院生時代の部屋エクセトラ
今日は、学院の掃除当番だった。しかも京楽と。
浮竹は頭の中にいつも花を咲かせている京楽を急かして、他の掃除当番と一緒に教室内をはいてゴミをとり、窓をふき、床にもっぷがけをした。
机を移動するのが大変だったが、京楽がもってくれた。
京楽は優しい。こういう心使いはけっこうじんわりとくるのだが、京楽が浮竹に懸想していることを知っているので、何も言えない。
ありがとうと言えば、抱き着いてくる始末だ。
「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」
「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」
ゴミの量はけっこう多く、一人でもつには重かった。
素直に、京楽の言葉に甘える。
ゴミを焼却炉にまでもっていき、その炎の中に捨てると、ぶわっと炎が大きくなった。
「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」
小さく爆発音がした。
京楽は、浮竹を庇っていた。
何かの破片が背中にささった京楽の姿に驚いて、声をあげる。
「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」
爆発は小さかったけれど、至近距離にいた京楽にダメージを負わせた。
「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」
医務室にいくと、誰もいなかった。
時間を見ると、もうみんな下校する時間だ。医務室の先生も、帰るのが早い。
「くそっ」
もっと自分で回道が使えたら。
仕方なしに、京楽の上の服を脱がせて破片をとると、アルコールで消毒して血止めを行い、ガーゼをあてて包帯を巻いた。
「念のため、帰りに病院に寄ろう」
火傷もしているらしかった。塗り薬をぬって、包帯を巻いていく。
「ありがとう、浮竹」
「俺なんて庇うから」
「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」
「このバカ!」
怪我をしているので殴らなかったが、頭にきた。
俺なんて庇うから。
そう思った。
ごみ箱を教室に戻して、下校する。
途中で病院に寄ったが、浮竹の処置はほぼ完ぺきで、火傷の痕が残らないように回道で手当てしてもらい、破片をぬいた傷跡は縫うほどのこともなかったので、同じく回道でほぼ塞いでもらって、包帯を巻きなおした。
その病院は、診察料は高いが、元4番隊の医者がいて、回道で傷を癒してくれるので、とても人気があった。
京楽の名を出すと、すぐに診てもらえた。
「帰るか・・・・・」
学院の食堂のある場所ならまだ空いているだろうが、怪我をして包帯を巻いた京楽を連れて行きたくなかった。
下町の店で弁当を二人分買い込んで、寮の自室に戻った。
「このバカ・・・・・・」
部屋にたどりつくと、浮竹は京楽を抱き締めた。
京楽は、優しく笑って、浮竹の頭を撫でた。
「君が無事でよかった」
「もう二度と、あんな真似するな!」
浮竹は怒っていた。
「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」
「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」
「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」
「そうなる前に敵を殺す」
ガスの入ったスプレーか何かをごみ箱にいれた、誰かも分からぬ者に殺意を覚えた。
「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」
学院の食堂の料理は安くて美味いしボリュームがあったが、病院に寄っていたのですでに閉まっていたし、包帯まみれの京楽を連れていきたくなかった。
次の日には、嘘みたいに傷は治っていた。浮竹が寝ている間に、京楽家のつてを使い、4番隊の死神を呼んでもらって完全に傷を治癒してもらったのだ。
そのことに、浮竹は安堵しながらも、京楽の心配をしまくていたせいで熱をだしてしまっていた。
「今日は、学校休んでね。僕も休むから」
教師に、ガスの入ったスプレーか何かがごみ箱に入っていたことを知らせ、怪我をしたので1日休ませてくれといったら、教師は今後そのようなことが起こらないように徹底的に生徒を指導すると約束してくれて、京楽は病欠ではなく特別欠席扱いになった。
浮竹は病欠だが。
「はぁ・・・・・」
熱が下がらない。
ごろりと横を向くと、同じベッドにいつの間にか京楽がいた。
「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」
「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」
「別にお前のせいじゃない」
いいや、京楽のせいだった。でも、声には出さない。
目の前にで血を流した京楽に、不安を覚えたのだ。今後の人生は、死神として命をかけていくもの。またいつか、京楽が血を流す様を見てしまうのだろうか。
眩暈がした。
「少し、眠る」
「うん、おやすみ」
side UKITAKE
学校の掃除当番だった。正直めんどくさかったが、品行方正、優等生で日々を過ごしているので、さぼることなどできない。
俺は、俺のことを大好きだという京楽と一緒に掃除をした。
京楽は、何かと俺のことをかわいいといって、好きだといってくる。生憎と、その手の趣味はないので俺は京楽を嫌ってはいないし、好きだが、恋愛相手と見ることはできなかった。
京楽は優しい。机の移動を率先してしてくれた。
「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」
俺は、一人でゴミを捨てにいこうとして、その量に驚き、重さに少しふらついた。
「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」
京楽の今日もかわいいねという言葉を無視して、手伝ってもらえるならと、京楽にもゴミを持ってもらった。
焼却炉にゴミをいれると、ゆらめいていた炎が大きくなり、小さな爆発音がした。
「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」
目の前で炎がちらつく。何かが弾けて、俺は咄嗟に顔を庇い、目をつぶった。衝撃は、何時までたってもやってこなかった。薄く目をあけると、京楽に抱きしめらていた。
京楽の背中から、ぽたぽたと血が滴りう落ちるのが見えて、気が遠くなりそうになる。京楽が、咄嗟に俺を庇ってくれたのだ。
「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」
「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」
このばか!俺なんかのために。
俺には、京楽に庇ってもらうような価値はない。こんな下級貴族の貧乏な長男なんて。京楽を連れて医務室にいくと、頼みの先生がいなかった。
「くそっ」
仕方なく、子供の頃に覚えた救急処置の仕方で、京楽の傷の手当てをしていく。包帯をぐるぐる巻いていくと京楽が漆黒の瞳でこちらをずっと見つめていた。
その瞳は、慈愛に満ちていた。俺は、その視線に応えることができないでいた。
「念のため、帰りに病院に寄ろう」
京楽は火傷もしていたので、塗り薬を塗って包帯をまいた。
「ありがとう、浮竹」
「俺なんて庇うから」
「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」
その言葉に、かっと体が熱くなったが、平静を装った。
「このバカ!」
そして、俺なんかを庇った京楽に、頭にきた。俺も男だ。怪我くらいしても大丈夫だし、京楽に守ってもらうほどやわじゃない。
ごみ箱を教室に置いて、帰る準備をした。
俺は京楽の分の荷物ももち、学院を後にする。
念のために、寮に一番近い病院で診てもらい、ちゃんとした処置を施してもらったが、俺の応急処置がよかったと医師に褒められた。
今の包帯だらけの京楽を、誰にも見られたくなかった。俺のせいで、こんな姿になった京楽に申し訳ない気持ちがいっぱいで。
下町の弁当屋で、適当に弁当を買って寮の自室に戻った。
「このバカ・・・・・・」
俺を庇った京楽を抱き締める。抱き締め返された。しばらく、そうしていた。
今、京楽に愛を囁かれたら、俺はきっと落ちてしまう。そう思いながら。京楽の手が、優しく俺の頭を撫でる。きもちよにさに、目を閉じかけた。
「君が無事でよかった」
その言葉に、現実に引き戻される。
「もう二度と、あんな真似するな!」
俺は、思った通りのことを言っていた。
俺なんて庇うな。俺は、そんな価値のある人間じゃない。
「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」
京楽の言葉に、眩暈を覚えた。ああ、この男。本当に、俺のことが好きなんだな。
「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」
「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」
「そうなる前に敵を殺す」
俺は、弱くない。確かに病弱で肺の病をもっているが、戦闘能力は高い。現世で虚退治もした。もう4回生だ。現世に出て、虚退治の実践訓練を受けている。
ふと、腹のむしがないた。何があっても、生きている限り腹は減る。
「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」
京楽と、同じベッドに腰かけて食べた。唐揚げ弁当だった。適当に買ったわりには美味しかった。
俺は満足して、京楽の方を見る。
「かわいいね、浮竹」
京楽は、そう言って俺にキスをしてきた。
「んあっ」
俺は戸惑う。突き飛ばすべきかとも思ったが、俺を庇ってくれたこともあり、自由にさせた。しばらく深く浅くキスを繰り返して、京楽は満足したのか離れて行った。
ああ。俺のほうもスイッチが入ってしまった。後で処理しなければ、つらいかもしれない。
頭の中は京楽のことだらけだった。京楽に今求められたら、俺は全てを与えてしまうだろう。幸いなことに、そうはならなかった。だが、怪我をした京楽が心配で心配で、その夜俺は熱をだした。
朝になると、京楽の傷が嘘のように治っていた。
「どうしたんだ、傷は」
「京楽家のつてで、4番隊の死神に治してもらった。君の辛そうな顔を見るのがいやだったから」
「今日は、学校休んでね。僕も休むから」
俺が熱を出していることに、気づかれてしまっているようだった。
京楽も、念のため休みをとるようだった。学校側の責任で、特別欠席扱いになった。俺は病欠だが。
学院を、1年間で3分の1以上欠席すると留年になる。俺はそうならないように、体とうまく付き合いながら、なんとか出席日数が確保していた。今日は病欠だけれど。
「はぁ・・・・・」
熱があがってきた。一向に下がらい。このままでは、明日も休むことになる。
俺は寝がえりをうった。すると、同じベッドに京楽がいて驚いた。
「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」
射干玉の瞳で、京楽は俺を見ていた。
「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」
手が伸ばされた。頬の手が添えられて、触れるだけの口付けを受ける。
「別にお前のせいじゃない」
それは嘘だ。
京楽を心配するあまりに熱を出した。でも、そんなこと口が裂けて言えない。
京楽は、優しく俺を抱きしめてきた。
熱い額に、水でぬらしたタオルが置かれた。解熱剤を飲むと、薬の成分で眠気がやってきた。
「少し、眠る」
「うん、おやすみ」
目覚めると、京楽がじっとこっちを見ていた。
「熱、下がったね」
「ああ」
俺の額に、京楽が手を当てる。完全に熱が引いたことを確認される。俺は起き上がろうとした。
腕を掴まれて、押し倒された。
「京楽・・・・・?」
「少しだけ・・・・ね?」
何がと問う間もなく、口づけられた。院生の服の隙間から手が侵入してきて、全身の輪郭を愛撫された。
「んあっ」
漏れた声に、俺は驚いた。女みたいな声を出してしまっていた。
「京楽!」
膝を膝で割られて、敏感な部分に手を這わされる。
「ひうっ」
喉がなる。
呼吸が荒くなる。
ぐちゃぐちゃと音をたてていじられて、俺は何も考えられなくなった。
先端に爪をたてられて、呆気なくいってしまった。
「ああああああ!」
頭が快感で真っ白になった。涙が出てきた。
「今日はここまで。続きはまた今度」
生殺しの状態だが、安堵した。まだ、京楽を受け入れる決心がついていないのだ。
ああ、濡れてしまった下着を取り換えないと。
俺は新しい院生の服と下着を手に、湯殿に消えた。
生々しかった行為を思いだす。京楽は、ああいうことをいつも・・・・俺を犯すようなことを考えているのかと思うと、体が熱くなった。
俺もまだ若い。
既にたちあがってしまっていたものに、京楽がしたようなことをすると、あっという間に精液を放っていた。
京楽を思いながらしたわけじゃない。ただ、自然の欲求だった。
それを消し去るように湯をかぶり、シャワーを浴びた。シャンプーで髪を洗い、石鹸で体洗う。
「しっかりしろ、浮竹十四郎」
京楽の想い通りになるな。
京楽のペースに巻きこまれたら、いつか美味しくいただかれてしまう。
今はまだ、そんな気になれない。
でも、いつか。
いつか、京楽の想いに応えてやろう。そう思う俺だった。
浮竹は頭の中にいつも花を咲かせている京楽を急かして、他の掃除当番と一緒に教室内をはいてゴミをとり、窓をふき、床にもっぷがけをした。
机を移動するのが大変だったが、京楽がもってくれた。
京楽は優しい。こういう心使いはけっこうじんわりとくるのだが、京楽が浮竹に懸想していることを知っているので、何も言えない。
ありがとうと言えば、抱き着いてくる始末だ。
「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」
「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」
ゴミの量はけっこう多く、一人でもつには重かった。
素直に、京楽の言葉に甘える。
ゴミを焼却炉にまでもっていき、その炎の中に捨てると、ぶわっと炎が大きくなった。
「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」
小さく爆発音がした。
京楽は、浮竹を庇っていた。
何かの破片が背中にささった京楽の姿に驚いて、声をあげる。
「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」
爆発は小さかったけれど、至近距離にいた京楽にダメージを負わせた。
「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」
医務室にいくと、誰もいなかった。
時間を見ると、もうみんな下校する時間だ。医務室の先生も、帰るのが早い。
「くそっ」
もっと自分で回道が使えたら。
仕方なしに、京楽の上の服を脱がせて破片をとると、アルコールで消毒して血止めを行い、ガーゼをあてて包帯を巻いた。
「念のため、帰りに病院に寄ろう」
火傷もしているらしかった。塗り薬をぬって、包帯を巻いていく。
「ありがとう、浮竹」
「俺なんて庇うから」
「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」
「このバカ!」
怪我をしているので殴らなかったが、頭にきた。
俺なんて庇うから。
そう思った。
ごみ箱を教室に戻して、下校する。
途中で病院に寄ったが、浮竹の処置はほぼ完ぺきで、火傷の痕が残らないように回道で手当てしてもらい、破片をぬいた傷跡は縫うほどのこともなかったので、同じく回道でほぼ塞いでもらって、包帯を巻きなおした。
その病院は、診察料は高いが、元4番隊の医者がいて、回道で傷を癒してくれるので、とても人気があった。
京楽の名を出すと、すぐに診てもらえた。
「帰るか・・・・・」
学院の食堂のある場所ならまだ空いているだろうが、怪我をして包帯を巻いた京楽を連れて行きたくなかった。
下町の店で弁当を二人分買い込んで、寮の自室に戻った。
「このバカ・・・・・・」
部屋にたどりつくと、浮竹は京楽を抱き締めた。
京楽は、優しく笑って、浮竹の頭を撫でた。
「君が無事でよかった」
「もう二度と、あんな真似するな!」
浮竹は怒っていた。
「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」
「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」
「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」
「そうなる前に敵を殺す」
ガスの入ったスプレーか何かをごみ箱にいれた、誰かも分からぬ者に殺意を覚えた。
「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」
学院の食堂の料理は安くて美味いしボリュームがあったが、病院に寄っていたのですでに閉まっていたし、包帯まみれの京楽を連れていきたくなかった。
次の日には、嘘みたいに傷は治っていた。浮竹が寝ている間に、京楽家のつてを使い、4番隊の死神を呼んでもらって完全に傷を治癒してもらったのだ。
そのことに、浮竹は安堵しながらも、京楽の心配をしまくていたせいで熱をだしてしまっていた。
「今日は、学校休んでね。僕も休むから」
教師に、ガスの入ったスプレーか何かがごみ箱に入っていたことを知らせ、怪我をしたので1日休ませてくれといったら、教師は今後そのようなことが起こらないように徹底的に生徒を指導すると約束してくれて、京楽は病欠ではなく特別欠席扱いになった。
浮竹は病欠だが。
「はぁ・・・・・」
熱が下がらない。
ごろりと横を向くと、同じベッドにいつの間にか京楽がいた。
「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」
「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」
「別にお前のせいじゃない」
いいや、京楽のせいだった。でも、声には出さない。
目の前にで血を流した京楽に、不安を覚えたのだ。今後の人生は、死神として命をかけていくもの。またいつか、京楽が血を流す様を見てしまうのだろうか。
眩暈がした。
「少し、眠る」
「うん、おやすみ」
side UKITAKE
学校の掃除当番だった。正直めんどくさかったが、品行方正、優等生で日々を過ごしているので、さぼることなどできない。
俺は、俺のことを大好きだという京楽と一緒に掃除をした。
京楽は、何かと俺のことをかわいいといって、好きだといってくる。生憎と、その手の趣味はないので俺は京楽を嫌ってはいないし、好きだが、恋愛相手と見ることはできなかった。
京楽は優しい。机の移動を率先してしてくれた。
「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」
俺は、一人でゴミを捨てにいこうとして、その量に驚き、重さに少しふらついた。
「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」
京楽の今日もかわいいねという言葉を無視して、手伝ってもらえるならと、京楽にもゴミを持ってもらった。
焼却炉にゴミをいれると、ゆらめいていた炎が大きくなり、小さな爆発音がした。
「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」
目の前で炎がちらつく。何かが弾けて、俺は咄嗟に顔を庇い、目をつぶった。衝撃は、何時までたってもやってこなかった。薄く目をあけると、京楽に抱きしめらていた。
京楽の背中から、ぽたぽたと血が滴りう落ちるのが見えて、気が遠くなりそうになる。京楽が、咄嗟に俺を庇ってくれたのだ。
「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」
「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」
このばか!俺なんかのために。
俺には、京楽に庇ってもらうような価値はない。こんな下級貴族の貧乏な長男なんて。京楽を連れて医務室にいくと、頼みの先生がいなかった。
「くそっ」
仕方なく、子供の頃に覚えた救急処置の仕方で、京楽の傷の手当てをしていく。包帯をぐるぐる巻いていくと京楽が漆黒の瞳でこちらをずっと見つめていた。
その瞳は、慈愛に満ちていた。俺は、その視線に応えることができないでいた。
「念のため、帰りに病院に寄ろう」
京楽は火傷もしていたので、塗り薬を塗って包帯をまいた。
「ありがとう、浮竹」
「俺なんて庇うから」
「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」
その言葉に、かっと体が熱くなったが、平静を装った。
「このバカ!」
そして、俺なんかを庇った京楽に、頭にきた。俺も男だ。怪我くらいしても大丈夫だし、京楽に守ってもらうほどやわじゃない。
ごみ箱を教室に置いて、帰る準備をした。
俺は京楽の分の荷物ももち、学院を後にする。
念のために、寮に一番近い病院で診てもらい、ちゃんとした処置を施してもらったが、俺の応急処置がよかったと医師に褒められた。
「帰るか・・・・・」
今の包帯だらけの京楽を、誰にも見られたくなかった。俺のせいで、こんな姿になった京楽に申し訳ない気持ちがいっぱいで。
下町の弁当屋で、適当に弁当を買って寮の自室に戻った。
「このバカ・・・・・・」
俺を庇った京楽を抱き締める。抱き締め返された。しばらく、そうしていた。
今、京楽に愛を囁かれたら、俺はきっと落ちてしまう。そう思いながら。京楽の手が、優しく俺の頭を撫でる。きもちよにさに、目を閉じかけた。
「君が無事でよかった」
その言葉に、現実に引き戻される。
「もう二度と、あんな真似するな!」
俺は、思った通りのことを言っていた。
俺なんて庇うな。俺は、そんな価値のある人間じゃない。
「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」
京楽の言葉に、眩暈を覚えた。ああ、この男。本当に、俺のことが好きなんだな。
「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」
「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」
「そうなる前に敵を殺す」
俺は、弱くない。確かに病弱で肺の病をもっているが、戦闘能力は高い。現世で虚退治もした。もう4回生だ。現世に出て、虚退治の実践訓練を受けている。
ふと、腹のむしがないた。何があっても、生きている限り腹は減る。
「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」
京楽と、同じベッドに腰かけて食べた。唐揚げ弁当だった。適当に買ったわりには美味しかった。
俺は満足して、京楽の方を見る。
「かわいいね、浮竹」
京楽は、そう言って俺にキスをしてきた。
「んあっ」
俺は戸惑う。突き飛ばすべきかとも思ったが、俺を庇ってくれたこともあり、自由にさせた。しばらく深く浅くキスを繰り返して、京楽は満足したのか離れて行った。
ああ。俺のほうもスイッチが入ってしまった。後で処理しなければ、つらいかもしれない。
頭の中は京楽のことだらけだった。京楽に今求められたら、俺は全てを与えてしまうだろう。幸いなことに、そうはならなかった。だが、怪我をした京楽が心配で心配で、その夜俺は熱をだした。
朝になると、京楽の傷が嘘のように治っていた。
「どうしたんだ、傷は」
「京楽家のつてで、4番隊の死神に治してもらった。君の辛そうな顔を見るのがいやだったから」
「今日は、学校休んでね。僕も休むから」
俺が熱を出していることに、気づかれてしまっているようだった。
京楽も、念のため休みをとるようだった。学校側の責任で、特別欠席扱いになった。俺は病欠だが。
学院を、1年間で3分の1以上欠席すると留年になる。俺はそうならないように、体とうまく付き合いながら、なんとか出席日数が確保していた。今日は病欠だけれど。
「はぁ・・・・・」
熱があがってきた。一向に下がらい。このままでは、明日も休むことになる。
俺は寝がえりをうった。すると、同じベッドに京楽がいて驚いた。
「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」
射干玉の瞳で、京楽は俺を見ていた。
「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」
手が伸ばされた。頬の手が添えられて、触れるだけの口付けを受ける。
「別にお前のせいじゃない」
それは嘘だ。
京楽を心配するあまりに熱を出した。でも、そんなこと口が裂けて言えない。
京楽は、優しく俺を抱きしめてきた。
熱い額に、水でぬらしたタオルが置かれた。解熱剤を飲むと、薬の成分で眠気がやってきた。
「少し、眠る」
「うん、おやすみ」
目覚めると、京楽がじっとこっちを見ていた。
「熱、下がったね」
「ああ」
俺の額に、京楽が手を当てる。完全に熱が引いたことを確認される。俺は起き上がろうとした。
腕を掴まれて、押し倒された。
「京楽・・・・・?」
「少しだけ・・・・ね?」
何がと問う間もなく、口づけられた。院生の服の隙間から手が侵入してきて、全身の輪郭を愛撫された。
「んあっ」
漏れた声に、俺は驚いた。女みたいな声を出してしまっていた。
「京楽!」
膝を膝で割られて、敏感な部分に手を這わされる。
「ひうっ」
喉がなる。
呼吸が荒くなる。
ぐちゃぐちゃと音をたてていじられて、俺は何も考えられなくなった。
先端に爪をたてられて、呆気なくいってしまった。
「ああああああ!」
頭が快感で真っ白になった。涙が出てきた。
「今日はここまで。続きはまた今度」
生殺しの状態だが、安堵した。まだ、京楽を受け入れる決心がついていないのだ。
ああ、濡れてしまった下着を取り換えないと。
俺は新しい院生の服と下着を手に、湯殿に消えた。
生々しかった行為を思いだす。京楽は、ああいうことをいつも・・・・俺を犯すようなことを考えているのかと思うと、体が熱くなった。
俺もまだ若い。
既にたちあがってしまっていたものに、京楽がしたようなことをすると、あっという間に精液を放っていた。
京楽を思いながらしたわけじゃない。ただ、自然の欲求だった。
それを消し去るように湯をかぶり、シャワーを浴びた。シャンプーで髪を洗い、石鹸で体洗う。
「しっかりしろ、浮竹十四郎」
京楽の想い通りになるな。
京楽のペースに巻きこまれたら、いつか美味しくいただかれてしまう。
今はまだ、そんな気になれない。
でも、いつか。
いつか、京楽の想いに応えてやろう。そう思う俺だった。
PR
- トラックバックURLはこちら