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小説掲載プログ
03 2024/04 29 30 05

エンシェントエルフとダークエルフ8

Aランク冒険者になって1カ月が経った。

10回以上は依頼を受けたが、依頼の失敗も3回くらいあり、まぁそれでも好スタートであった。

依頼退治がほとんどなので、罰金を受けるような依頼はあまり受けなかった。

護衛などの任務は達成失敗の場合、罰金が生じる。

その代わり、魔物や盗賊が現れなければ、ただ一緒に行動するだけでお金が入るので、護衛任務ばかりを引き受ける冒険者もいるくらいだ。

1日3度の食事が約束されて、困るのは夜の見張りがあるくらいだろうか。

今度の依頼は、魔獣、モンスターの討伐依頼であった。

ケルベロスとオルトロスのペアを退治してくれというものだった。

Cランクダンジョンに、ケルベロスとオルトロスが住み着き、それ以上奥に行けないのだという。

CランクダンジョンはD~Bランク冒険者が適正である。

Bランクでも倒せないということは、それなりの強敵であった。

Cランクダンジョンにつくと、35階層でケルベロスとオルトロスのペアが出てきた。

オルトロスは頭を2つもった狼の、ケルベロスは頭を3つもった狼のモンスターであった。

属性は火。弱点は氷と水。

浮竹も京楽も、水と氷の魔法を唱え出した。

「エターナルアイシクルワールド!」

「ウォータープリズン!!」

地面を凍結させてモンスターの足を京楽が凍らせる、浮竹が水の牢獄を作り出し、オルトロスとケルベロスを閉じ込める。

「GARURURURU!」

「GYAUUU!!」

オルトロスとケルベロスは、叫び声をあげながら炎のブレスを吐いた。

それは水の牢獄を蒸発させたが、凍らせられた足は溶けなかった。

浮竹が唱えた氷の魔法は上級魔法だ。

「エターナルフェンリル!」

「アイスエンチャント!」

氷の魔狼フェンリルを召還して、氷のブレスを吐いてもらい、オルトロスとケルベロスも炎のブレスで対抗するが、氷のブレスのほうが優位だった。

少しずつ炎のブレスが弱まっていく。

そこに、氷を付与したミスリルの剣で、浮竹がケルベロスの前足を、オルトロスの胴体を斬り裂いた。

「GYAUUUU!」

「GYANN!」

犬のような声を出して、オルトロスとケルベロスは、炎をブレスを足元にはいて地面の氷をなんとか溶かすと、京楽めがけて襲い掛かる。

それを、氷の魔狼フェンリルが行く手を阻んだ。

「うおおおおおおぉぉぉん!」

フェンリルが遠吠えをあげると、異界より眷属たちが召還されて、オルトロスとケルベロスは逃げ出そうとするが、大小様々なフェンリルに囲まれて、逃亡できなくなる。

「いけ、フェンリル!アイスアタック!」

体を凍結させたフェンリルたちが、オルトロスとケルベロスに体当たりを食らわせる。

弱ってきたオルトロスとケルベロスに向けて、浮竹が魔法を放つ。

「アイスクラッシャー!」

氷の巨大な塊ができて、それはぐしゃりとオルトロスとケルベロスの体を潰して、粉々になった。

「ああ、よかった。魔石は無事だな。さっきの衝撃で砕けていたらどうしようかと思ったんだ」

「魔石は禁呪でもない限り、砕けないよ」

「でも、禁呪を唱える奴を知っているからな」

剣士の京楽のことであった。

他にもSランクの冒険者の中には禁呪を唱える魔法使いたちもいる。

今この世界で存在が確認されているSランク冒険者の数は77人。

去年は82人だった。

5人パーティーのSランク冒険者が、魔族の魔王四天王が一人、灼熱のシャイターンに敗れて死んでいる。

魔王討伐に挑むSランク冒険者はいなかった。

皆、命は惜しい。

勇者でも誕生しない限り、魔王は倒されないだろう。

そもそも、魔王は存在しているが、全ての魔族を束ねてるというわけでもなく、明確な「悪」であるかあやふやな部分もある。

人間の国が戦争をしかけてきたら、その国は滅亡するが、反対に戦争をしかけなければなんの害もないのだ。

四天王も同じで、戦いを挑めば容赦なく倒されるが、戦いを挑まなければ何もしてこない。

死んだ5人のSランクのパーティーのリーダーは、自分が勇者であると明言していて、その証拠に灼熱のシャイターンに挑み、戦死した。

Sランク冒険者の間では、死んだその自称勇者を愚か者だという声が高かった。

「ねぇ、浮竹。もしも、魔王討伐に向けて国が動きだしたらどうするの?」

「そんなことは起きないと思うだろうが、マイホームを捨てることになるが、違う国の冒険者ギルドに登録しなおして、その国で活動する」

「やっぱり、そうだよね」

京楽は癒えなかった。

その灼熱のシャイターンはダークエルフで、実の母親であるなんて。

浮竹に打ち明けれないもどかしさをもちながら、それでも隠しておきたかった。

魔族ともいわれるダークエルフであるが、ただのダークエルフではなく、魔王の四天王の一人の息子などとは、とても言えなかった。

そもそも、母であるシャイターンは肌の色を見て、捨てることを決めた女性だ。

育てられた記憶もない。

ただ、シャイターンの息子ではあると、言い聞かされて幼い頃は育てられた。

そのダークエルフの村も、魔族と合流するということで、一族の汚点でもある京楽を捨てて、魔大陸に移住してしまった。

「どうした、京楽。顔色が悪いぞ?」

「ううん、なんでもないんだ」

自分だけ、秘密を抱えている罪悪感に時折苛まれる。

シャイターンにとっては、ただのゴミだろうが、こちら側からしたら、魔王の四天王の一人が親なのだという、リスクの高い位置にいるのだ。

「とりあえず、冒険者ギルドに報告に戻ろう」

「うん、そうだね」

オルトロスとケルベロスの死体は、ダンジョンが消化するだろう。

ダンジョンは生きている。

ダンジョンマスターをもち、大抵が古代のエルフか古代のドワーフであった。

ダンジョンで死んだモンスターや冒険者は、荷物以外は自然に溶けてダンジョンの苗床となり、ダンジョンは新しいモンスターや宝箱を生み出す。

それを管理するのがダンジョンマスターだ。

ダンジョンマスターが代わると、ダンジョンも大きく様変わりする。

まぁ、よほどのことがない限り、ダンジョンマスターが代わることはない。

「これで、Cランクのこのダンジョンも、最下層まで潜れるだろう」

「ねぇ、ちょっと最下層まで行ってみない?」

「いいが、俺たちにとっては雑魚だぞ」

「昔、Cランクだった頃、このダンジョンにも何度か潜って、結局踏破できずにいたじゃない」

「そういえば、そうだったな」

雑魚のスケルトンやスケルトンアーチャー、スケルトスンソルジャーなどの雑魚のモンスターを倒しながら、魔石だけ回収した。

大した金にはならないだろうが、昔はそれでも満足したものだ。

最下層は50階層だった。

ボス部屋を開くと、スケルトンキングがいた。

「フレイムボルト」

「セイントヒール!」

不死の属性には火と聖が効きやすい。

一部、剣士の京楽のような例外はあるが、大抵は火と回復魔法でダメージを受けた。

魔力がCランクの頃の数十倍にもなった今では、スケルトンキングも雑魚だ。

倒すと、財宝の間が開いた。

あったのは、金貨が50枚と銀製の武器くらいだった。

「昔は、これでも喜んでたんだよねぇ。始めてCランクのダンジョン踏破したこと、覚えてる?」

「覚えてる。グレイウルフベアがボスだった。苦戦して怪我をいっぱいして倒して、金貨45枚と、金の短剣を手に入れた」

「金の短剣は、窮地になるまで手元に置いていたよね」

「そうだな。俺が風邪を引いて、依頼を受けれなかった時期に、売り払ってしまったんだったな」

「とりあえず、地上に戻る転移魔法陣に乗ろう」

「ああ」

ダンジョンの入り口まで転移して、待っていた馬車に乗りこんだ。

馬車は冒険者ギルドで、1日金貨2枚でかりれた。

御者付きの場合は金貨3枚だ。

京楽が御者をしていた。

1日だけのレンタルなので、出費は金貨2枚と1日の食事の分の銀貨3枚くらいだろうか。

冒険者ギルドに戻り、馬車を返して、受付嬢に魔石を鑑定してもらい、報酬金金貨160枚を手に入れて、魔石の買取り額金貨20枚を手に入れた。

今日の稼ぎは、金貨180枚とダンジョンで手に入れた金貨50枚と、雑魚の魔石の買取り額の金貨3枚と、銀の武器だ。

Cランク以下の頃は、金貨を見るだけでも興奮したものだ。

今では、大金貨を見てもあまり何も感じない。

流石に白金貨を見るとびびるが。

今日の夕飯の買い物をせず、久しぶりに冒険者ギルドの酒場で食べて飲んだ。

「景気はどうだ、浮竹、京楽」

「ぼちぼちかな?」

「まぁまぁだな。12件依頼を受けて未達成が3件。Aランクになって、調子づいてSランクの依頼を受けたら、失敗続きだった。今はAランクかBランクの依頼を受けている」

「そうだね。Sランクの依頼は僕たちには早すぎたね」

京楽も浮竹も苦笑いした。

「あらぁ、うっきーちゃんに春ちゃんが、マイホームを持ったのに、ギルドの酒場で食べてるなんて珍しいわね。私も混ぜてぇ!」

「今日はこの辺りで帰る!」

「じゃあね、みんな」

「ああん、いけずう♡」

くねくねして迫ってきたオカマのギルドマスターを置いて、二人はマイホームに帰るのであった。




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