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堕天使と天使18

『少しは、お前のこと認めてやる』

「ああ、明日は槍が降る」

フェンリルの浮竹の言葉に、堕天使の京楽は空を見上げた。

堕天使の京楽、天使の浮竹、ヴァンパイアの京楽、フェンリルの浮竹の4人で、ヴァンパイアの京楽の屋敷の庭の手入れをしていた。

季節は春をゆうに過ぎ去り、夏がこようとしていた。

綺麗に咲き乱れる朝鮮朝顔の鮮やかな紫と、薔薇園に咲いた白い薔薇が今日は見頃だった。

『すまないねぇ。何分広いものだから、2人だけで維持していくのは無理で、作り出した人形に管理を任せていたんだけど、薔薇を枯らしてしまってね』

ヴァンパイアの京楽は、天使の浮竹がもつ剪定鋏で、枯れた薔薇を切ってもらっていた。

『せっかくの薔薇園が、お前の臭さで汚くなるけど、許してやろう』

「何それ!僕は臭くなんでないですぅ!許すも許さないも、何もしてないじゃない!」

『存在が罪だ』

「はぁ!?君、僕を少しだけ見直してくれたんじゃなかったの!」

『見直したぞ。戦闘面では。プライベートでは、まだまだ』

「戦闘面でだけって、全然僕を見直してくれてないじゃない!」

『そんなことはないぞ。お前の存在を認めている。少しはな』

そう言って、フェンリルの浮竹は尻尾をばっさばっさと振った。

「京楽、フェンリルの俺と少し仲良くなったんだな」

「ええ、これが仲いいように見えるの!?」

「だって、お前をみて尻尾振ってるぞ、フェンリルの俺」

自分の尻尾がばっさばっさと振られているのに気づき、フェンリルの浮竹は真っ赤になって天使の浮竹の背後に隠れた。

『これは違う。その・・・お前が臭いからだ!』

「はぁ、ツンデレだね。まぁいいけど」

「薔薇園の手入れを終えてしまおう。茶菓子とかもってきているし」

4人で薔薇園の手入れをして、新しい苗を植えたり、肥料をやって水をやった。

「しかし、見事な薔薇園だなぁ」

『そうでしょ。僕の自慢の庭だよ』

『俺が育てた薔薇がこれだ!』

フェンリルの浮竹は、水色の薔薇をみんなに見せた。

薔薇が青い色素をもつことは今のところ、天使の浮竹のいる世界にはない。

水色の薔薇はすごく価値のあるものだった。

「水色の薔薇か。いいな」

『あ、天使の俺欲しいか?苗ならまだ余ってるぞ』

「もらえるのか?」

『もちろん、喜んで』

尻尾をばっさばっさと振って、フェンリルの浮竹は天使の浮竹の水色の薔薇の苗をくれた。

それを大事にアイテムポケットに入れて、4人は庭作業を切り上げて、お茶にすることにした。

『最近、こっちでも魔物の活動が活発化していてね。原始の聖女の件もあったりで、ちょっときな臭いことになってるよ』

「こっちの世界でも、魔物は活発化しているんだな。俺のいる世界でも、魔物の活動が活発化している。こちらと俺たちのいる世界は、合わせ鏡のようなものなのだろうか」

「そうだねぇ。なんか、暗躍する影があるとかないとか」

『こっちの世界でも、何か裏でありそうなんだよね』

『このパンケーキ、もっと食っていいか?』

フェンリルの浮竹は、目の前の美味しいパンケーキに夢中で、魔物のことなどどうでもよさそうであった。

「まぁ、俺たちの世界ではまだそっちの、原始の聖女がキメラになったような出来事はおきていないだけ、安心だけどな」

天使の浮竹は、苦笑いしながら、ヴァンパイアの京楽の分を食い尽し、さらに欲しそうにしているフェンリルの浮竹に自分の分のパンケーキをあげた。

『いいのか、天使の俺』

「家に帰れば、いつでも食えるからな」

ばっさばっさ。

フェンリルの浮竹の尻尾は揺れまくりだ。

「この食いしん坊狼め」

『うるさい。噛むぞ』

「噛んでから言わないでよ!痛い痛い!」

堕天使の京楽は、フェンリル姿になった浮竹に足を噛まれていた。

フェンリルの浮竹は、すぐに人型に戻る。

『パンケーキ・・・・これ、くせになりそうな美味しさだ』

「京楽が作ったんだぞ?」

『このパンケーキを、この臭い堕天使の京楽が?』

「そうだ」

『料理の面では一人前と認めてやろう』

「別に認めてくれなくていいですぅ」

「すねてる」

天使の浮竹は、堕天使の京楽の子供じみた仕草に、溜息を零した。

お茶会をして、それぞれの世界のことを話し合い、今後の方針を決める。

ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹は、引き続き世界の異変に敏感にいることに。

堕天使の京楽と天使の浮竹は、依頼を通して、世界の変化を見ることに。

そうして、4人はそれぞれ二人ずつ別れた。

元の世界に戻ると、堕天使の京楽と天使の浮竹のところに、依頼がきていた。

巨大なトロールが複数現れて、町を占拠しているとのことだった。

「出るぞ」

「うん」

車で町の近くまでいき、巨大なトロールの群れを発見して、殲滅に移る。

「アースクェイク!」

「フレアワールド!」

2人で、魔法を使って巨大トロールを退治していった。

「それにしてもでかいな。普通のトロールじゃない。何か、人為的なものを感じる」

「そうだね。普通は町まで来るようなモンスターじゃないし」

20体は倒して、魔石を入手した。

冒険者ギルドにもっていくと、報酬金金貨200枚と、魔石は粗悪品ということで全部で金貨3枚だった。

そして、男の娘のギルドマスターに呼ばれた。


「最近、モンスターを使って暗躍している者の名が分かった。名前は藍染惣右介。堕天使だ。天使から落とされたことに憤怒しているようで、世界を滅茶苦茶にして神を殺したいらしい」

「神を殺す?そんなこと、できるのか?」

「セラフの力があれば、神に会うことができる。その力を利用して、神を害することも完全に不可能とはいいきれない」

ギルドマスターの言葉に、京楽が心配げに浮竹を見た。

「俺は大丈夫だ」

浮竹は天使であるが、セラフだ。

セラフである浮竹を利用されることを、京楽は恐れていた。

「僕が、何があっても君を守るから」

「ああ、信じている」

「ごほん」

「「あ」」

ギルドマスターの前でいちゃついていた二人は、通常運転に戻って、家に帰宅した。

「でも、本当に気を付けてね、浮竹。怪しい人物に近付いちゃだめだよ」

「お前も随分怪しいがな」

「あはははは」


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「大天使長、ミカエルには、手が出ない・・・・手ごろなセラフは、やはり浮竹か」

藍染は、ワイングラスをあおりながら、いつか神に復讐するその時を夢見ていた。

「ただ、堕天使が邪魔だな・・・・・」

堕天使の京楽を、先に始末するべきか。

藍染は、迷うのだった。


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