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好きなものは好き13

しとしとと、雨が降る。

現世でも尸魂界でも、梅雨がきていた。

「ふう・・・現世なら晴れていると思ったのだが、雨か」

ルキアは、穿界門をくぐってすぐに雨に気づいて、近くの商店街の軒下に避難した。

どしゃぶりではないが、そこそこ降っている。

ルキアは、一護にメールした。

(現世にきた。しかし雨にあって、商店街の軒下で止むのを待っている)

(傘はもってきてねーのかよ)

(こちらは晴れていると思ったのだ、たわけ!)

(迎えにいってやるから、しばらく動くな)

(仕方ない、迎えに来させてやろうではないか)

「なんつー尊大な・・・・」

メールのレスを見て、一護はルキアのための傘を物色していたのだが、自分の傘以外はビニール傘で、しかも壊れている。

「傘・・・・仕方ねえ、買いにいくか・・・・」

ルキア用の傘を買いに行こう。

それはそれで楽しいかもしれない。

「迎えにきたぞ、ルキア」

「一護!一週間ぶりだな!」

「ああ」

ルキアは、商店街の軒下で一護に抱き着いた。

「私の分の傘はどこだ?」

「ねーから、今から買いにいくぞ。予算は4千円。ほら、行くぞ」

一護の藍色の傘の下に移動しながら、商店街から百貨店にやってくる。

傘のコーナーで、あれでもないこれでもないと、ルキアは現世の傘のカラフルさに目を輝かせていた。

何せ、尸魂界の傘は黒一色で、とても地味だ。

「これに決めた!」

ルキアが手にした傘は、一護と同じ藍色に紫陽花の模様がある傘だった。

「これなら、貴様の傘と同じ色合いだし、お揃いのようでいいではないか」

「別に傘なんてお揃いにしなくてもいいだろ」

「いやだ。本当はお揃いにしたいのだが、藍色だけでは味気ない。紫陽花の色合いが美しいこの傘が気に入ったのだ」

お値段は、2980円だった。

予算以内だったので、一護はそれ以上何も言わずにレジでお金を払う。

「夕食の買い出しにもいくか。ついてくるだろ、ルキア」

「無論だ!」

百貨店を出て、スーパーまで足を伸ばす。

ルンルンと、ルキアは新品の傘をくるくる回して、はしゃいでいた。

その姿がかわいくて、一護はキュン死しそうになった。

落ち着け、俺。

「今日の夕飯は唐揚げとコンソメスープ、タコの酢のものに・・・・・」

「唐揚げか!一護の作るものは、なんでも美味いので好きだ!」

「仕方ないから、白玉餡蜜も買ってやるよ」

「やった!」

ルキアの綻ぶ顔を見ているだけで、幸せになれる気がした。

二人で、傘を片手に荷物をぶら下げて、帰路につく。

しとしとと、雨は少しましになったが、まだ降っていた。

ルキアは、買ってもらった傘が気に入ったのが、嬉しそうにくるくる回していた。

「ルキア」

「なんだ」

傘をずらして、一護はちゅっとリップ音をたてて、ルキアの唇にキスをした。

突然のことに、ルキアが真っ赤になる。

「たわけ、往来で何をする!」

「わりぃ、お前があんまりかわいいもんだから」

「な!」

また真っ赤になるルキアが、かわいかった。

一護は傘を手にした腕にスーパーの袋をぶら下げて、ルキアの手を握ると、一緒に歩きだした。

とりあえず、夕飯を作る前にルキアを抱きしめたい。

一護のアパートにつくと、ルキアは傘を名残惜しそうにたたんで、玄関の傘置き場に置いた。


「ルキア」

一護に思い切り抱きしめられて、ルキアが目を丸くする。

「好きだ、ルキア」

「ふふ・・・そんなの、知っている」

ルキアのほうが、一枚上手のようだった。

一護はスーパーの袋を玄関に置いて、ルキアを抱き上げると、そのままべッドまで運んで、また抱きしめた。

「くすぐったい」

「ルキア・・・・・・」

「ん、一護・・・・・」

戯れるようにキスを繰り返す。何度も口づけしあって、それからベッドに横になってルキアを一護は抱き寄せた。

「雨も、たまにはよいかもな」

「そうだな」

しとしと。

降り続ける雨は、朝まで止みそうになかった。

「唐揚げ作るから、手伝ってくれ」

「いいだろう」

ルキアは尊大だけど、素直だ。

そんなところもかわいいと思う。

好きなものは、好きだから。


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