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小説掲載プログ
03 2024/04 29 30 05

エンシェントエルフとダークエルフ7

Aランクに昇格し、2週間ほどが過ぎた。

今回の依頼は、商人の旅の警護だった。

盗賊や魔獣がよく出没する森の街道を抜けるので、浮竹と京楽の他にも、Bランクの冒険者が4人護衛についていた。

野営の見張りは、基本6人で交代制で行われた。

「浮竹、先寝ていいよ。夜明けくらいに起こすから」

「すまん、先に眠る。じゃあ、夜明け前に起きる」

目覚まし時計を設置して、浮竹は先に眠りについた。

京楽は、火を絶やさないように牧を入れながら、周辺を見張る。

「GUGYAGYA!」

「敵襲だーーー!起きろおおおお!!」

京楽が声をあげた。

浮竹は起きてすぐに剣を抜く。

護衛するべき商人は、テントの中だ。

その周囲を、4人のBランク冒険者と守るように配置についた。

「敵はグリフォン!3匹いたが、巣があるのかもしれない。とにかく、最低二人はテントの周囲で守りに回ってほしい!」

京楽の適格な指示に、Bランク冒険者も従う。

「GYAGYAGYA!」

「GURURURU!」

「GUGYAGYA!」

グリフォンは普通昼に活動するのだが、夜なのに襲ってきた。

鷲の顔をしているため、夜目が効きにくいと思われがちだが、魔物なのでそうでもないようだった。

「グラビティ・ゼロ!」

京楽が飛び回るグリフォンに重力の魔法をかけて、押しつぶしにかかる。

グリフォンは地面に落ちた。

すぐに立ち上がり、羽ばたこうとするところで、浮竹が氷の魔法を使う。

「アイスフロア!」

地面と足が凍り付いて、グリフォンたちはBランク冒険者に威嚇しつつも、トドメをさされていった。

「わあああああ!」

「うおおおお!」

「更に敵襲!盗賊だ!数は20以上!」

Bランク冒険者の弓使いが、盗賊の剣でやられて大地に倒れる。

「テントを死守しろ!馬もだ!」

馬車と馬を守る配置について、襲い掛かってくる盗賊たちの首を、京楽は魔法で、浮竹は剣で刎ねていた。

他のBランク冒険者は対人経験がないのか、斬り捨てるだけで、トドメをさせないでいた。

「情などかけるな!」

浮竹が、片手を切られてもなお襲い掛かってくる盗賊の首を刎ねる。

「フレイムロンド!」

浮竹が放った魔法は、まだ動ける盗賊たちを火で包みこみ。盗賊たちは地面に転がって火を消そうともがきだした。

「ダイヤモンドダスト!!」

ある程度火傷した盗賊を助けるように、京楽が氷の魔法を使うが、あくまでも捕獲するためだった。

「グリフォンの奇襲の後にすぐに盗賊だなんて、普通ありえない。グリフォンを飼いならしていたな?」

浮竹が血にまみれたミスリルの剣で、盗賊の頭らしき人物の首に剣を突きつける。

「ひいい、命だけは、助けてくれ!そうだ、グリフォンを飼いならしてここら一帯を縄張りにしていた!」

京楽は、生き残った盗賊を集めると、自力で歩ける程度まで回復魔法をかけた。

しっかり手を縄でしばって、順番に並ぶように繋いだ。

「しっかりしろ!」

「うううう・・・・・・」

Bランクの最初にやられた弓手は、傷が浅いのに苦しんでいた。

「毒だな。どいてくれ」

浮竹は傷口を更に傷つけると、毒の入った血を吸い取り、ぺっと地面に吐いていく。

「京楽、後は任せれるか」

「うん。キュアポイズン。セイントヒール」

毒の血をある程度抜いたことで、毒消しの魔法はちゃんと効いて、癒しの魔法で傷口が塞がってく。

「ああ、大分楽になった。ありがとう、京楽さん」

「癒し手があるとやはり違うな。俺たちも、この護衛の任務が終わったら、聖職者か癒しの魔法を使える魔法使いを雇おう」

Bランクの冒険者は、うんうんと頷いた。

その日は結局、殺さなかった盗賊たちを縄に繋ぎ、他の盗賊の夜襲に備えていたので、護衛の商人を除いた冒険者たちはあまり眠れなかった。

朝になり、出立となった。

馬車の後ろに捕まえた盗賊たちの縄をつけて、強制的に歩かせる。

幸いにも町が見えてきたので、盗賊たちはその町で捕らえられた。

「死刑か、一番罪が軽くても奴隷落ちは確実だね」

「そうだな」

盗賊たちの末路を、浮竹も京楽もなんともいえない感情で見守った。

人を殺したのは始めてではない。

邪教徒たちの巣をたたき、その際に狂ったように遅いかかってくる邪教徒たちを皆殺しにしたことがあった。

人質の5人を無事解放したが、返り血に真っ赤になった二人は、人質に怯えられた。

「人殺し!!」

何度かそう叫ばれたが、人質たちも次第に精神状態が安定して、最後は謝ってきた。


「ねぇ、浮竹」

「うん?」

「僕が人殺しでも、君は僕を愛してくれるかい?」

「愚問だな。愛するに決まっている。それに京楽が人殺しなら、俺も人殺しだ。盗賊のうち5人は俺が殺した」

「僕も4人殺したよ。いい気分ではなかったけどね」

京楽の言葉に、浮竹は頷いて、1日だけ町に滞在が決まったので、公共浴場に入り、血と人の脂まみれになった髪と体を洗い、衣服を洗濯した。

洗濯は安くて銅貨1枚だったが、風呂のほうはマッサージなどもついていたので、銀貨2枚だった。せっかくなのでマッサージも受けて、血流がよくなったところでサウナにも入り、その後は水風呂に浸かった。

始めて使う公共浴場の男湯は、やはり浮竹は視線を集めてしまう。エルフというだけでも視線を集めるのに、姿形が可憐に整っているせいで、みんな一度は見てしまう。

それを警戒するように京楽が睨み返すと、視線を送っていた者たちはさっと視線を逸らす。

浮竹曰く、人を殺しそうな視線で見ている、だそうだった。

「ああ、さっぱりした。やっぱり一度風呂を知ってしまうと、石鹸やらシャンプーやらあるし、魔法でも汚れはとれなくもないが、風呂が一番だな」

京楽は、リフレッシュという、体を清潔に保てる魔法を使えた。

だが、消費魔力が多いので、普段冒険稼業をしている時は、1週間に2回くらいしか使わない。

帝都にマイホームもち住み始めて、その日帰りの時は毎日風呂に入ったが、長時間かかる依頼の時はたまにこうやって町に寄った時に公共浴場に入り、それが無理なら水浴びか、最低でも体をふいたりして清潔を保った。

他の冒険者も似たようなものだ。

長旅になるときは、最低でも体をふいて、時折水浴びをして清潔を保った。女性ならなおさら清潔に気を遣う。

浮竹と京楽も、女性なみに気を遣っていた。

依頼者と面会するとき、身なりが小汚い恰好では、いくらAランク冒険者といえども引かれてしまう。

今回の商人の護衛は、次の町までだった。

盗賊の討伐報酬金が出て、それはBランクの冒険者と均等に分けた。

「さぁ、次の町までだよ。がんばっていこう」

「そうだな。あと3日もあれば次の町につく」

こうして、二人は護衛任務を果たして、馬車で帰路についた。

商人の護衛中は、アイテムポケットから調理して作り置いておいた食事を食べたのだが、普通は干し肉に硬い黒パンなので、依頼主の商人に頼まれて、同じ食事をふるまった。

さすがに一緒にいたBランクの冒険者の分まではなかったが。

「さて、冒険者ギルドで報酬金を受け取って、風呂にでも入ろうよ」

「そうだな」

冒険には、時には盗賊や野盗、邪教徒などの人間を殺すこともある。

それを始めて経験したのは、Bランクになってからだった。

Bランクになり、初めて人を殺めた日は眠れなかったが、今では何の躊躇いもなく人を殺せる。

そういう職業についてしまったのだから、仕方ない。

「明日は休日にしよう。商人の護衛の依頼で、合計金貨70枚手に入ったし、少しくらい休憩してもいいだろう。ああ、魔法協会にも行って、ランクがあがったことを報告しなければな」

家に帰って風呂に二人で入っていると、スライムのプルンが訪ねてきて、同じ風呂に入ってきた。

「のぼせなないか?」

「プルルン!」

プルンは泡だらけになり、体を洗っていた。

浮竹と京楽が使っている石鹸は高価なもので、いい匂いがして泡立ちもよかった。

「プルルル!」

どぼんと湯船の中入ってきたプルンは、京楽と浮竹の肩に交互に乗ったりして、遊んでいた。

「クロ、相手をしてやれ」

「チチッ!」

風呂場に召還されたクロという黒リスの使い魔は、水分をとばして外にぽよんぽよんとはねていプルンの後を追って、走り出す。

「仲良くするんだぞーー!!」

「プル!」

「チチッチチ!」

二人が風呂からあがり、夕食を食べる頃には、プルンもクロも遊び疲れたのか、ソファーの上で寝ていた。

「プルンがいるということは、あの二人も近くにきているんじゃないか?」

実際、剣士の京楽と妖刀の精霊である浮竹は、魔法協会にきていた。浮竹と京楽も、明日にしようと思っていたが、魔法協会に赴いた。

『やあ、元気そうだね』

妖刀の精霊のほうは、人がいるために姿を現さないようだった。

「夕飯を食べるんだけど、良かったら一緒にどうだ?」

「うん、人数が多い方が楽しいしね」

「プルルン!」

『プルン、どこにいっていたのかと思ったら、エルフの僕と浮竹のところにいたのかい』

「ププ~」

魔法協会の会長はエマ・ベセラという。

少し腹黒い会長だった。

『用はすんだし、キミたちの家に行こうか』

こうやって、剣士の京楽とプルンと妖刀は、エルフの浮竹と京楽のマイホームにやってきた。

『ああ、やっと姿を現せれる』

ずっと人前では姿を現れなくて、妖刀のままだった精霊の浮竹が人型をとって、夕食が並んでいるテーブルをじーっと見ていた。

特に、デザートにと置かれてあった苺パフェに熱烈な視線を送っていた。

「まだ作れるから、夕飯の前に食べてもいいぞ?」

エルフの浮竹の許可をもらい、精霊の浮竹は苺パフェをおいしそうに食べていく。

『ごめんね、うちの浮竹が』

「いや、俺もスイーツは好きだし。意外なところで共通点があるな?」

「浮竹、僕らも食事にしよう」

こうして4人は夕食を食べて、その日は剣士の京楽と精霊の浮竹はゲストルームに泊まっていった。

朝になると、剣士の京楽と精霊の浮竹の姿はなく、プルンもいなかった。

置き手紙が残されていた。

「宿屋に泊まる手間が省けた・・・・って、白金貨?それも2枚も!?」

白金貨は1枚で大金貨10万枚になる。

つまりは、大金貨20万枚という大金を置いていったのだ。金貨いでうと200万枚だ。

「金もちすぎるのも、問題だね」

さすがに額が額なので、貯金という形にした。

「さて、今日は一日休みだ。浮竹といちゃいちゃしよっと」

その浮竹は、昼まで眠るのだった。




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