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カナリアⅡ「カナリアと再び別れ」

「ここは・・・・」
ティエリアが目をあけると、そこはロックオンの生家だった。
「大丈夫か、カナリア?」
「ロックオン・・・・」
言葉の使い方、視線の使い方・・・全てが、ロックオンの知るティエリアのものだった。

「ティエリア?戻ってきたのか?」
「はい。・・・・ご心配をおかけしてしまってすみません」
「カナリアは?」
「・・・・・・・・・・カナリア、は。とても綺麗な声で歌って・・・・でも、本当はボロボロで・・・自分を、形作ることさえ、困難なほどに、ボロボロで・・・・それなのに、また、僕を庇って、傷ついて・・・・カナリアは・・・・」
ロックオンは、ティエリアを抱きしめた。

「カナリア・・・・・」
涙が、零れた。
いくらティエリアを守るためだからといって、献身的すぎる。
そう、ロックオンの前にいたカナリアは、ボロボロになりすぎた自分を隠した偽りのカナリア。心配されないように、大丈夫だからと綺麗な笑顔で・・・・誰よりも一番辛いのは、一番辛い記憶をもっているカナリアだったのに。
どうして、気づいてやれなかったのだろう。
もっと、どうして愛していると、強くいってやらなかったんだろう。
ティエリアのことばかり気にして、カナリア、という存在を二の次にしていた。

あんなにも、真っ白で無垢なカナリアは、そう、もう存在できないほどにボロボロだったのだ。

「私が、見たカナリアの本当の姿は・・・・背中の黄金の翼を片方、人間の暴力でもぎ取られて、鎖につながれて動けない・・・・籠の中の、カナリアでした。首に、カナリアの羽を集めたペンダントをしていました。そう、このペンダントを」
ティエリアが、声もなく自分の首にぶらさがっているペンダントをつまみあげる。
「私は・・・・カナリアを傷つけた」
「ティエリア」
「私は・・・・生きます。カナリアのためにも、強く、生きます」
「俺は、カナリアもティエリアも、両方愛してるよ」
抱きしめられる。

「カナリア・・・愛しているから、私も、君を」
もう、ティエリアの心の中に、カナリアはいない。
籠と鎖とペンダントだけを残して、完全に消えてしまった。
いくら今愛しているといっても、届かないけれど、愛してると、言葉にしたかった。

カナリア。
籠の中のカナリア。
綺麗な声で歌う天使。

「カナリア・・・・本当に、ふわふわしてて天使みたいだった。もっと、愛してやれば良かった」
「カナリアは言っていました。ロックオンに愛されてるから、幸せだと」
「そうか・・・・」

カナリアは言っていた。2週間はあるからと。
だから、ロックオンのその言葉を鵜呑みにして、カナリアへの愛は2週間かけてじっくりと注ぐつもりだったのだ。実際は、わずか四日にも満たなかったけれど。

それでも、カナリアは幸せだった。
またロックオンに会うことができ、言葉をかわすことができ、愛してもらえたから。
ロックオンにキスまでしてもらった。

カナリアは、誰よりも深く傷ついていながら、それを隠して天使のような無垢な笑顔で煌いていた。

ティエリアの心の中に、カナリアはもういない。
消えてしまったんだそうだ。
前は、消えたが、確かにカナリアは消えてもティエリアの中にいた。今度は、本当にいなくなってしまった。ティエリアの中から。
籠と、鎖と、カナリアの羽を集めたペンダントを残したまま、忽然と。そして、それも次の瞬間には粉々に砕け散ってしまった。
それを、どう説明すればいいのか、ティエリアにもよく分からなかった。

まるで、最初からいなかったかのように、消えてしまったのだ。
本当なら、その痕跡くらい、残していくものなのに。
カナリアがどこにいったのか、ティエリアにも分からなかった。消えた、のとは少し違う。溶けた・・・融合とも、違う。

「愛しているから、カナリア、ティエリア」

ロックオンは、ティエリアを抱きしめ続けた。
ティエリアも、ロックオンを抱きしめ続けた。

別れも言わずに、消えてしまったカナリア。
君は今、どこにいるんだろう?

どこに?

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