教師と式13
「これ、浮竹の血液のサンプル」
京楽は、優し気な顔の青年に、浮竹の血が入った容器を渡す。
「確かに。これで、君の浮竹はまた寿命が延びたわけだ」
「本当に、君って嫌なやつだね。君の式に戻らなくて正解だよ、藍染」
「ふふ、今更なにを。今も私の式のようなものだろう、京楽。約束を違えたら、君の愛しい浮竹はその命が尽きる」
藍染はクスクスと笑う。
「いつまで400年以上生きた桜神と自分を、大切な浮竹に偽るつもりだ?千年以上生きている桜食いのくせに」
「うるさいよ」
「桜ごとまた今月は何人の命を吸った?」
「うるさい!」
京楽は、怒って藍染を殴った。藍染はわざと殴られて、おかしそうに笑う。
「浮竹が本当のことを知ったら、絶望するだろうな」
「脅すのかい」
「いや?脅かさなくても、君は私の忠実なコマの一つ」
「浮竹に手を出したら、いくら君だとしても八つ裂きにするからね」
「怖い怖い」
そう言って、藍染は去っていってしまった。
「‥‥‥‥浮竹、ボクは嘘だからけだ。ごめんね」
その声が、浮竹に届くことはなかった。
--------------------------------------------------------------------------
「桜食いが出るそうだ。京楽、お前のような桜の花神や花鬼を食べて、人の生気も吸ってしまうある意味京楽の天敵のようなやつだ。今回の依頼は、念のため京楽なしでいこうかと思う」
「ボクなら大丈夫だよ。桜食いは何度も倒してきた」
「そうなのか、京楽?」
「うん」
「兄はけれど、敵にとって極上の餌だ。参加せぬほうがいいのではないか。主は私が守る」
「白哉くんだけじゃ心もとないからボクもついていく」
「分かった。危険と判断したら、すぐに呪符に戻すからな」
浮竹は、仕方ないとばかりに京楽を見る。
「うん、分かったよ」
京楽は、浮竹にたくさんの隠し事をしている。それに浮竹も白哉も気づかない。
本来なら浮竹の式でいられるはずもないのだが。京楽は未だに藍染の式でもあった。
「じゃあ、桜食いが出る場所に移動しよう。車で1時間の場所だ」
「ねぇ、浮竹」
京楽は、寂しそうに笑う。
「ボクが偽りだらけでも、君はボクを愛してくれる?」
「ああ、愛する」
京楽は、涙が流れそうになって、拳をぎゅっと握り締めた。
「ありがとう、浮竹」
「変なやつだな」
桜食いが出る場所にくると、見事に桜の木々が枯れていた。
「出てこい、桜食い!人を襲って生気を吸いつくした罰としてお前を退治する」
「ぎろぎろ。人間風情の祓い屋か。おや、そっちは‥‥‥‥」
京楽は、桜食いが何かを言う前に、口を封じてしまう。
「ぎぎぎぎぎ」
「雷夜いけ!」
新しく式神にした雷獣の山猫を、浮竹は桜食いにけしかける。
大量の電撃を浴びて、桜食いは炭化していく。
「同胞のくせに‥‥‥」
桜食いの言葉に、京楽は青ざめる。
「戯言を。俺の式にお魔の同胞などいない」
「騙されているのだ。その桜の花神は……」
「うるさいね。早く死んでよ」
京楽は、桜の花びらを刃にして桜食いにとどめをさした。
「京楽、今日はいつもより殺気だってないか?」
「兄もか。私もそう思う」
雷獣を呪符に戻して、浮竹は心配気に京楽の顔をのぞきこむ。
全ては、浮竹のためだった。
藍染から、浮竹を守るために藍染に従い、桜食いであることを隠して桜の花神として生きていた。
400年どころか、すでに齢は千年をこえていた。
「浮竹。いつか本当のことを全部話すから、今は君を抱かせて?」
京楽は浮竹を抱きしめながら、涙を流した。
「京楽、胎の具合でも悪いのか?」
「うん。ちょっと頭痛い。お腹じゃないけど」
「呪符に戻れ。後始末は俺と白哉でしておく」
「京楽、兄は‥‥‥‥」
「どうしたんだ、白哉」
京楽は呪符の中に消える。
「いや、なんでもない。思い違いのようだ」
白哉は浮竹から感じる妖力が、桜の花神のものではなく、桜食いのものに一瞬似ていた気がしたが、気の迷いだろうと首を左右に振る。
桜食いは、桜も人の生気も吸う。
桜の生気を吸う以外は、桜の花神と変わりない。
京楽は人の命を吸いつくすのをやめて数十年が経過している。いくら大勢の人間から生気を分けてもらっているといっても、浮竹ほど力の強いあやかしは大量の人の生気を必要とする。
「兄が、裏切り者ではないと、私は信じているぞ」
白哉は、京楽が入った呪符を撫でて、浮竹に渡す。
「桜食いのせいで、同胞たちが食われていたのがショックだったんだろう」
浮竹はそう結論づけた。
「主、京楽は近いうちに‥‥‥」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
白哉は、京楽が藍染とコンタクトをとっている場面を目撃してしまっていた。
裏切りだ。
しかし、何か事情があるのだろうと、浮竹には内緒にしていた。そもそも、京楽は元藍染の式だ。藍染の手から完全に切り離されていないことも考えられる。
「主、帰ろう」
「ああ、そうだな。帰ったら、京楽の代わりにルキアに夕食を作ってもらおう。今日の京楽は具合が悪いみたいだし」
「私の義妹のルキアはよくやっているだろう」
「ああ。おかげででかい洋館なのに手入れが行き届いていて助かっている」
白哉は心の中で願う。
どうか、京楽が浮竹を裏切っていないことを。
京楽は、優し気な顔の青年に、浮竹の血が入った容器を渡す。
「確かに。これで、君の浮竹はまた寿命が延びたわけだ」
「本当に、君って嫌なやつだね。君の式に戻らなくて正解だよ、藍染」
「ふふ、今更なにを。今も私の式のようなものだろう、京楽。約束を違えたら、君の愛しい浮竹はその命が尽きる」
藍染はクスクスと笑う。
「いつまで400年以上生きた桜神と自分を、大切な浮竹に偽るつもりだ?千年以上生きている桜食いのくせに」
「うるさいよ」
「桜ごとまた今月は何人の命を吸った?」
「うるさい!」
京楽は、怒って藍染を殴った。藍染はわざと殴られて、おかしそうに笑う。
「浮竹が本当のことを知ったら、絶望するだろうな」
「脅すのかい」
「いや?脅かさなくても、君は私の忠実なコマの一つ」
「浮竹に手を出したら、いくら君だとしても八つ裂きにするからね」
「怖い怖い」
そう言って、藍染は去っていってしまった。
「‥‥‥‥浮竹、ボクは嘘だからけだ。ごめんね」
その声が、浮竹に届くことはなかった。
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「桜食いが出るそうだ。京楽、お前のような桜の花神や花鬼を食べて、人の生気も吸ってしまうある意味京楽の天敵のようなやつだ。今回の依頼は、念のため京楽なしでいこうかと思う」
「ボクなら大丈夫だよ。桜食いは何度も倒してきた」
「そうなのか、京楽?」
「うん」
「兄はけれど、敵にとって極上の餌だ。参加せぬほうがいいのではないか。主は私が守る」
「白哉くんだけじゃ心もとないからボクもついていく」
「分かった。危険と判断したら、すぐに呪符に戻すからな」
浮竹は、仕方ないとばかりに京楽を見る。
「うん、分かったよ」
京楽は、浮竹にたくさんの隠し事をしている。それに浮竹も白哉も気づかない。
本来なら浮竹の式でいられるはずもないのだが。京楽は未だに藍染の式でもあった。
「じゃあ、桜食いが出る場所に移動しよう。車で1時間の場所だ」
「ねぇ、浮竹」
京楽は、寂しそうに笑う。
「ボクが偽りだらけでも、君はボクを愛してくれる?」
「ああ、愛する」
京楽は、涙が流れそうになって、拳をぎゅっと握り締めた。
「ありがとう、浮竹」
「変なやつだな」
桜食いが出る場所にくると、見事に桜の木々が枯れていた。
「出てこい、桜食い!人を襲って生気を吸いつくした罰としてお前を退治する」
「ぎろぎろ。人間風情の祓い屋か。おや、そっちは‥‥‥‥」
京楽は、桜食いが何かを言う前に、口を封じてしまう。
「ぎぎぎぎぎ」
「雷夜いけ!」
新しく式神にした雷獣の山猫を、浮竹は桜食いにけしかける。
大量の電撃を浴びて、桜食いは炭化していく。
「同胞のくせに‥‥‥」
桜食いの言葉に、京楽は青ざめる。
「戯言を。俺の式にお魔の同胞などいない」
「騙されているのだ。その桜の花神は……」
「うるさいね。早く死んでよ」
京楽は、桜の花びらを刃にして桜食いにとどめをさした。
「京楽、今日はいつもより殺気だってないか?」
「兄もか。私もそう思う」
雷獣を呪符に戻して、浮竹は心配気に京楽の顔をのぞきこむ。
全ては、浮竹のためだった。
藍染から、浮竹を守るために藍染に従い、桜食いであることを隠して桜の花神として生きていた。
400年どころか、すでに齢は千年をこえていた。
「浮竹。いつか本当のことを全部話すから、今は君を抱かせて?」
京楽は浮竹を抱きしめながら、涙を流した。
「京楽、胎の具合でも悪いのか?」
「うん。ちょっと頭痛い。お腹じゃないけど」
「呪符に戻れ。後始末は俺と白哉でしておく」
「京楽、兄は‥‥‥‥」
「どうしたんだ、白哉」
京楽は呪符の中に消える。
「いや、なんでもない。思い違いのようだ」
白哉は浮竹から感じる妖力が、桜の花神のものではなく、桜食いのものに一瞬似ていた気がしたが、気の迷いだろうと首を左右に振る。
桜食いは、桜も人の生気も吸う。
桜の生気を吸う以外は、桜の花神と変わりない。
京楽は人の命を吸いつくすのをやめて数十年が経過している。いくら大勢の人間から生気を分けてもらっているといっても、浮竹ほど力の強いあやかしは大量の人の生気を必要とする。
「兄が、裏切り者ではないと、私は信じているぞ」
白哉は、京楽が入った呪符を撫でて、浮竹に渡す。
「桜食いのせいで、同胞たちが食われていたのがショックだったんだろう」
浮竹はそう結論づけた。
「主、京楽は近いうちに‥‥‥」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
白哉は、京楽が藍染とコンタクトをとっている場面を目撃してしまっていた。
裏切りだ。
しかし、何か事情があるのだろうと、浮竹には内緒にしていた。そもそも、京楽は元藍染の式だ。藍染の手から完全に切り離されていないことも考えられる。
「主、帰ろう」
「ああ、そうだな。帰ったら、京楽の代わりにルキアに夕食を作ってもらおう。今日の京楽は具合が悪いみたいだし」
「私の義妹のルキアはよくやっているだろう」
「ああ。おかげででかい洋館なのに手入れが行き届いていて助かっている」
白哉は心の中で願う。
どうか、京楽が浮竹を裏切っていないことを。
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