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奴隷竜とSランク冒険者41

「ふ・・・・・実につまらん人間だ。能天気すぎて、反吐がでる。だが、その嫉妬心は利用できるな。ふふふ・・・・・・」

藍染は、水鏡に映った京楽を見ていた。

人間の京楽は、藍染にとっては本当にどうでもいい存在だった。だが、そのパートナーであるムーンホワイトドラゴンの浮竹は欲しい。

仲たがいをさせてやろう。

そう思い、藍染は嫉妬心が暗く変化するもやのようなものを作り出した。



「あ、ごめんなさい」

「いえ、こちらこそ」

黒いローブを深く被った男とぶつかって、京楽は謝った。

その瞬間、黒いもやのようなものが京楽を包みこむ。

「おい、京楽?何か、黒い霧のようなものが・・・・」

「浮竹、帰るよ」

「え?買い物は?」

京楽は、有無を言わせぬ力で、浮竹の手をひっぱって、高級宿に帰る。

「京楽、どうしたんだ、お前、何か変だぞ」

「もう、出さない。君を、人前に出さない。ボクだけを見て、ボクだけを愛すればいいんだ」

「京楽!?おい、どうしたんだ!さっきの黒い霧が原因か!?」

京楽は、浮竹の手足を縛って、ベッドに転がした。

念のために、スリープの魔法をかけておいたので、浮竹が暴れることなかった。

その間に、奴隷商人のところにいき、人が入れる大きさの檻を購入する。

それをアイテムポケットに収納して、京楽は帰ってきた。

京楽は、檻の中に浮竹を閉じ込めてしまった。

「ん・・・京楽?」

「君はボクのものだ。もう、この檻から出さない。この檻の中で、ボクと一緒に生活しよう」

「俺を閉じ込めるつもりか!そんなのいくら京楽でも嫌だ!」

「うるさい!君の意思なんて関係ない!」

どなられて、びくりと浮竹は怯えた。

「京楽・・・・・」

翡翠の瞳に涙がたまり、それは真珠となってかつんかつんと檻の中に落ちた。

ムーンホワイトドラゴンの涙は、月光真珠といってとても価値のある珍しい宝石だった。

「京楽、お願いだから元の京楽に戻ってくれ。俺をここから出して」

「だめだよ。君は綺麗な上に優しいから、たくさんの人間に愛される。そんなの、ボクの執着心が許さない」

「あの黒い霧・・・・」

「ハイエルフの浮竹と、ダークネスインフェルノドラゴンのボクが訪ねてきても、君を見せない」

「あの黒い霧が全ての原因だ!京楽、意思をしっかりもて!」」

浮竹は、一種の呪詛だと分かった。

「ボクはきちんといつものボクだよ。君を死ぬほど、死んでもいいくらい愛してる」

「そんなのおかしい。一緒に生きるんだろう?死ぬ時も一緒だろう?」

「そうだね。死ぬ時は一緒・・・・・うううう、浮竹、頭が痛い。ボクは・・・ボク何をしているんだ。大切な浮竹に・・・・・・」


ほお、歯向かうか。


そんな声が聞こえた気がした。

「ボクは・・・・ボクのしていることは正しい」

「京楽、間違ってる。それに、京楽が恐れなくても俺は京楽の傍にいるし、離れない」

「そう言いつつ、ハイエルフの君やダークネスインフェルノドラゴンのボクと親しくしてるじゃない。浮竹はボクだけものだ。ボクだけを見て」

「京楽・・・・・」

浮竹は、檻ごしに京楽に、触れるだけのキスをした。

「浮竹?」

「全ての理(ことわり)よ、命よ爆ぜよ。全ての事象は女神の手の平に。ゴッドハイネスアンチカース」

究極の解呪呪文を、浮竹は唱えた。

「ボクは、ボクは正しい・・・・・ああああ、頭が、頭が痛い!」

「がんばれ、京楽!黒い霧の正体は呪詛だ。体の外へ出してしまえ!自分を取り戻すんだ!」

「ううう・・・・・」

「エリクサーが、アイテムポケットに入っているはずだ。飲め!」

「浮竹・・・・この苦しみは、エリクサーを飲めば治るの?」

「呪詛による呪いも状態異常の変化だ。治る!」

京楽は、浮竹の魔法が効いているうちに、エリクサーを取り出し中身を一気にあおった。

しゅうううと、京楽の中から黒い霧が出ていく。



く、余計なことを。

計画は失敗か。



そんな声が聞こえて、浮竹は威嚇のドラゴンボイスを放つ。

「ふふ・・・・君のパートナーは、嫉妬心だらけだな。いつか、それで身を滅ぼすかもしれないな」

黒い霧は人の姿になった。

「お前は、藍染!」

「残念。私はただの幻影さ。ムーンホワイトドラゴン・・・この月光真珠はもらっていくよ。全ての錬金の成功率を100%にしてくれるからね」

「そんなことのために、京楽を利用したのか」

「いいや?ただ、嫉妬心が強いから、それが闇の方向に転化したら面白いなと思っただけさ」

「浮竹に近づくな!」

京楽は、檻から浮竹を解放すると、幻影でできた藍染を切った。

「このドラゴンスレイヤーは特殊な魔剣だ。相手が幻影でも、本体にダメージがいく」

「うぐ・・・・この、虫けら同然のただの人間の分際で・・・・」

「ボクは浮竹の契約者でパートナーだ。人間という種族の限界を突破している」

「く、覚えおけ」

それだけ言い残して、藍染の幻影は霧散した。



魔王城では、額から血を流した藍染が、狂ったように笑っていた。

「はははは!!たかが人間如きがこの私に傷をつけるとは、面白い」

「藍染様?」

「なんだ、アーミア」

「お茶のご用意ができております」

「うむ。もってこい」

そのお茶にはモレ草がもられていて、飲んだ藍染は3日はトイレに閉じこもるのであった。



「浮竹、ごめんね。元を正せばボクの嫉妬心が招いたことだ」

「元に戻ったからいい。それに嫉妬のない京楽は京楽じゃない」

「なんか微妙に酷くない!?」

「俺は、お前が俺が他の人と仲良くすると嫉妬することろ、けっこう好きだぞ。ああ、愛されてるなぁって自覚できるから」

浮竹は、京楽を抱きしめた。

「浮竹・・・・・」

「それにしても、幻影とはいえ藍染が出てくるとは思わなかった。魔法で障壁を作っておこう」

「そうだね。幻影でも入れないようにしないと」

数日をかけて、緻密に構築された結界ができあがる。それは、許可を与えない限り、誰も通さない結界であるが、通ってもいいと認可した者は入れるという結界だった。

ハイエルフの浮竹やダークネスインフェルノドラゴンの京楽、その他サンシャインレイドラゴンの一護、その妻ルキア、その夫恋次、それらを束ねる白哉といったメンバーを、入ってもいいことにした。

「京楽、腹が減った」

「はいはい。今つくるから・・・・って、買い物いったけど肝心の食材買ってない!」

「10分で買ってこい」

「無茶苦茶な・・・・・」

京楽は、エアリアルフライの魔法を使って空を飛んで、急いで10分で買い物を済ませて戻ってくるのであった。

ちなみに、浮竹はけっこうお腹が減っていたので、携帯食料の不味い食事をしていた。

「ああ、浮竹、すぐ作るから!そんな不味いの、食べなくてもいいよ!」

「15分で作れ」

「なんだか、いつもの数倍厳しくない!?」

「俺を、檻に閉じ込めた罰だ」

「あああ、ごめんなさいいい」

謝りながら、京楽は昼食を作っていくのだった。

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