トレミーから、地上に降りたティエリアとロックオン。
ホテルをとって、2週間ほどニュージーランドに滞在することになった。
アイルランドにどこか似た、牧畜や農耕をメインとしたのんびりした緑豊かな国。
広がる草原はどこまでもどこまでも、まるで大海原のように続いていて、そこを羊たちがのんびりと草を食みながら群れをなしている。
牧羊犬が、羊が迷子にならないように、主人の命令に従って群れをまとめる。
はぐれそうになった羊は、牧羊犬にほえられて、群れの中に戻っていく。
そんな景色を、レンタカーでかりた車の窓からのんびり見ている。
ホテルについて、荷物をまとめて早速外に繰り出そうとした時、さっきまでは綺麗な紺碧の青空が広がっていたというのに、重い鉛色になって、今にも泣き出しそうな空。
ポツリ、ポツリと雨がふりだす。
ぐずっていた空が、ついに幼子のように泣きだした。
それでもかまわず、外に出る。
ティエリアはかわいいピンク色の、花の模様がかかれたかわいい傘をさして、ロックオンの隣に並ぶ。
「雨は嫌いです」
「そうか?俺は、長く宇宙にいると、こうして地上に降りた時、晴れてても雨でも、全部嬉しいけどな。だって、隣にティエリアがいてくれるから。ま、どしゃぶりはさすがにちょっと困るかもな。でも、俺は雨も好きだぜ?神様の涙なんだ」
にこりと、エメラルドの瞳を宝石のように輝かせ、ロックオンは人懐っこく笑う。
その笑顔に、ティエリアは頬を染めて、空を見上げる。
「あなたが好きというのなら、僕も好きになれそうです。雨は、神様の涙なんですね」
「神様が、きっと愛しい人間のことを思って泣いているんだよ」
「神様が、人間のことを思って泣いている・・・・・」
「神様の涙だって思ったら、雨もロマンチックだろ?」
「そうですね・・・・少し、ロマンチックです」
くるくると、ピンク色の傘を回すティエリア。
「もしくは、天使が流した涙。ティアドロップ」
「ティアドロップ。天使の流した涙。そっちのほうが、僕は好きです」
ティアドロップ。
エンジェルティアドロップ。
なんて綺麗な響きだろう。
ティエリアは、嬉しそうに傘をくるくる回して、歩き出す。
しばらくそうして町を歩いていると、雨が止んだ。
「わぁ虹だ!」
大空にかかる虹の軌跡に、ティエリアが顔を上げる。
「天使が、笑っているんだよ。泣いたあとは、笑って。その笑顔が虹になるんだ」
「あなたの言葉は、恥ずかしいのに何故かとてもステキです」
「ははは・・・・」
ロックオンは、ずっと虹を見つめていた。
ずっとずっと。
パチャン。
水たまりに、ロックオンが持っていた緑の傘が落ちる。
ティエリアが、背伸びしてピンクの傘を伸ばしたせいで、手から弾き飛んだのだ。そのまま、ティエリアは背を伸ばしてロックオンにキスをしたのだ。
「虹ばかり見ていないで、僕を見てください」
天使の顔で、迷いもせず言葉にする。
虹よりも、なんてなんて魅力的な表情をするのだろうか、ティエリアは。
虹も綺麗だけれど、それに負けないくらいティエリアも綺麗だ。
「参ったな」
落ちてしまった傘を折りたたむ。
ティエリアは、ピンクの傘をまわし、くるり回って、パシャパシャと水たまりの上を歩く。
ティアドロップ。
きっと、ティエリアはティアドロップだ。
神様が流した涙でできた天使。
くるりと、ティエリアが回る。
緋色の、ティエリアの瞳と同じ色の長めのコートがひらひらと回る。
「綺麗だよ、ティエリア」
「僕は綺麗ではなく、かっこいいのです!」
傘をくるくる回しながら、子供のようなあどけない表情でロックオンを見つめる。
ティアドロップ。
きっと、ティエリアは神様のティアドロップ。
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タチバナ様の妄想、2月3日朝の雨のティエリアより、台詞の一部を拝借しました。
タチバナ様、お許しをくださって、ありがとうございました。
ちょっと台詞がかわって違うかんじの小説になってしまいましたが、私がかくとこんな風になってしまう・・・。
はうはう。