仕事をためこまないようにしましょう
どかっ。
足で蹴られて、京楽は浮竹を見た。
「なんだい、足癖の悪い子だね」
「暇だ」
「僕は、仕事で忙しいの」
「構え」
「仕事が終わったらね」
京楽は、いつも雨乾堂に遊びにくる。仕事をほったらかして。
そのつけがやってきたのだ。大量の書類を前に、七緒が切れた。片付くまで、雨乾堂に近づくのも浮竹に会うのも禁止といわれた。
そりゃないよと、泣きつくと、自業自得だと一蹴された。
京楽が雨乾堂にこなくなって、1週間がすぎた。初めは、きっとたまにの仕事をしているんだろうと、気にも留めなかった。2週間が過ぎ、まだかと待ち続けた。
3週間が過ぎる頃、流石におかしいのではないかと、浮竹が8番隊の執務室を訪ねる。すると大量の書類に囲まれ、ハンコを押したり筆をとって書類に何かかきこんだりしている京楽の姿を見た。
「何してるんだ」
「見ての通り、仕事してるの」
「こんなに大量に・・・・どれだけの分、ためてたんだ?」
飽きれ気味に聞くと、
「半年分」
飽きれ返る答えが返ってきた。
半年分の書類に囲まれて、それの処理に京楽は精一杯で、雨乾堂にいくことができなかった。
会えないことにしびれを切らした浮竹のほうから訪ねてきてくれるのは、嬉しくもあったが同時にかまってやれないことへの罪悪感とまぜこぜになる。
「手伝う」
「ごめん、ありがとう」
手伝っても、手伝っても終わらない。
浮竹は思う。今度から京楽にはもっと真面目に仕事を平常時から片付けてもらおうと。
やっと終わりが見えてきた。5か月分くらいの仕事が終わって、京楽は目の下に隈を作っていた。
「ふー。今日はここまでにしよう。もう寝るよ」
精根尽きたかんじで、すぐに隊首室にいくと、長椅子で眠りだす京楽。
浮竹が、酒を飲み交わそうと、持ってきた酒瓶の中身が、寂しくちゃぷんと音をたてた。
その日は、浮竹も雨乾堂に帰って寝た。
次の日、また8番隊の執務室に浮竹はやってきた。一人で、酒を飲みながら、京楽が仕事をしている姿を見守る。
「暇だな」
京楽がかまってくれないので、とても暇だった。
文机に向かっている京楽の膝を足で蹴る。
「なんだい、足癖の悪い子だね」
「暇だ」
「僕は、仕事で忙しいの」
「構え」
「仕事が終わったらね」
そう答えられて、また酒を呷った。
いつもの、甘い果実酒だ。
「やっぱり、手伝う」
それくらいしか、することがなさそうだ。
「こっちの書類にハンコ押していって。後はこの書類の山を片付けたら、終わりだから」
浮竹が、ふーっと息をついた。
「もう少しだな」
「3週間以上かかったよ・・・・・・」
その日は、深夜まで二人して書類の束を片付けた。
「終わったー!」
「終わったな」
ためにためこんだ半年分の仕事は、3週間と数日で片付いた。浮竹が手伝ってくれなかったら、もっと時間がかかっていただろう。
その日は、湯あみと食事だけ一緒にとって、8番隊の隊首室のベッドで一緒に眠りについた。
「おはよう、浮竹」
「ここは・・・?」
いつもの雨乾堂じゃないのに戸惑ったが、すぐに思い出す。京楽に会いにいって一緒に仕事を片づけて、一緒に眠ったのだった。
いつもは、一緒に雨乾堂で過ごすことが多く、8番隊の隊首室にくるなんて、本当に久しぶりだった。
「おはようございます、京楽隊長、浮竹隊長」
朝餉を運んできてくれた七緒が、京楽の傍にくる。
「京楽隊長、やればできるじゃないですか。追加の仕事があるのですがどうします?」
「七緒ちゃん、マジで勘弁してよ。もう、しばらく書類の山はみたくない。ちゃんと片すから、執務室に置いておいて」
「分かりました」
七緒は、これまたけっこうな量の書類を、執務室の文机の上に置いていった。
「今日は、どうする?」
「甘味屋にいきたい」
「体調は大丈夫なの?」
京楽が、浮竹の顔をのぞきこんでくる。
「発作もないし、熱もない。最近は体調がいいんだ」
額に手があてられる。
「うん、大丈夫みたいだね。甘味屋いこうか」
手をつないで歩きだす。
甘味屋の前にくると、日番谷隊長がいた。
「あ、日番谷隊長!」
「げっ」
「げってなにさ、日番谷君」
京楽が、逃がすものかとばかりに退路を塞ぐ。
「シロちゃーーん」
「来るな!雛森!」
「え、どうしたのシロちゃん。あっ、浮竹隊長に京楽隊長、おはようございます!いい天気ですね!」
藍染のことも終わり、以前の元気を取り戻した雛森が、日番谷の隣にきた。
「くっ・・・・魔の手から救えなかった」
「日番谷隊長、俺たちは魔王かなにかか?」
浮竹が、笑っていた。
「似たようなもんだろ」
「日番谷君と雛森ちゃんは、甘味屋でデートかい?」
「なななな、違う、京楽、違うからな!」
真っ赤になって否定する日番谷を、浮竹と京楽は顔を見合わせて、ついでにまにました。
「まぁ中に入ろう。今日は僕がおごってあげるから」
「俺だって隊長だ。ここの勘定くらい、自分で払える!」
「まぁいいじゃないか日番谷隊長。京楽の言葉に甘えておけ」
結局、日番谷は雛森と二人きりの甘味屋でのデートを邪魔されて、面白くなさそうな顔をしていた。
「女将さん、ここからここまでの品全部お願いします」
浮竹の注文に、日番谷は呆れ、雛森は驚く。
「そんなに食べるんですか、浮竹隊長」
「ああ、今日は体調もいいし、腹も減ってるしな」
出されて行く品を次々に平らげる浮竹に、雛森は凄いと驚き、もう見慣れているので日番谷は無視し、京楽は嬉しそうだった。
「よく食うな・・・・・」
見ているだけで、胸やけを起こしそうで、日番谷は抹茶アイスを食べただけだった。
「日番谷隊長、もっと高価なもの頼んだほうがいいぞ。京楽はあほみたいに金があるからな」
「じゃあわたしも・・・・ジャンポパフェお願いしまーす」
ここの甘味屋は、現世のメニューも積極的にとりいれているので人気があった。
「シロちゃん、一緒に食べよ?」
「今回だけだからな!」
初々しいカップルに、浮竹も京楽も、優しく見守った。
「ごちそうさまでした」
「ふん・・・・・」
「もうシロちゃん、おごってもたったのにそんな態度とっちゃだめでしょ」
「うるさい雛森。行くぞ」
「待ってよ、シロちゃーん」
走り去っていく二人を見送って、浮竹と京楽は木陰にやってきた。
「はぁ・・・・もう、仕事は勘弁だぞ、京楽」
「ごめんごめん。今度から、たまる前に片付けるから」
麗らかな春の日差しが心地よい。二人して、木陰で午睡する。
浮竹は、基本仕事をためこまない。臥せっている間にたまった書類は、体調が戻った時に手早く終わらせてしまう。
一方の京楽は、副官の七緒に任せきりで、隊長じゃないとできない仕事もそのうち片付けるからと七緒から逃げ出して、雨乾堂にやってくる。
目が覚めると、日も落ちかけていた。
「起きろ、京楽!」
夜遅くまで仕事をしていたので、午睡のはずが寝過ごしてしまった。
「今日は、仙太郎と清音3時頃には帰ると伝えておいたんだ」
「あら。とっくにすぎちゃってるねぇ。地獄蝶飛ばしておくから、今日も僕の部屋に泊まっていきなよ」
構いきれなかった分、たっぷりとかわいがってあげるからと耳元で囁かれて、朱くなった。
「泊まるが・・・・・ほどほどにしてくれよ」
3週間以上浮竹に触れなかった京楽は、たまっていた。
浮竹が意識を飛ばすまで、体を重ね合った。
京楽は満足したが、付き合わされた浮竹は、起きると怒った。
「まぁまぁ。本当に、久しぶりに君に触れたからね・・・・・・愛してるよ、十四郎」
京楽に愛を囁かれて、浮竹も
「俺も愛してる」
そう言って、京楽の腕の中で眠るのだった。
足で蹴られて、京楽は浮竹を見た。
「なんだい、足癖の悪い子だね」
「暇だ」
「僕は、仕事で忙しいの」
「構え」
「仕事が終わったらね」
京楽は、いつも雨乾堂に遊びにくる。仕事をほったらかして。
そのつけがやってきたのだ。大量の書類を前に、七緒が切れた。片付くまで、雨乾堂に近づくのも浮竹に会うのも禁止といわれた。
そりゃないよと、泣きつくと、自業自得だと一蹴された。
京楽が雨乾堂にこなくなって、1週間がすぎた。初めは、きっとたまにの仕事をしているんだろうと、気にも留めなかった。2週間が過ぎ、まだかと待ち続けた。
3週間が過ぎる頃、流石におかしいのではないかと、浮竹が8番隊の執務室を訪ねる。すると大量の書類に囲まれ、ハンコを押したり筆をとって書類に何かかきこんだりしている京楽の姿を見た。
「何してるんだ」
「見ての通り、仕事してるの」
「こんなに大量に・・・・どれだけの分、ためてたんだ?」
飽きれ気味に聞くと、
「半年分」
飽きれ返る答えが返ってきた。
半年分の書類に囲まれて、それの処理に京楽は精一杯で、雨乾堂にいくことができなかった。
会えないことにしびれを切らした浮竹のほうから訪ねてきてくれるのは、嬉しくもあったが同時にかまってやれないことへの罪悪感とまぜこぜになる。
「手伝う」
「ごめん、ありがとう」
手伝っても、手伝っても終わらない。
浮竹は思う。今度から京楽にはもっと真面目に仕事を平常時から片付けてもらおうと。
やっと終わりが見えてきた。5か月分くらいの仕事が終わって、京楽は目の下に隈を作っていた。
「ふー。今日はここまでにしよう。もう寝るよ」
精根尽きたかんじで、すぐに隊首室にいくと、長椅子で眠りだす京楽。
浮竹が、酒を飲み交わそうと、持ってきた酒瓶の中身が、寂しくちゃぷんと音をたてた。
その日は、浮竹も雨乾堂に帰って寝た。
次の日、また8番隊の執務室に浮竹はやってきた。一人で、酒を飲みながら、京楽が仕事をしている姿を見守る。
「暇だな」
京楽がかまってくれないので、とても暇だった。
文机に向かっている京楽の膝を足で蹴る。
「なんだい、足癖の悪い子だね」
「暇だ」
「僕は、仕事で忙しいの」
「構え」
「仕事が終わったらね」
そう答えられて、また酒を呷った。
いつもの、甘い果実酒だ。
「やっぱり、手伝う」
それくらいしか、することがなさそうだ。
「こっちの書類にハンコ押していって。後はこの書類の山を片付けたら、終わりだから」
浮竹が、ふーっと息をついた。
「もう少しだな」
「3週間以上かかったよ・・・・・・」
その日は、深夜まで二人して書類の束を片付けた。
「終わったー!」
「終わったな」
ためにためこんだ半年分の仕事は、3週間と数日で片付いた。浮竹が手伝ってくれなかったら、もっと時間がかかっていただろう。
その日は、湯あみと食事だけ一緒にとって、8番隊の隊首室のベッドで一緒に眠りについた。
「おはよう、浮竹」
「ここは・・・?」
いつもの雨乾堂じゃないのに戸惑ったが、すぐに思い出す。京楽に会いにいって一緒に仕事を片づけて、一緒に眠ったのだった。
いつもは、一緒に雨乾堂で過ごすことが多く、8番隊の隊首室にくるなんて、本当に久しぶりだった。
「おはようございます、京楽隊長、浮竹隊長」
朝餉を運んできてくれた七緒が、京楽の傍にくる。
「京楽隊長、やればできるじゃないですか。追加の仕事があるのですがどうします?」
「七緒ちゃん、マジで勘弁してよ。もう、しばらく書類の山はみたくない。ちゃんと片すから、執務室に置いておいて」
「分かりました」
七緒は、これまたけっこうな量の書類を、執務室の文机の上に置いていった。
「今日は、どうする?」
「甘味屋にいきたい」
「体調は大丈夫なの?」
京楽が、浮竹の顔をのぞきこんでくる。
「発作もないし、熱もない。最近は体調がいいんだ」
額に手があてられる。
「うん、大丈夫みたいだね。甘味屋いこうか」
手をつないで歩きだす。
甘味屋の前にくると、日番谷隊長がいた。
「あ、日番谷隊長!」
「げっ」
「げってなにさ、日番谷君」
京楽が、逃がすものかとばかりに退路を塞ぐ。
「シロちゃーーん」
「来るな!雛森!」
「え、どうしたのシロちゃん。あっ、浮竹隊長に京楽隊長、おはようございます!いい天気ですね!」
藍染のことも終わり、以前の元気を取り戻した雛森が、日番谷の隣にきた。
「くっ・・・・魔の手から救えなかった」
「日番谷隊長、俺たちは魔王かなにかか?」
浮竹が、笑っていた。
「似たようなもんだろ」
「日番谷君と雛森ちゃんは、甘味屋でデートかい?」
「なななな、違う、京楽、違うからな!」
真っ赤になって否定する日番谷を、浮竹と京楽は顔を見合わせて、ついでにまにました。
「まぁ中に入ろう。今日は僕がおごってあげるから」
「俺だって隊長だ。ここの勘定くらい、自分で払える!」
「まぁいいじゃないか日番谷隊長。京楽の言葉に甘えておけ」
結局、日番谷は雛森と二人きりの甘味屋でのデートを邪魔されて、面白くなさそうな顔をしていた。
「女将さん、ここからここまでの品全部お願いします」
浮竹の注文に、日番谷は呆れ、雛森は驚く。
「そんなに食べるんですか、浮竹隊長」
「ああ、今日は体調もいいし、腹も減ってるしな」
出されて行く品を次々に平らげる浮竹に、雛森は凄いと驚き、もう見慣れているので日番谷は無視し、京楽は嬉しそうだった。
「よく食うな・・・・・」
見ているだけで、胸やけを起こしそうで、日番谷は抹茶アイスを食べただけだった。
「日番谷隊長、もっと高価なもの頼んだほうがいいぞ。京楽はあほみたいに金があるからな」
「じゃあわたしも・・・・ジャンポパフェお願いしまーす」
ここの甘味屋は、現世のメニューも積極的にとりいれているので人気があった。
「シロちゃん、一緒に食べよ?」
「今回だけだからな!」
初々しいカップルに、浮竹も京楽も、優しく見守った。
「ごちそうさまでした」
「ふん・・・・・」
「もうシロちゃん、おごってもたったのにそんな態度とっちゃだめでしょ」
「うるさい雛森。行くぞ」
「待ってよ、シロちゃーん」
走り去っていく二人を見送って、浮竹と京楽は木陰にやってきた。
「はぁ・・・・もう、仕事は勘弁だぞ、京楽」
「ごめんごめん。今度から、たまる前に片付けるから」
麗らかな春の日差しが心地よい。二人して、木陰で午睡する。
浮竹は、基本仕事をためこまない。臥せっている間にたまった書類は、体調が戻った時に手早く終わらせてしまう。
一方の京楽は、副官の七緒に任せきりで、隊長じゃないとできない仕事もそのうち片付けるからと七緒から逃げ出して、雨乾堂にやってくる。
目が覚めると、日も落ちかけていた。
「起きろ、京楽!」
夜遅くまで仕事をしていたので、午睡のはずが寝過ごしてしまった。
「今日は、仙太郎と清音3時頃には帰ると伝えておいたんだ」
「あら。とっくにすぎちゃってるねぇ。地獄蝶飛ばしておくから、今日も僕の部屋に泊まっていきなよ」
構いきれなかった分、たっぷりとかわいがってあげるからと耳元で囁かれて、朱くなった。
「泊まるが・・・・・ほどほどにしてくれよ」
3週間以上浮竹に触れなかった京楽は、たまっていた。
浮竹が意識を飛ばすまで、体を重ね合った。
京楽は満足したが、付き合わされた浮竹は、起きると怒った。
「まぁまぁ。本当に、久しぶりに君に触れたからね・・・・・・愛してるよ、十四郎」
京楽に愛を囁かれて、浮竹も
「俺も愛してる」
そう言って、京楽の腕の中で眠るのだった。
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