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世界と自分と

「京楽、愛している」


ミミハギ様を手放さそう。

京楽はどう思うだろう。

浮竹のいない世界を。

「京楽、目は大丈夫か?もう片方の目はちゃんと見えているか?」

山本総隊長が死に、総隊長となった京楽の傍らにはいつも浮竹がいた。

「大丈夫。いつ敵が襲ってくるかもわからないからね」

でも、その日の夜久しぶりに体を重ねた。

「この右目・・・・義眼をいれているのか?」

眼帯を外すと、緑色の無機質な瞳があった。

「君と同じ色の瞳のがいいと思ってね。でも、眼帯をしているから誰が見るものでもないんだけれど」

「俺の目の色は、みんな翡翠みたいだというんだ。そんなに綺麗な色じゃないのに」

「いいや、浮竹の目の色は翡翠だよ」

エメラルドの色は、日番谷だ。

同じ緑でも、色が違う。

「翡翠の首飾り・・・・してくれてるんだね」

「お前がくれた、お守り石だから」

「愛してるよ、京楽」

ああ。

愛しい。

この男が、どうしようもないくらい、狂おしいくらいに愛しい。

先に浮竹が逝くと知ったら、京楽は全てを捨ててまで止めてくれるだろうか。

世界と浮竹。

そんな選択肢になったら・・・・京楽のことだから、浮竹を選んでしまうかもしれない。

世界と、京楽と共に生きること。

その2つのうちに、どちらかを選べと言われたら、浮竹は世界を選ぶ。

だって、世界がなくなったら京楽も死んでしまうから。

愛しい京楽には、生き残ってほしい。

それは浮竹の我儘だった。

「何を考えているんだい」

「総隊長になり、眼帯をしたお前もかっこいいなって思っていた」

唇が重なる。

「浮竹・・・・・どこにもいかないでよ」

それは、できない約束だった。

世界と京楽。

浮竹は、京楽のためにも皆のためにも、世界を選ぶ。

いつか争いがなくなり、平和な時代がきたら、俺を想ってくれ。そう浮竹は心の中で呟いた。

夜明けがくるまで、ずっと二人きりで静かな時間を過ごしていた。

二人きりでいられるのは夜から明け方にかけてくらいで。

敵がいつ襲ってくるかも分からないので、厳戒態勢がしかれていた。

「おはよう、浮竹」

「おはよう、京楽」

今日も、1日が始まる。

最後の1日が、いつか始まる。

神掛をしよう。ミミハギ様を手放さそう。


それは、つまりは浮竹の死。

京楽は克服してくれるだろうか、俺の死を。

前を向いて歩いていってくれるだろうか。


どうか、悲しまないでほしい。

たくさんの愛をもらった。だから、たくさんの愛を与えた。

これは俺の我儘。


死神としての矜持。

尸魂界のためならば、この命。

たとえ、愛する者を裏切るようなことになっても。

喜んで、この命を手放さそう。


だから、どうか泣かないで。これは死神であるが故の選択。

いつか、二人で引退して、尸魂界を平和に生きたかった。

涙が零れそうになった。


「京楽、愛している」


浮竹は墜ちていく。

色のない世界へ。

先生、卯ノ花隊長・・・・いまそちらにいきます。


「京楽・・・愛している・・・・」

その想いだけは永遠。


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