世界が終わっても「いつも捧げる花束」
世界が終わっても。
あなたを愛しているから。
世界が始まっても。
あなたを愛し続けているから。
世界が終わった後も。
変わらないから。この想いは、きっとではく、絶対に、永遠に。
今日も、変わらずアイルランドの空は青かった。
手を伸ばしても届かない青空。
よく、あの人と一緒にこの空の下を歩いたっけ。一緒に手を繋いで、笑いあって。時には、あの人の車に乗り込んで、互いに運転したり。
ああ、懐かしい。
還って、きたよ。
ただいま
おかえりって言葉は、何処からもこない。
でも、還って来たよ。
私は、生き抜いてあなたの意志を継いで、未来を切り開いた。
自分でも、うん、頑張ったと思う。
私なりに、頑張れたと思う。あなたの意志を完全に継げれたかどうかは分からないけれど。
これから、まだまだ未来は不安定で、いつ戦いになるかも分からないけれど、一応の平和は訪れた。
あれから、もう5年以上になるね。
あなたが消えてから。
でも、いつまでも私の心に鮮明に残っているから。振り返れば、ほらそこにあなたがいる気がする。
おかしいね。
そんなこと、おこるはずないのに。
私は、いつものように、週末になった今日に、手に白い薔薇と百合の花束を抱えて、あなたの墓を訪れる。
勝手に、墓を作ってしまってごめんなさい。
でも、どうしても、これだけは私の手で作りたかったから。
墓標に花を添え、枯れてしまった先週に捧げた花を手にとる。
カサカサと乾いた音をたてて、枯れた白い薔薇の花びらが風に揺れて数枚空に飛んでいった。
吹き抜ける風は強くて、私は思わず自分の髪をおさえた。
プラチナに翡翠を花形にはめ込んだ髪飾りに、髪がひっかかる。それをとって、空を見上げた。
「あの青空は、ただ蒼く」
髪をおさえながら、空を仰ぐ。
紺碧。落ちてきそうな、まっさおなスカイブルー。いい天気だ。風のざわめきが聞こえる。小鳥たちの囀りが聞こえる。
季節は、春。
ヒラヒラと、桜色の花びらが舞ってきた。
それに気づいて、振り返ると、墓場の近くに大きな桜の木があった。
ああ、そうか、もう満開の季節なんだ。
着ている服は、冬物だ。あまり温度を感じないから、少し場違いかもしれない。
先週まで、てっきり雪がまだ降り積もっているのだと思っていた。雪なんて、とっくの昔にとけたのに。
どうしてだろうね。
季節が移り変わるごとに、私は一人取り残されている気がする。
隣に、あなたがいないせいだろうか。
「桜の下には、死体が埋まっているんだよ」
よく、詩なんかにある言葉を口にする。
でも、死体が本当に埋まってるなんてことはない。桜がその血を吸うからピンク色なんだなんて、考えすぎというか、こじつけにすぎないというか。
でも、本当に桜は綺麗。
私は大好きだ。
桜には、きっと精霊がいると思う。
私は、そっとあなたの墓に彫られた名前を指でたどる。
「ロックオン・ストラトス」
・・・・・・・・そう、私にとってあなたはニール・ディランディであると共に、ロックオン・ストラトスであった。あなたの弟のライルがそのコードネームを継いでガンダムマイスターになったとき、その姿を始めてみた私は、不覚にも動揺して泣きそうになった。
でも、彼はあなたじゃない。
あなたを重ねる事は簡単だったし、本人も辛いなら重ねればいいなんて優しいこといってくれたけれど、そんなことして傷つくのはライルに、それに私自身。
ヒラヒラと舞う、桜並木を、昔二人で一緒に歩んだね。
綺麗だねといって、まるで桜雪のようだと笑いあいながら。
「ティエリア、行くぞー」
「はーい」
あなたはエメラルドのような、翡翠のような瞳をいつも優しく輝かせて。
そう、こうじっと、いつも私を見つめていてくれた。
そのエメラルドの瞳で・・・・。
ヒラヒラと桜が舞う季節。
私はもう一度宇宙に行くのだと決意し、仲間を集めてCBを再建し、あなたの意志を継いで歩き出した。
その旅も、もう終わりだね。
こうして、ヒラヒラと桜が舞う季節に、いっそ私も桜のように散ってしまえたらいいのにね。
綺麗に、綺麗に、風に揺れて。
「世界が終わっても、もう一度出会えるって信じてた?」
「いいえ」
きっぱりと私は首を振る。
目の前のあなたは、桜に埋もれていきそうだ。
「世界が終わっても、まだ愛してくれてる?」
「はい」
今度は、きっぱりと答えた。
これは、本当だから。
だって、私の世界はあなたが死んだことで終わった。
アダムとイヴが楽園を追放された、失楽園のように、一度終わったのだ。そこから、私はあなたの意志を継ぐために立ち上がり、仲間に支えられて歩んできた。
でも、それももう終わり。
「迎えに、来てくれたのですか?」
「そうだっていったら、一緒にくるか?」
「はい、行きます」
私は、差し伸べられた手を迷いもなく握り締める。
チラチラと桜が舞い散る。
桜雪。
まるで雪のように降り積もる、桜の花びら。
「連れて行く・・・・・ただいま」
隻眼であったはずの瞳は、綺麗に二つある。
桜がチラチラと舞う。
「ただ・・・いま・・・・・」
あなたは、そういって、私を抱き寄せた。
だき、よ、せた・・・。
温もりが、伝わってくる。
ねぇ、どうして?
涙が止まらないの。
私は、今更になって壊れてしまったの?
でも、それでもいいから。
「おかえりなさい・・・・」
私は、桜の花びらを全身に受けながら、永遠に口にすることのできないはずだった言葉を口にしていた。
あなたを愛しているから。
世界が始まっても。
あなたを愛し続けているから。
世界が終わった後も。
変わらないから。この想いは、きっとではく、絶対に、永遠に。
今日も、変わらずアイルランドの空は青かった。
手を伸ばしても届かない青空。
よく、あの人と一緒にこの空の下を歩いたっけ。一緒に手を繋いで、笑いあって。時には、あの人の車に乗り込んで、互いに運転したり。
ああ、懐かしい。
還って、きたよ。
ただいま
おかえりって言葉は、何処からもこない。
でも、還って来たよ。
私は、生き抜いてあなたの意志を継いで、未来を切り開いた。
自分でも、うん、頑張ったと思う。
私なりに、頑張れたと思う。あなたの意志を完全に継げれたかどうかは分からないけれど。
これから、まだまだ未来は不安定で、いつ戦いになるかも分からないけれど、一応の平和は訪れた。
あれから、もう5年以上になるね。
あなたが消えてから。
でも、いつまでも私の心に鮮明に残っているから。振り返れば、ほらそこにあなたがいる気がする。
おかしいね。
そんなこと、おこるはずないのに。
私は、いつものように、週末になった今日に、手に白い薔薇と百合の花束を抱えて、あなたの墓を訪れる。
勝手に、墓を作ってしまってごめんなさい。
でも、どうしても、これだけは私の手で作りたかったから。
墓標に花を添え、枯れてしまった先週に捧げた花を手にとる。
カサカサと乾いた音をたてて、枯れた白い薔薇の花びらが風に揺れて数枚空に飛んでいった。
吹き抜ける風は強くて、私は思わず自分の髪をおさえた。
プラチナに翡翠を花形にはめ込んだ髪飾りに、髪がひっかかる。それをとって、空を見上げた。
「あの青空は、ただ蒼く」
髪をおさえながら、空を仰ぐ。
紺碧。落ちてきそうな、まっさおなスカイブルー。いい天気だ。風のざわめきが聞こえる。小鳥たちの囀りが聞こえる。
季節は、春。
ヒラヒラと、桜色の花びらが舞ってきた。
それに気づいて、振り返ると、墓場の近くに大きな桜の木があった。
ああ、そうか、もう満開の季節なんだ。
着ている服は、冬物だ。あまり温度を感じないから、少し場違いかもしれない。
先週まで、てっきり雪がまだ降り積もっているのだと思っていた。雪なんて、とっくの昔にとけたのに。
どうしてだろうね。
季節が移り変わるごとに、私は一人取り残されている気がする。
隣に、あなたがいないせいだろうか。
「桜の下には、死体が埋まっているんだよ」
よく、詩なんかにある言葉を口にする。
でも、死体が本当に埋まってるなんてことはない。桜がその血を吸うからピンク色なんだなんて、考えすぎというか、こじつけにすぎないというか。
でも、本当に桜は綺麗。
私は大好きだ。
桜には、きっと精霊がいると思う。
私は、そっとあなたの墓に彫られた名前を指でたどる。
「ロックオン・ストラトス」
・・・・・・・・そう、私にとってあなたはニール・ディランディであると共に、ロックオン・ストラトスであった。あなたの弟のライルがそのコードネームを継いでガンダムマイスターになったとき、その姿を始めてみた私は、不覚にも動揺して泣きそうになった。
でも、彼はあなたじゃない。
あなたを重ねる事は簡単だったし、本人も辛いなら重ねればいいなんて優しいこといってくれたけれど、そんなことして傷つくのはライルに、それに私自身。
ヒラヒラと舞う、桜並木を、昔二人で一緒に歩んだね。
綺麗だねといって、まるで桜雪のようだと笑いあいながら。
「ティエリア、行くぞー」
「はーい」
あなたはエメラルドのような、翡翠のような瞳をいつも優しく輝かせて。
そう、こうじっと、いつも私を見つめていてくれた。
そのエメラルドの瞳で・・・・。
ヒラヒラと桜が舞う季節。
私はもう一度宇宙に行くのだと決意し、仲間を集めてCBを再建し、あなたの意志を継いで歩き出した。
その旅も、もう終わりだね。
こうして、ヒラヒラと桜が舞う季節に、いっそ私も桜のように散ってしまえたらいいのにね。
綺麗に、綺麗に、風に揺れて。
「世界が終わっても、もう一度出会えるって信じてた?」
「いいえ」
きっぱりと私は首を振る。
目の前のあなたは、桜に埋もれていきそうだ。
「世界が終わっても、まだ愛してくれてる?」
「はい」
今度は、きっぱりと答えた。
これは、本当だから。
だって、私の世界はあなたが死んだことで終わった。
アダムとイヴが楽園を追放された、失楽園のように、一度終わったのだ。そこから、私はあなたの意志を継ぐために立ち上がり、仲間に支えられて歩んできた。
でも、それももう終わり。
「迎えに、来てくれたのですか?」
「そうだっていったら、一緒にくるか?」
「はい、行きます」
私は、差し伸べられた手を迷いもなく握り締める。
チラチラと桜が舞い散る。
桜雪。
まるで雪のように降り積もる、桜の花びら。
「連れて行く・・・・・ただいま」
隻眼であったはずの瞳は、綺麗に二つある。
桜がチラチラと舞う。
「ただ・・・いま・・・・・」
あなたは、そういって、私を抱き寄せた。
だき、よ、せた・・・。
温もりが、伝わってくる。
ねぇ、どうして?
涙が止まらないの。
私は、今更になって壊れてしまったの?
でも、それでもいいから。
「おかえりなさい・・・・」
私は、桜の花びらを全身に受けながら、永遠に口にすることのできないはずだった言葉を口にしていた。
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