夜に啼く
その色子は、12歳だった。
貴族出身で、読み書きも計算もでき、何より美しかった。少女かと見まごうほどの美しさで、少女といってもとびきりの美少女だ。
名は朽木白哉。
10歳で売られて、12歳から客を取り始めた。
はじめは客をとるのを嫌がっていたが、男衆に酷く輪姦されて、絶望に染まった瞳で客を取り始めた。
その男衆の中に、阿散井恋次はいた。白哉と同じ12歳だった。
色子の味も覚えておけと言われて、涙を静かに流す美しい色子の白哉をなるべく優しく抱いた。
それから、白哉のことを恋次は密かに想い、恋次は白哉の世話を任されて、白哉の心の中にぽっかりと開いた空洞に入りこみ、白哉のお気に入りになっていた。
客と色子との間に恋愛はないに等しい。
白哉は体を売り始めてあっという間に出世して、色子では珍しい花魁にまでのぼりつめた。若干15歳であった。
「恋次」
「なんでしょう、白哉さん」
「新しい簪を買いにいきたい。ついてこい」
白哉は、花街の中なら自由に移動を許可されていた。
中には足抜けしようとする色子や遊女がいるので、花街に入る門には屈強な男たちが24時間監視をして、足抜けを防止していた。
白哉は、恋次をつれて装飾品の店に行き、瑠璃でできた簪を欲しがり、店の親父を色仕掛けで落として、半額の値段で簪を手に入れた。
「白哉さん、何も色仕掛けなんかしなくても」
「私は、自分で稼いだ金でいずれ自分を買って、自由になる。身請けなどごめんだ」
色子が身請けされても、せいぜい20年ほど愛されるのが関の山。遊女と違って子を成せないので、飽きられれば、また売り飛ばされてしまう。
きっと、年がいってしまえば、色子としての価値もなくなり、奴隷に身を落とすかもしれない。
白哉はとにかく上客の、特に上流貴族の者たちに愛されて、金をどんどんもらって、その花街で一番稼ぎの多い色子になっていた。
女の花魁など、目に入らぬほどの稼ぎぶりだった。
当然、身請けの額もすごいことになっている。
上流貴族でも、白哉を身請けしたいという者は多かったが、その値段のあまりの高さに諦める者が多かった。
「白哉」
「はい、旦那様」
白哉は、客の前では猫を被る。
恋次といる時だけ、素顔を見せた。
「おお、白哉はいつまでたっても綺麗でかわいいねぇ」
「ありがとうございます、旦那様。さぁ、白哉を今日もかわいがってくださいましね?」
白哉は、今日も好きでもない相手に買われ、足を開いて体を売る。
一晩で複数の男の相手をすることもあった。
「白哉さん、あんまり無理しないでください。倒れたらどうするんですか」
「恋次。色子は若いうちが売り時なんだ。20代になれば売上げも落ちる。花魁でいられるのも、あと3年というところだ」
「白哉さん‥‥‥」
「兄には、教えていなかったな。朽木白哉というのは本名だ。源氏名は蛍。そう呼ばれるのが嫌なので、本当の名で体を売っている。もしも、朽木という名に心当たりのある者が店にきたら、何がなんでも通してくれ」
白哉には、義妹の朽木ルキアという少女がいた。
借金のために白哉は売られたが、せめてルキアだけはと、売られて手にいれた金のほとんどはルキアのために残した。
白哉には叔父がいたため、ルキアを任せた。
定期的にルキアの報告を聞いているため、叔父がルキアを売り飛ばすことはなかったと聞いているし、貴族であるのに節約の厳しい生活をしているらしいが、人並みの幸せを送っていると聞いてよく安堵していた。
「いつか、自分の稼いだ金で自分を買い取って自由になり、ルキアと一緒に暮らすのが夢なのだ。恋次、その時は兄もついてこい」
「え、俺ですか?」
「兄には、世話になっているからな。私をただで抱けるのは、兄だけだ」
恋次と白哉は、ご法度な恋仲にあった。
使用人が、色子とできていると知られれば、きっと恋次は花街を追われてしまう。
白哉は少しばかりの折檻で終わるだろうが、恋次の場合、命の保証すらない。
それでも、恋次はたまに白哉を抱く。
白哉は、貴族であるはずなのに身売りをしなければいけないという悪夢から、目覚めさせたいというように、たまに自傷行為に走る。
恋次は、そのストッパー役だった。
「ああ‥‥‥また、手首を切ったのか」
白哉は、3日前60代のじじいに抱かれた後、上流貴族の4人の男に輪姦されるが如く抱かれて、その反動で手首を切った。
発見されたのが早かったのと、傷が浅かったせいで生き残れた。
「複数の客を取るの、やめにしませんか」
「なぜだ。金をしこたま落としていってくれる」
「でも、白哉さんその度に体を自分で傷つけるじゃないですが、俺、そんな白哉さんを見ていられません」
「恋次、私を抱け」
「白哉さん」
白哉は、傷口を縫われていた。手首のその傷が癒えるまでの少しの間、客をとらなくてよかった。
「私は、男に抱かれたい浅ましい色子なのだ。誰が相手でも、自分から足を開いて受け入れる」
「白哉さん、泣かないで」
気づけば、白哉は涙を零していた。
「何もかも忘れたい。私を抱け」
恋次は、丁寧に白哉を扱った。
優しく口づけして、体の全体を愛撫した。
「あっ」
「もっと、声聞かせてください。あんたの声、すげぇそそる」
「んあっ」
恋次は、白哉のものをしごきあげて、ピチャリと音をたてて舐めあげる。
「あ、恋次」
「気持ちいいですか?」
こくこくと、白哉は頷いた。
白哉は右手首に包帯が巻かれていて、見ていて痛々しかった。
潤滑油を取り出して、指にまとわせると、白哉の蕾に指をいれる。
「あっ」
指をばらばらに動かされて、ぴくんと白哉が反応する。
「ここ、白哉さんのいいところ」
「ひあ!」
指でぐっとそこを押されて、白哉はオーガズムでいっていた。
「あ、もう、来い」
恋次は、指をひきぬくと、とろとろに溶けている蕾に、潤滑油をまとわせた己のものをあてがい、一気に貫いた。
「ひああああ!!」
びくんと、白哉の背がしなる。大きくオーガズムでいくと同時に、射精していた。
「あ、あ、もっとお」
「白哉さん、好きです」
白哉は、恋次の肩に噛みついて、手を背にまわす。
「んあああ、もっと。もっと激しく、壊れるくらい私を抱け」
「白哉さん」
恋次は、白哉を後ろから突き上げる。
ぐちゅりと濡れた音が結合部から聞こえて、結合部は泡立っていた。
「あ、いい。いく、いっちゃう」
「何度でも抱いてあげますよ」
「んああああ」
恋次は、白哉の胎の奥に精液を吐き出した。
「あ、あ‥‥」
白哉は、満足げに目を閉じる。
恋次は、何度も白哉の中に出した。
若いだけあって、性欲はおおせいであったが、白哉は抱かれる側なのでそうでもないようだった。
「私は、兄が羨ましい」
「どうしてですか」
「自由だからだ」
「でも、金もない貧乏人ですよ、白哉さんの世話を任されてから給金はよくなりましたが、それでも金持ちにはなれません」
「自由ならば、それでもいいではないか。私など、同じ男に足を開かねば生きていけぬ」
大分金はたまったが、まだまだ自分を自分で買う金は白哉にはなかった。
2年が過ぎた。
ある日、朽木家と聞いて客がやってきた。
まだ少年だった。
「ああ、やっぱり白哉様だ。同じ四大貴族だった四楓院夕四郎です」
「え、四大貴族?」
恋次が、目を見開く。
あの、四大貴族の一人だというのか、色子の白哉が。
「ああ、色子になどになって。身請けします」
「よいのか?」
白哉が、夕四郎に問いかける。
「はい。白哉様を身請けする金くらいありますから!」
「しかし、色子を身請けしたとなれば、兄の立場が」
「白哉様は、そこの使用人と一緒に逃げてください。自由をさしあげます」
白哉は、涙を滲ませた。
「夕四郎殿、恩に着る」
白哉は、こうして四楓院夕四郎に身請けされて自由になり、恋次を連れて生まれ故郷に戻ってきた。
「兄様!」
「ルキア!」
白哉は、一人残していたルキアが黒崎一護という伴侶を得て、幸せに暮らしているのを知って、安堵した。一緒に暮らさなくても、幸せそうだった。
「ルキア、私はしばらく世界を回ってみようと思う。この恋次と一緒に」
「兄様は、四楓院夕四郎様に身請けされたと聞きましたが?」
「ああ、その通りだ。身請けしてもらったが、自由をくれた」
「兄様、では旅が終われば私と一緒に暮らしてください。一護は上流寄贈なので、生活は安心できます」
「いつ旅から帰ってくるかも分からぬが、帰って来た時はルキア、そなたの傍にいることを誓おう」
「はい、兄様」
「いいんですか、白哉さん。俺と旅だなんて」
「世界をもっと見てみたいのだ。金は、夕四郎殿からたくさんもらっている。ただ、私は色子であった時間があるせいで、体が疼く。その時の相手を、兄がしてくれ」
「俺は、白哉さんを愛しています」
「そうであったな。私も恋次、兄を愛している。兄がいたから、まだあの地獄の中で正気でいられた」
花街は苦界ともいわれる。
白哉にとっては、苦界であったのだろう。
好きでもない男に体を売るなんて。色子として。
「いろんな世界を見て回りたい。身辺警護は兄に任せたぞ。男衆の中でも一番腕が立つのであろう?」
「そうでしたけど‥‥‥白哉さんは綺麗だから。俺、いろいろと心配です」
「没落する前の朽木家の祖先をたどってみたい。まだ没落する前の朽木家は、貴族でありながら商人だったそうだ。その足取りをたどってみたいのだ」
「では、俺はその隣で恋人兼用心棒としていますね?」
「ふふ、私の恋人か。まぁ、よかろう」
白哉は、恋次と共に旅立っていくのであった。
貴族出身で、読み書きも計算もでき、何より美しかった。少女かと見まごうほどの美しさで、少女といってもとびきりの美少女だ。
名は朽木白哉。
10歳で売られて、12歳から客を取り始めた。
はじめは客をとるのを嫌がっていたが、男衆に酷く輪姦されて、絶望に染まった瞳で客を取り始めた。
その男衆の中に、阿散井恋次はいた。白哉と同じ12歳だった。
色子の味も覚えておけと言われて、涙を静かに流す美しい色子の白哉をなるべく優しく抱いた。
それから、白哉のことを恋次は密かに想い、恋次は白哉の世話を任されて、白哉の心の中にぽっかりと開いた空洞に入りこみ、白哉のお気に入りになっていた。
客と色子との間に恋愛はないに等しい。
白哉は体を売り始めてあっという間に出世して、色子では珍しい花魁にまでのぼりつめた。若干15歳であった。
「恋次」
「なんでしょう、白哉さん」
「新しい簪を買いにいきたい。ついてこい」
白哉は、花街の中なら自由に移動を許可されていた。
中には足抜けしようとする色子や遊女がいるので、花街に入る門には屈強な男たちが24時間監視をして、足抜けを防止していた。
白哉は、恋次をつれて装飾品の店に行き、瑠璃でできた簪を欲しがり、店の親父を色仕掛けで落として、半額の値段で簪を手に入れた。
「白哉さん、何も色仕掛けなんかしなくても」
「私は、自分で稼いだ金でいずれ自分を買って、自由になる。身請けなどごめんだ」
色子が身請けされても、せいぜい20年ほど愛されるのが関の山。遊女と違って子を成せないので、飽きられれば、また売り飛ばされてしまう。
きっと、年がいってしまえば、色子としての価値もなくなり、奴隷に身を落とすかもしれない。
白哉はとにかく上客の、特に上流貴族の者たちに愛されて、金をどんどんもらって、その花街で一番稼ぎの多い色子になっていた。
女の花魁など、目に入らぬほどの稼ぎぶりだった。
当然、身請けの額もすごいことになっている。
上流貴族でも、白哉を身請けしたいという者は多かったが、その値段のあまりの高さに諦める者が多かった。
「白哉」
「はい、旦那様」
白哉は、客の前では猫を被る。
恋次といる時だけ、素顔を見せた。
「おお、白哉はいつまでたっても綺麗でかわいいねぇ」
「ありがとうございます、旦那様。さぁ、白哉を今日もかわいがってくださいましね?」
白哉は、今日も好きでもない相手に買われ、足を開いて体を売る。
一晩で複数の男の相手をすることもあった。
「白哉さん、あんまり無理しないでください。倒れたらどうするんですか」
「恋次。色子は若いうちが売り時なんだ。20代になれば売上げも落ちる。花魁でいられるのも、あと3年というところだ」
「白哉さん‥‥‥」
「兄には、教えていなかったな。朽木白哉というのは本名だ。源氏名は蛍。そう呼ばれるのが嫌なので、本当の名で体を売っている。もしも、朽木という名に心当たりのある者が店にきたら、何がなんでも通してくれ」
白哉には、義妹の朽木ルキアという少女がいた。
借金のために白哉は売られたが、せめてルキアだけはと、売られて手にいれた金のほとんどはルキアのために残した。
白哉には叔父がいたため、ルキアを任せた。
定期的にルキアの報告を聞いているため、叔父がルキアを売り飛ばすことはなかったと聞いているし、貴族であるのに節約の厳しい生活をしているらしいが、人並みの幸せを送っていると聞いてよく安堵していた。
「いつか、自分の稼いだ金で自分を買い取って自由になり、ルキアと一緒に暮らすのが夢なのだ。恋次、その時は兄もついてこい」
「え、俺ですか?」
「兄には、世話になっているからな。私をただで抱けるのは、兄だけだ」
恋次と白哉は、ご法度な恋仲にあった。
使用人が、色子とできていると知られれば、きっと恋次は花街を追われてしまう。
白哉は少しばかりの折檻で終わるだろうが、恋次の場合、命の保証すらない。
それでも、恋次はたまに白哉を抱く。
白哉は、貴族であるはずなのに身売りをしなければいけないという悪夢から、目覚めさせたいというように、たまに自傷行為に走る。
恋次は、そのストッパー役だった。
「ああ‥‥‥また、手首を切ったのか」
白哉は、3日前60代のじじいに抱かれた後、上流貴族の4人の男に輪姦されるが如く抱かれて、その反動で手首を切った。
発見されたのが早かったのと、傷が浅かったせいで生き残れた。
「複数の客を取るの、やめにしませんか」
「なぜだ。金をしこたま落としていってくれる」
「でも、白哉さんその度に体を自分で傷つけるじゃないですが、俺、そんな白哉さんを見ていられません」
「恋次、私を抱け」
「白哉さん」
白哉は、傷口を縫われていた。手首のその傷が癒えるまでの少しの間、客をとらなくてよかった。
「私は、男に抱かれたい浅ましい色子なのだ。誰が相手でも、自分から足を開いて受け入れる」
「白哉さん、泣かないで」
気づけば、白哉は涙を零していた。
「何もかも忘れたい。私を抱け」
恋次は、丁寧に白哉を扱った。
優しく口づけして、体の全体を愛撫した。
「あっ」
「もっと、声聞かせてください。あんたの声、すげぇそそる」
「んあっ」
恋次は、白哉のものをしごきあげて、ピチャリと音をたてて舐めあげる。
「あ、恋次」
「気持ちいいですか?」
こくこくと、白哉は頷いた。
白哉は右手首に包帯が巻かれていて、見ていて痛々しかった。
潤滑油を取り出して、指にまとわせると、白哉の蕾に指をいれる。
「あっ」
指をばらばらに動かされて、ぴくんと白哉が反応する。
「ここ、白哉さんのいいところ」
「ひあ!」
指でぐっとそこを押されて、白哉はオーガズムでいっていた。
「あ、もう、来い」
恋次は、指をひきぬくと、とろとろに溶けている蕾に、潤滑油をまとわせた己のものをあてがい、一気に貫いた。
「ひああああ!!」
びくんと、白哉の背がしなる。大きくオーガズムでいくと同時に、射精していた。
「あ、あ、もっとお」
「白哉さん、好きです」
白哉は、恋次の肩に噛みついて、手を背にまわす。
「んあああ、もっと。もっと激しく、壊れるくらい私を抱け」
「白哉さん」
恋次は、白哉を後ろから突き上げる。
ぐちゅりと濡れた音が結合部から聞こえて、結合部は泡立っていた。
「あ、いい。いく、いっちゃう」
「何度でも抱いてあげますよ」
「んああああ」
恋次は、白哉の胎の奥に精液を吐き出した。
「あ、あ‥‥」
白哉は、満足げに目を閉じる。
恋次は、何度も白哉の中に出した。
若いだけあって、性欲はおおせいであったが、白哉は抱かれる側なのでそうでもないようだった。
「私は、兄が羨ましい」
「どうしてですか」
「自由だからだ」
「でも、金もない貧乏人ですよ、白哉さんの世話を任されてから給金はよくなりましたが、それでも金持ちにはなれません」
「自由ならば、それでもいいではないか。私など、同じ男に足を開かねば生きていけぬ」
大分金はたまったが、まだまだ自分を自分で買う金は白哉にはなかった。
2年が過ぎた。
ある日、朽木家と聞いて客がやってきた。
まだ少年だった。
「ああ、やっぱり白哉様だ。同じ四大貴族だった四楓院夕四郎です」
「え、四大貴族?」
恋次が、目を見開く。
あの、四大貴族の一人だというのか、色子の白哉が。
「ああ、色子になどになって。身請けします」
「よいのか?」
白哉が、夕四郎に問いかける。
「はい。白哉様を身請けする金くらいありますから!」
「しかし、色子を身請けしたとなれば、兄の立場が」
「白哉様は、そこの使用人と一緒に逃げてください。自由をさしあげます」
白哉は、涙を滲ませた。
「夕四郎殿、恩に着る」
白哉は、こうして四楓院夕四郎に身請けされて自由になり、恋次を連れて生まれ故郷に戻ってきた。
「兄様!」
「ルキア!」
白哉は、一人残していたルキアが黒崎一護という伴侶を得て、幸せに暮らしているのを知って、安堵した。一緒に暮らさなくても、幸せそうだった。
「ルキア、私はしばらく世界を回ってみようと思う。この恋次と一緒に」
「兄様は、四楓院夕四郎様に身請けされたと聞きましたが?」
「ああ、その通りだ。身請けしてもらったが、自由をくれた」
「兄様、では旅が終われば私と一緒に暮らしてください。一護は上流寄贈なので、生活は安心できます」
「いつ旅から帰ってくるかも分からぬが、帰って来た時はルキア、そなたの傍にいることを誓おう」
「はい、兄様」
「いいんですか、白哉さん。俺と旅だなんて」
「世界をもっと見てみたいのだ。金は、夕四郎殿からたくさんもらっている。ただ、私は色子であった時間があるせいで、体が疼く。その時の相手を、兄がしてくれ」
「俺は、白哉さんを愛しています」
「そうであったな。私も恋次、兄を愛している。兄がいたから、まだあの地獄の中で正気でいられた」
花街は苦界ともいわれる。
白哉にとっては、苦界であったのだろう。
好きでもない男に体を売るなんて。色子として。
「いろんな世界を見て回りたい。身辺警護は兄に任せたぞ。男衆の中でも一番腕が立つのであろう?」
「そうでしたけど‥‥‥白哉さんは綺麗だから。俺、いろいろと心配です」
「没落する前の朽木家の祖先をたどってみたい。まだ没落する前の朽木家は、貴族でありながら商人だったそうだ。その足取りをたどってみたいのだ」
「では、俺はその隣で恋人兼用心棒としていますね?」
「ふふ、私の恋人か。まぁ、よかろう」
白哉は、恋次と共に旅立っていくのであった。
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