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ドラゴン族の子とミミック2

「みんなー、餌と新鮮な水だぞー」

浮竹は、ミミック牧場でミミックたちに餌をあげていた。

空気を凝縮したという緑の玉が、ミミックたちの餌だった。ミミックは、この世界では生きた植物の一種である。

金属でできている部分もあるが、木製の部分も多い。

「きしきしきし」

ミミックたちが、嬉しそうに餌を食べて新鮮な水を飲む。

「きしきしきし」

浮竹に甘噛みでかじりついて、ミミックたちも浮竹も幸せそうだった。

「はぁ‥‥今日も浮竹はミミックに夢中か」

京楽は、そんな浮竹の姿を見てミミックたちに嫉妬する。

「あ、京楽!見てくれ、新しいミミックが生まれたんだ!まだ子供だから小さくてかわいいだろう?」

近寄ってくる浮竹の腕の中には、ミミックの赤ちゃんの手のひらサイズのミミックが5匹いた。

「へぇ、かわいいね」

「ぴいぴいぴい」

京楽が触ろうとすると、赤ちゃんミミックはその指に遠慮なくかじりついた。

「あいたーーー!」

赤ちゃんミミックを投げ捨てて、京楽は指にケガがないかを確認する。

投げ捨てられた赤ちゃんミミックは、怒って京楽の頭にかじりついた。

「ぴい!」

「あいたたたたた、ちょっと、浮竹笑ってないでなんとかしてよ!」

「あはははは、京楽はミミックによく好かれてるなぁ」

「いや、どう見てもボクはかじられてるからね!?本気でかじられてるんだよ?君みたいに甘噛みじゃないんだよ?」

「あははははは」

浮竹は、いつまでも笑っていた。


家には、今4匹のミミックを飼っている。

そっちのミミックは躾がなっているので、京楽に本気で噛みついてくることはないし、甘えて甘噛みしてくるのでかわいい。

ただ、牧場のミミックたちは京楽を本気で噛んでくる。なので、牧場の経営の手伝いをする京楽とミミックは、あまり仲がよろしくない。

よくかじられた。

「今度、ダンジョンに放つミミックは10匹だったよね。こいつとかどうだい?」

京楽は、よく噛みついてくるミミック65号を捕まえて、噛みつかれながら浮竹に打診する。

「ああ、65号か。そろそろ成人の年だしな。よし、65号と70号と、あとは生まれてきた順に決めようか」

「ボクは、デートがしたいんだけどね」

「へぇ。ミミックとデートか。ロマンチックだな!」

「いや、君とだよ!」

「ミミックがいれば幸せじゃないか!」

「それは君だけだよ!」

京楽はがっくりと項垂れる。

「はぁ。恋人同士なのに、浮竹はいつもミミックのことばかり」

「聞こえてるぞ、京楽。俺はちゃんと、お前が」

京楽は、きらきらした目で浮竹を見る。

「俺はちゃんとお前が愛せるミミックも育てるからな!」

ずこーーー。

京楽はこけた。

お前が好きだと言われると思っていたのだ。

「いいよいいよ。どうせボクはミミックの次なんだから」

「あ、いや、ちゃんと京楽も大切だぞ?」

頬を赤くしながら、浮竹はつぶやく。

「浮竹、大好きだよ!」

ハグとキスをしていたら、牧場のミミックたちの嫉妬をかって、京楽はミミックにかじられる。

「きしきしきし」

「きいきいきい」

「ぎゃあああ、ミミックに殺されるううううう」

「大げさだなぁ、京楽。俺の牧場のミミックたちは全部人食いミミックじゃないぞ。人食いミミックは危険だから、俺もかじられないように気をつけてる。ああ、でもいつか人食いミミックも飼ってみたいなぁ」

「危険だからだめ!」

「ふふ、京楽心配してくれてありがとうな?」

「う、うん」

牧場の仕事を終えて、午後になって冒険者ギルドを訪れて、ミミックを放つというクエストを受けて、10匹の牧場のミミックを連れてB級ダンジョンにもぐった。

「きしきしきし」

「お前たち、もう俺と会えないかもしれないが、立派にやっていくんだぞ。独り立ちの時だ」

「きしきしきし~~~~」

泣き出すミミックたちを撫でて、浮竹も泣いてミミックたちをダンジョンに解き放つ。

ミミックたちは、階層をばらばらに散っていき、ミミックを放つことは無事成功した。

ミミックはまずいので、天敵はいない。

冒険者も、ミミックにかじられても殺してはいけない決まりになっているので、ミミックを殺さない。それでも、ミミックたちの寿命は短く、5年生きればいいほうだった。

ダンジョンという過酷な状況で、宝物を体内に隠してただじっとしているだけ。時折水を飲みに動くが、飲んだ後は元の場所に戻る。

ミミックの出現位置は、ダンジョンマスターに管理されていた。

1つのダンジョンにミミックは約30匹はいる。

一時はミミックが減りすぎたので、浮竹が牧場を営んで増やしているのであった。浮竹は牧場のミミックも家で飼ってるミミックも、同じくらい愛情を注いでいた。

家で飼っているミミックには名前はある。

ポチ、タマ、タロウ、ジロウだ。

うち、タマだけがメスだった。


この前攻略したAランクダンジョンの報酬がまだ残っているので、浮竹と京楽は低レベルの時のように毎日命をかけてダンジョンに挑まなくても生きていける。

だが、体をなまらせないように、放ったミミックの様子を見るためにも、Bランクの40階層あるダンジョンに挑んだ。

20Fのボスを倒すと、2匹のミミックが出てきた。

「きしきしきし」

「きぃぃ」

「お、元気でやってるか?」

「きしきし」

ミミックたちは嬉しそうに浮竹に近づいて、宝物をあげようとする。

「お、くれるのか?」

「きしきし」

「くれるならもらっていいんじゃない?20Fのボスを倒した報酬でしょ」

京楽の言葉に、浮竹は2匹のミミックを撫でて、金のインゴットとまだ覚えていない神聖魔法の魔法書をもらった。

「きしきしきし」

「きぃぃきい」

2匹のミミックは、役目が終わったとばかりにダンジョンマスターのところに新しい宝物をもらいに去ってしまった。

そのまま浮竹と京楽は放ったミミックをいろんな階層で見ながら、30Fまでたどり着く。

「前の住人のミミックたちとも共存しているようでよかったよ」

「そうだな。ミミックは仲間と仲間と認めた者には寛大だからな。敵とみなすと本気で噛みついてくる」

「それって、ボクは牧場のミミックたちから敵視されてるの?」

「いや、大丈夫だろう。敵視しているなら無視する」

京楽は、牧場のミミックからけっこう無視されていた。

「はぁ。まぁいいや。君とこうして一緒に冒険できるんだから」

京楽は、浮竹を抱き寄せる。

「あ、ミミック!先住ミミックだな」

京楽は、浮竹にスルーされて、やっぱりミミックは曲者だと思うのであった。

40階層までたどり着くと、ラスボスが出てきた。

黄色のワイバーンだった。

浮竹が魔法を詠唱する。

「エアジャベリン!」

京楽は、翼を剣で切り裂く。

浮竹の魔法がワイバーンの喉を貫き、ラスボスはあっけなく倒された。

魔石と素材になるであろうワイバーンの遺体ごとアイテムポケットにしまい込む。

「うん。ミミックたちもちゃんと仕事してるようだし、帰るか」

「そうだね。ねぇ、帰ったらデートしない?」

「しない。ミミックたちが待ってる」

がっくりと京楽は項垂れる。

冒険者として二人でいる時は、二人きりとはいえデートではない。

たまには、町でデートでもしたいと京楽は思った。

「ポチとタマを一緒に連れて行っていいなら、デートしてもいい」

「ほんと!?」

京楽は、ポチとタマにリードをつけて、浮竹と町の中をデートする。

「きしきしきし」

「ん、ポチ、あのクレープが食べたいのか?」

「きしきし」

浮竹は飼っているミミックと意思疎通ができる。

「仕方ないなぁ。買ってきてやる。京楽、ポチとタマを頼む」

浮竹はクレープの屋台で4人分買って、京楽、ポチ、タマ、それに自分用に買った。

ミミックは人のものを食うこともできた。

普段水と酸素で暮らしているが。

「今日はいい天気だな。タマ、元気なミミックたちを生むんだぞ」

「え、タマ妊娠してるの?」

「見れば分かるだろう」

「分かりません‥‥‥」

浮竹には前のタマとの違いが分かっているようであったが、京楽にはさっぱり分からなかった。

「ほら、タマはメスだから口の端が少しピンク色だろう?それが赤くなり気味だからそれが妊娠してる証だ」

「へぇ」

「宝を入れるスペースに子供を宿すから、見た目では色でしか判断できない。ちなみに卵じゃなくって赤ちゃんの状態で通常3~5匹産む」

「ふ~ん」

「きしきしきし」

京楽が浮竹のミミック講座を聞いている間に、タマは京楽がまだ食べ残していたクレープを食べてしまった。

「あ、やったな、タマ!こら!」

「母体だから、栄養価の高いものを食いたがるんだ。野生のミミックも、妊娠中のメスはけっこうなんでも食うぞ」

「え。じゃ、じゃあ人間も?」

「ああ、そうだだな。妊娠中のメスは人間も食う」

「ぎゃあああああああ。タマに食われるうううううう」

「躾してあるし、人と同じ食事を与えているから大丈夫だ。野良の妊娠中のミミックは人食いミミックと大差ないから注意が必要だが。ちなみに、牧場の妊娠したメスには主に果物と肉をあげている」

「ミミック博士だね、浮竹は」

「ミミックに詳しくないと、牧場で増やせたりできないからな。まだまだダンジョンのミミックは不足している。まだまだ増やすぞー」

京楽は愛しい目で浮竹を見ながら、ポチとタマのリードの先をもって歩き出す。

ミミック色だが、それなりに楽しく幸せな時間を過ごす。

「あ、あそこの鍛冶屋新しい剣が売ってる。今使ってる剣、刃こぼれしてるし使いにくいから、買い替えたかったんだよな。寄って行っていいか?」

「いいよ」

「ポチ、タマ、どっちがいいと思う?」

浮竹は、表面にミスリルを使っている片手剣と、表面にミスリル銀を使っている片手剣を手に取って比べていると、ポチもタマも、どちらでもなく銀貨2枚セールのだめな剣が入った樽の一本を器用に口でくわえて、浮竹にすすめた。

「お、こいつ魔剣か。かなりさびついてるが‥‥研げば、立派になりそうだな。店の親父、この剣を銀貨2枚でもらうがいいか?」

「いいぞ。そんなボロボロな魔剣、研ごうにもそんな職人はいないと思うがな」

「やった、いい買い物をした」

「浮竹、そんなにぼろいの、研いでも無駄だと思うけど」

「なぁに、タロウは特殊なミミックでな。金属の武具を新品同様にできる能力をもっているんだ。だから、タロウの体の中にこの魔剣を入れて、新品にしてもらう」

「た、タロウにそんな力が」

タロウは、浮竹と京楽の家で飼っているミミックの中の1匹だ。

「まさか銀貨2枚とは。新しかったら、白金貨20枚はするぞ」

「まさに掘り出しものだね」

「ポチとタマに感謝だな。今日はブラックワイバーンのステーキを食わせてやろう」

「きしきしきし」

「きしきしぃ」

ポチとタマは、嬉しそうに飛び跳ねた。

「帰ろうか」

「うん」

浮竹と京楽は、手を繋ぎ合う。ポチとタマのリードの先を浮竹が右手でもって、みんなで帰宅するのであった。

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