桜のあやかしと共に49
浮竹と京楽と白哉が住む町で、人が血を吸われて殺されるという事件が起きた。
あやかしのしわざで、犯人は野衾(のぶすまき)であった。
一体ではなく、複数現れて、一人の人間を動けなくして襲い、体中の血を吸いつくしてしまうのだという。
正式な依頼はなかったが、町を守るために三人は動き出した。
「十四郎、そっちにはいなかったかい」
「ああ、こっちにはいなかった」
スマホで連絡をとりあい、三人別々に別れて、捜索しているのだが、野衾はなかなか尻尾を出さない。
「白哉のほうは?」
「私のほうにも、何も現れない」
野衾の妖力をたどってみるが、もっと強力が妖力を見つけた。そっちの方向に、野衾も集まっている気配を感じた。
「野衾たちが集まっている。あと、もっと強力なあやかしがいる。俺が一番近いから、次の被害者が出る前になんとかしてみせる。京楽と白哉も、急いで俺のところにきてくれ」
「気をつけて。すぐに行くけど、くれぐれも油断しないようにね」
「浮竹、兄なら大丈夫であろうが、念のために恋次にも連絡を入れておいた」
浮竹は、スマホを切って、野衾ともっと強力なあやかしがいるほうへ走る。
浮竹が見たものは、野衾が六匹と、それを操っている女だった。
「あら、桜の王から来てくれるなんて、手間が省けたわ。藍染様から、あなたの四季の王としての実力を測ってこいと言われているの」
「野衾もお前も、藍染の手下か」
「私は吸血鬼の王。王同士、仲良くしましょう?」
「いけ、桜の花びらよ!」
浮竹は、ふっと桜の花びらを刃にして、野衾たちを切り裂く。
けれど、切り裂いたところから再生してしまう。
「無駄よ。この子たちの王である私がいるんですもの」
「じゃあ、お前を退治するだけだ」
浮竹は、ふっと桜の花びらを吹いて、業火で吸血鬼の王を包み込む。
「うふふふ、私は不死なのよ」
業火でもやされても、吸血鬼の王の女は平然としていた。
浮竹は、雷を打ったり、風で切り裂いたり、水で窒息してみたりといろいろ攻撃をくわえるが、吸血鬼の王はにやにやと笑うだけだった。
「核の心臓を、どこかに隠しているな?」
「あら、ばれたの。でも、どこにあるのか分からないでしょう?」
「京楽、吸血鬼の王が出た。俺の桜の花びらが、その吸血鬼の王の核である心臓のところ導くから、破壊してくれ!」
「十四郎、くれぐれも無理はしないでね!」
京楽にスマホで連絡をいれて、浮竹は桜の花びらで体を包み込み、核の心臓が破壊されるまでの間、防御しながら攻撃することにした。
「うふふ、攻撃はもうおしまい?四季の王といっても、しょせんはただの桜の王ね。でも、その血はすごくおいしそう」
浮竹を包んでいた桜の花びらの結界が壊される。
「なに!?」
一瞬隙を見せてしまった浮竹に、吸血鬼の王は素早く近づいて、その細い首に牙をたてて、浮竹の血をすすった。
「ぐ‥‥‥」
野衾たちにまで血をすすられて、浮竹の意識が遠くなる。
「こんなところで‥‥‥」
浮竹は意識を失い、仮死状態になる。
「おいしいわ。こんなおいしい血、初めて飲むわ。野衾たち、吸った血をよこしなさい」
そこに、京楽が現れた。
「十四郎!?十四郎、しっかりして!」
「うふふふ、その桜の王の血はとてもおいしかったわ。残念ながら、体中の血を吸われて死んでしまったみたいだけど」
「よくも十四郎を!」
京楽は、桜鬼になって、吸血鬼の王の目の前に、浮竹の桜の花びらが導いてくれた、吸血鬼の王の核である、心臓を取り出す。
「な、おまえ、どこでそれを!」
「浮竹が教えてくれたんだよ」
「やめろ、それを返せ!」
吸血鬼の王は、血相を変えて、京楽に襲い掛かる。
京楽は、吸血鬼の王の心臓を握りつぶした。
「ぎゃあああああああ!私の、不死があああああああ!!!」
「業火に焼かれ朽ちるがいい!極滅破邪、天炎!」
「いやああああああああ!!」
吸血鬼の王も、野衾たちも、京楽の天の炎に焼かれて、灰になっていく。
不死である吸血鬼の王だが、核である心臓を別の場所に隠すことで、一時的な不死になっていたにすぎなかった。
「十四郎‥‥死なせないよ。死ぬ時は、一緒だからね?」
京楽は、仮死状態の浮竹に、治癒の術をかける。自分の生命力を燃やしてまで、浮竹に生きろと促した。
「ここは?」
浮竹は、気づくと彼岸花の花畑にいた。
『ここは、お前のくるべき場所じゃない。帰るんだ』
「彼岸花の精霊の俺?そうか、俺は仮死状態になって、冥界にきているんだな」
『そうだ。ここに長くいると、本当に死んでしまう。生きているのに冥界(に来るなんて、不思議だな?桜の王?』
彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑んだ。
『さぁ、戻るんだ。いるべき場所へ』
「どうやって‥‥‥」
『あちらの方角に光が見えるなら、お前はまだ生きる道がある。ないなら、三途の川を渡るしかない』
「光が見える。青白い光だ」
『それが、お前を待っている者の命の光だ。さぁ、ゆけ』
「春水‥‥今、戻る」
浮竹が目覚めると、そこは高級タワーマンションの京楽の家だった。
「よかった、やっと目覚めたんだね。呼吸も心臓の鼓動も止まっていたから、最大の治癒術を使うと呼吸も鼓動も戻ったんだよ。でも、目が覚めないから、心配したんだよ?」
「白哉は?」
「君を徹夜で看病して、今疲れて仮眠してる」
「そうか。心配をかけた」
「ほんとに、危なかったんだからね!」
京楽は、目尻に涙を浮かべていた。
ゆっくり抱擁される。
「君がいない世界に興味はないよ。君が死んだら、ボクも死ぬところだった」
「春水」
「十四郎、約束したでしょ。死ぬ時は一緒だって」
「ああ。眠っている間に、彼岸花の精霊の俺にあったんだ。俺は冥界に迷い込んでいたらしい。ここは来るべき場所じゃないから、戻れと言われた」
「うん」
「光が見えるなら生きる道があると言っていた。光っていたのは、春水、お前の命の色の青白い光だった」
「ボクの命の色は青白いの。でも、十四郎が無事に目覚めてよかったよ。白哉くんを起こして、知らせてくるね」
「ああ。白哉も俺の看病をしてくれていたんだったな。礼を言わないと」
浮竹はベッドから起き上がろうとして、ふらついた。
「だめだよ、まだ寝てなきゃ。仮死状態までいったんだから」
「すまない。迷惑をかける」
「ううん。十四郎が無事なら、それでいいよ」
その後、起きてきた白哉に思い切り抱き着かれて、そんなことはとても珍しいので、浮竹は戸惑う。
「浮竹、兄が無事でよかった。「春」の時のように、残されていくのはいやだ」
「白哉、俺はもう大丈夫だから」
「いや、まだ兄からほのかに死の香りがする。とれるまで、ずっと一緒にいる」
白哉は、ぞう言って浮竹と京楽を困らせた。
一時的な死を体験して、浮竹は力を増しているのに気づく。
「四季の王として、少しは強くなっただろうか」
「妖力が、今までの1.5倍くらいになってるね」
「そうか。俺を仮死状態にまでおいこんだ吸血鬼の王とやらは、藍染の手下だった」
「また、藍染‥‥‥」
「いずれ、決着をつけないといけないだろうな」
浮竹の言葉に、京楽も白哉も頷くのであった。
あやかしのしわざで、犯人は野衾(のぶすまき)であった。
一体ではなく、複数現れて、一人の人間を動けなくして襲い、体中の血を吸いつくしてしまうのだという。
正式な依頼はなかったが、町を守るために三人は動き出した。
「十四郎、そっちにはいなかったかい」
「ああ、こっちにはいなかった」
スマホで連絡をとりあい、三人別々に別れて、捜索しているのだが、野衾はなかなか尻尾を出さない。
「白哉のほうは?」
「私のほうにも、何も現れない」
野衾の妖力をたどってみるが、もっと強力が妖力を見つけた。そっちの方向に、野衾も集まっている気配を感じた。
「野衾たちが集まっている。あと、もっと強力なあやかしがいる。俺が一番近いから、次の被害者が出る前になんとかしてみせる。京楽と白哉も、急いで俺のところにきてくれ」
「気をつけて。すぐに行くけど、くれぐれも油断しないようにね」
「浮竹、兄なら大丈夫であろうが、念のために恋次にも連絡を入れておいた」
浮竹は、スマホを切って、野衾ともっと強力なあやかしがいるほうへ走る。
浮竹が見たものは、野衾が六匹と、それを操っている女だった。
「あら、桜の王から来てくれるなんて、手間が省けたわ。藍染様から、あなたの四季の王としての実力を測ってこいと言われているの」
「野衾もお前も、藍染の手下か」
「私は吸血鬼の王。王同士、仲良くしましょう?」
「いけ、桜の花びらよ!」
浮竹は、ふっと桜の花びらを刃にして、野衾たちを切り裂く。
けれど、切り裂いたところから再生してしまう。
「無駄よ。この子たちの王である私がいるんですもの」
「じゃあ、お前を退治するだけだ」
浮竹は、ふっと桜の花びらを吹いて、業火で吸血鬼の王を包み込む。
「うふふふ、私は不死なのよ」
業火でもやされても、吸血鬼の王の女は平然としていた。
浮竹は、雷を打ったり、風で切り裂いたり、水で窒息してみたりといろいろ攻撃をくわえるが、吸血鬼の王はにやにやと笑うだけだった。
「核の心臓を、どこかに隠しているな?」
「あら、ばれたの。でも、どこにあるのか分からないでしょう?」
「京楽、吸血鬼の王が出た。俺の桜の花びらが、その吸血鬼の王の核である心臓のところ導くから、破壊してくれ!」
「十四郎、くれぐれも無理はしないでね!」
京楽にスマホで連絡をいれて、浮竹は桜の花びらで体を包み込み、核の心臓が破壊されるまでの間、防御しながら攻撃することにした。
「うふふ、攻撃はもうおしまい?四季の王といっても、しょせんはただの桜の王ね。でも、その血はすごくおいしそう」
浮竹を包んでいた桜の花びらの結界が壊される。
「なに!?」
一瞬隙を見せてしまった浮竹に、吸血鬼の王は素早く近づいて、その細い首に牙をたてて、浮竹の血をすすった。
「ぐ‥‥‥」
野衾たちにまで血をすすられて、浮竹の意識が遠くなる。
「こんなところで‥‥‥」
浮竹は意識を失い、仮死状態になる。
「おいしいわ。こんなおいしい血、初めて飲むわ。野衾たち、吸った血をよこしなさい」
そこに、京楽が現れた。
「十四郎!?十四郎、しっかりして!」
「うふふふ、その桜の王の血はとてもおいしかったわ。残念ながら、体中の血を吸われて死んでしまったみたいだけど」
「よくも十四郎を!」
京楽は、桜鬼になって、吸血鬼の王の目の前に、浮竹の桜の花びらが導いてくれた、吸血鬼の王の核である、心臓を取り出す。
「な、おまえ、どこでそれを!」
「浮竹が教えてくれたんだよ」
「やめろ、それを返せ!」
吸血鬼の王は、血相を変えて、京楽に襲い掛かる。
京楽は、吸血鬼の王の心臓を握りつぶした。
「ぎゃあああああああ!私の、不死があああああああ!!!」
「業火に焼かれ朽ちるがいい!極滅破邪、天炎!」
「いやああああああああ!!」
吸血鬼の王も、野衾たちも、京楽の天の炎に焼かれて、灰になっていく。
不死である吸血鬼の王だが、核である心臓を別の場所に隠すことで、一時的な不死になっていたにすぎなかった。
「十四郎‥‥死なせないよ。死ぬ時は、一緒だからね?」
京楽は、仮死状態の浮竹に、治癒の術をかける。自分の生命力を燃やしてまで、浮竹に生きろと促した。
「ここは?」
浮竹は、気づくと彼岸花の花畑にいた。
『ここは、お前のくるべき場所じゃない。帰るんだ』
「彼岸花の精霊の俺?そうか、俺は仮死状態になって、冥界にきているんだな」
『そうだ。ここに長くいると、本当に死んでしまう。生きているのに冥界(に来るなんて、不思議だな?桜の王?』
彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑んだ。
『さぁ、戻るんだ。いるべき場所へ』
「どうやって‥‥‥」
『あちらの方角に光が見えるなら、お前はまだ生きる道がある。ないなら、三途の川を渡るしかない』
「光が見える。青白い光だ」
『それが、お前を待っている者の命の光だ。さぁ、ゆけ』
「春水‥‥今、戻る」
浮竹が目覚めると、そこは高級タワーマンションの京楽の家だった。
「よかった、やっと目覚めたんだね。呼吸も心臓の鼓動も止まっていたから、最大の治癒術を使うと呼吸も鼓動も戻ったんだよ。でも、目が覚めないから、心配したんだよ?」
「白哉は?」
「君を徹夜で看病して、今疲れて仮眠してる」
「そうか。心配をかけた」
「ほんとに、危なかったんだからね!」
京楽は、目尻に涙を浮かべていた。
ゆっくり抱擁される。
「君がいない世界に興味はないよ。君が死んだら、ボクも死ぬところだった」
「春水」
「十四郎、約束したでしょ。死ぬ時は一緒だって」
「ああ。眠っている間に、彼岸花の精霊の俺にあったんだ。俺は冥界に迷い込んでいたらしい。ここは来るべき場所じゃないから、戻れと言われた」
「うん」
「光が見えるなら生きる道があると言っていた。光っていたのは、春水、お前の命の色の青白い光だった」
「ボクの命の色は青白いの。でも、十四郎が無事に目覚めてよかったよ。白哉くんを起こして、知らせてくるね」
「ああ。白哉も俺の看病をしてくれていたんだったな。礼を言わないと」
浮竹はベッドから起き上がろうとして、ふらついた。
「だめだよ、まだ寝てなきゃ。仮死状態までいったんだから」
「すまない。迷惑をかける」
「ううん。十四郎が無事なら、それでいいよ」
その後、起きてきた白哉に思い切り抱き着かれて、そんなことはとても珍しいので、浮竹は戸惑う。
「浮竹、兄が無事でよかった。「春」の時のように、残されていくのはいやだ」
「白哉、俺はもう大丈夫だから」
「いや、まだ兄からほのかに死の香りがする。とれるまで、ずっと一緒にいる」
白哉は、ぞう言って浮竹と京楽を困らせた。
一時的な死を体験して、浮竹は力を増しているのに気づく。
「四季の王として、少しは強くなっただろうか」
「妖力が、今までの1.5倍くらいになってるね」
「そうか。俺を仮死状態にまでおいこんだ吸血鬼の王とやらは、藍染の手下だった」
「また、藍染‥‥‥」
「いずれ、決着をつけないといけないだろうな」
浮竹の言葉に、京楽も白哉も頷くのであった。
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