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奴隷竜とSランク冒険者40

ネモフィラの花畑。

そこは、ハイエルフの浮竹にとって特別な場所であった。

時間停止の魔法をかけて、永遠に美しい光景を保ち続けていた。

ネモフィラの花の青と空の青が溶け合う場所。

ダークネスインフェルノドラゴンの京楽だけが、ハイエルフの浮竹の他にそのネモフィラの花畑を知っていた。

今その場所に、京楽が来ていた。

ダークネスインフェルノドラゴンの京楽と浮竹が、楽しそうに会話しているのを、また嫉妬でもやもやしている京楽を宥めるために、ネモフィラの花畑に連れてきた。

『ここは、俺と京楽だけの秘密の場所なんだ。そっちの俺にもいつか教えるが、今は俺の京楽以外では、冒険者の京楽、お前がはじめての客人だ』

「うわぁ、すごく綺麗だね」

『そうだろう』

ハイエルフの浮竹は自慢げに、京楽にネモフィラの花畑を見せる。

「少し摘み取ってもいい?浮竹に持って帰りたい」

『いいぞ」

京楽は、しゃがみこんでネモフィラの花をいくつか摘み取った。

「ねぇ、なんでボクにそんな大切な場所教えてくれたの?」

『いつか、俺の京楽のように、ムーンホワイトドラゴンの俺のために全てをなげうっていきそうな気がして、怖いんだ』

「ボクは・・・・浮竹の悲しむことはしないよ」

『それでも、怖い』

京楽は、立ち上がってハイエルフの浮竹を抱きしめて、その頭を撫でた。

『冒険者の京楽?』

「大丈夫。ボクは、君のボクのようになったりしない。浮竹と二人で幸せな時間を共有しあって生きていく。そのために、寿命を伸ばす契約もしたんだから」

『ああ、そうだな。俺の京楽は闇を統べて闇に飲みこまれそうになるから。お前なら、もう一人の俺と闇など抱えずにやっていけそうだな』

「気遣ってくれて、ありがとね」

京楽は、ネモフィラの花を小さな花束にして、浮竹とダークネスインフェルノドラゴンの京楽のいる、ハイエルフの浮竹の家(神殿)に戻ってきた。

「浮竹、こっちおいで」

「なんだ?」

京楽は、ネモフィラの花を一輪とると、浮竹の髪に飾った。

「うん、似合ってる」

「なんだ、この花は?なにか分からないが、綺麗だな」

「ネモフィラっていう花で、見て見て、小さな花束にしてみたんだよ。浮竹にあげる」

「お、おう。ありがとう」

空色の小さな花束を受け取って、浮竹は不思議そうに見つめていた。



『浮竹、あのネモフィラの花畑に、人間のボクを連れて行ったの』

『ん、ああ。駄目だったか』

『駄目ってわけじゃあないけど・・・・2人だけの秘密にしておきたかった』

少しがっかりするダークネスインフェルノドラゴンの京楽を、ハイエルフの浮竹がその頭を撫でる。

京楽に抱きしめられて、頭を撫でられたことを言うと、ダークネスインフェルノドラゴンの京楽は気分を害して、京楽にきつくあたるだろうから、秘密にしておいた。

ダークネスインフェルノドラゴンの京楽は強い。でも、心の中に闇がある。

京楽はもまたなかなかに強いが、心の中にはそれほど闇がない。

純粋に浮竹のことを思い、浮竹のために行動する。

ダークネスインフェルノドラゴンの京楽も、ハイエルフの浮竹のことを思い、ハイエルの浮竹のために行動するが、心に闇があるせいで人間を憎み、他者とあまり理解しあおうとしない。

『いつか、変われるといいな』

『ん、何がだい?』

『いや、何でもないんだ』



浮竹の方を見ると、京楽がネモフィラの花を浮竹の髪に散りばめて、写真をとっていたりした。

「おい、京楽、いい加減にしろ。写真なんかとっても、なんにもならないだろう」

「そうでもないよ。綺麗な君を保存しておける」

「ネモフィラの花がそんなに好きなら、今度花屋で買って帰ろう」

「あ、それいいね。宿のバルコニーにプランターを置いて、咲かせようか」

「じゃあ、ネモフィラだけじゃなく他の花も育てようか・・・・・」

そんな他愛もない話をする浮竹と京楽を、ハイエルフの浮竹は穏やかな気持ちで見ていた。ダークネスインフェルノドラゴンの京楽は、自分の中からわきあがる感情が、喜びなのか悲しみなのか分からなかったが、二人を見ていて嫌な気持ちにはならなかった。

「京楽、お腹減った!」

「ええ、まだ2時だよ。お昼ごはん食べて2時間しか経ってないじゃない」

「お腹がすいたものはすいたから仕方ない。何か作れ」

「だってさ、ハイエルの浮竹。ちょっと早いけど、お茶の時間にしていい?」

『あ、ああ。いいぞ』

ハイエルフの浮竹は、もう一人の自分のお腹にはプチブラックホールがあるのを、改めて認識させらるのであった。

ちなみに、茶菓子のアップルパイを、浮竹は二人分食べるのであった。

食べたものは、膨大な魔力とドラゴンとしての体の維持に使う。

本当なら、まだ子供の年齢なので、エネルギーの消費の仕方が雑で、そこは教えてもどうすることもできないので、年を重ねるごとに修正していくしかないのであった。

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