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桜のあやかしと共に48

浮竹は、ふと自分のスマホの待ち受け画面を見る。

そこには、転生する前の妖狐の浮竹と、夜刀神の京楽と、浮竹と京楽で映った4人の写真があった。それをフォルダに移動させる。

そして、新しい待ち受け画面に、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽と一緒に、4人で映った写真にした。

休眠から目覚めて、2か月が経とうとしていた。

転生をした二人を見つけられて、浮竹はよかったと思っていた。

「カスタードケーキを作ってみた。京楽、二人のところに行くんだが、くるか?」

「もちろんだよ。十四郎の行く場所にはついていく」

京楽は、2リットル入りのコーラをもっていた。

「しゅわしゅわ好きだって言ってたからね。2リットルあれば、2~3日はもつでしょ」

「ふふ、京楽もなんだかんだいって、あの二人が好きなんだな」

「そうだね。ボクの中の闇はそんなわけないって言ってるけど、ボク自身は結構好きだよ?」

浮竹は、京楽がうるさいので、玄関に異界へのゲートを開く。

異界渡りをすると、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽がいる山の麓にやってきた。

少し歩くと、山の王の京楽の住んでいる洞窟があった。

「おーい、いるか?」

『あれ、どうしたの』

「遊びに来た。これはおみやげのカスタードケーキ」

『浮竹、おいで。二人が遊びにきてくれたよ』

『お、その桜鬼の京楽がもっているものは、もしかしてしゅわしゅわか?』

彼岸花の精霊の浮竹は、ちょうど冥界から山の王の京楽の元にきていて、誰も欠けることなく会えた。

「この洞窟には、茶器はあるかな?」

『一応、あるよ。ちょっと古いけど』

山の王の京楽は、洞窟の奥から、古びた茶器をもってきた。

京楽は、それにコーラを注いで、彼岸花の精霊の浮竹に渡す。

『しゅわしゅわだ。おいしい』

『よかったね、浮竹』

「カスタードケーキをもってきたんだ。皆で食べよう」

カスタードケーキを食べながら、京楽が古い茶器に入れた紅茶を飲んで、浮竹が外の景色を見た。

「もうすぐ夏だな。テントをもってきて、キャンプしたり、川遊びができるな」

『そうだね。釣りなら今の時期でもできるけど』

「釣りか。いいな。してみたい」

『お、釣りにいくかい?」

カスタードケーキを食べ終えた4人は、川へ釣りにでかけた。

『ここらへんなら、鮎がとれるよ』

「景色が殺風景だな。桜を咲かせよう」

『え、今初夏だよ?』

「俺は四季の王でもあるが、桜の王だからな。季節なんて関係なしに、桜を咲かせれる」

浮竹は、雑草ばかりが生い茂る空間を、満開の桜でいっぱいにした。

『へぇ、綺麗だな。これが桜か』

『浮竹は現世に疎いからね。冥界の彼岸花くらいしか知らないから』

山の王の京楽が、桜の王と名がついているのに、桜を知らないといって怒られるんではないかと思い、助け舟を出す。

「ああ、これが俺の名前の由来になった桜という木だ。綺麗だろう?」

『綺麗だな。儚くて、幻想的だ』

「だろう」

自分の花だけに、浮竹は褒められてうれしそうだった。

『おっと、最初の目的を忘れそうだったよ。釣りをしよう』

「俺は大物をとるぞ」

「ボクも負けないよ」

浮竹と京楽は、どっちが大物を釣れるか勝負することにした。

負けたほうが、夕飯ぬきということにした。

『お、ボクのにさっそくかかったみたいだね』

山の王の京楽の竿に、大きな鮎が釣れた。

『大きいね。魚影が多い。なんでだろう?』

「俺が、桜の術で呼び寄せた。心配しなくても釣りすぎはしないし、術は時間が経てば消える」

『桜の王って、いろんな術が使えるんだね』

『俺の彼岸花の術とは違う系統なんだな』

「俺は桜の術で、いろんなことができるぞ」

『じゃあ、緑色のしゅわしゅわを出してくれ』

彼岸花の精霊の浮竹にそうお願いされるが、さすがの浮竹もそれは無理だった。

ちなみに、緑色のしゅわしゅわとは、メロンソーダのことだ。

「便利屋じゃないからな。それはさすがに無理だ」

『浮竹、竿に魚がかかってるよ』

『あ、ほんとだ‥‥小さいな。逃がしてやろう』

隣では、浮竹と京楽が釣竿を垂らしているが、全然釣れなかった。

3時間ほど釣りをして、京楽は5匹、浮竹は7匹釣った。

大きさは、どちらも変わらず、暇つぶしの勝負は引き分けとなった。

「鮎を塩焼きにするだけじゃ味気ない。このまま一度京楽の家に行って、調理して出すから、彼岸花の精霊の俺も、山の王の京楽も、京楽の家に移動しよう」

「ゲートはベランダはだめだよ!玄関にしてね!」

浮竹は分かっているので、素直に玄関に繋がるゲートを開く。

浮竹は、鮎の塩焼き以外に、鮎甘露煮の炊き込みご飯、鮎のポワレ、鮎の天ぷらなどを作った。

それを京楽と留守番をしていた白哉を含めた4人にふるまった。

『へぇ、鮎って塩焼き以外にも調理方法あるんだ』

「洞窟暮らしでは調理に限界があるだろうが、一応レシピを渡しておく」

『ありがとう。調理するときは、桜鬼の家のキッチン、かりていいかな?』

「いいぞ」

「浮竹がいいって言うなら、いいよ」

京楽の言葉に、彼岸花の精霊の浮竹は、クスクスと笑う。

『仲がいいんだな』

彼岸花の精霊の浮竹は、何もない空間から彼岸花を取り出す。

『イメージは悪いが、俺の花も綺麗だろう?』

「一株もらえる?ベランダに植えてみたい」

「京楽はこう見えて、園芸が得意だからな」

『道理で、ベランダにたくさんのプランターやら鉢植えがあって、花がよく咲いているわけだ』

山の王の京楽は、京楽の趣味を知ってこう言う。

『今度、綺麗な花があって、種が実っていたら、とっておくね』

「うん、ありがとう」

「もう夏か‥‥今度の朝顔の王は、無事夏の王としてやっていけるといいが」

市丸ギンは、永久追放されて、新しく夏の朝顔の王になったのは、平子真子という。

市丸のように、藍染に飲まれないように願う。

『君の作る料理は、多彩だしおいしいね』

「本当のことを言っても何も出ないんだからな」

浮竹の言葉に、京楽が苦笑いする。

「さて、日が暮れる前に山に戻る?」

『うん、そうするよ』

『俺も、京楽と一緒に帰る』

「彼岸花の精霊の俺、おみやげだ!」

浮竹は、そう言って、サイダーとメロンソーダの、2リットル入りのペットボトルを渡す。

『お、重い』

「この鞄をやろう。これに入れてもっていけ」

『全部、しゅわしゅわなのか?』

「味は違うが、しゅわしゅわだ」

『一気に飲まないようにする』

「あ、言い忘れてた。開封してちゃんと栓をしないと、炭酸がぬけてまずくなるから気をつけろ」

浮竹がそう言うと、彼岸花の精霊の浮竹は、きっちり線をして、一週間くらいかけて飲むと言って、山の王の京楽と共に、山に帰っていった。

「彼岸花の精霊の俺のために、また炭酸飲料買いにいかないとな。あと、いつ来てもいいようにお菓子を作っておこう」

浮竹は楽しそうであった。京楽は、そんな浮竹を優しい目で見る。

「今日は恋次が私を抱きたい言うので、恋次のところに行ってくる。帰りは、明日になる」

爆弾発言をして、異界に消えた白哉に、浮竹は「白哉ああああ」と、取り乱すのであった。

契約をしていたのは知っていたが、あの白哉がそう簡単に体を許さないだろうことも知っていた。

浮竹と京楽のような仲になるには時間がかかりそうだと思っていたが、休眠期間中はこの家には白哉しかいなかったので、その間に恋次との仲が深まり、肉体関係に陥ったらしい。

「俺の白哉があああ!!!」

浮竹は、京楽がリラックス効果のあるハーブティーを入れるまで、取り乱しているのであった。




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