始祖なる者、ヴァンパイアハンター13
ローデン・ファルストルは、始祖の魔女。
始祖には死がない。不老不死である。
「厄介な・・・・」
目覚めた浮竹が初めて口にしたのは、そんな言葉だった。
ブラディカの言葉を受けて、目覚めた京楽と浮竹は、早速血の帝国へと出発した。
一方、血の帝国では、始祖の魔女ローデン・ファルストルが攻めてきたと、ブラッディ・ネイが指揮をとり、騎士団を総動員して、攻撃を開始していた。
ローデンは、まず最初に強敵である血の帝国を自分のものにしようとしていた。
ブラディカの夢渡り、夢で告げられた言葉と映像を信じて、浮竹と京楽が見たものは、始祖の魔女ローデンに苦戦する、血の帝国の騎士団の姿だった。
「ブラッディ・ネイ。戦況は?」
「兄様!相手は始祖の魔女といっても一人。今は旗色が悪いが、魔力を消耗させ続ければ、こちらも好機は十分にあると思う」
「俺と京楽は、白哉と恋次の元に向かう。お前には、ローデンの操る部隊を叩いてほしい。ローゼンそのものは俺がなんとかする」
「兄様が、ボクを頼りにするなんて珍しいね」
「時間がない。俺と京楽は、もう行くぞ!」
「兄様も気をつけて!」
白哉は、血を流して傷ついていた。
傷は再生していくが、再生を始めた傍からまた怪我をした。
「恋次、しっかりしろ、恋次!」
「愛しの白哉。殺して食ってやる。俺の血肉にする」
「恋次!」
白哉は、恋次が始祖のカイザードラゴンであることを念頭にはしていたので、千本桜を解放して、血の花びらで、数億の刃として恋次に向けた。
「ぎゃああああああ!!」
恋次が悲鳴をあげる。
その悲鳴に、びくりとなって、千本桜の刃を止める。
「白哉さ・・・俺を、殺してくれ」
「何を言っておるのだ、恋次!」
「始祖の魔女に洗脳された。俺は殺しても死なない。一度死ねば、タトゥーを刻んでまた再生する。その時には、きっと洗脳はとけている・・・・」
「恋次、恋次!」
恋次は、ついに人型からカイザードラゴンの姿に戻ってしまった。
「ぎゃおおおおおおお!」
「恋次!!」
白哉は、怪我を再生させた恋次に、魔力をこめた刃を向ける。
「白哉!始祖の洗脳は、俺がなんとかする!」
「浮竹!それに京楽も・・・・式を飛ばしていないのに、何故ここが?」
「ブラディカの言ってた通りだね。白哉クンと恋次クンが危ないって、浮竹の血族であった女性が知らせてくれたんだよ」
「何か分からぬが、始祖である浮竹に頼む。恋次を、恋次を助けてやってくれ」
「もちろんだ、白哉」
浮竹は、始祖の血の刃で、カイザードラゴンの鱗を斬り裂く。
「ああああ、痛い、痛い!」
「恋次!」
「白哉クン、ちょっとごめんね」
京楽が、白哉の背後から、首の根元に手刀を入れて、白哉を気絶させる。
「浮竹、これで思う存分暴れていいよ」
「すなまい、京楽!」
浮竹は、炎の精霊フェニックスを召還した。同時に、最近やっと手に入れたイフリートを出す。
「炎の精霊たちよ!燃やし尽くせ!」
「キシャアアアアアアア!」
「シャオオオオオオオ!」
二匹の精霊は、雄叫びをあげながら、カイザードラゴンに巻き付いた。
「熱い、熱い!」
カイザードラゴンは、氷のブレスを出す。
だが、二匹の精霊の炎の方が上だった。
黒こげになりながら、恋次は暴れまわった。宮殿の外であったが、その暴れ具合に宮殿の建物にも被害が出始める。
「浮竹、トドメを!」
京楽からの血の刃を受け取って、浮竹は瞳を真紅に輝かせた。
「ヘルインフェルノ!」
カイザードラゴンの心臓めがけて、地獄の業火を叩きこむ。
カイザードラゴンは、煙をあげて倒れた。
守護騎士姿の人型に戻ると、恋次は目を覚ました。
大やけどを負っていたので、浮竹が指を歯で噛みちぎり、始祖の血を数滴その怪我に滴らせると、あれほど大きかった大やけどが再生して綺麗に治った。
「あ、俺は・・・・・?」
「ローデン・ファルストルに洗脳されて、白哉を殺そうとしていたんだ」
「そうだった。くそ、ローデンめ!白哉さんは!?」
ぐったりとした白哉を抱き抱えている、京楽の傍にかけつける。
「大丈夫、気を失ってるだけだよ」
「よかった・・・・。助かりました、浮竹さん京楽さん」
「洗脳は、解けたのか?」
「そうみたいっス」
「じゃあ、今回の原因である本体を叩くか!」
「そうだね」
「俺も、加わります。よくも、白哉さんを俺の手で傷つけさせてくれたな」
ゆらりと、始祖のドラゴンの力を滲ませる恋次に、京楽が圧倒される。
浮竹は、静かに恋次の肩を叩いた。
「怒りに我を忘れるな。大切な者を守りたいなら、冷静でいろ」
「はい」
「浮竹がそれを言う?怒りで血を暴走させたこと何度もあるのに」
「そういう京楽こそ、血で暴走しただろうが!」
ぎゃぎゃあ言い合いになって、恋次はほんとにこの面子で大丈夫なんだろうかと思った。
「キャハハハ!」
ローデン・ファルストルの笑い声は、苛立ちをさらに助長させるものだった。
「キャハハハ、みんなで争いあって死んじゃえ」
ローデンは幻覚の魔女。幻を見せて、同士討ちをさせていた。
けれど、ヴァンパイアは分類すると魔族にあたり、魔法に対する耐性が強い。
ローデンの力をもってしても、ヴァンパイアの騎士たちに、全てに幻覚を見せることはできなかった。
幻覚を見て仲間に襲いかかった者は、他の騎士に魔法をぶつけられて我に返る。
「一護、負傷者を運んでくれ!冬獅郎は、氷で重傷者の血を止めてくれ!」
ルキアが、傷ついて倒れる血の帝国の騎士たちを癒してく。
戦争なのだ、これは。
血の帝国に対する、侵略行為だった。
だから、いつもは肉欲の快楽にふけるだけの、ブラッディ・ネイも参戦した。
いい加減なように見えて、ブラッディ・ネイはそれでも女帝として、8千年も君臨し続けるほどの手腕の持ち主であった。
最近は白哉を摂政の皇族王としておいて、統治の右腕としていた。
「よくもボクの国を。ボクの騎士たちを・・・許さない」
ブラッディ・ネイは始祖に近い血の海を作り出し、ローゼンの手下たちから血を全て抜いて、干からびさせて殺した。
「キャハハハ!ブラッディ・ネイ、これでも攻撃できる?」
ローデンの腕の中には、ロゼ・オプスキュリテがいた。
「ロゼ!」
「ネイ様、助けて!」
「貴様、ロゼを離せ!」
「やーだよ。こんな小娘こうだ」
美しいロゼの顔を、ローデンは硫酸で焼いた。
「あああ!!!」
「やめろ!ロゼ、ロゼ!」
ローデンは興味を失ったように、ロゼを放り投げた。
ブラッディ・ネイは血を分け与えようとして、我に返る。
「ロゼ・オプスキュリテなら、この程度の怪我自分で癒せる。それに本物のロゼは ボクをネイ様だなんて呼ばない。ブラッディ・ネイ様とフルネームで呼ぶ」
そう言って、ブラッディ・ネイはロゼの頭を踏みつぶした。
ぐしゃりと音を立てて、ロゼの体が崩壊していく。
「やーだ、ブラッディ・ネイってば、本物ならどうするの?」
「ボクの寵姫たちには、僅かだけどボクの血を与えている。そう簡単に、捕まったりするもんか!」
ブラッディ・ネイは、今は血族をもっていない。
2年前に死去した、ブラドツェペシュを血族としていたが、彼女は死んでしまった。
自分のせいで。
なので、ブラッディ・ネイは今は血族を作っていなかったし、すでに血族であった者とは盟約を破棄させた。
かわりに、寵姫たちに数滴の血を与えて、血族のような関係を与えていた。
疑似血族である。
ヴァンパイアロード以上のクラスになれば、複数の者に血を与えて血族として迎えいれられるが、今のブラッディ・ネイは浮竹の影響か、いい方向へ進んでいた。
ブラッディ・ネイはある意味色欲魔だ。後宮に10歳~15歳くらいまでの美少女を数十人囲っている。
どの寵姫もブラッディ・ネイの血を少し与えられており、普通のヴァンパイアより長生きするし、美貌を損なうこともなかった。
ブラッディ・ネイの後宮の寵姫たちは、侵略者に震えてブラッディ・ネイの後ろにいるではなく、自ら武器を手に取り、最前線で戦っていた。
ブラッディ・ネイの血を分け与えられたことで、傷の回復が早いので、騎士達よりも戦果をあげていた。
「残るはローデン・ファルストル、お前だけだ」
ブラッディ・ネイは空に浮かんでいるローゼンに、ヴァンパイアの翼を出して同じように空中に浮いた。
「ヘルインフェルノ!」
「ちょ、いきなりなんなの!」
「兄様、ボクを巻き込もうとしたね!?」
突然の攻撃に、ローゼンは驚きと共に、実の妹であるブラッディ・ネイも巻き添えにしそうな攻撃に、眉を顰めた。
「ブラッディ・ネイはゴキブリ並みにしぶとい。俺の魔法を受けて炭化しても、また別の体に転生するだけだし、問題はない」
「兄様、酷い!」
泣き真似をするブラッディ・ネイを無視して、浮竹は血の糸を作り出してローゼンを拘束すると、地面に引きずり下ろした。
「アタシを、始祖の魔女ローデン・ファルストルと知っての狼藉なの!?」
「血の帝国に攻めてくるなど、愚行の極みだな」
「そうだね」
「俺に殺させてください!」
京楽は、浮竹の拘束の血の魔法に魔力を注ぎ、ローゼンが身動きできないようにしていた。
恋次は、血走った眼で、守護騎士の剣を抜いた。
「ま、待ってよ!平和的に解決しようよ!」
恋次は、自分のドラゴンの牙で作り出した、竜の剣をもっていた。
それで、袈裟懸けにローゼンを斬った。
「何故・・・・恋次」
そこに倒れていたのは、白哉だった。
「白哉さん!?」
恋次は驚いて、浮竹の血の拘束を取り除き、怪我に浮竹から念のためにともらっていた血を惜しげもなく注いだ。
「アハハハハ、こんな簡単な罠にひっかかるなんて傑作!キミ本当に始祖竜?始祖も種族によって、こんなバカもいるんだ」
「な!」
確かに、その存在は白哉に見えた。魔力も白哉のものだったし、存在感も白哉そのものだった。
「アタシは幻惑のローデン・ファルストル。幻覚が本物にしか見えない時もある」
「では、その幻惑の魔法を呪って使えなくさせよう」
「え?」
浮竹は、持っていたエリクサーに呪詛を吹き込み、それをローデンに投げた。
「ああああ!?」
ローデンは、得意の幻惑魔法を使おうとした。
でも、足元がもつれた。
いつの間にか、浮竹が地面に始祖の血で、網のようなものを作っていたのだ。
地面に部様に転がったローデンに、呪詛を含んだエリクサーの入った小瓶はまともに当たって、中身はローデンの体を濡らした。
「いやああああ、体が、体が焼けるように熱い!」
「幻惑の魔法を使おうとすれば、地獄の業火に焼かれる呪詛をかけた。エリクサーを媒介に使ったから、エリクサーでも治せない」
浮竹は、冷酷であった。
大事な友人である白哉と恋次を傷つけ、多くのヴァンパイアを巻き込んで、攻め込んできたローデンの存在を許すわけにはいかなかった。
「あと、エリクサーの入った小瓶は2つある」
「浮竹、何気にそんなに隠しもってたの!?」
「浮竹さん、そんな神薬をほいほい使って・・・金持ちなんスね」
周囲の者の反応は微妙であったが、浮竹はさらに呪詛をエリクサーにこめて、地獄の業火で焼かれ、やけどを負ったローデンの口をあけて、中身を無理やり飲ませた。
「ぐぇっ、げほっ、げほっ」
「血の帝国にいる限り、魔法は使えない呪い」
「くそがああああ!ぎゃあああああ!!」
ローデンは魔法で脱出しようとして、全身が針で刺されたような痛みを覚えた。
「痛い痛い痛い!始祖魔女に、なんてことをするんだ!」
「そう。お前が始祖であることが、一番大変な理由なんだ。始祖である限り死なない。死んでも肉体は再生するか、転生する。お前の場合、後者だろう。転生を繰り返している」
「何故、知っている・・・・・」
「俺は始祖ヴァンパイア。他の始祖の情報を集めていても、不思議ではないだろう?」
「ぎゃあああああ、痛い、痛い!熱い!」
二重の呪いで、ローデンは息も絶え絶えだった。
「いいさ、こんな体、捨ててやる・・・・!?」
「俺の特別な血を混ぜておいた小瓶を、浴びただろう。あれには、転生を阻害する呪詛をかけておいた」
「キャハハハ!アタシを、それでやっつけたつもり!?アタシは始祖!転生の阻害なんてされても、その程度の呪詛なら自分で解ける!」
「だから、お前を封印する」
「え、できるですか、浮竹さん」
恋次が、驚いた顔で浮竹を見ていた。
「できなきゃ、この始祖はまた血の帝国にくるだろう?」
「さすが僕の浮竹。惚れ直しちゃう」
「ローデン・ファルストル。幻惑の魔女にして始祖の魔女よ。始祖ヴァンパイア浮竹十四郎が命じる。永久(とこしえ)の封印の眠りにつけ!」
渦巻く魔力が、ローデンを満たしていく。
「いやだ、アタシは世界を手に入れるんだ!こんな、血の帝国のヴァンパイアの始祖如きに!」
ザシュリ。
京楽の剣が、ローデンの腹部を貫いていた。
「僕の浮竹を侮辱するのは、許さないよ」
「アタシは、始祖の魔女。転生を、転生を・・・・・・ぎゃああああああ!!覚えてろ!次、目覚めた時がお前の最期だ!」
魔法でなんとかしようとするローデンが、体中に針をさされたような痛みに転げまわる。
「エターナルアイシクルワールド!」
始祖の魔女は、始祖ヴァンパイア浮竹の手によって、封印された。
その体は巨大な氷の塊に封印された。
始祖である、浮竹が生き続ける限り、封印は解けない。
「そうだ、白哉さんは!?」
「ルキアちゃんのところに預けてきた。今頃目を覚ましている頃だよ」
「ルキア、ここは?」
「あ、兄様、目覚められましたか。負傷者を集めたテントです」
「私は行かねば」
「あ、兄様どこへ!?」
白哉は、ちょうど浮竹が氷のローデンを氷の中に封じ込めるのを見ていた。
「白哉、もう大丈夫なのか?」
「元々、大した怪我は追っておらぬ。それより恋次!」
「はい!」
怒られると思っていた恋次は、白哉の黒曜石の瞳が、優しく自分を見ているのに気づき、抱き着いた。
「好きです、白哉さん!」
頭をはかたかれていた。
「その、すまぬ。お前を傷つけた」
「いや、俺の方こそ、傀儡になっていたとはいえ、自分が守護すべき白哉さんに傷を負わせた」
「もう、再生している」
「そうみたいっすね」
ふわふわと、薔薇の花びらが降ってきた。
それは一枚の手紙になった。
「ブラッディ・ネイの薔薇の魔法だ。戦利を祝って、祝賀会をあげるそうだ」
「浮竹、参加するの?」
「いや、古城に戻る。あの性悪の妹の傍にいえると、またロゼ・オプスキュリテに中身を入れ替えられて、貞操の危機になる」
「帰ろう浮竹。ブラッディ・ネイの毒牙のかかる前に、帰ろう」
せかす京楽を先に空間転移魔法で古城に帰して、浮竹は白哉と恋次と別れをすまし、旅立つ前にルキアと一護と冬獅郎の元を訪れた。
「今回は、活躍したようだな」
「はい。何人が、敵の将を討ち取りました」
一護の言葉に、冬獅郎が浮竹をみる。
「一番は、お前にもっていかれたみたいだがな」
「ローデン・ファルストルは始祖の魔女だ。まだ冬獅郎君、君では力不足だ」
「そうだな。俺はもっと強くなる。雛森を守れるくらいに!」
「雛森?」
「あ、浮竹殿。私の身の回りの世話をしている、雛森桃という少女の名です。冬獅郎に一目ぼれしたみたいで、冬獅郎もまんざらでもないようで・・・・」
「すみにおけないな、冬獅郎君も」
クスリと笑う浮竹に、舌を出して、冬獅郎は走り去った。
「あの氷の封印、浮竹さんが生きている限り続くんすよね?」
「そうだ」
「じゃあ、もうこんな戦争はおきないですよね」
「それは分からない。世界には他の始祖もいる。それに最近、始祖魔族が活動をはじめたという噂を聞いた」
「俺らも、神族にとっては魔族なんすよね?」
「ああ。でも、本当の魔族はもっと闇が濃い」
「浮竹殿は、祝賀会には参加しないのですか?」
「ああ、俺はもう戻るよ。京楽を先に行かせてしまったし」
「ではまた、古城で。また遊びにいきます。なぁ一護、冬獅郎・・・・と、冬獅郎は自分の部屋に戻ってしまったか」
「では、また」
浮竹は、ヴァンパイアの翼を広げると、広い宮殿の空を飛び、空間転移魔法陣がある場所まできた。
「先に帰ってなかったのか」
「君が、ブラッディ・ネイに何かされるんじゃないかって心配で」
「ブラッディ・ネイも、さすがに祝賀会で何かをしかけてくるほど、性格は悪くない・・・・と、言いたいんだが」
浮竹の元に、薔薇の花びらが降ってきた。
それはお風呂グッズになった。
薔薇の魔法は、ブラッディ・ネイだけのオリジナルの魔法だ。
「風呂グッズ。また、これか」
「せっかくだし、使っちゃおう」
「俺は気乗りしないんだが」
「ここに説明書あるよ。何々・・・ただの薔薇の香りがするだけで、他には何もない・・・だってさ」
「ブラッディ・ネイだしなぁ」
「まぁまぁ、たまには妹を信用してやりなよ」
-----------------------------------------------
結局、ブラッディ・ネイの薔薇のお風呂グッズを使って、二人でお風呂に入った。
もみほぐし券というのを使うと、顔が薔薇で体がマッチョな謎の生物が出てきて、浮竹と京楽の体をマッサージしてくれた。
「ああいい、そこそこ」
「うわぁ、きもちいいねぇ」
二人は、最後にサウナに入り、かいた汗を水風呂で流すと、二人して腰に手をあててフルーツ牛乳を一気飲みした。
パンツ一丁で。
浮竹は服を着たが、京楽はパンツ一丁のままだった。
「服を着ないのか、京楽」
「喉が渇いたんだ。君の血を飲みたい・・・・・・あと、ね?」
硬いものが浮竹の腰に当たった。
「また盛ってるのか」
「うん。君の裸を見てたら、むらむらしてきちゃった」
「今度から、一緒に風呂に入るのはやめよう」
「ああああ!僕の楽しみをとらないでよ、浮竹!」
「それでするのか、しないのかどっちだ」
「する!」
京楽は、浮竹を抱き上げて寝室まで運んだ。
「薔薇のいい匂い・・・・・・」
浮竹の長い白髪に顔をおしつけて、京楽は薔薇の香りを楽しんだ。
「お前の薔薇の香りもすごいぞ。多分、精液もまた薔薇の味になってるんだろうな」
「確認しよう」
「ちょ、春水、いきなり・・・ああっ!」
浮竹の衣服を脱がすと、京楽は浮竹のものを口に含んだ。
「薔薇の味がする」
先走りの蜜が、すでに薔薇の味をしていた。
「やっ、しゃべるなら、舐めるな!」
「やだ。舐める」
犬がバターを舐めるように、ペロペロと舐め続ける京楽の行為に我慢できなくなって、浮竹は京楽の口の中に精液を吐き出していた。
「薔薇の蜜みたい。甘い」
「ばか!」
起き上がろうとする浮竹を押し倒して、通販で買ったローションを手に取る。
「今日はローションなのか」
「こっちのほうがベタベタしないから」
「んっ」
京楽は、浮竹の胸の先端を口に含むと舌でつついた。
「あっ」
それに敏感に反応する浮竹がかわいくて、もう反対側をきゅっと抓ると、浮竹はびくりと体を震わせた。
「やっ」
「いやなの?もうここ、こんなになってる」
触られてもいないのに、浮竹のものは勃ちあがっていた。
「や、見るな」
「エロい浮竹、かわいいからもっと見せて?」
京楽の目を塞いで、浮竹は噛みつくようなキスをした。
「んんっ」
京楽は浮竹の舌を絡めとった。
舌を引き抜かれると、つっと銀の糸が垂れた。
「あ!」
体内に、京楽の指が入ってくる。
もう慣れてしまったはずの行為だが、恥ずかしさは今でもある。
「んん!」
前立腺を刺激されて、浮竹のものはだらだらと先走りの蜜を零していた。
目を閉じる。
ぐちゃぐちゃという水音が耳に響いた。
「あああ!」
指を引き抜かれて、京楽のもので貫かれると同時に、浮竹は瞳を真紅にして、京楽の肩に噛みついて、吸血した。
「ん、きもちいいけど、どうしたの、十四郎?」
「喉の渇きを覚えた。こんなの、久方ぶりだ」
「もっと飲んでいいよ?」
「だめだ。お前は俺と違って、人工血液をすぐに血液に転換できない」
「じゃあ、僕が君の分まで、吸血してあげる」
ズッと、京楽は浮竹の中に打ちこんだ楔を動かす。
「あああ!!」
同時に首に噛みつかれて、吸血されていた。
「ああ、ああ!あ!」
浮竹は、シーツに白い精液を飛び散らせていた。
ごりごりと、奥を抉ってくる京楽の熱を締め付ける。
「んっ、浮竹、そんなに締め付けたら・・・・」
濃い精子を、京楽は浮竹の胎の奥に出していた。
浮竹がペロリと自分の唇を舐める。
その妖艶な姿に、京楽はゴクリと喉を鳴らした。
「もっとだ、春水。もっとお前をくれ。お前の精液で、満たして?」
「好きなだけ、あげるよ、十四郎」
奥をごりごりと削りあげれば、浮竹はオーガズムでいっていた。
「あ、あ、そこいい!もっと、もっと!」
「く、またそんなに締め付けて・・・・僕のほうがもたないよ」
最奥で、再び京楽は熱を弾けさせていた。
浮竹が唇をまた舐めた。
「もっと・・・・」
「ん、これが最後だよ。受け取って!」
「ああああああ!!!」
前立腺をすりあげて、奥をごりごりと抉られて、浮竹はオーガズムでいっていた。
もう、出すものがないのだ。
ぷしゅわああと、透明な潮をふいた。
「ああああ!!」
「女の子みたいだね、十四郎」
いっている最中なのに、京楽は浮竹の肩に噛みついて、吸血する。
二重の快感に、浮竹は意識を失っていた。
「ん・・・・・・」
「気が付いた?」
「また俺は、気を失っていたのか」
「水?人工血液剤?それとも人工血液?それとも僕?」
「お前で」
「まじで」
「そんなわけあるか!人工血液でいい」
京楽に思い切り血を吸われたせいで、軽い貧血になっていた。
人工血液をワイングラスに入れて、飲みほしていく。
輝く赤い雫は、本物の血そっくりであるが、成分は同じだが、人の血より甘くできていた。
血の帝国のヴァンパイアは、皆、人工血液か人工血液剤で生きている。
人間の血のほうが不味いのだ。
ワインや料理に入れて、隠し味に人の血を入れることはある。
浮竹や京楽も、そうして時折人の血を口にすることはあった。
「腰、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。加減を考えろ」
「だって君がかわいくおねだりしてくるから」
「ああもう、その話はなしだ」
「明日、S級ダンジョンにでも行こうか。エンシェントミミックを狩りに」
「ミミックだと!?」
とたんに瞳を煌めかせる浮竹に、京楽は機嫌を損なわずに済んだと、安堵した。
---------------------------------
「にゃあああ」
「おや、かわいい猫ちゃんだね。迷いこんできたのかい?」
「にゃああ。みゃあああ」
「ここは怖いヴァンパイアの住む古城だよ。人間の世界にお帰り」
白いオッドアイの猫は、京楽の肩に乗った。
「仕方ない、古城においで?」
「にゃあ」
その白い猫が、猫の魔女と呼ばれる、松本乱菊だと、京楽はまだ知らなかった。
始祖には死がない。不老不死である。
「厄介な・・・・」
目覚めた浮竹が初めて口にしたのは、そんな言葉だった。
ブラディカの言葉を受けて、目覚めた京楽と浮竹は、早速血の帝国へと出発した。
一方、血の帝国では、始祖の魔女ローデン・ファルストルが攻めてきたと、ブラッディ・ネイが指揮をとり、騎士団を総動員して、攻撃を開始していた。
ローデンは、まず最初に強敵である血の帝国を自分のものにしようとしていた。
ブラディカの夢渡り、夢で告げられた言葉と映像を信じて、浮竹と京楽が見たものは、始祖の魔女ローデンに苦戦する、血の帝国の騎士団の姿だった。
「ブラッディ・ネイ。戦況は?」
「兄様!相手は始祖の魔女といっても一人。今は旗色が悪いが、魔力を消耗させ続ければ、こちらも好機は十分にあると思う」
「俺と京楽は、白哉と恋次の元に向かう。お前には、ローデンの操る部隊を叩いてほしい。ローゼンそのものは俺がなんとかする」
「兄様が、ボクを頼りにするなんて珍しいね」
「時間がない。俺と京楽は、もう行くぞ!」
「兄様も気をつけて!」
白哉は、血を流して傷ついていた。
傷は再生していくが、再生を始めた傍からまた怪我をした。
「恋次、しっかりしろ、恋次!」
「愛しの白哉。殺して食ってやる。俺の血肉にする」
「恋次!」
白哉は、恋次が始祖のカイザードラゴンであることを念頭にはしていたので、千本桜を解放して、血の花びらで、数億の刃として恋次に向けた。
「ぎゃああああああ!!」
恋次が悲鳴をあげる。
その悲鳴に、びくりとなって、千本桜の刃を止める。
「白哉さ・・・俺を、殺してくれ」
「何を言っておるのだ、恋次!」
「始祖の魔女に洗脳された。俺は殺しても死なない。一度死ねば、タトゥーを刻んでまた再生する。その時には、きっと洗脳はとけている・・・・」
「恋次、恋次!」
恋次は、ついに人型からカイザードラゴンの姿に戻ってしまった。
「ぎゃおおおおおおお!」
「恋次!!」
白哉は、怪我を再生させた恋次に、魔力をこめた刃を向ける。
「白哉!始祖の洗脳は、俺がなんとかする!」
「浮竹!それに京楽も・・・・式を飛ばしていないのに、何故ここが?」
「ブラディカの言ってた通りだね。白哉クンと恋次クンが危ないって、浮竹の血族であった女性が知らせてくれたんだよ」
「何か分からぬが、始祖である浮竹に頼む。恋次を、恋次を助けてやってくれ」
「もちろんだ、白哉」
浮竹は、始祖の血の刃で、カイザードラゴンの鱗を斬り裂く。
「ああああ、痛い、痛い!」
「恋次!」
「白哉クン、ちょっとごめんね」
京楽が、白哉の背後から、首の根元に手刀を入れて、白哉を気絶させる。
「浮竹、これで思う存分暴れていいよ」
「すなまい、京楽!」
浮竹は、炎の精霊フェニックスを召還した。同時に、最近やっと手に入れたイフリートを出す。
「炎の精霊たちよ!燃やし尽くせ!」
「キシャアアアアアアア!」
「シャオオオオオオオ!」
二匹の精霊は、雄叫びをあげながら、カイザードラゴンに巻き付いた。
「熱い、熱い!」
カイザードラゴンは、氷のブレスを出す。
だが、二匹の精霊の炎の方が上だった。
黒こげになりながら、恋次は暴れまわった。宮殿の外であったが、その暴れ具合に宮殿の建物にも被害が出始める。
「浮竹、トドメを!」
京楽からの血の刃を受け取って、浮竹は瞳を真紅に輝かせた。
「ヘルインフェルノ!」
カイザードラゴンの心臓めがけて、地獄の業火を叩きこむ。
カイザードラゴンは、煙をあげて倒れた。
守護騎士姿の人型に戻ると、恋次は目を覚ました。
大やけどを負っていたので、浮竹が指を歯で噛みちぎり、始祖の血を数滴その怪我に滴らせると、あれほど大きかった大やけどが再生して綺麗に治った。
「あ、俺は・・・・・?」
「ローデン・ファルストルに洗脳されて、白哉を殺そうとしていたんだ」
「そうだった。くそ、ローデンめ!白哉さんは!?」
ぐったりとした白哉を抱き抱えている、京楽の傍にかけつける。
「大丈夫、気を失ってるだけだよ」
「よかった・・・・。助かりました、浮竹さん京楽さん」
「洗脳は、解けたのか?」
「そうみたいっス」
「じゃあ、今回の原因である本体を叩くか!」
「そうだね」
「俺も、加わります。よくも、白哉さんを俺の手で傷つけさせてくれたな」
ゆらりと、始祖のドラゴンの力を滲ませる恋次に、京楽が圧倒される。
浮竹は、静かに恋次の肩を叩いた。
「怒りに我を忘れるな。大切な者を守りたいなら、冷静でいろ」
「はい」
「浮竹がそれを言う?怒りで血を暴走させたこと何度もあるのに」
「そういう京楽こそ、血で暴走しただろうが!」
ぎゃぎゃあ言い合いになって、恋次はほんとにこの面子で大丈夫なんだろうかと思った。
「キャハハハ!」
ローデン・ファルストルの笑い声は、苛立ちをさらに助長させるものだった。
「キャハハハ、みんなで争いあって死んじゃえ」
ローデンは幻覚の魔女。幻を見せて、同士討ちをさせていた。
けれど、ヴァンパイアは分類すると魔族にあたり、魔法に対する耐性が強い。
ローデンの力をもってしても、ヴァンパイアの騎士たちに、全てに幻覚を見せることはできなかった。
幻覚を見て仲間に襲いかかった者は、他の騎士に魔法をぶつけられて我に返る。
「一護、負傷者を運んでくれ!冬獅郎は、氷で重傷者の血を止めてくれ!」
ルキアが、傷ついて倒れる血の帝国の騎士たちを癒してく。
戦争なのだ、これは。
血の帝国に対する、侵略行為だった。
だから、いつもは肉欲の快楽にふけるだけの、ブラッディ・ネイも参戦した。
いい加減なように見えて、ブラッディ・ネイはそれでも女帝として、8千年も君臨し続けるほどの手腕の持ち主であった。
最近は白哉を摂政の皇族王としておいて、統治の右腕としていた。
「よくもボクの国を。ボクの騎士たちを・・・許さない」
ブラッディ・ネイは始祖に近い血の海を作り出し、ローゼンの手下たちから血を全て抜いて、干からびさせて殺した。
「キャハハハ!ブラッディ・ネイ、これでも攻撃できる?」
ローデンの腕の中には、ロゼ・オプスキュリテがいた。
「ロゼ!」
「ネイ様、助けて!」
「貴様、ロゼを離せ!」
「やーだよ。こんな小娘こうだ」
美しいロゼの顔を、ローデンは硫酸で焼いた。
「あああ!!!」
「やめろ!ロゼ、ロゼ!」
ローデンは興味を失ったように、ロゼを放り投げた。
ブラッディ・ネイは血を分け与えようとして、我に返る。
「ロゼ・オプスキュリテなら、この程度の怪我自分で癒せる。それに本物のロゼは ボクをネイ様だなんて呼ばない。ブラッディ・ネイ様とフルネームで呼ぶ」
そう言って、ブラッディ・ネイはロゼの頭を踏みつぶした。
ぐしゃりと音を立てて、ロゼの体が崩壊していく。
「やーだ、ブラッディ・ネイってば、本物ならどうするの?」
「ボクの寵姫たちには、僅かだけどボクの血を与えている。そう簡単に、捕まったりするもんか!」
ブラッディ・ネイは、今は血族をもっていない。
2年前に死去した、ブラドツェペシュを血族としていたが、彼女は死んでしまった。
自分のせいで。
なので、ブラッディ・ネイは今は血族を作っていなかったし、すでに血族であった者とは盟約を破棄させた。
かわりに、寵姫たちに数滴の血を与えて、血族のような関係を与えていた。
疑似血族である。
ヴァンパイアロード以上のクラスになれば、複数の者に血を与えて血族として迎えいれられるが、今のブラッディ・ネイは浮竹の影響か、いい方向へ進んでいた。
ブラッディ・ネイはある意味色欲魔だ。後宮に10歳~15歳くらいまでの美少女を数十人囲っている。
どの寵姫もブラッディ・ネイの血を少し与えられており、普通のヴァンパイアより長生きするし、美貌を損なうこともなかった。
ブラッディ・ネイの後宮の寵姫たちは、侵略者に震えてブラッディ・ネイの後ろにいるではなく、自ら武器を手に取り、最前線で戦っていた。
ブラッディ・ネイの血を分け与えられたことで、傷の回復が早いので、騎士達よりも戦果をあげていた。
「残るはローデン・ファルストル、お前だけだ」
ブラッディ・ネイは空に浮かんでいるローゼンに、ヴァンパイアの翼を出して同じように空中に浮いた。
「ヘルインフェルノ!」
「ちょ、いきなりなんなの!」
「兄様、ボクを巻き込もうとしたね!?」
突然の攻撃に、ローゼンは驚きと共に、実の妹であるブラッディ・ネイも巻き添えにしそうな攻撃に、眉を顰めた。
「ブラッディ・ネイはゴキブリ並みにしぶとい。俺の魔法を受けて炭化しても、また別の体に転生するだけだし、問題はない」
「兄様、酷い!」
泣き真似をするブラッディ・ネイを無視して、浮竹は血の糸を作り出してローゼンを拘束すると、地面に引きずり下ろした。
「アタシを、始祖の魔女ローデン・ファルストルと知っての狼藉なの!?」
「血の帝国に攻めてくるなど、愚行の極みだな」
「そうだね」
「俺に殺させてください!」
京楽は、浮竹の拘束の血の魔法に魔力を注ぎ、ローゼンが身動きできないようにしていた。
恋次は、血走った眼で、守護騎士の剣を抜いた。
「ま、待ってよ!平和的に解決しようよ!」
恋次は、自分のドラゴンの牙で作り出した、竜の剣をもっていた。
それで、袈裟懸けにローゼンを斬った。
「何故・・・・恋次」
そこに倒れていたのは、白哉だった。
「白哉さん!?」
恋次は驚いて、浮竹の血の拘束を取り除き、怪我に浮竹から念のためにともらっていた血を惜しげもなく注いだ。
「アハハハハ、こんな簡単な罠にひっかかるなんて傑作!キミ本当に始祖竜?始祖も種族によって、こんなバカもいるんだ」
「な!」
確かに、その存在は白哉に見えた。魔力も白哉のものだったし、存在感も白哉そのものだった。
「アタシは幻惑のローデン・ファルストル。幻覚が本物にしか見えない時もある」
「では、その幻惑の魔法を呪って使えなくさせよう」
「え?」
浮竹は、持っていたエリクサーに呪詛を吹き込み、それをローデンに投げた。
「ああああ!?」
ローデンは、得意の幻惑魔法を使おうとした。
でも、足元がもつれた。
いつの間にか、浮竹が地面に始祖の血で、網のようなものを作っていたのだ。
地面に部様に転がったローデンに、呪詛を含んだエリクサーの入った小瓶はまともに当たって、中身はローデンの体を濡らした。
「いやああああ、体が、体が焼けるように熱い!」
「幻惑の魔法を使おうとすれば、地獄の業火に焼かれる呪詛をかけた。エリクサーを媒介に使ったから、エリクサーでも治せない」
浮竹は、冷酷であった。
大事な友人である白哉と恋次を傷つけ、多くのヴァンパイアを巻き込んで、攻め込んできたローデンの存在を許すわけにはいかなかった。
「あと、エリクサーの入った小瓶は2つある」
「浮竹、何気にそんなに隠しもってたの!?」
「浮竹さん、そんな神薬をほいほい使って・・・金持ちなんスね」
周囲の者の反応は微妙であったが、浮竹はさらに呪詛をエリクサーにこめて、地獄の業火で焼かれ、やけどを負ったローデンの口をあけて、中身を無理やり飲ませた。
「ぐぇっ、げほっ、げほっ」
「血の帝国にいる限り、魔法は使えない呪い」
「くそがああああ!ぎゃあああああ!!」
ローデンは魔法で脱出しようとして、全身が針で刺されたような痛みを覚えた。
「痛い痛い痛い!始祖魔女に、なんてことをするんだ!」
「そう。お前が始祖であることが、一番大変な理由なんだ。始祖である限り死なない。死んでも肉体は再生するか、転生する。お前の場合、後者だろう。転生を繰り返している」
「何故、知っている・・・・・」
「俺は始祖ヴァンパイア。他の始祖の情報を集めていても、不思議ではないだろう?」
「ぎゃあああああ、痛い、痛い!熱い!」
二重の呪いで、ローデンは息も絶え絶えだった。
「いいさ、こんな体、捨ててやる・・・・!?」
「俺の特別な血を混ぜておいた小瓶を、浴びただろう。あれには、転生を阻害する呪詛をかけておいた」
「キャハハハ!アタシを、それでやっつけたつもり!?アタシは始祖!転生の阻害なんてされても、その程度の呪詛なら自分で解ける!」
「だから、お前を封印する」
「え、できるですか、浮竹さん」
恋次が、驚いた顔で浮竹を見ていた。
「できなきゃ、この始祖はまた血の帝国にくるだろう?」
「さすが僕の浮竹。惚れ直しちゃう」
「ローデン・ファルストル。幻惑の魔女にして始祖の魔女よ。始祖ヴァンパイア浮竹十四郎が命じる。永久(とこしえ)の封印の眠りにつけ!」
渦巻く魔力が、ローデンを満たしていく。
「いやだ、アタシは世界を手に入れるんだ!こんな、血の帝国のヴァンパイアの始祖如きに!」
ザシュリ。
京楽の剣が、ローデンの腹部を貫いていた。
「僕の浮竹を侮辱するのは、許さないよ」
「アタシは、始祖の魔女。転生を、転生を・・・・・・ぎゃああああああ!!覚えてろ!次、目覚めた時がお前の最期だ!」
魔法でなんとかしようとするローデンが、体中に針をさされたような痛みに転げまわる。
「エターナルアイシクルワールド!」
始祖の魔女は、始祖ヴァンパイア浮竹の手によって、封印された。
その体は巨大な氷の塊に封印された。
始祖である、浮竹が生き続ける限り、封印は解けない。
「そうだ、白哉さんは!?」
「ルキアちゃんのところに預けてきた。今頃目を覚ましている頃だよ」
「ルキア、ここは?」
「あ、兄様、目覚められましたか。負傷者を集めたテントです」
「私は行かねば」
「あ、兄様どこへ!?」
白哉は、ちょうど浮竹が氷のローデンを氷の中に封じ込めるのを見ていた。
「白哉、もう大丈夫なのか?」
「元々、大した怪我は追っておらぬ。それより恋次!」
「はい!」
怒られると思っていた恋次は、白哉の黒曜石の瞳が、優しく自分を見ているのに気づき、抱き着いた。
「好きです、白哉さん!」
頭をはかたかれていた。
「その、すまぬ。お前を傷つけた」
「いや、俺の方こそ、傀儡になっていたとはいえ、自分が守護すべき白哉さんに傷を負わせた」
「もう、再生している」
「そうみたいっすね」
ふわふわと、薔薇の花びらが降ってきた。
それは一枚の手紙になった。
「ブラッディ・ネイの薔薇の魔法だ。戦利を祝って、祝賀会をあげるそうだ」
「浮竹、参加するの?」
「いや、古城に戻る。あの性悪の妹の傍にいえると、またロゼ・オプスキュリテに中身を入れ替えられて、貞操の危機になる」
「帰ろう浮竹。ブラッディ・ネイの毒牙のかかる前に、帰ろう」
せかす京楽を先に空間転移魔法で古城に帰して、浮竹は白哉と恋次と別れをすまし、旅立つ前にルキアと一護と冬獅郎の元を訪れた。
「今回は、活躍したようだな」
「はい。何人が、敵の将を討ち取りました」
一護の言葉に、冬獅郎が浮竹をみる。
「一番は、お前にもっていかれたみたいだがな」
「ローデン・ファルストルは始祖の魔女だ。まだ冬獅郎君、君では力不足だ」
「そうだな。俺はもっと強くなる。雛森を守れるくらいに!」
「雛森?」
「あ、浮竹殿。私の身の回りの世話をしている、雛森桃という少女の名です。冬獅郎に一目ぼれしたみたいで、冬獅郎もまんざらでもないようで・・・・」
「すみにおけないな、冬獅郎君も」
クスリと笑う浮竹に、舌を出して、冬獅郎は走り去った。
「あの氷の封印、浮竹さんが生きている限り続くんすよね?」
「そうだ」
「じゃあ、もうこんな戦争はおきないですよね」
「それは分からない。世界には他の始祖もいる。それに最近、始祖魔族が活動をはじめたという噂を聞いた」
「俺らも、神族にとっては魔族なんすよね?」
「ああ。でも、本当の魔族はもっと闇が濃い」
「浮竹殿は、祝賀会には参加しないのですか?」
「ああ、俺はもう戻るよ。京楽を先に行かせてしまったし」
「ではまた、古城で。また遊びにいきます。なぁ一護、冬獅郎・・・・と、冬獅郎は自分の部屋に戻ってしまったか」
「では、また」
浮竹は、ヴァンパイアの翼を広げると、広い宮殿の空を飛び、空間転移魔法陣がある場所まできた。
「先に帰ってなかったのか」
「君が、ブラッディ・ネイに何かされるんじゃないかって心配で」
「ブラッディ・ネイも、さすがに祝賀会で何かをしかけてくるほど、性格は悪くない・・・・と、言いたいんだが」
浮竹の元に、薔薇の花びらが降ってきた。
それはお風呂グッズになった。
薔薇の魔法は、ブラッディ・ネイだけのオリジナルの魔法だ。
「風呂グッズ。また、これか」
「せっかくだし、使っちゃおう」
「俺は気乗りしないんだが」
「ここに説明書あるよ。何々・・・ただの薔薇の香りがするだけで、他には何もない・・・だってさ」
「ブラッディ・ネイだしなぁ」
「まぁまぁ、たまには妹を信用してやりなよ」
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結局、ブラッディ・ネイの薔薇のお風呂グッズを使って、二人でお風呂に入った。
もみほぐし券というのを使うと、顔が薔薇で体がマッチョな謎の生物が出てきて、浮竹と京楽の体をマッサージしてくれた。
「ああいい、そこそこ」
「うわぁ、きもちいいねぇ」
二人は、最後にサウナに入り、かいた汗を水風呂で流すと、二人して腰に手をあててフルーツ牛乳を一気飲みした。
パンツ一丁で。
浮竹は服を着たが、京楽はパンツ一丁のままだった。
「服を着ないのか、京楽」
「喉が渇いたんだ。君の血を飲みたい・・・・・・あと、ね?」
硬いものが浮竹の腰に当たった。
「また盛ってるのか」
「うん。君の裸を見てたら、むらむらしてきちゃった」
「今度から、一緒に風呂に入るのはやめよう」
「ああああ!僕の楽しみをとらないでよ、浮竹!」
「それでするのか、しないのかどっちだ」
「する!」
京楽は、浮竹を抱き上げて寝室まで運んだ。
「薔薇のいい匂い・・・・・・」
浮竹の長い白髪に顔をおしつけて、京楽は薔薇の香りを楽しんだ。
「お前の薔薇の香りもすごいぞ。多分、精液もまた薔薇の味になってるんだろうな」
「確認しよう」
「ちょ、春水、いきなり・・・ああっ!」
浮竹の衣服を脱がすと、京楽は浮竹のものを口に含んだ。
「薔薇の味がする」
先走りの蜜が、すでに薔薇の味をしていた。
「やっ、しゃべるなら、舐めるな!」
「やだ。舐める」
犬がバターを舐めるように、ペロペロと舐め続ける京楽の行為に我慢できなくなって、浮竹は京楽の口の中に精液を吐き出していた。
「薔薇の蜜みたい。甘い」
「ばか!」
起き上がろうとする浮竹を押し倒して、通販で買ったローションを手に取る。
「今日はローションなのか」
「こっちのほうがベタベタしないから」
「んっ」
京楽は、浮竹の胸の先端を口に含むと舌でつついた。
「あっ」
それに敏感に反応する浮竹がかわいくて、もう反対側をきゅっと抓ると、浮竹はびくりと体を震わせた。
「やっ」
「いやなの?もうここ、こんなになってる」
触られてもいないのに、浮竹のものは勃ちあがっていた。
「や、見るな」
「エロい浮竹、かわいいからもっと見せて?」
京楽の目を塞いで、浮竹は噛みつくようなキスをした。
「んんっ」
京楽は浮竹の舌を絡めとった。
舌を引き抜かれると、つっと銀の糸が垂れた。
「あ!」
体内に、京楽の指が入ってくる。
もう慣れてしまったはずの行為だが、恥ずかしさは今でもある。
「んん!」
前立腺を刺激されて、浮竹のものはだらだらと先走りの蜜を零していた。
目を閉じる。
ぐちゃぐちゃという水音が耳に響いた。
「あああ!」
指を引き抜かれて、京楽のもので貫かれると同時に、浮竹は瞳を真紅にして、京楽の肩に噛みついて、吸血した。
「ん、きもちいいけど、どうしたの、十四郎?」
「喉の渇きを覚えた。こんなの、久方ぶりだ」
「もっと飲んでいいよ?」
「だめだ。お前は俺と違って、人工血液をすぐに血液に転換できない」
「じゃあ、僕が君の分まで、吸血してあげる」
ズッと、京楽は浮竹の中に打ちこんだ楔を動かす。
「あああ!!」
同時に首に噛みつかれて、吸血されていた。
「ああ、ああ!あ!」
浮竹は、シーツに白い精液を飛び散らせていた。
ごりごりと、奥を抉ってくる京楽の熱を締め付ける。
「んっ、浮竹、そんなに締め付けたら・・・・」
濃い精子を、京楽は浮竹の胎の奥に出していた。
浮竹がペロリと自分の唇を舐める。
その妖艶な姿に、京楽はゴクリと喉を鳴らした。
「もっとだ、春水。もっとお前をくれ。お前の精液で、満たして?」
「好きなだけ、あげるよ、十四郎」
奥をごりごりと削りあげれば、浮竹はオーガズムでいっていた。
「あ、あ、そこいい!もっと、もっと!」
「く、またそんなに締め付けて・・・・僕のほうがもたないよ」
最奥で、再び京楽は熱を弾けさせていた。
浮竹が唇をまた舐めた。
「もっと・・・・」
「ん、これが最後だよ。受け取って!」
「ああああああ!!!」
前立腺をすりあげて、奥をごりごりと抉られて、浮竹はオーガズムでいっていた。
もう、出すものがないのだ。
ぷしゅわああと、透明な潮をふいた。
「ああああ!!」
「女の子みたいだね、十四郎」
いっている最中なのに、京楽は浮竹の肩に噛みついて、吸血する。
二重の快感に、浮竹は意識を失っていた。
「ん・・・・・・」
「気が付いた?」
「また俺は、気を失っていたのか」
「水?人工血液剤?それとも人工血液?それとも僕?」
「お前で」
「まじで」
「そんなわけあるか!人工血液でいい」
京楽に思い切り血を吸われたせいで、軽い貧血になっていた。
人工血液をワイングラスに入れて、飲みほしていく。
輝く赤い雫は、本物の血そっくりであるが、成分は同じだが、人の血より甘くできていた。
血の帝国のヴァンパイアは、皆、人工血液か人工血液剤で生きている。
人間の血のほうが不味いのだ。
ワインや料理に入れて、隠し味に人の血を入れることはある。
浮竹や京楽も、そうして時折人の血を口にすることはあった。
「腰、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。加減を考えろ」
「だって君がかわいくおねだりしてくるから」
「ああもう、その話はなしだ」
「明日、S級ダンジョンにでも行こうか。エンシェントミミックを狩りに」
「ミミックだと!?」
とたんに瞳を煌めかせる浮竹に、京楽は機嫌を損なわずに済んだと、安堵した。
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「にゃあああ」
「おや、かわいい猫ちゃんだね。迷いこんできたのかい?」
「にゃああ。みゃあああ」
「ここは怖いヴァンパイアの住む古城だよ。人間の世界にお帰り」
白いオッドアイの猫は、京楽の肩に乗った。
「仕方ない、古城においで?」
「にゃあ」
その白い猫が、猫の魔女と呼ばれる、松本乱菊だと、京楽はまだ知らなかった。
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