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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「ポチとタマ~。ご飯だぞ~~」

「るるるるるる」

「りんりんりん」

2匹のミミックは、使われていない暖炉から出てきた。

「ほら、ドラゴンステーキだぞ。それぞれの分があるから、仲良く食べるんだぞ」

「るるるるる♪」

「りんりんりん♪」

2匹のミミックは、ドラゴンステーキを食べ終えて、浮竹と戯れだした。

上半身をポチにかまれ、下半身をタマにかじらていれる場面を、ちょうどやってきた東洋の友たちに見られて、西洋の浮竹は固まった。

「いや、これは、その!」

(まぁ、人の趣味っていろいろだし、まぁ自由にしたらいいんじゃないかなぁ」

「ミミックが増えてる・・・・・」

東洋の京楽と浮竹は、引き気味に西洋の浮竹を見ていた。

(じゃあ、ゆっくりしてて。ボクたちはお茶しに、ダイニングルームへいくから」

(じゃあ、ゆっくり自分の欲望を消化させてくれ、西洋の俺)

「だから、誤解だあああああああ」

浮竹は真っ赤になって叫ぶのであった。


-------------------------------------------


「おっほん。情けない姿を見られた」

「それは、浮竹がミミックを好きすぎるからでしょ?」

「うっ」

図星を刺されて、西洋の浮竹は、ジト目で西洋の京楽を睨んだ。

「俺の友がきているなら、何故先に教えなかった」

「だって、君がミミックと戯れるのを邪魔すると、君が怒るじゃない」

「うっ」

(あ~このアッサムの紅茶うまいな)

(本当においしいね)

「東洋の俺たち、あれはただ遊んでいただけなんだ」

(そうなんだ)

(何か欲望を消化しているように見えたけど)

「だから、誤解だ!ミミックと遊んでみれば、その可愛さが分かるぞ?おーい、ポチとタマ~~」

「るるるるる」

「りんりんりん」

呼ばれて、2匹のミミックはダイニングルームにやってきた。

ポチは、まず西洋の浮竹にかみついて挨拶すると、次に東洋の浮竹にかみつこうとして、すごい睨んでくる東洋の京楽に恐怖して、西洋の浮竹の後ろに隠れてしまった。

「そんなに殺気をふりむかなくても、かまれてもどうってことないぞ」

(俺、ちょっとかまれてみたいかも)

「るるるるるる」

東洋の浮竹に、ポチはかみついた。

(十四郎!)

(大丈夫。甘噛みだな。暗くて狭いけど、あったかい)

ポチは、かみつくのを止めて、東洋の浮竹のほっぺを舐めた。

(あははは、くすぐったい)

(このミミックめ!)

東洋の京楽が妖刀を持ち出すものだから、ポチとタマは鳴きながら寝床の暖炉にもどってしまった。

「西洋の京楽、落ち着け」

(ボクの十四郎に触れていいのは、ボクだけだよ)

「ふふふ、愛されてるな、東洋の俺」

東洋の浮竹は真っ赤になった。

「これ、僕がこの前もらったレシピで作ったシュークリームの中身をアイスにしたものだよ」

お茶菓子にと、西洋の京楽は皆に振舞った。

(冷たくておいしい。アイスシュークリームってやつだな)

(確かにおいしいね。口の中で溶けていくバニラがなんともいえないよ)

「うまいぞこれ、京楽。おかわり」

「はいはい。たくさんあるから、好きなだけ食べていいよ」

その言葉に、東洋の浮竹もおかわりを所望した。

「口にあって、何よりだよ」

西洋の京楽も、椅子に座って紅茶を飲みながら、自分で作ったアイスシュークリームを食べた。

「ああ、そういえば新しい鎮痛剤を作ってみたんだ。バナナの味にしておいたから、良ければ何か痛みがあるときにでも飲んでくれ」

西洋の浮竹が取り出した鎮痛剤は、真っ赤でボコボコと泡を吹いていた。

(なんか、服用したら別に傷みがありそう)

「そんなことないぞ」

西洋の浮竹は、スプーンで鎮痛剤をすくうと、紅茶を飲んでいた東洋の浮竹の口にそれを突っ込んだ。

(うわあ、ほんとにバナナの味がする。おいしいし、すーっとする)

「ミントも入ってるからな。ただ、ミントの味はでないように調整をしておいた」

「浮竹ってば、最近錬金術で薬作って、味を改良するのにはまってるの」

(へぇ。傷を治す薬とかはないの?)

「あるぞ。このダメージ回復ポーションだ」

見た目はメタリックブルーだった。

「チョコレート味だ。持って帰るか?」

(そうだね。何かあった時にでも、使わせてもらおうかな・・・十四郎?)

(俺が癒してやるのに・・・・)

しょんぼりする伴侶を抱き寄せて、東洋の京楽は東洋の浮竹を抱きしめた。

(そうだね、こんな得体の知れない薬を飲むより、キミに治してもらえるもんね)

「得体の知れない薬とはなんだ。これでも、ミスリルランクだぞ。王国宮廷錬金術士にも、勝ったのに・・・・・・」

「浮竹、向こうの世界には魔法がない。薬を飲んだら、いきなり傷が治る薬なんてあったら、やばいでしょ」

「それもそうか。じゃあ、この花粉症が治る薬でも持って帰れ」

にこにこ笑う西洋の浮竹に断り辛くて、結局二人は花粉症にきく薬をおみやげだともたされるのであった。

---------------------------------------------------


「そっちにいったぞ!」

(蛇影!)

西洋の京楽は、影から蛇を出すと、目的の大ねずみを退治してしまった。

「食べるなよ?今、このねずみからウィルスが感染して疫病が流行っている。薬をつくる」

そう言って、古城に大ねずみの遺体を持ち帰ると、血を抽出して、そこに何かの液体を注ぎ、生きたマンドレイクをぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんで釜で煮込むこと20分。

透明な薬が完成した。

「量産するから、手伝ってくれ」

(わかった)

ある程度の数を作ると、あとはレシピを王国宮廷錬金術士に渡して、西洋の浮竹は薬を安価で市場に流した。

どんどん売れて、在庫はあっという間になくなってしまった。

猫の魔女乱菊にもレシピを渡したので、すぐにでも追加品がやってくるだろう。

「やっぱり、君、人間が嫌いじゃないんじゃない?」

「そんなことないぞ。嫌いだ」

「じゃあ、なんで疫病の病の薬なんて作るの。対して儲からないのに」

「ほら、血の帝国で流行ったらやばいだろう」

適当に口を濁す。

「やっぱり、君は人間が好きなんだね」

(そうなのか?)

(そうにしか見えないね、確かに)

「お、俺は人間は嫌いだ」

真っ赤になって否定する西洋の浮竹に、素直じゃないなぁと、皆思うのであった。

「東洋の俺。疫病の薬作りなんかに巻き込んで、すまなかった」

(ううん、この国の人のためだろ。俺に力になれることがあったら、どんどん頼ってくれ)

「いや、今回はこれで終わりだ。魔女たちにも薬のレシピは渡したから、疫病は直に治まるだろう」

(そうか。俺たちは、そろそろ戻らないと)

(うん。長時間留守にするのもなんだから)

「選別だ。もっていけ」

西洋の京楽は、大金貨を一枚投げてよこした。

「じゃあな!」

西洋の浮竹は走り去ってしまった。

(金貨もらっちゃった)

(記念に残しておく?)

(そうだな。残しておくか)

こうして、二人は元の世界に戻っていくのであった。ポケットには、花粉症にきく薬をちゃっかり入れていた。




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