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ヴァンパイアと神父

そのヴァンパイアは、名前を京楽春水といい、ヴァンパイアロードだった。

幾人ものヴァンパイアハンターを退けてきたことで有名だった。

京楽は、ある日興味本位で人の街におもむき、教会に寄った。

教会の十字架なぞ、ヴァンパイアロードである京楽には意味がなかった。銀の弾丸さえも、意味をなさない。

それだけ、ヴァンパイアロードは強く、ある意味ヴァンパイアたちの王だった。

「はじめまして。教会ははじめてですか?」

いきなり声をかけられて、京楽は振り返る。

「ああ、はじめてなんだよ」

そこにいたのは、白い長い髪に、翡翠の瞳をもった麗人。

神父の服を着ているので、聖職者だと分かった。

「神に祈りを。懺悔しますか?」

「神に死を。君を攫う」

「え?」

京楽は、一目見て浮竹を気に入ってしまい、教会からいきなり自分の古城に転移した。

「なんだこれは!」

「ああ、知らないの?転移魔法」

「転移魔法なんて、Sランク冒険者くらいしか・・・・・」

「ボクは京楽春水。ヴァンパイアロードだよ」

いきなりの自己紹介に、浮竹は一歩後ろに下がる。

「ヴァンパイアロード・・・・・そんな存在が、俺に何の用だ!」

「いや、君を気に入ったから、眷属にしようと思ってね」

「このヴァンパイアめ!」

浮竹は、十字架をつきつけた。

「で?」

「え、あれ、十字架かが効かない。じゃあ、これでどうだ!」

浮竹は、所持していた銃で銀の弾丸を京楽の胸に撃った。

「で?」

「え、あれ、おかしいな。ヴァンパイアは銀に弱いはずなのに」

「ボクはただのヴァンパイアじゃない。上位種でヴァンパイアロード。その中でも上位の王種だよ」

「ヴァンパイアロード・・・・・そんな存在が、俺を眷属に?」

「そうだよ。さぁ、いきなりだけど式を挙げよう。君はボクの花嫁として、眷属になってもらう」

「ごめんこうむる!」

浮竹は、銃をこめかみに向けて、自殺しようとした。

「だめだよ。死んじゃだめだ」

京楽は、自分の血をこめかみから血を流している浮竹に与えた。

王種であるせいか、死者にも効果があった。

「俺は・・・・神父だった」

「血を与えた。これで君もヴァンパイアだ。ボクと一緒に生きよう」

「一緒に生きる・・・・・その選択しか、俺にはないのか」

「そうだよ。それとも、ボクを殺して独立するかい?」

「お前との力の差がありすぎる。仕方ない、ヴァンパイアの神父になろう」

浮竹の言葉に、京楽は笑った。

「ヴァンパイアなのに、神父を続けるの?」

「そうだ。悪いか?」

「いや、別に君の自由だけど」

それから、京楽と浮竹は同じ古城で生活することになった。


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「おい、起きろ、京楽。朝の8時だぞ!」

「うーーーん。ヴァンパイアは普通、夜型だよ」

「俺は昼型だ。それに、お前もよく昼間に徘徊してるだろう」

「人をぼけたじいさんみたいに言うのは、よしてくれないかい」

「じゃあ、朝飯はいらないんだな」

「いや、食べるよ!君の作った料理、おいしいからね」

ヴァンパイアでも、普通に食事ができた。

その気になれば、人の血を吸わずに人工血液製剤や輸血パックから血を摂取できる。

京楽も浮竹も、人工血液製剤を利用していた。

「北のトエイで、またヴァンパイアがヴァンパイアハンターの神父に殺されたそうだよ」

「トエイ・・・・近いな」

目と鼻の先であった。

「ここに、こなければいいが・・・・・」

「多分、くるんじゃない?そんな気がする」


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やってきたヴァンパイアハンターは、名を黒崎一護といった。朽木ルキアという精霊を連れていた。

「あんたらの運命もここまでだ。死んでもらう」

「いや、俺は何もしてないぞ。おまけにヴァンパイアだけど神父だ」

「ボクはせいぜい、やってきたヴァンパイアハンターを返り討ちにしたくらいかな。人の血は吸わない。人工血液製剤で血を補っている」

「そ、そうだとしてもヴァンパイアの存在は罪だ。許されねぇ」

一護は、銀のナイフを京楽の心臓に突き立てた。

「だから、何?」

「まじかよ!銀の武器が通じないだって!」

「一護君だっけ。退いた方が身のためだよ。こいつ、ヴァンパイアロードの王種だ。ハイヴァンパイアキングだ」

「げ」

一護は、ルキアを呼び出して、結界を作った。

「ルキア、こいつらまとめて燃やせねぇか」

「無理を言うな!力の差がありすぎて、焦げもせんわ!」

ルキアは、京楽と浮竹に謝罪した。

「うちの一護がすまぬ。去るので、どうか生かしてはくれまいか」

「でも、生かして帰ったら、またヴァンパイアを狩るんでしょう?」

「そりゃそうだ。それが俺の仕事だからな」

「こら、一護。交渉中だ、口を開くな!」

「もがーーー」

けっこう力のあるルキアに口を塞がれて、一護は目を白黒させていた。

「まぁ、いいよ。行っても。ボクは他のヴァンパイアは、浮竹以外に興味はないから」

「ありがたい。去るぞ、一護!」

「おい待てよ、ルキア!」

走り出したルキアの後を追って、一護も去ってしまった。

「なんだったんだ、あれは」

「ん、ただのヴァンパイアハンターじゃないけど、ボクに勝てないと分かって、逃げ出したことになるね」

「ヴァンパイアハンターが逃げるなんて、お前、けっこうすごいヴァンパイアロードなんだな」

その言葉に、京楽がずっこけた。

「あのねぇ、君のマスターはボク。ボクの力で、一度死んだのを蘇らせたのに」

「いや、だってヴァンパイアの花嫁って、永遠に使役されるんだろう?」

「ボクは君を大切にしているつもりだよ。ふふふ、それとも愛が足りない?」

京楽は、浮竹を抱き寄せた。

浮竹は、マスターである京楽の鳩尾に拳を入れる。

「花嫁になったつもりはない。あくまで、対等の関係だ」

「ふふ・・・・ボクをここまで否定して、拒絶するのは君くらいだよ。君を大切にしているから、無理やり契ったりしないけど・・・・・」

「契る・・・」

浮竹は真っ赤になった。

この京楽は男女どっちでもいけるらしかった。

「あと50年経てば、契ってやってもいい」

「え、まじで!?50年なんてあっという間じゃない」

ヴァンパイアの時間の感覚は人間とは違う。

また何度かヴァンパイアハンターが来たりしたが、皆返り討ちにして、浮竹と京楽は50年の時間を過ごしてしまった。


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「50年前に言った言葉、覚えてる?」

「忘れた」

浮竹は本気で忘れていて、京楽はがっかりした。

「50年一緒にいれば、契ってもいいと君は言ったんだよ」

「ななな、そ、そんなこと俺は言ったか?」

「言ったよ。だから、今夜君を抱くよ」

「何故俺なんだ」

「そりゃ、君が僕の眷属で花嫁だから」

「納得がいかない。俺がお前を抱く」

「ええええええええ!!」

「手加減はしてやる!」

浮竹と京楽は、どっちがどっちを抱くかでもめて、結局その年は何も起きなかったのだった。



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