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ラブファントム「固執する」

パン、パァン。
射撃訓練室で、ティエリアは的を正確に射撃する。
銃は、特別性で筋力のあまりないティエリアが持てるように軽くつくられている。
的が動く。
サッと、現れては、次は違う場所に現れる。
普通の射撃訓練ではない。
人が動いているのを想定してでの射撃訓練だ。
ティエリアは、打ちつくした銃をに弾を新しく装填して、撃っていく。
どれも、頭、そして心臓を撃ち抜いていた。
人間の、急所。
的は心臓と頭。
それを、無言で撃ち抜いていく。
ピピピピピピ。
数値が出てくる。合成音声が、結果を告げる。
「命中率83%。非常に正確な射撃です。先日は76%でしたね」
ティエリアは、銃をおろした。
「おとついは85%だった。腕が鈍っている」
「そうでもありません。このように移動する的を正確に射撃できる人間はまず少ないです。ロックオン・ストラトスが現在最高の92%の数値を出しています」
「ロックオン・ストラトスが!?」
確かに、彼は銃の名手だ。
その腕はずば抜けているし、ガンダムデュナメスでも粒子ビームライフルを用いて敵を撃ち落とす。
「この僕が、人間如きに負けるなんて!」
ギリっと、歯軋りをする。
ティエリアは、いてもたってもいられなくて、射撃訓練室を後にすると、ロックオンの部屋を訪れた。
「お、どうしたティエリア。お前から俺の部屋にくるなんて珍しいな」
「射撃訓練で、92%の数値を出したのは、本当ですか?」
「ああ、本当だぜ?」
ティエリアは動体視力がずばぬけていい。動く的を射抜く銃の腕は、トレミー一だと自負していた。
「この!」
ティエリアが荒々しくロックオンの服を掴む。
「ティエリア?」
「二年間もずっと訓練してきたのに!誰よりも訓練してきたのに!どうしてだ!どうしてなんだ!どうして僕が人間に劣るというのだ!」
ロックオンも訓練をずっとしていたが、その2倍も3倍もティエリアは訓練していた。
努力を怠ったわけではない。
天賦の才能といわれればそれまでだが、納得がいかなかった。
ヴェーダは、ティエリアが最高であると評価してくれた。
他のどの人間にも劣っていないと。
「ヴェーダは僕が一番だと言ってくれた。なのに、どうして負けるんだ!」
ポロリ。
ティエリアの瞳から、大粒の涙が溢れた。
涙は堰をきったように溢れ、ティエリアの雪のような白い肌の頬を伝って、床に滑り落ちる。
ティエリアは、ロックオンの服を離した。
そして、ロックオンの部屋に力なくへたりこむ。
「僕は、僕は、一番じゃないとダメなのに。一番じゃないと、処分されてしまう。嫌だ、処分は嫌だ」
「おい、何言ってるんだ。お前が処分なんてされるはずないだろう!」
ロックオンが、ティエリアを抱きしめる。
石榴の瞳からは、涙が溢れ続けている。
「イオリアが、僕が一番でなければ処分するって。僕は人形だって。僕は、人間じゃない。ただの人形だ。でも、でも、処分は嫌だ」
ティエリアは泣きじゃくった。
ティエリアが涙を零す場面は始めてみるが、それよりも言葉の内容のほうが衝撃的だった。
「イオリア、嫌だ、僕を処分しないで!」
虚空に向かって手を伸ばす。
ティエリアは。
そう、ティエリアは、イオリアの時代にも生きていたのだ。
その記憶は破棄されたと聞いていたが、完全に破棄されていなかったのだろう。
ロックオンが、ティエリアの手を握り締める。
「処分なんて、俺が絶対にさせねぇ。俺が、ティエリアの傍にいてティエリアを守る」
「僕を、守る?」
「そうだ。俺が、お前さんを守る。ずっと、ずっと。絶対に、誰にも傷つけさけない。だから、処分なんてされないから安心しろ」
ティエリアの頭を撫でる。
何度も何度も。
「お前は人間だ」
「僕が、人間?」
「そうだ。ティエリア・アーデという名前の一人の人間だ」
「僕は」
分からない。
僕は、人間ではないとヴェーダが言っていた。ヴェーダの答えはいつも正しい。
ヴェーダは嘘をつかない。
「ヴェーダが、僕は人間ではないと言っていた」
「それでも、人間だ」
ぎゅっと、ティエリアを抱きしめるロックオン。
もう、自分の心を偽ることも止めよう。そうだ、俺はティエリアが好きなんだ。
「好きだ、ティエリア」
「ロックオン・ストラトス」
ぎゅっと抱きしめられて、ティエリアはまた新しい涙を零した。
ティエリアの胸に、ふいに湧き上がってきた感情。
これはなんだ。
こんな感情、僕は知らない。

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