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堕天使と天使19

フェンリルの浮竹に連れてこられて、服屋で天使の浮竹は背中があいている服を買われた。

その服にはマントがついていて、背中が隠れるようになっているので、外で着ても大丈夫だった。

『うん、やっぱりそれ似合ってるな』

フェンリルの浮竹は、天使の浮竹の買ってあげた服を着てくれてきたことに嬉しがっていた。

「はじめは背中がスースーして落ち着かなかったが、マントをすれば大丈夫だから、着ていても大丈夫になった」

『翼を出す時、服は破れないのか?』

フェンリルの浮竹の素朴な疑問に、天使の浮竹が答える。

「ああ。翼はアストラル体でできていて、霊的物質なんだ。衣服を着ていても、翼は透けて外に出る」

『じゃあ、その服じゃなくても良かったんだな』

がっかりするフェンリルの浮竹に、ヴァンパイアの京楽が助け舟を出す。

『彼に似合っているから、買ってあげたんでしょ。ほら、浮竹そんなしょげないの』

『むー。でも、似合ってるぞその服、天使の俺!』

「うん、ありがとう」

天使の浮竹は、真っ赤になった。

「ああ、僕の浮竹は何を着ても似合うからいいね」

『お前はボロ布でも着てろ』

「酷い!」

『べーっだっ』

フェンリルの浮竹は、堕天使の京楽に少々心を許していたが、元に戻っていた。

「フェンリルの俺、京楽とは仲良くしてやってくれ」

『お前がそう言うなら、少しだけ仲良くしてもいい。1ミリくらい』

「何それ!1ミリって仲の良い単位なの!?」

堕天使の京楽がわめく。

『まぁまぁ、ボクの浮竹はシャイだから』

「全然シャイどころかいじめてくるんですけど!」

フェンリルの浮竹は、狼の姿になって、黒猫姿になって逃げる京楽を追い駆けだした。

「浮竹~助けて~~~」

「京楽、ほどほどに遊んでもらえ」

「浮竹の白状者おおおお」

堕天使の京楽は、フェンリルの姿の浮竹に転がされて遊ばれるのであった。


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「でも、ほんとにその服似合ってるね」

京楽の言葉に、浮竹は赤くなった。

「マントなんてつけなくてもいいよ。君の綺麗な背中が見えていいね」

「翼で隠してやる」

浮竹は、セラフの光り輝く6枚の翼を出した。

「あ、反則!」

京楽も、漆黒の6枚の翼を出した。

「翼出してないと、自分が堕天使だってこと忘れそうだよ」

「お前の脳みそは軽いからな」

「酷い!ちょっと、フェンリルの君みたいなこと言わないでよ」

「いや、そんなつもりじゃなかったんだ。すまない」

しょげる浮竹の頭を、京楽が撫でた。

「依頼がきているな・・・・アークデーモン退治。悪魔か」

「ああ、思い出すなぁ。アークデーモンの女の子とちょめちょめした・・・」

「カラミティファイア」

「のぎゃあああああ」

自業自得な京楽を焦がして引きずって、依頼された場所まで車で移動した。

「いるいる・・・・アークデーモンが5体か」

「2体引き受けるから、残りの3体はお願いね」

「ああ、分かった」

大きな音を炸裂させて、建物の外に出てきたアークデーモンを、まずサンシャインの光で目を焼いて視界が効かないようにして、魔法で片付けていく。

「カラミティサンダー!」

「ファイナルフレア!」

京楽も浮竹も容赦はしなかった。

依頼だと、小さな子供を生贄として捧げており、まだ生きている子供がいるなら保護してほしいとのことだった。

魔法で灰をなり、魔石だけを残して消えていったアークデーモンのいた建物の中に入る。

5歳くらいの男の子と、3歳くらいの女の子がいた。

他にもいたが、皆生贄として捧げられて、息をしていなかった。

「もう大丈夫だ。俺たちが君らを責任もって保護するから」

「母さんに会えるの?」

「もう、痛いことしない?」

子供たちは、浮竹に縋りついた。

京楽は、そのうちの3歳くらいの女の子を抱き上げて、背中をさすった。

「うわああああああん」

「ああああん」

3歳の女の子が泣きだしたのをきっかけに、5歳の男の子も泣き出した。

「もう、怖いことも痛いこともないからな。安心してくれ」

「「うん」」

浮竹が5歳の男の子を抱き上げて、車に乗せて京楽も3歳の女の子を車に乗せて、冒険者ギルドまでいくと、魔石を提出し、依頼料をもらった。

子供を二人保護したことで、追加の謝礼金ももらった。

「それにしても、なぜアークデーモンが子供を生贄になんて・・・・」

「なんでだろうねぇ」

「悪魔がいってたの。藍染様のためだって」

保護された5歳の男の子が、保護者がくるまでの間、京楽と浮竹の傍にいた。

「藍染・・・・・その名前がここで出てくるのか」

藍染は、今回の事件の全ての黒幕であるようだった。

「藍染に懸賞金をかけました。見つけ次第、殺してほしい」

男の娘のギルドマスターは、他の冒険者にも藍染のことについて教えていた。

「藍染か・・・・なんでも、堕天使らしいな。京楽、お前は会ったことはあるのか?」

「うん・・・・あるよ。彼は、僕と同じ神の12使徒の一人だったから」

「じゃあ、2千年以上も生きているのか」

「さぁ・・・・転生を繰り返しているようだし。今は堕天使で、この前は悪魔だった気がする」

京楽は、藍染の顔をおぼろげながらにしか覚えていなかった。

常に認識阻害の魔法を使っていた藍染は、素顔が分からない。

「いつか、衝突する日がきそうだな」

「そうだね。きっと、神に復讐したがっているから、セラフを使って神を呼び出すだろう。浮竹、くれぐれも気をつけてね。君は大天使長ミカエルの子供だし、セラフとしての力は地上にいる天使の中で一番だよ」

「気をつける・・・・」

結局、何故藍染が子供を生贄にしていたかは分からずじまいなのであった。


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「ククク・・・・純粋な子供の魂は価値が高い。これで、大悪魔を召還できる」

藍染は、集まった子供たちの魂を封じ込めたガラス瓶を机の上に置くと、ゆっくりと目を閉じて、自分と同じ12使徒だったかつての仲間たちの顔を思い出す。

今活動しているのは、京楽とあと二人だ。

藍染は笑う。

「さて、この計画に賛同してくれる者は・・・・・・」

12使徒から、堕天したのは何も京楽や藍染だけではない。

藍染は、協力してくれそうな人物を思い出して、くつくつと笑うのであった。

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