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最後の時まで

俺を許してくれるか、京楽-------------------

ミミハギ様を解き放ち、神掛を行った浮竹には、もうあまり時間は残されていなかった。

この命が費えるのももうすぐだ。

こうなる前に、書をしたためた。

京楽宛に。

中身は、ただ許してくれと。

ただ、愛していると。

そんなことをたくさん書いた。

書きなぐったに近い文だから、誤字脱字もあるかもしれないし、矛盾も大きくあるだろう。

愛しているのに、置いていく。

そのことに、浮竹はいつしか罪悪感を感じないようになっていた。

護廷13隊の死神は、尸魂界のために死なば本望。

それは京楽も一緒だ。

「ああ・・・・先生、卯ノ花隊長、今そちら側にいきます・・・・・」


霊王は亡くなったままだが、世界の崩壊は止まった。

「浮竹!」

浮竹がミミハギ様を手放したのだと知って、京楽は辛い顔をした。



たくさんの犠牲の果てに、ユーハバッハは打ち取られた。

ぱちぱちぱち。

浮竹の遺体を収めた棺は、白い百合の花で満たされていた。

安らかな顔をしていた。

呼吸を確かめなければ、今も生きているようだった。

「君は・・・ひどいね。僕を残していくなんて」

でも、それは浮竹が望んだこと。

護廷13隊の死神は、尸魂界のために死なば本望。

それは京楽も同じだった。

棺に蓋がされて、火葬されていく。

山じいや卯ノ花隊長が死んで、その棺を焼いた時と同じ青天で、その嫌味なまでに雲一つない空を見上げた。

パチパチパチ。

煙が、天高く昇っていく。

棺が完全に灰になるまで、ずっと見守っていた。

残された遺骨を、骨壺におさめる。

つっと、一筋だけ涙が零れ落ちた。

「愛してるよ、浮竹・・・・」

墓は、取り壊した雨乾堂の跡に建ててやった。骨と一緒に、双魚理も埋めた。

それから、月に一度は絶対に墓参りにきた。

命日の時は、遅くまで墓の前で過ごした。

そんな時を千年ばかり繰り返しただろうか。


京楽も老い、命の終わりを迎えようとしていた。

この千年、平和だった。

確かに反乱もあったし、尸魂界を揺るがす事件が何度も起きたが、藍染やユーハバッハのような強大な悪は現れなかった。

もうぼろぼろになった、浮竹からの手紙を手にとる。

「ふふ・・・もう、何が書いてあるのかも分からない」

でも、その文の言葉は心の中に染みている。

いつか迎えにくるから、それまで元気でいろよ。そう、最後に書かれていたのを思いだす。

「僕もこれまでかなぁ・・・・・」

ふっと、眠りが深くなった。

「京楽・・・・・」

「浮竹?ああ、これは夢か・・・・」

何千回も、浮竹の夢を見てきたけれど、これほど鮮明なのは始めてだった。

「-----------迎えにきた」

「ああ・・・・僕の命も、やっと終わりか」

浮竹は若い頃の姿のままだった。

年老いていた京楽の体が、若返っていく。

気づくと、二人とも院生時代の恰好になっていた。

「一緒にいこう。今度こそ、永遠に一緒だ」

「浮竹・・・君と一緒にいけば、君の傍に永遠に居れるかい?」

「ああ。一緒にいってくれるか、京楽」

「喜んで」

二人はもつれあいながら、死を享受した。

京楽春水は、総隊長として千年を生きた末に、老衰で身罷った。

とても穏やかな顔をしていた。

「京楽総隊長・・・・・」

もう決して若いといえぬルキアが、その死を看取った。

棺の中は遺言により百合の花で満たされて、墓は雨乾堂の浮竹の墓の隣に建てられた。

「そうですか。総隊長は、やっと浮竹隊長の元へ、いけたのですね」

ルキアは泣いた。

もうずっと昔に亡くなった浮竹隊長と、京楽総隊長のことを思って。

もう、浮竹隊長という元13番隊隊長がいたということさえ、皆知らない。

二人は、永遠を誓い合って、落ちていく。

そこは色のない世界ではなく、始まりの場所。

霊子の渦となり、新しい命にいきつくのだ。

浮竹は、ずっと待っていた。京楽を。

新しく何かになることを拒絶していた。

そして京楽と共に霊子になり、何かを形作った。

それは、二羽の小さな白い小鳥。

寄り添いあいながら、羽ばたいていく。

(何があっても、もう永遠に一緒だよ)

(ああ、そうだな)

羽ばたいていく。

雲一つない青空を。

まるで、棺を焼いた日に似ていた。







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