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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「お守り?」

「そう。東洋の妖(あやかし)の俺らからもらったものだ」

「ああ、夢渡りであったあの二人かい?」

「そう。俺にと、蛇の抜け殻が入ったお守りをもらった」

「効果は?」

「金運UP。あと、俺くらいの強さの相手からかけられた呪詛を、跳ね返して相手に負わせることができるそうだ」

「なにそれ。すごくいいじゃない」

「ああ。お礼に木苺のタルトとケーキとジュースをあげた」

「なんか釣りわないような」

「俺は魔法書とか呪術の書やら、古代の魔道具とか、もしくは金銀財宝しかもってないだろう」

浮竹は、返せるものがないのだと、言葉を濁す。

「じゃあ、金銀財宝あげればよかったじゃない」

「ああ、一応大粒のエメラルドを、付け足しておいた」

多分、今頃気づいて喜んでくれているだろうかと、浮竹は遠い東洋の島国いる、自分たちにそっくりな妖を思った。

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夢渡りを利用して、世界を渡り歩いた。京楽と浮竹は、東洋の島国にいた。

東洋の京楽は、じっと目の前の瓜二つの、西洋の浮竹と京楽を見つめていた。

すると、急に西洋の浮竹に手を伸ばし東洋の京楽は触ろうとするが、隣の東洋の浮竹がぷくぅーと頬を膨らましてそっぽを向く。

(ごめん、十四郎。機嫌直して?)

(おれよりもそっちの十四郎の方がいいのか?)

(ううん、そっくりだったから触っても大丈夫かな?って思っただけだよ?)

(ホントだな?)

(うん、ホントだよ?後で日光浴付き合うから赦して?)

そう東洋の京楽が言うと東洋の浮竹の頬に手を這わす。

東洋の浮竹は、それに対して嬉しそうに頷く。


「本当に、京楽そっくりだな」

西洋の浮竹は、八岐大蛇である東洋の京楽の顔を、穴が開くほど見ていた。

(そんなに見られると照れるなぁ)

そんな東洋の京楽に、東洋の浮竹は、怒っていた。

(ごめんごめん。キミが一番可愛くて美人だよ)

頭を撫でて抱きしめると、東洋の浮竹は機嫌を直した。

「東洋の京楽は、嫉妬の嵐と聞いたんだが」

(うん。ボクの十四郎が、たとえ似た存在とはいえ、東洋のボクに触れるのはいやかな)

「そうか」

(うん)

「京楽、東洋の俺に触るなよ」

「ええっ。触りたいのに」

「だめだ。東洋の俺は、東洋の京楽のものだ」

西洋の浮竹は、ヴァンパイアの始祖としての顔を見せた。

(西洋の十四郎って、キミと同じ顔をしているのに、すごく気高いかんじがするね?)

(そうだな。気品がある)

「一応、俺はヴァンパイアの始祖であり、皇族でもあるからな」

「え、浮竹って皇族だったの?」

「ブラッディ・ネイと生活していた時期があった。今の白哉の地位の、皇族王をしていた」

「初耳だ・・・・・」

東洋の京楽は、初めて知ったと、興味津々だった。

(皇族だって。やばい、ボク、何か無礼なことしたかな)

(大丈夫だ春水。無礼なら俺たちの存在自体が無礼になる)

「ああ、大丈夫。お前たちのことは、親友だと思ってる」

「うん。東洋の島国に、退治屋をしている僕と浮竹。貧乏だけど、慎ましく生きている。涙を誘うねぇ」

「お前は、俺の金があるから楽な生活をできているだけだろう」

「ヒモで悪いかい!?」

(おい、こっちの春水はヒモなんだそうだぞ)

(えええ~~!かっこ悪い!ボクでもあるんだから、もうちょっとしっかりしてよ!)

「無理だよ。僕は浮竹のせいですっかりお金持ちな生活に慣れてしまった」

西洋の京楽は、悟りを開いていた。

(入れ替わったりでもしたら、こっちで生活していけそうにないね)

「まさにその通り!」

東洋の京楽の言葉に、西洋の京楽が頷いた。

「で、僕らをこんな東洋の島国に呼んだりして、何かあったのかい?」

「そうだな。夢渡りを利用して世界を渡るのは、時間制限がある」

(いや、純粋に十四郎に血を分けてくれたことの感謝を伝えたくて)

(ああ。俺を元に戻してくれるために、わざわざ血をくれたから)

「そんなこと、お安い御用だ。同じ姿形の者が、低俗なヴァンパイアの眷属になっているなんて、放っておけなかったからな」

「うんうん」

西洋の京楽も頷いていた。

(お前に悪い気が迫っている。これはそれを受け付けないためのお守りだ)

東洋の浮竹はそう言うと、懐から片手で持てるサイズのお守りを取り出して西洋の浮竹に差し出す。

(血族にも効果はあるがあとは気の持ちよう…だ)

そう東洋の浮竹は言って、西洋の京楽を見る。

(ボクと瓜二つのキミには怒りで我を忘れないようにしてね?怒りは全てをダメにするから…)

東洋の京楽は西洋の京楽にそう言うと笑いかける。その笑い方は自分も暴走した経験があるような苦労した笑い方だ。

「ああ、ありがとう。このお守り、大切にする。とりあえず、お礼だ」

そう言って、西洋の浮竹は、アイテムポケットから大量の木苺のタルト、ケーキ、ジュースを取り出した。

「ああ、もう時間切れのようだ」

(お守りの効果、詳しく書いた紙をいれておくから)

「ありがとう」

「またね、東洋の浮竹と僕」

そう言って、西洋の浮竹と京楽は、元いた世界に戻ってしまった。

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「ねえ」

「なんだ、京楽」

「僕らも、東洋の僕らみたいに仲良くしようよ」

「すでに仲はいいだろう」

「そういうことを言ってるんじゃなくって!もう、分かるでしょ?」

「分からない」

そう言って、クスクス笑いながら、浮竹は京楽の衣服を脱がせていく。

「何、君も、その気だったの?」

「抱き合って仲を深めたいんだろう?」

「うん」

浮竹の直球の言葉は、妖艶な笑みとセットだった。

「ああ、僕たべられちゃう。始祖の君に」

「骨の髄まで、しゃぶり尽してやる」


「あ、あああ、あ!」

浮竹は、京楽に食べられていた。




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