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キスはレモンの味

「なぁ、ルキア好きだぜ」

「知っておる」

屋上で、ルキアと一護は、井上、石田、茶虎と共に昼食をとっていた。

もう、高校卒業まであと3か月しかない。

だから、一護は想いをルキアに伝える。

すると、ルキアは「知っておる」とだけ答えて、それ以上は何も言ってくれなかった。

「はぁ・・・今日も「知っておる」で終わりか・・・・」

チャイムが鳴った。

一護と井上を残し、3人は授業を受けるために戻ってしまった。

「どうしたんだよ、井上。授業でないのか?」

「黒崎君!私、黒崎君のことが好き!」

抱き着いてきた井上に、動揺を隠しきれない一護。

でも、ふっと悲しそうに笑って、井上から離れた。

「それでも、例え振り向いてくれなくても、俺はルキアが好きなんだ」

「朽木さんのことなんて忘れさせてみせる!」

豪語する井上であるが、一護はルキアを好きな気持ちのまま井上と付き合うことはできなかった。

「ありがとう。気持ちだけ、受け取っておく」

「黒崎君!私、いつでも待ってるから!黒崎君が私を見てくれなくてもいい!私は黒崎君のことが好きなの!」

ガタン。

音がした。

そちらの方を見ると、ルキアが立っていた。

涙を、流していた。

そして、そのまま走り去ってしまった。

「まて、ルキア!」

「黒崎君、追わないで!私を見て!私の想いを受け入れて!」

「井上、俺が必要としているのはルキアだ!お前じゃない!」

「酷い!」

井上が泣きだすが、今はそんなことどうでもよかった。

ルキア。

ルキア、ルキア、ルキア。

涙を流すということは、俺に少しでも気があったと受けとっていいんだよな?

走り去っていったルキアを追うが、どこにいったか分からなくなった。

精神を研ぎ澄ます。

ルキアの僅かな霊圧を感知して、川の近くの河川敷にまできていた。

ルキアは、草の上に座っていた。

12月の寒い中、上着も羽織らずに。学校を無断で二人とも抜けだしたので、二人とさぼりということになる。

ルキアの背後から、ルキアに制服の上着をかけてやった。

「一護・・・・・私は、卑怯なのだ。貴様には、私以外などいないと思っていた。私だけが貴様を見ていると思っていた・・・・井上と幸せになれ」

煌めく水面を見つめながら、涙を零し続けるルキアを、そっと背後から抱きしめた。

「何度も言っただろう。お前が好きだって」

「知っている」

そんなルキアの言葉にカチンときて、ルキアの頭を殴った。

「何をする、たわけ!」

「俺が井上に告白されてお前は泣いてるのに、なんでもっと素直になれねーんだよ!「私だけが貴様を見ていると思っていた」だって!?そりゃつまり、お前も俺のこと好きってことじゃねーか!」

「そうなのか?」

「ああ、もう!」

一護は、ルキアを抱き締めた。

「一護、苦しい・・・・・・」

「お前は、俺のことが好きなんだよ。素直になれ。俺もお前のことが好きで・・・両想いだ」

「だが、私はもうすぐ尸魂界へ・・・・・!」

「そんなこと関係ねぇよ。恋愛に年も種族も性別も、住んでるところも身分もなにもねぇ」

「だが、私はいずれ朽木家から、上流貴族に嫁ぐことが決まっておる・・・」

「そんなもの、俺がめちゃくちゃにしてやるよ!」

「ふふっ・・・・・」

ルキアが泣き止み、やや赤い目をしながら笑った。

「そうだと、いいなぁ・・・・」

「そうなる。そうさせる」

「一護・・・」

二人で、手を繋いで河川敷を歩いた。

石を川に投げ入れる。

「あと3か月しかないけど・・・・・一緒に過ごそう。3か月が過ぎたら、会いにきてくれ」

「なんなのだ・・・まるで、恋人同士のようではないか」

「あのなぁ」

一護が、ルキアの頬を両手で挟み込んだ。

「お互い好き同士は、もう恋人みたいなもんなんだよ!」

「そ、そうなのか!?」

「ああもう、これだから天然は・・・・・」

くどくどと、恋愛とはどういうものかを語って聞かせた。

「つ、つまり貴様の部屋で一緒に生活していた時点で、私はその恋人やらと同じことを・・・・」

ルキアは真っ赤になって、ボンと破裂した。

「はう~~」

ショートしてしまったルキアを背中におぶって、黒崎家に帰宅する。

ルキアは意識を取り戻したが、朱い顔で一護のほうをまともに見なかった。そのまま、夕食の時間になり、風呂に入り、消灯前になった。

「なぁ、ルキア。もう一度、今度こそ言葉にしてくれ」

「な、何をだ!」

「ルキア・・・俺はお前のことが好きだ。ルキアは?」

「わ、私は・・・」

「ルキア、かわいい。なぁ、言ってくれよ。はっきり言葉にしてくれ。ルキア」

ルキアは逡巡していた。

想いを完璧に告げることで、今後の死神としての生き方が大きく変わる気がした。

でも、ルキアも伝えたかった。

「一護・・・貴様のことを、ずっとずっと想っていた。尸魂界に、処刑のために連れ去れた私を助けに来てくれた頃から・・・・ずっと、好きだった」

「俺も、お前のことがずっと好きだった。お前と会えなかった1年と7か月はとても辛かった」

「一護・・・・・」

「絶対に幸せにしてみせる。だから、付き合ってくれ、ルキア!」

一護は、ルキアのために用意していたアメジストの髪飾りをルキアの髪に飾った。

「このような、高価そうなもの・・・貧乏な学生の貴様には、大金であったろうに」

「バイトでためた金だ。どう使おうが俺の自由だ。綺麗だ、ルキア。少し早いけど、誕生日プレゼント」

「一護、貴様はそこまで、私を想ってくれるのか」

「ああ。今の俺には、ルキア以外何も見えていない」

「井上はどうするのだ」

「いらない。井上が欲しいんじゃない。ルキアが欲しいんだ」

「一護・・・・」

ルキアは、ぽろぽろと涙腺を決壊させた。

「好きだ。好きだ好きだ好きだ。貴様がどうしようもないくらいに好きなのだ。貴様は人間で、私は死神・・・この差はどうしても埋めがたい。それでも、どうしようもないくらいに、貴様が好きだ、一護!」

一護は、優しくルキアを包み込んだ。

「そんなに泣くなよ。死神が人間と付き合うの、別に尸魂界の法でだめだって決められているわけじゃないんだろ?」

「それはそうだが・・・・でも・・・・・」

「いいじゃねぇか。死神と人間でも」

「一護・・・貴様はずるい。私の心をもっていく・・・」

「ああ。俺はずるいんだ。お前の全てが欲しい」

「好きだ、一護」

「俺も好きだ、ルキア」

その日は、お互いを抱き締めあうように丸くなって眠った。


「遅刻する!」

「瞬歩でいくぞ、一護!」

想いをぶつけ合って、二人は正式に交際をスタートさせた。

後の残り3か月。

それを過ぎたら、ルキアは多くても週に一度くらいしかこちらにこれない。

一日一日が、宝物のようで。


「ルキア・・・・・」

「ん?」

学校の帰り道、振り返ったルキアに、はじめてキスをした。

「ななななな!」

まだ、清い関係でしかない二人。

「もう一回、してもいいか?」

「好きにせよ・・・・」

今度は、舌が入ってきた。

「ん・・・・・」

キスは、一護が食べていたレモンのキャンディの味がした。


やがて、卒業式を迎えた。

一護は、ルキアと一緒に黒崎家へと帰っていく。

帰宅すれば、同時に尸魂界へと戻る。

「俺の大学進学も決まったし、一人暮らしもきまった。地図かいておいただろ?今度来るときは、その住所のところを訪ねてくれ」

「たわけ!そんなことしなくても、貴様の霊圧を探ればどこにいるかくらい分かる!」

「ルキア!また来週会おうぜ!大学、案内してやるよ!」

「ああ!」

穿界門が開く。

でも、開ききり、ルキアが去る前に一護はルキアとキスをした。

キスは、やっぱり一護が食べていた、レモンのキャンディの味がした。


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