ドラゴン族の子とミミック17
京楽は、ダークドラゴンになって暴走した。それを、Sランクの浮竹と霊刀の京楽で切りつけられて沈められた。
傷跡が残った。
その傷跡を見るたびに、浮竹は己の力のなさに悲しくなった。
二人きりで里で過ごしていた時も、京楽はドラゴンになって暴走することがあった。浮竹が命がけで止めるか、里の者が強制的に止めていた。
ドラゴンになれぬ浮竹より、暴走する京楽のほうが恐れられて捨てられてからも時折里の者が様子を見に来た。
「お前たちは、今日をもって里を追放とする。京楽、お主はダークドラゴンになって暴走し、里の者を傷つけた。もう、里のすみにでも置いてやることもできぬ。早々に里から立ち去れ。立ち去らねば、殺す」
同胞からそう言われて、まだ少年だった京楽と浮竹は、身を寄せ合って顔を伏せた。
里を追い出されて、冒険者として生きていこうと決意するまで、人里に近い場所で自力で建てた小屋に住み着き、竜血石を売って暮らした。
「浮竹、冒険者になろうよ」
「冒険者?」
「そう。いろんなダンジョンや遺跡やクエストを受けたりして、冒険してお金を稼ぐんだ。そうすれば、もう自分を傷つけて竜血石を売る必要もない。この前みたいに、人間に竜血石めあてで狩られそうになることも、きっとなくなる」
「世界を冒険か。いいな。なりたいなぁ」
その時、浮竹は病を患っていた。
竜人族だけがかかる病だった。うつることはないので、浮竹を遠ざけはしなかったが。
治す方法は、ある薬草を手に入れること。その薬草は竜人族の里にしか生えなかった。京楽は、もう里にきてはいけないという戒律を破り、里に侵入して薬草を手に入れた。
大人たちに切り刻まれ、ボロボロになりながら。
「ごほっごほっ。京楽、やだ、死なないで」
「ボクは大丈夫。薬草煎じるから、早くよくなってね」
悲しいほどに、竜血石ができた。
病から回復した浮竹は、大けがをして臥せっている京楽のために、人の町にいって竜血石を売り、ポーションをたくさん買ってきた。
「ほら、京楽ポーションだ」
「うん。ありがとう」
京楽の怪我は、高価なポーションのお陰か治った。
「ああ‥‥夢、か」
浮竹は、目を開けた。
いつの間にか、泣いていた。
浮竹の病のために里に侵入して、大人たちに殺されそうになった京楽を思いだして、涙を零していたらしい。
「きしきしきし?」
なんで泣いているの?
ポチが近くに寄ってきてそう聞いてくるので、浮竹は柔らかい笑みを浮かべてポチを撫でる。
「昔のことを思い出していたんだ。京楽の傷を見たせいで、忘れかけていた記憶を思い出した」
なるべく、昔のいやなことは忘れようとしていた。
京楽がドラゴン化して暴走したせいで、忘れかけていた記憶が呼び覚まされる。
「お前は死ぬべきだ!」
「どうして?どうして、お父さん」
「お父さんと呼ぶな!ドラゴンになれぬ竜人族など、災いの象徴。災厄をもたらす。里を追い出されても、きっといつか里を滅ぼしにくる」
「そんなことしない!」
「死ね!」
浮竹の父親は、槍で浮竹の胸を貫いた。
思い出した。
自分は、本当は一度死んでいるのだ。
京楽の竜涙石の奇跡で蘇ったのだ。
「ああ‥‥京楽には、世話ばかりかけるな」
浮竹は泣いた。
父にも母にも疎まれているのは知っていた。だが、殺されるほどに忌み嫌われていると、死ぬその間際まで思わなかったのだ。
「京楽」
「どうしたの、浮竹」
「一緒に、寝ていいか?」
「いいよ」
「傷はどうだ?」
「魔法で治ってるから、痛くはないよ?ただちょっと傷跡が疼くかんじがするけど」
浮竹は、京楽に抱きつく。
「浮竹?」
「お前は、いなくならないでくれ」
「いなくならないよ」
「うん」
そのまま、二人は眠った。
朝になると、浮竹はいつもの浮竹に戻っていた。
「ぬおおおおおお、ポチがプラチナのインゴットを出したああああ。金になるうう」
「はぁ、浮竹ってば」
「金貨少量食わせてプラチナのインゴットって大儲けだと思わないか、京楽」
「まぁ、それはそうだけど」
「よし、牧場をもう少し広げよう」
「ええ、またかい?」
「ミミックは数はいつでも足りないんだ。150匹くらい飼えるようにしよう」
その日の午前はミミック牧場で過ごして、午後からAランクダンジョンにもぐった。
「ここのフロアボスはヘルケルベロスだな。一度倒したことがあるから楽勝だ」
ヘルケルベロスを、浮竹と京楽は1分もかからず倒してしまった。
確実に強くなっていた。
Aランクでもかなり上位にいるのだろう。
「よし、ラスボスを倒すか」
「そうだね」
出てきたのは、知恵のない邪竜のアースドラゴンだった。
竜人族ではないとはいえ、ドラゴンは同胞に近いので浮竹と京楽は最初躊躇ったが、ダンジョンを攻略すると決意したので、アースドラゴンに立ち向かう。
「アルティメットノヴァ!」
「きしゃあああああ」
「ワールドエンド!」
「ぎゃうううう」
アースドラゴンは巨大な地震を起こし、岩を出現させて浮竹と京楽押しつぶそうとするが、二人は巧みに避けて最後は浮竹が火の魔法をエンチャントした魔剣で、アースドラゴンの逆鱗を貫いて、勝った。
「この魔剣、名前ないんだよな。ドラゴンも倒せたことだし、ドラゴンキラーとでも名付けよう」
「竜人族でドラゴンであるボクからしたら、いやな響きなんだけど」
「まぁ、そう気にするな」
浮竹は、笑って開いた宝物庫にミミックが数匹いるのを見つけて、飛び込んでいく。
「あああああ、ミミックだあああ」
「きしきしきしいい」
「きいきいきい」
ミミックたちは、浮竹から他のミミックの匂いをかぎつけて甘噛みしはじめる。
同時に複数のミミックに甘噛みされているが、浮竹は幸せそうだった。
やがて、ミミックたちは星金貨を大量にドロップした。
「この子たちは牧場に連れて行こう。新しい血筋が欲しいしな」
7匹いたミミックたちをアイテムポケットに押し込んで、浮竹と京楽はミミック牧場に戻る。
ダンジョンマスターには、ミミックを増やすということでミミック捕獲の許可をもらったので、騒ぎにならなかった。
今、ダンジョンのミミックは激減していて、保護条令がでており、ダンジョンでミミックを殺した場合、罰金を払わねばならなかった。
けっこうな額なので、ミミックを殺して宝物のドロップをさせる輩はかぎりなくゼロに近づいたが、Sランクの金持ちな冒険者の中にはミミックをわざと殺して罰金を払っている者もいる。
Sランクダンジョンのミミックはとにかく不足気味で、浮竹はSランクダンジョンに放つミミックたちには護身術を覚えさせてから放っていた。
「はぁ‥‥‥ミミックも、200号以上になってきたなぁ」
ミミック牧場のミミックは大量で、浮竹もさすがに名前が分からなくなってきた。
京楽がミミックの内側にナンバーを油性マジックで書くので、それで見分けをつけていた。
牧場のミミックは、飼っているミミックと違ってほとんど個性がない。
「きしきしきし」
「え、肉が食いたい?」
「きしきし」
「仕方ないなぁ。京楽、バーベキューの用意だ」
「ええ、またぁ?先週もしたばかりだよ!」
ブラックワイバーンの肉が大量にアイテムポケットに入っているので、肉不足になることはない。
「おっと、ダンジョンで回収したミミックたちを出さないとな」
浮竹がアイテムポケットからミミックを出して牧場に入れると、すぐに牧場のミミックと仲良くなった。そうなる前に、京楽が油性マジックで内側に221号とかかいていたが。
「はぁ。ミミック日和のいい天気だ」
「きしきしい」
京楽がバーベキューの用意をしている間、浮竹はミミック牧場の芝生に寝っ転がる。
大空が広がっていた。
「きしきしきし」
「ん?腹減ったのか?金貨食うか?」
「きしきしいい」
金貨を10枚食べさせると、ポチは少量だがオリハルコンをドロップした。
オリハルコンは欠片でも膨大な値段がつく。
「ポチ、お前ドロップするものどんどん高額になっていくな?」
「きしい?」
「まぁ、いいか」
浮竹はバーベキューでミミックたちに肉をやるのを京楽に任せて、うたた寝するのであった。
傷跡が残った。
その傷跡を見るたびに、浮竹は己の力のなさに悲しくなった。
二人きりで里で過ごしていた時も、京楽はドラゴンになって暴走することがあった。浮竹が命がけで止めるか、里の者が強制的に止めていた。
ドラゴンになれぬ浮竹より、暴走する京楽のほうが恐れられて捨てられてからも時折里の者が様子を見に来た。
「お前たちは、今日をもって里を追放とする。京楽、お主はダークドラゴンになって暴走し、里の者を傷つけた。もう、里のすみにでも置いてやることもできぬ。早々に里から立ち去れ。立ち去らねば、殺す」
同胞からそう言われて、まだ少年だった京楽と浮竹は、身を寄せ合って顔を伏せた。
里を追い出されて、冒険者として生きていこうと決意するまで、人里に近い場所で自力で建てた小屋に住み着き、竜血石を売って暮らした。
「浮竹、冒険者になろうよ」
「冒険者?」
「そう。いろんなダンジョンや遺跡やクエストを受けたりして、冒険してお金を稼ぐんだ。そうすれば、もう自分を傷つけて竜血石を売る必要もない。この前みたいに、人間に竜血石めあてで狩られそうになることも、きっとなくなる」
「世界を冒険か。いいな。なりたいなぁ」
その時、浮竹は病を患っていた。
竜人族だけがかかる病だった。うつることはないので、浮竹を遠ざけはしなかったが。
治す方法は、ある薬草を手に入れること。その薬草は竜人族の里にしか生えなかった。京楽は、もう里にきてはいけないという戒律を破り、里に侵入して薬草を手に入れた。
大人たちに切り刻まれ、ボロボロになりながら。
「ごほっごほっ。京楽、やだ、死なないで」
「ボクは大丈夫。薬草煎じるから、早くよくなってね」
悲しいほどに、竜血石ができた。
病から回復した浮竹は、大けがをして臥せっている京楽のために、人の町にいって竜血石を売り、ポーションをたくさん買ってきた。
「ほら、京楽ポーションだ」
「うん。ありがとう」
京楽の怪我は、高価なポーションのお陰か治った。
「ああ‥‥夢、か」
浮竹は、目を開けた。
いつの間にか、泣いていた。
浮竹の病のために里に侵入して、大人たちに殺されそうになった京楽を思いだして、涙を零していたらしい。
「きしきしきし?」
なんで泣いているの?
ポチが近くに寄ってきてそう聞いてくるので、浮竹は柔らかい笑みを浮かべてポチを撫でる。
「昔のことを思い出していたんだ。京楽の傷を見たせいで、忘れかけていた記憶を思い出した」
なるべく、昔のいやなことは忘れようとしていた。
京楽がドラゴン化して暴走したせいで、忘れかけていた記憶が呼び覚まされる。
「お前は死ぬべきだ!」
「どうして?どうして、お父さん」
「お父さんと呼ぶな!ドラゴンになれぬ竜人族など、災いの象徴。災厄をもたらす。里を追い出されても、きっといつか里を滅ぼしにくる」
「そんなことしない!」
「死ね!」
浮竹の父親は、槍で浮竹の胸を貫いた。
思い出した。
自分は、本当は一度死んでいるのだ。
京楽の竜涙石の奇跡で蘇ったのだ。
「ああ‥‥京楽には、世話ばかりかけるな」
浮竹は泣いた。
父にも母にも疎まれているのは知っていた。だが、殺されるほどに忌み嫌われていると、死ぬその間際まで思わなかったのだ。
「京楽」
「どうしたの、浮竹」
「一緒に、寝ていいか?」
「いいよ」
「傷はどうだ?」
「魔法で治ってるから、痛くはないよ?ただちょっと傷跡が疼くかんじがするけど」
浮竹は、京楽に抱きつく。
「浮竹?」
「お前は、いなくならないでくれ」
「いなくならないよ」
「うん」
そのまま、二人は眠った。
朝になると、浮竹はいつもの浮竹に戻っていた。
「ぬおおおおおお、ポチがプラチナのインゴットを出したああああ。金になるうう」
「はぁ、浮竹ってば」
「金貨少量食わせてプラチナのインゴットって大儲けだと思わないか、京楽」
「まぁ、それはそうだけど」
「よし、牧場をもう少し広げよう」
「ええ、またかい?」
「ミミックは数はいつでも足りないんだ。150匹くらい飼えるようにしよう」
その日の午前はミミック牧場で過ごして、午後からAランクダンジョンにもぐった。
「ここのフロアボスはヘルケルベロスだな。一度倒したことがあるから楽勝だ」
ヘルケルベロスを、浮竹と京楽は1分もかからず倒してしまった。
確実に強くなっていた。
Aランクでもかなり上位にいるのだろう。
「よし、ラスボスを倒すか」
「そうだね」
出てきたのは、知恵のない邪竜のアースドラゴンだった。
竜人族ではないとはいえ、ドラゴンは同胞に近いので浮竹と京楽は最初躊躇ったが、ダンジョンを攻略すると決意したので、アースドラゴンに立ち向かう。
「アルティメットノヴァ!」
「きしゃあああああ」
「ワールドエンド!」
「ぎゃうううう」
アースドラゴンは巨大な地震を起こし、岩を出現させて浮竹と京楽押しつぶそうとするが、二人は巧みに避けて最後は浮竹が火の魔法をエンチャントした魔剣で、アースドラゴンの逆鱗を貫いて、勝った。
「この魔剣、名前ないんだよな。ドラゴンも倒せたことだし、ドラゴンキラーとでも名付けよう」
「竜人族でドラゴンであるボクからしたら、いやな響きなんだけど」
「まぁ、そう気にするな」
浮竹は、笑って開いた宝物庫にミミックが数匹いるのを見つけて、飛び込んでいく。
「あああああ、ミミックだあああ」
「きしきしきしいい」
「きいきいきい」
ミミックたちは、浮竹から他のミミックの匂いをかぎつけて甘噛みしはじめる。
同時に複数のミミックに甘噛みされているが、浮竹は幸せそうだった。
やがて、ミミックたちは星金貨を大量にドロップした。
「この子たちは牧場に連れて行こう。新しい血筋が欲しいしな」
7匹いたミミックたちをアイテムポケットに押し込んで、浮竹と京楽はミミック牧場に戻る。
ダンジョンマスターには、ミミックを増やすということでミミック捕獲の許可をもらったので、騒ぎにならなかった。
今、ダンジョンのミミックは激減していて、保護条令がでており、ダンジョンでミミックを殺した場合、罰金を払わねばならなかった。
けっこうな額なので、ミミックを殺して宝物のドロップをさせる輩はかぎりなくゼロに近づいたが、Sランクの金持ちな冒険者の中にはミミックをわざと殺して罰金を払っている者もいる。
Sランクダンジョンのミミックはとにかく不足気味で、浮竹はSランクダンジョンに放つミミックたちには護身術を覚えさせてから放っていた。
「はぁ‥‥‥ミミックも、200号以上になってきたなぁ」
ミミック牧場のミミックは大量で、浮竹もさすがに名前が分からなくなってきた。
京楽がミミックの内側にナンバーを油性マジックで書くので、それで見分けをつけていた。
牧場のミミックは、飼っているミミックと違ってほとんど個性がない。
「きしきしきし」
「え、肉が食いたい?」
「きしきし」
「仕方ないなぁ。京楽、バーベキューの用意だ」
「ええ、またぁ?先週もしたばかりだよ!」
ブラックワイバーンの肉が大量にアイテムポケットに入っているので、肉不足になることはない。
「おっと、ダンジョンで回収したミミックたちを出さないとな」
浮竹がアイテムポケットからミミックを出して牧場に入れると、すぐに牧場のミミックと仲良くなった。そうなる前に、京楽が油性マジックで内側に221号とかかいていたが。
「はぁ。ミミック日和のいい天気だ」
「きしきしい」
京楽がバーベキューの用意をしている間、浮竹はミミック牧場の芝生に寝っ転がる。
大空が広がっていた。
「きしきしきし」
「ん?腹減ったのか?金貨食うか?」
「きしきしいい」
金貨を10枚食べさせると、ポチは少量だがオリハルコンをドロップした。
オリハルコンは欠片でも膨大な値段がつく。
「ポチ、お前ドロップするものどんどん高額になっていくな?」
「きしい?」
「まぁ、いいか」
浮竹はバーベキューでミミックたちに肉をやるのを京楽に任せて、うたた寝するのであった。
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