お盆の日には幽霊浮竹が帰ってくる
お盆の日。
先祖の霊が、戻ってくるという。
親友の霊もいいから、戻ってきてくれないかと、牛と馬にみせたナスとキュウリに割り箸で足をつくった置物を置いた。
「戻ってくるとはいいなと思ったけど、ほんとに戻ってこられたら、いろいろと問題があったね・・・・」
後ろにとり憑いた浮竹の霊を、どうしようと思う。
「浮竹?」
「やあ、元気か?」
「僕は元気だけど・・・君は霊子になってしまったんじゃ?」
「ああそうだぞ。お盆だから、特別に形をなして現れたんだ」
「でも、君ともう一度話せて嬉しいよ」
「あの世っていうか、隊長が落ちる場所からお前のことをみていた。総隊長として、がんばってるな」
「ああ、うん。もっと褒めて」
瞳から、大粒の涙が滴った。
「お前を泣かせるために、戻ってきたんじゃないんだぞ」
「でもね・・・・死んだ君にまた、たとえ幽霊でも会えるなんて・・・・・」
浮竹は、透けた手でよしよしと京楽の頭を撫でた。京楽の背後に憑いていたが、移動したいと強く念じると、足のない透けた体が移動した。
「俺は、今でもこんなにもお前を愛してる。お前も、俺を愛してくれている。俺も、死んだのにもう一度お前と話せて嬉しい」
落ち着きを取り戻した京楽の隣に、幽霊浮竹はずっといた。
「お盆の間だけだから。いろいろ、ゆっくり話そう」
「そうだね」
お盆は、死神の仕事も休業になる。
「何はともあれ、朝餉でもいただくか」
「あ、食べる前に俺に供えてくれ」
「うん、そうだね」
「ありがとう」
「その、幽霊とかって味とかわかるの?」
「分からないけど、供えられるとなんとなく満腹感を抱く。悪霊にならないためにも、定期的に供養とか、お供えとか、いると思う」
「そうなんだ。いつも薔薇の花を供えて、お酒を墓石に注いでいたけど、どうだった?」
「ああ、よかったぞ。幽霊なのに酔ってた」
「幽霊って、酔うんだ・・・・」
「何せ、隊長の落ちる場所は色のない世界。じご・・・・と、なんでもない」
「浮竹?」
「甘味屋へ行きたい」
行ってもいいが、幽霊の浮竹は目立つだろう。そう思ったが。
「ああ、俺はお前以外に見えないから、大丈夫」
「そうなの」
京楽は、いつもよりテンションが高めで、七緒に熱でも出したんじゃんいかと言われたほどだった。
壬生の甘味屋へいく。
白玉餡蜜一人前と、おはぎを3個頼んだ。
「僕だと、これくらいしか食べれないけど」
まずが浮竹にお供えした。
「すまん、京楽!」
浮竹は、すぽっと京楽の体の中に入った。
「ええ!?」
京楽の意識があるのに、体が勝手に動く。
もぐもぐと、美味しそうに食べる。浮竹が。体を共有することで、味もわかった。
浮竹は、満足して京楽の体から出て行った。
「そうか。他人にはとり憑けるんだ・・・・・」
「ちょ、僕以外にはとり憑かないでよ」
「ああ、それは大丈夫。お前以外にとり憑いても、お前が困るだけだろう?」
「うん」
ずっと、虚空と話しをしていたので周りの客から奇異の目で見られていて、それに気づいた京楽が、勘定を払って外に出た。
「僕だけに見えるってほんとなんだね」
「嘘をついてどうする」
「何はともあれ、お盆の間は話ができる、そう思っていいんだね?」
「ああ」
何気ない幸福なお盆の日は、あっという間に過ぎて行った。
「もう、盆も終わりだな。そろそろ戻らないと」
「戻らなかったら、どうなるの?」
「虚に落ちる。駆逐されたあとは霊子の渦に還って、新しい命となる」
「そうか。このまま傍にいてほしいけど、虚になられるわけにもいかないしね」
「心配するな。また、来年の盆も帰ってくるから」
唇を重ねると、少しだけ触れた感覚があった。
「お前の霊圧をずっと浴び続けていたせいか、少しだけ実体化できるようだ」
「じゃあ、実体化してほしいな」
「いいぞ」
目の前に、生前となんらからわぬ浮竹がいた。
京楽は、浮竹に抱き着いた。
「愛してるよ、十四郎。君がいないこの世界は寂しい」
「俺も愛してる、春水。でも、俺がいなくてもやっていけたじゃないか。また来年もくるから、それまで頑張れるか?」
「うん・・・・・僕、頑張るよ」
触れるだけの唇を重ねた。
すーっと、浮竹の体が溶けていく。
「待って!」
「ごめん、時間切れだ。戻る。愛してるぞ、京楽」
浮竹は、笑顔で消え行った。
「ばいばい、浮竹・・・・また、来年」
一度失った恋人を、また失ったかのようなショックだったが、また来年も会いに来てくれるという。
それまで、またがんばろう。そう思う京楽であった。
先祖の霊が、戻ってくるという。
親友の霊もいいから、戻ってきてくれないかと、牛と馬にみせたナスとキュウリに割り箸で足をつくった置物を置いた。
「戻ってくるとはいいなと思ったけど、ほんとに戻ってこられたら、いろいろと問題があったね・・・・」
後ろにとり憑いた浮竹の霊を、どうしようと思う。
「浮竹?」
「やあ、元気か?」
「僕は元気だけど・・・君は霊子になってしまったんじゃ?」
「ああそうだぞ。お盆だから、特別に形をなして現れたんだ」
「でも、君ともう一度話せて嬉しいよ」
「あの世っていうか、隊長が落ちる場所からお前のことをみていた。総隊長として、がんばってるな」
「ああ、うん。もっと褒めて」
瞳から、大粒の涙が滴った。
「お前を泣かせるために、戻ってきたんじゃないんだぞ」
「でもね・・・・死んだ君にまた、たとえ幽霊でも会えるなんて・・・・・」
浮竹は、透けた手でよしよしと京楽の頭を撫でた。京楽の背後に憑いていたが、移動したいと強く念じると、足のない透けた体が移動した。
「俺は、今でもこんなにもお前を愛してる。お前も、俺を愛してくれている。俺も、死んだのにもう一度お前と話せて嬉しい」
落ち着きを取り戻した京楽の隣に、幽霊浮竹はずっといた。
「お盆の間だけだから。いろいろ、ゆっくり話そう」
「そうだね」
お盆は、死神の仕事も休業になる。
「何はともあれ、朝餉でもいただくか」
「あ、食べる前に俺に供えてくれ」
「うん、そうだね」
「ありがとう」
「その、幽霊とかって味とかわかるの?」
「分からないけど、供えられるとなんとなく満腹感を抱く。悪霊にならないためにも、定期的に供養とか、お供えとか、いると思う」
「そうなんだ。いつも薔薇の花を供えて、お酒を墓石に注いでいたけど、どうだった?」
「ああ、よかったぞ。幽霊なのに酔ってた」
「幽霊って、酔うんだ・・・・」
「何せ、隊長の落ちる場所は色のない世界。じご・・・・と、なんでもない」
「浮竹?」
「甘味屋へ行きたい」
行ってもいいが、幽霊の浮竹は目立つだろう。そう思ったが。
「ああ、俺はお前以外に見えないから、大丈夫」
「そうなの」
京楽は、いつもよりテンションが高めで、七緒に熱でも出したんじゃんいかと言われたほどだった。
壬生の甘味屋へいく。
白玉餡蜜一人前と、おはぎを3個頼んだ。
「僕だと、これくらいしか食べれないけど」
まずが浮竹にお供えした。
「すまん、京楽!」
浮竹は、すぽっと京楽の体の中に入った。
「ええ!?」
京楽の意識があるのに、体が勝手に動く。
もぐもぐと、美味しそうに食べる。浮竹が。体を共有することで、味もわかった。
浮竹は、満足して京楽の体から出て行った。
「そうか。他人にはとり憑けるんだ・・・・・」
「ちょ、僕以外にはとり憑かないでよ」
「ああ、それは大丈夫。お前以外にとり憑いても、お前が困るだけだろう?」
「うん」
ずっと、虚空と話しをしていたので周りの客から奇異の目で見られていて、それに気づいた京楽が、勘定を払って外に出た。
「僕だけに見えるってほんとなんだね」
「嘘をついてどうする」
「何はともあれ、お盆の間は話ができる、そう思っていいんだね?」
「ああ」
何気ない幸福なお盆の日は、あっという間に過ぎて行った。
「もう、盆も終わりだな。そろそろ戻らないと」
「戻らなかったら、どうなるの?」
「虚に落ちる。駆逐されたあとは霊子の渦に還って、新しい命となる」
「そうか。このまま傍にいてほしいけど、虚になられるわけにもいかないしね」
「心配するな。また、来年の盆も帰ってくるから」
唇を重ねると、少しだけ触れた感覚があった。
「お前の霊圧をずっと浴び続けていたせいか、少しだけ実体化できるようだ」
「じゃあ、実体化してほしいな」
「いいぞ」
目の前に、生前となんらからわぬ浮竹がいた。
京楽は、浮竹に抱き着いた。
「愛してるよ、十四郎。君がいないこの世界は寂しい」
「俺も愛してる、春水。でも、俺がいなくてもやっていけたじゃないか。また来年もくるから、それまで頑張れるか?」
「うん・・・・・僕、頑張るよ」
触れるだけの唇を重ねた。
すーっと、浮竹の体が溶けていく。
「待って!」
「ごめん、時間切れだ。戻る。愛してるぞ、京楽」
浮竹は、笑顔で消え行った。
「ばいばい、浮竹・・・・また、来年」
一度失った恋人を、また失ったかのようなショックだったが、また来年も会いに来てくれるという。
それまで、またがんばろう。そう思う京楽であった。
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