら、寒いだろ。これ羽織ってろ」

ロックオンは、自分が着ていたコートを脱ぐと、ティエリアの肩にかけた。それはロックオンの体温で暖まっていて、肌にふんわりと馴染んでくる感触がした。

「こんなことをすれば、あなたが寒いのでは?」

「いーや、気にすんなって」

といいつつ、ロックオンの服装は、コートをとるとなんと半そでだった。見ていてこちらが鳥肌が立ちそうになる。
ティエリアは、肩にかけられたコートをロックオンに返した。

「入りません。あなたのほうが、はるかに寒そうな格好だ。

ちらつく雪は、ふわふわと宙を漂いながら天から落ちてくる。まるで神様が流した涙が凍って、それを天使たちが地上に落としていくみたいだと思った。
神様なんて信じていないけれど。

「早く帰りましょう。用事はすんだのでしょう?」
「あ、ああ。タクシーで帰ろうか」

寒いから、と、ロックオンは付け足した。

「これ、あげます」

ティエリアが、荷物から取り出したのは一対の手袋だった。ティエリアがロックオンがいない間に、店で購入した代物だった。

「奇遇だな。俺もほら」

かわいい熊さん模様の、一対の手袋が入った包みを渡される。
二人は、額をこすり合わせて、小さく笑った。

「することは、二人同じですね」
もう冬だから。

宇宙に戻れば関係のない話だけれど、地上にいる間は寒さに悩まされるだろう。早く暖房のきいたいつもの刹那の家に戻りたい。
二人はそう考えるのだった。

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