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凍った砂時計 救出

一護は、深夜の闇に紛れて、夜一と共に朽木家に侵入した。

幸いなことに、見張りの姿はなく、まずは白哉を救い出すために動いた。

「う・・・・兄は・・・夜一も・・・・・私は、何を・・・・」

幸いなことに、白哉は少し記憶をいじられて、あとは睡眠薬を大量に与えられて眠らされていただけなので、記憶はあやふやだが元に戻りつつあった。

「黒崎一護・・・私の、義妹を、頼む・・・・」

そう言って、白哉は再び意識を失った。

清家を呼び、至急4番隊のところにまで運んでもらった。

薬で眠らされていたせいで、体力の消耗が激しく、すぐに入院が決まった。

「ルキア、待ってろよ」

ルキアの霊圧は弱弱しく、霊圧探知能力の低い一護では場所が分からなかった。

「どうやら、ルキアは朽木家にはいないようじゃ。そうすると、市崎家か。行くぞ、一護」

「ああ、夜一さん!」

瞬歩で市崎家までくると、ルキアはナガレと睦みあっている途中だった。

「ああん、ナガレ、いい、もっと!」

「本当にあなたは淫乱だ。だが美しい」

「ああ、いい、そこもっと!」

まず、夜一が音もなくナガレの首をコキリと音をたてさせて気絶させた。

「なっ、四楓院夜一殿!私の夫に何を!」

「それより、服をきたらどうじゃ」

ルキアは、服を着た。

さっきまで、ナガレと睦みあっていたルキアは色っぽかった。

「一護じゃ。覚えておるか?」

「いちご?誰だ、それは」

「ルキア!俺のことがわからねぇのか!」

「だから、誰なのかと聞いておる!」

ルキアは、愛する夫と幸せに体を重ねている時に急に現れた、オレンジの髪の少年に、嫌悪を覚えた。

「こちらにくるな!吐き気がする!」

「ルキア・・・他の男に抱かれてたっていい。たとえそれで子供を孕んでもいい。好きだ、ルキア」

「近寄るな!」

「ルキア・・・・」

一護は、一歩一歩ルキアに近寄った。

「誰か、誰かおらぬか!」

ルキアが大きな叫び声をあげると、家人がやってきたが、夜一が気絶させた。

「帰ろう、ルキア。記憶がないなら、また一から築いていこう」

一護は、ルキアを抱き締めた。

「あっ・・・・」

ルキアの太腿を、ナガレが出した精液が伝う。

「ちくしょう・・・・ちくしょう!」

一護は、ルキアを抱き締めながら泣いた。

一護が泣くのは、本当に珍しいことだった。

「貴様、私が市崎ルキアと知って・・・・・・」

「ルキア、好きだ、愛してる」

「いち・・・・・ご・・・・・」

「ルキア!?」

ルキアは、意識を失った。

揺り動かそうとして、夜一に止められた。

「無理やり記憶置換で記憶を何度も改竄されておる。体にも相当負担がかかっておるようじゃ。白哉のように、4番隊で診てもらおう」

そっと、その細い体を抱き上げるが、どうしても我慢できなくて、ナガレを斬魄刀で切り殺そうとした」

「やめよ。これでも、4大貴族の次に名のある男じゃ。殺してしまえば、こやつに罰を与えることができぬ」

「でも夜一さん、こんな屑・・・・・」

「愛しい者をとられたお主の気持ちは痛いほど分かる。じゃが、こやつなどのためにお主がさばかれるのは見とうない」

「夜一さん・・・・」

ルキアを抱き上げて、4番隊に移動する。

警邏隊を呼び、砕蜂の手で捕縛させた。

罪状は、朽木白哉及び朽木ルキアの記憶改竄と傷害罪、その他の一部隊長の記憶改竄など。

四十六室で裁かれることになるが、極刑は免れないだろう。


「うう・・・・」

総合救護詰所で、ルキアは気が付いた。

「ここは・・・・・?」

「ルキア、俺が分かるか?」

「?貴様は誰だ」

ルキアのかけられていた記憶置換による記憶の改竄を、なんとかできるところまで回道で癒した。結果、ルキアは自分が朽木ルキアであり、市崎ナガレの手によって無理やり花嫁にされて身籠ってしまったことを認識した。

だが。
だが、ルキアの中から一護のことが空白になっていた。

「ルキア・・・・・・・」

「貴様は誰だ」

「俺は黒崎一護。死神代行で、お前の恋人だ」

「私の恋人・・・・・・うう、頭が痛い!」

虎鉄隊長が叫ぶ。

「黒崎さん、あまり朽木さんに刺激を与えないでください!記憶が絡み合って、人格にまで支障をきたすほど、精神が蝕まれています!」

「分かった・・・・ルキア、俺を見てくれ。愛してる。もう一度、最初から始めよう。俺は黒崎一護。ただの、死神代行だ」

「私は朽木ルキア・・・・護廷13隊、13番隊副隊長」

その日から、ルキアと一護の、新しい一日が始まった。

ルキアは退院しても、一護のことを思いださなかった。

だが、大切な存在であるとは分かるようで、いつも傍にいた。

「一護・・・・私は、孕んでおるのだろう?」

「ルキア・・・・・」

「おろしたいが、せっかく宿った命。その命に罪はない。私は産みたいと思う。貴様は、反対はせぬのか?」

「ルキアの子供、俺の子供だ。おろせとは言わねーよ」

ルキアと一護の距離は、どんどんと近づいていった。

「ルキア、そなた一護のことを思いだしているのか?」

「兄様、いいえ、相変わらず一護との記憶は戻りません。でも、とても大切なのです。私は、一護を好いております」

「そうか。そなたは、記憶をなくしても、もう一度黒崎一護を選ぶのだな・・・・・」

白哉は、優しく微笑んだ。

市崎ナガレの処刑を、二人で見守った。

「おのれええええええ、覚えていろ黒崎一護おおおおお!ルキアああああああ、お前は私のものだあああああ、私の子供を孕んでいるのだからなああああ!」

スパンと。

市崎ナガレの首がはねられた。

間近で見ていた一護の頬に、ぴっと、血が飛び散る。

「哀れな男だ」

「そうだな」

ルキアを奪還した。ルキアは俺のことを覚えていないが、また好きだと言ってくれた。

大切だと言ってくれた。

それだけで十分だった。

「ルキア、甘味屋に寄ろうぜ。お前の好きな白玉餡蜜、おごってやるよ」

「本当か!」

ルキアは顔を輝かせて、一護の手をとる。

二人は取り戻した。

絆を。

凍っていた砂時計は、再び砂が流れ出す。



一護が尸魂界にきて、1年が経とうとしていた。



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