執事京楽、主浮竹
浮竹には幼い頃から執事がいた。
黒い燕尾服を着て、穏やかに微笑むその姿がすきだった。
名は京楽春水。
浮竹は名前を浮竹十四郎という。浮竹家は伯爵の家柄で、両親は浮竹が幼い頃に病死してしまい、僅か8歳で浮竹は当主になった。
他に兄弟姉妹もいなくて、友人もおらず、家庭教師をつけられたが、周りに居る者たちはみんな浮竹のもつ金目当てだった。
僅か8歳で結婚されられそうになった。
浮竹は当主の座を放棄して逃げ出そうとしたが、周りの大人がそれを許してくれなくて、友達もおらず、心を許せる相手は気づけばだ誰もいなかった。
浮竹は、事故で両親を失い、友達もいない寂しさを紛らわすために、だめ元で黒魔術で両親を作り出そうとした。けれどそれは、悪魔召還の儀式だった。
勝手も分からず、黒い本の通りに自分の血で描いた円陣には、中心に人が立っていた。
「父上?」
「残念。僕は悪魔。悪魔の中の上位悪魔。いわゆる魔王ってやつだね。名は京楽春水」
「魔王・・・・・俺を、食うのか?」
目の前の白い髪の少女・・・いや、少年は、魔王と名乗った京楽に一切の恐れを抱かずに、ただ見つめていた。
「んー。君の魂は極上においしそうだ。願いをなんでも叶えてあげよう。ただし、その魂をくれるなら、ね」
「じゃあ、俺と友達になってくれ!」
「は?」
京楽は目を点にしていた。
てっきり、地位や名誉、財産などが欲しい、国が欲しいと言い出すと思っていたのだ。
「あはははは。魔王の僕を呼び出しておいて、友達になってくれ?おおいに結構じゃない。君の友達に、なってあげるよ。期限は君が成人するまで」
「成人するまで・・・・・・」
浮竹にはこうして執事ができた。正体は魔王という、執事が。
京楽は、家庭教師や住み込みの者たちを追い出して、屋敷を京楽だけで切り盛りし始めた。
魔王として配下を生み出し、メイドやコックを、雇う事なく京楽の血から作り出された人形で屋敷の管理を任せていた。
「さぁ、十四郎坊ちゃん、お勉強の時間だよ」
家庭教師には、京楽本人がついてくれた。
座学からテーブルマナー、社交界のダンスの踊り方やら、身のふるまい方。全てを教えてくれた。
浮竹が12歳になる頃には、浮竹はますます美しく成長して、その魂は輝かんばかりで、とてもも美味しそうで、とても愛しく感じた。
12歳で社交界デビューを果たした浮竹は、その財力を狙う貴族の子女に囲まれて、気分が悪いと言ってきた少女を介抱していると、いきなり既成事実を作られそうになった。
京楽が、すんでのところで助けてくれた。
「君は、身の丈にあった相手を選ぶことだ。十四郎坊ちゃんにはつりあわないよ」
「いやああ、浮竹様の執事に襲われたあああ!!!」
少女はドレスを破り、騒ぎ出した。
すぐに京楽は逮捕されて、貴族への暴行未遂ということで死罪となった。
「京楽・・・いなくなってしまうのか?俺を置いていくな!」
「うん。もちろんだよ」
京楽を取り囲んでいた警備の者たちも、社交界にきていた貴族や従者たちも、みな昏倒させた。
その日の記憶を、京楽は全ての人間から奪った。
「君の魂も心も体も、僕のものだ。誰にもあげない」
「京楽・・・・・」
浮竹は、背伸びをして京楽の唇に唇で触れていた。
「十四郎坊ちゃん!?」
「俺はお前が好きだ。友人としても、家族としても。そして、1人の人間としても」
「そうは言われても、僕は悪魔の魔王だよ?」
「それでも、好きなんだ」
浮竹の周囲には、浮竹の金を目当てに集まる者しかいなかった。
そんな心寂しい状態で、唯一の温もりを与えてくれる相手を、どうして好きにならないでいられようか。
「面白い子だ。少し遊ぶのもいいか」
京楽の中で悪戯心が芽生えた。
浮竹が16になる頃、縁談の話が降り積もるようにわいてきた。
それを、京楽が全てつっぱねて、断った。
社交界に出ることはあったが、縁談の話が舞い込む度に、京楽が邪魔をしてきた。
「浮竹様、悪いことはいわないわ。あの京楽という執事、辞めさせたほうがいいわ。あなたの縁談の話の邪魔ばかりするのですよ」
叔母にあたる人の言葉に、浮竹は首を横に振る。
「あれは俺のものだ。俺がどうしようが、俺の勝手だ」
浮竹は、翡翠色の瞳で京楽の鳶色の瞳をいつも見ていた。
その底に浮かぶ欲を知りながら、京楽の傍にいた。
そのまま時は流れ、いつしか18の成人の時を迎えていた。
「今日でお別れだな」
「え、どうして?」
「だって、友人としていてくれるのは、成人の時までだろう?俺は18歳。成人した」
いつもの黒い燕尾服で、京楽はくつくつと笑い出した。
「俺の魂をくれてやる。この世に未練があるとしたら、お前ともっと時を過ごしたかった。それだけだ」
「十四郎坊ちゃん、悪魔の花嫁って知っているかい?」
「悪魔の花嫁?」
浮竹は首を傾げる。
「そう。悪魔やヴァンパイアは、気に入った相手を同族にして迎え入れる。それが悪魔の花嫁だよ」
「まさか・・・」
「そう、そのまさか。僕は君が気に入った。悪魔の花嫁として迎え入れたい。魂をいただくだけじゃ、気がすまない。その心も体も何もかも、僕のものにしたい」
浮竹は、真っ赤になった。
「その、心と体というのは・・・・」
「君が想像している通りだよ」
ふっと耳に息を吹きかけられて、浮竹はぞくりとなった。
「あ、京楽・・・・」
「十四郎坊ちゃん。いや、十四郎。僕を春水って呼んで」
「春水・・・・」
「ああ、いいね。ぞくぞくするよ」
京楽は、浮竹の魂を手中に収めて、それを浮竹に返した。
「あ、どうなったんだ?」
「君は悪魔になった。僕の同族で、僕の花嫁だ」
そのまま、京楽は浮竹の執事であり続けた。
浮竹は、夜になると京楽の部屋を訪れる。
「おや、また来たのかい」
「欲しい・・・お前が、欲しい」
魂まで手中に収められて、浮竹は完全に執事であった京楽のものになっていた。
「んっ」
舌が絡むキスをされて、浮竹は京楽の肩に噛みつく。
「この前つけたキスマーク、まだ残っているね」
浮竹は京楽を欲した。それも頻繁に。
悪魔の花嫁となり、悪魔としてなってしまったせいかは分からないが、魔王の子種を受けて、正気でいられる者などいない。
浮竹は昼は正気を保っているが、夜になると京楽を求めた。
そうなるように、京楽がしむけた。
「今夜は、寝かさないよ」
「ああ・・・春水、愛してる」
「僕も愛してるよ」
くつくつと、京楽は笑う。
愛なんて陳腐な台詞はいらないけれど、それで浮竹が安心するなら、いくらでも愛を囁いてあげよう。
そう思った。
「ああ、ああああ」
京楽に貫かれながら、浮竹は京楽の全部が欲しくて、その背中に手を回す。
「十四郎坊ちゃん、淫乱になっちゃったねぇ」
「ひあああ!」
ごりっと奥を貫かれて、浮竹は自分の腹の上で射精していた。
「もっと・・・もっと、お前をくれ」
浮竹の背中には、肩甲骨のあたりに悪魔の花嫁を意味する翼の文様があった。
「あああ!もっと!」
「十四郎、愛してるよ」
浮竹の胎の奥に子種を注ぎ込んでやり、そのまま京楽は浮竹の体の一部をいじり、孕ませた。
「あああ、やあああ、孕んじゃう!」
「僕たちの子だよ。元気な子を産んでね」
京楽は何度も浮竹の体内に子種を注いだ。
浮竹はオーガズムでいきながら、京楽のことを思う。
伴侶はいれど、子がいないとこの伯爵家を継ぐ者がいなくなる。
だから、京楽は浮竹に子を産ませるような体にした。それは一時的なもので、帝王切開で男児を出産した後は、元の普通の男性に戻っていた。
「んああああ!」
今日もまた、京楽の部屋で浮竹は啼いている。
生まれ落ちた赤子は、二人で慈しみながら育てた。いずれ、社交界でお披露目をするときもあるだろうし、母親は誰だと聞かれることもあるだろうが、息子に母親はもう他界してしまったと言って聞かせてある。
「んっ、もっと・・・・・」
まだまだだと求める浮竹抱き寄せ、銀の糸がひくようになるまで、口づけをかわしあう。
「春水、愛してる」
「僕も愛してるよ、十四郎」
浮竹は、18歳の頃から見た目が変わらなくなった。
それは悪魔の花嫁になったせいであり、悪魔となったせいでもあった。
訝しがる親戚たちの記憶を操作して、京楽は浮竹には結婚した女性がいて、すでに他界して子だけが残されたという設定にした。
「ふふふ。よく寝ているね」
2歳になったばかりの我がを抱きあげて、京楽は人間として生きる生活を送っていた。
「そろそろ、昼寝の時間だ」
「そうだね。よく食べて寝て、大きくおなり。時期浮竹伯爵家の当主で、魔王候補だ」
「魔王になんて、俺がさせないぞ」
「まぁ、そこらはこの子は大きくなってから、家族会議かな」
浮竹十四郎。
伯爵家の当主であり、悪魔の花嫁であり、悪魔でもある。
京楽春水。
浮竹伯爵家の執事であり、召還された悪魔で魔王であり、京楽と浮竹の間にできた子の父であった。
二人は、子がある程度の年齢に達しても、若い姿のままで居続けた。
京楽が国中の人間の記憶を操作して、見た目が変わらないことに関して疑問を抱かないようにしていた。
「京楽父様、浮竹父様、いってきます」
我が子は、家庭教師をつけたりせず、平民と交じって学校で授業を受けさせて、育てていた。
テーブルマナーは社交界のダンス、身の振り方は執事である京楽が教えてくれた。
結ばれても、京楽はあくまで執事であった。
それは京楽のポリシーであり、この世の召還されてはじめてついた職業が執事であり、浮竹の身の回りの世話をするのが好きなせいでもあった。
悪魔京楽。
そっちに世界では魔王として名が売れている京楽だったが、今はただ、この幸せな安寧に浸っているのだった。
黒い燕尾服を着て、穏やかに微笑むその姿がすきだった。
名は京楽春水。
浮竹は名前を浮竹十四郎という。浮竹家は伯爵の家柄で、両親は浮竹が幼い頃に病死してしまい、僅か8歳で浮竹は当主になった。
他に兄弟姉妹もいなくて、友人もおらず、家庭教師をつけられたが、周りに居る者たちはみんな浮竹のもつ金目当てだった。
僅か8歳で結婚されられそうになった。
浮竹は当主の座を放棄して逃げ出そうとしたが、周りの大人がそれを許してくれなくて、友達もおらず、心を許せる相手は気づけばだ誰もいなかった。
浮竹は、事故で両親を失い、友達もいない寂しさを紛らわすために、だめ元で黒魔術で両親を作り出そうとした。けれどそれは、悪魔召還の儀式だった。
勝手も分からず、黒い本の通りに自分の血で描いた円陣には、中心に人が立っていた。
「父上?」
「残念。僕は悪魔。悪魔の中の上位悪魔。いわゆる魔王ってやつだね。名は京楽春水」
「魔王・・・・・俺を、食うのか?」
目の前の白い髪の少女・・・いや、少年は、魔王と名乗った京楽に一切の恐れを抱かずに、ただ見つめていた。
「んー。君の魂は極上においしそうだ。願いをなんでも叶えてあげよう。ただし、その魂をくれるなら、ね」
「じゃあ、俺と友達になってくれ!」
「は?」
京楽は目を点にしていた。
てっきり、地位や名誉、財産などが欲しい、国が欲しいと言い出すと思っていたのだ。
「あはははは。魔王の僕を呼び出しておいて、友達になってくれ?おおいに結構じゃない。君の友達に、なってあげるよ。期限は君が成人するまで」
「成人するまで・・・・・・」
浮竹にはこうして執事ができた。正体は魔王という、執事が。
京楽は、家庭教師や住み込みの者たちを追い出して、屋敷を京楽だけで切り盛りし始めた。
魔王として配下を生み出し、メイドやコックを、雇う事なく京楽の血から作り出された人形で屋敷の管理を任せていた。
「さぁ、十四郎坊ちゃん、お勉強の時間だよ」
家庭教師には、京楽本人がついてくれた。
座学からテーブルマナー、社交界のダンスの踊り方やら、身のふるまい方。全てを教えてくれた。
浮竹が12歳になる頃には、浮竹はますます美しく成長して、その魂は輝かんばかりで、とてもも美味しそうで、とても愛しく感じた。
12歳で社交界デビューを果たした浮竹は、その財力を狙う貴族の子女に囲まれて、気分が悪いと言ってきた少女を介抱していると、いきなり既成事実を作られそうになった。
京楽が、すんでのところで助けてくれた。
「君は、身の丈にあった相手を選ぶことだ。十四郎坊ちゃんにはつりあわないよ」
「いやああ、浮竹様の執事に襲われたあああ!!!」
少女はドレスを破り、騒ぎ出した。
すぐに京楽は逮捕されて、貴族への暴行未遂ということで死罪となった。
「京楽・・・いなくなってしまうのか?俺を置いていくな!」
「うん。もちろんだよ」
京楽を取り囲んでいた警備の者たちも、社交界にきていた貴族や従者たちも、みな昏倒させた。
その日の記憶を、京楽は全ての人間から奪った。
「君の魂も心も体も、僕のものだ。誰にもあげない」
「京楽・・・・・」
浮竹は、背伸びをして京楽の唇に唇で触れていた。
「十四郎坊ちゃん!?」
「俺はお前が好きだ。友人としても、家族としても。そして、1人の人間としても」
「そうは言われても、僕は悪魔の魔王だよ?」
「それでも、好きなんだ」
浮竹の周囲には、浮竹の金を目当てに集まる者しかいなかった。
そんな心寂しい状態で、唯一の温もりを与えてくれる相手を、どうして好きにならないでいられようか。
「面白い子だ。少し遊ぶのもいいか」
京楽の中で悪戯心が芽生えた。
浮竹が16になる頃、縁談の話が降り積もるようにわいてきた。
それを、京楽が全てつっぱねて、断った。
社交界に出ることはあったが、縁談の話が舞い込む度に、京楽が邪魔をしてきた。
「浮竹様、悪いことはいわないわ。あの京楽という執事、辞めさせたほうがいいわ。あなたの縁談の話の邪魔ばかりするのですよ」
叔母にあたる人の言葉に、浮竹は首を横に振る。
「あれは俺のものだ。俺がどうしようが、俺の勝手だ」
浮竹は、翡翠色の瞳で京楽の鳶色の瞳をいつも見ていた。
その底に浮かぶ欲を知りながら、京楽の傍にいた。
そのまま時は流れ、いつしか18の成人の時を迎えていた。
「今日でお別れだな」
「え、どうして?」
「だって、友人としていてくれるのは、成人の時までだろう?俺は18歳。成人した」
いつもの黒い燕尾服で、京楽はくつくつと笑い出した。
「俺の魂をくれてやる。この世に未練があるとしたら、お前ともっと時を過ごしたかった。それだけだ」
「十四郎坊ちゃん、悪魔の花嫁って知っているかい?」
「悪魔の花嫁?」
浮竹は首を傾げる。
「そう。悪魔やヴァンパイアは、気に入った相手を同族にして迎え入れる。それが悪魔の花嫁だよ」
「まさか・・・」
「そう、そのまさか。僕は君が気に入った。悪魔の花嫁として迎え入れたい。魂をいただくだけじゃ、気がすまない。その心も体も何もかも、僕のものにしたい」
浮竹は、真っ赤になった。
「その、心と体というのは・・・・」
「君が想像している通りだよ」
ふっと耳に息を吹きかけられて、浮竹はぞくりとなった。
「あ、京楽・・・・」
「十四郎坊ちゃん。いや、十四郎。僕を春水って呼んで」
「春水・・・・」
「ああ、いいね。ぞくぞくするよ」
京楽は、浮竹の魂を手中に収めて、それを浮竹に返した。
「あ、どうなったんだ?」
「君は悪魔になった。僕の同族で、僕の花嫁だ」
そのまま、京楽は浮竹の執事であり続けた。
浮竹は、夜になると京楽の部屋を訪れる。
「おや、また来たのかい」
「欲しい・・・お前が、欲しい」
魂まで手中に収められて、浮竹は完全に執事であった京楽のものになっていた。
「んっ」
舌が絡むキスをされて、浮竹は京楽の肩に噛みつく。
「この前つけたキスマーク、まだ残っているね」
浮竹は京楽を欲した。それも頻繁に。
悪魔の花嫁となり、悪魔としてなってしまったせいかは分からないが、魔王の子種を受けて、正気でいられる者などいない。
浮竹は昼は正気を保っているが、夜になると京楽を求めた。
そうなるように、京楽がしむけた。
「今夜は、寝かさないよ」
「ああ・・・春水、愛してる」
「僕も愛してるよ」
くつくつと、京楽は笑う。
愛なんて陳腐な台詞はいらないけれど、それで浮竹が安心するなら、いくらでも愛を囁いてあげよう。
そう思った。
「ああ、ああああ」
京楽に貫かれながら、浮竹は京楽の全部が欲しくて、その背中に手を回す。
「十四郎坊ちゃん、淫乱になっちゃったねぇ」
「ひあああ!」
ごりっと奥を貫かれて、浮竹は自分の腹の上で射精していた。
「もっと・・・もっと、お前をくれ」
浮竹の背中には、肩甲骨のあたりに悪魔の花嫁を意味する翼の文様があった。
「あああ!もっと!」
「十四郎、愛してるよ」
浮竹の胎の奥に子種を注ぎ込んでやり、そのまま京楽は浮竹の体の一部をいじり、孕ませた。
「あああ、やあああ、孕んじゃう!」
「僕たちの子だよ。元気な子を産んでね」
京楽は何度も浮竹の体内に子種を注いだ。
浮竹はオーガズムでいきながら、京楽のことを思う。
伴侶はいれど、子がいないとこの伯爵家を継ぐ者がいなくなる。
だから、京楽は浮竹に子を産ませるような体にした。それは一時的なもので、帝王切開で男児を出産した後は、元の普通の男性に戻っていた。
「んああああ!」
今日もまた、京楽の部屋で浮竹は啼いている。
生まれ落ちた赤子は、二人で慈しみながら育てた。いずれ、社交界でお披露目をするときもあるだろうし、母親は誰だと聞かれることもあるだろうが、息子に母親はもう他界してしまったと言って聞かせてある。
「んっ、もっと・・・・・」
まだまだだと求める浮竹抱き寄せ、銀の糸がひくようになるまで、口づけをかわしあう。
「春水、愛してる」
「僕も愛してるよ、十四郎」
浮竹は、18歳の頃から見た目が変わらなくなった。
それは悪魔の花嫁になったせいであり、悪魔となったせいでもあった。
訝しがる親戚たちの記憶を操作して、京楽は浮竹には結婚した女性がいて、すでに他界して子だけが残されたという設定にした。
「ふふふ。よく寝ているね」
2歳になったばかりの我がを抱きあげて、京楽は人間として生きる生活を送っていた。
「そろそろ、昼寝の時間だ」
「そうだね。よく食べて寝て、大きくおなり。時期浮竹伯爵家の当主で、魔王候補だ」
「魔王になんて、俺がさせないぞ」
「まぁ、そこらはこの子は大きくなってから、家族会議かな」
浮竹十四郎。
伯爵家の当主であり、悪魔の花嫁であり、悪魔でもある。
京楽春水。
浮竹伯爵家の執事であり、召還された悪魔で魔王であり、京楽と浮竹の間にできた子の父であった。
二人は、子がある程度の年齢に達しても、若い姿のままで居続けた。
京楽が国中の人間の記憶を操作して、見た目が変わらないことに関して疑問を抱かないようにしていた。
「京楽父様、浮竹父様、いってきます」
我が子は、家庭教師をつけたりせず、平民と交じって学校で授業を受けさせて、育てていた。
テーブルマナーは社交界のダンス、身の振り方は執事である京楽が教えてくれた。
結ばれても、京楽はあくまで執事であった。
それは京楽のポリシーであり、この世の召還されてはじめてついた職業が執事であり、浮竹の身の回りの世話をするのが好きなせいでもあった。
悪魔京楽。
そっちに世界では魔王として名が売れている京楽だったが、今はただ、この幸せな安寧に浸っているのだった。
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