始祖なる者、ヴァンパイアマスター51
生まれ落ちた子は、死神であった。
神ではあるが、邪神や魔神に近かった。
女の子だった。見た目はまだ幼い13歳くらいだった。
名前を、キララと名付けられた。
星のように輝く瞳をもっていた。死神の元の始まりは、聖帝国にする神族であった。
なので、キララの瞳も宝石となりうるし、その涙はいろんな宝石になった。
「キララ、涙を流してちょうだい」
「はい、女神アルテナ様」
キララは感情を抑制していた。
無駄な反抗心を抱かぬように育てられた。
キララは。女神アルテナの言いつけ通り泣いた。それは極上のダイヤモンドとなって地面にカツンカツンと落ちた。
「うふふふ。これで装飾品には困らないわね」
地面に転がっているダイヤモンドを手に、女神アルテナは迷う。
「このまま浮竹と京楽の元に向かわせていいんだけれど・・・この宝石を生み出す力は惜しいわ。失うのは嫌ね」
女神アルテナは、キララの魂を二つにわけて、肉体も二つにわけた。
「あなたたちは、これで別々の死神よ」
「「はい、女神アルテナ様」」
「そっちのキララ。仕事よ。浮竹と京楽を、死神の力でその魂を屠るのよ」
「はい、女神アルテナ様。その魂を刈り取って、食べてもいいの?」
「ええ、もちろんよ」
女神アルテナは微笑む。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
-------------------------------------------------------------------
「ほらポチとタマ、ドラゴンステーキだぞ」
「るるるるるる」
「りんりんりん」
ポチとタマはよく浮竹に懐いていた。
よくその頭や上半身に噛みついた。
「あははは、ポチ、真っ暗だぞ」
頭に噛みつかれて、浮竹は笑っていた。
「ちょっと、タマ、やめてよ痛いから!」
浮竹がポチから抜け出すと、タマが京楽を噛んでいた。
京楽は股間をタマにかじられていた。
「ぶはっ」
浮竹は吹き出していた。
「ちょっと、浮竹笑ってないでどうにかしてよ。真剣に痛いんだけど」
「タマ、そんな男のイチモツをかじっていたら、性病がうるぞ」
「りんりんりん」
タマは、京楽の股間にかみつくのをやめて、浮竹にじゃれついた。
「浮竹ひどい!」
京楽はわっと泣き真似をする。放置していたが、ずっとそのままなので、仕方なく浮竹は京楽の頭を撫でた。
「ちゃんとタマにかじっちゃだめだって教えておくから、すねるな」
「性病はないでしょ!僕はかかったこともないよ。そもそも僕がかかってるなら、君も・・・」
言葉の続きを、赤くなった浮竹がハリセンでしばいていた。
「タマ、もう一回かじっていいぞ」
「りんりんりん」
「ぎゃああああああああ」
そんな和やか時間が流れていった。
---------------------------------------------
「また、疫病か・・・・・」
アラルの町に出ると、路地裏にいっぱい死体が放置されていた。
ガイア王国の至る場所で、疫病が流行っていた。
冒険者ギルドにいくと、人はほとんどいなくて、受付嬢も病気なのかいなかった。
ギルドマスターに、深刻な顔で呼び出された。
「この疫病は、先週から流行り出して・・・致死率20%だ」
「特効薬は?」
「まだ、王国宮廷錬金術士が、王族と貴族に配った分だけだ。ここに、闇ルートで入手した特効薬がある。君はミスリルランクの錬金術士なんだろう、薬の分析と大量生産を頼みたい。報酬は白金貨500枚だ。どうだろうか」
つまりは、大金貨5千枚分だ。
流石の報酬の高さに、浮竹の心も動いた。元より、このガイア王国が疫病で滅んでは困る。
アラルの町をはよく食料を買い出しにくる町でもある。
「分かった、引き受けよう」
「本当か!」
ギルドマスターが顔を輝かせた。
「期待して、いいんだな?」
「薬の分析のために、この特効薬はもっていくが、いいか?」
「もちろんだ。俺は特効薬を飲んでいて病気にかからない。何か手伝うことがあったら、遠慮せずに言ってくれ」
「分かった。足りない材料があったら、かき集めてもらう」
浮竹と京楽は、冒険者ギルドを後にした。
「浮竹、よかったの?あんな依頼引き受けて」
「このままにするわけにもいかないだろう。アラルの町が滅んでしまう。ガイア王国の王族貴族は特効薬があるから大丈夫だろうが、それが国民に浸透するまでにどれだけの犠牲者がでるか、分かったもんじゃない」
「それもそうだね」
京楽は、裏路地を見て、ため息を零した。
「王族、貴族だけが助かっても、民が死ねば国は機能しないよ。それを国王はわかってるのかな」
「分かっているだろう。そのうち民にも救いの手を差し伸べるだろうが、それまでに、老人と子供から先に死んでいく」
京楽は、特効薬を飲んだ。
味から分析を始める。
「マンドレイクのエキスだな。それにドラゴンの血・・・そんなものか。まぁ、マンドレイクは人間の世界では手に入りにくいからな」
浮竹は早速古城に戻る、錬金術の館で、京楽に中庭に生えていたマンドレイクを大量に引っこ抜いて洗ってもらい、釜に大量にぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんで煮始めた。
「とりあえず、特効薬の完成だ。これを薄めたものを配布する。小瓶が大量に必要だな・・・」
浮竹は、何かの呪文を唱えた。
すると、空の小瓶がたくさんでてきた。
「小さな無機物を複製する民間魔法だ。特別なものは複製できない。小瓶程度なら複製可能だ」
浮竹と京楽は、釜の中身を水で薄めた特効薬を大量に作り、冒険者ギルドに納入した。
あとは、魔女の里と乱菊にレシピを渡しておいた。これで、この疫病も収まるはずだと、浮竹は思った。
「なーんだ。ヴァンパイアは、疫病にかからないのか」
「誰だ!」
冒険者ギルドから古城の帰り道の途中で、幼い13歳くらいの、魔女の恰好をしてホウキにのった少女に話しかけられた。
「うふふふ。あたしは死神のキララ。この王国に疫病のウィルスを巻き散らした、犯人だよ」
「貴様!藍染の手の者か!」
「藍染~?ああ、あのぱっとしない女神アルテナ様の夫か」
「女神アルテナってことは、やっぱり藍染関係の手の者だね。浮竹、気をつけて。この子、本当に死神だよ。魂を狩る」
「うーん、そっちのお兄さん正解」
キララがニッと笑うと、ホウキから飛び降りて、巨大な鎌を構えた。
「さて、狩りの時間だよ」
「狩られるのはお前だ!」
浮竹は、渦巻く血を槍に変えてキララに襲い掛かる。
キララは、それを巨大な鎌で断ち切ってしまった。
「わたしの鎌はねぇ、魔法を吸い取るの。だから、あんたたちの得意な魔法はなんの意味もないんだよねぇ」
浮竹は舌打ちした。
「そんなことはどうでもいい。ここは町中だ。場所を変えるぞ!」
浮竹はヴァンパイアの翼を生やすと、空を飛んだ。
京楽も同じように空を飛ぶ。
「あ、待ってよ!」
キララも、巨大な鎌をホウキに変えて、それに乗って浮竹と京楽の後を追った。
行きついたのは、古城の近くにある森の外れの草原だった。
「ここなら、人間に見られることもないし、巻き込むこともないだろう」
浮竹は、静かに怒っていた。
何の関係もない人間を巻き込んだ、死神のキララに対して、明確な殺意を抱いていた。
「あは、そっちの白髪のお兄さん怒ってる。もしかして、関係ない人間巻き込んだこと怒ってるのお?でも、お陰であたしはいっぱい魂を狩り取れて満足なんだけどなー」
キララの前に、たくさんの魂が浮かんでいた。
「そっちの魔神のお兄さんにあげる。いっぱいあるから、邪神になれるよ?」
「僕はそんな魂はいらないし、邪神にもならない」
「なんでぇ?邪神になったら、やりたい放題できるんだよ?」
「それで、勇者か上位神に滅ぼされるんでしょ。まっぴらごめんだね」
「ちぇっ、うまくいくと思ったのに。普通魔神なら、魂を見ただけで食い始めるのに、どぉしてぇ?」
「僕は、浮竹の血族の魔神だからね!サンダーボルテックス!」
「きゃあ、雷怖い」
キララは、ホウキを巨大な鎌に変えて、京楽の魔法を吸い取った。
「エターナルフェニックス!」
浮竹も、魔法をキララに向けて放つ。
「魔法なんて怖くないもん。このゼーレの鎌が、全てすいとって・・・ゼーレ?」
ゼーレという名の鎌は、刃の部分が赤くなっていた。
「やっぱりな。吸い取るといっても限度があるようだ。魔神クラスの禁呪を2つも吸い取ったんだ。それ以上吸わせるなら、そのゼーレの鎌とやらが耐えきれなくなって、砕けるぞ」
「そんなことないもん!いくよ、ゼーレ!」
キララは鎌を手に、浮竹と京楽を斬ろうとした。
けれど、二人は13歳くらいの少女が振るう鎌の攻撃を簡単に避けた。
「その鎌、身長と筋力にあっていない。もっとまともな武器で攻撃してきたらどうだ」
「うるさい。ゼーレ、魂を刈り取っちゃえ!」
ゼーレの鎌は咢’(あぎと)を開き、浮竹の魂を食おうする。
それに、浮竹は笑んで咢から脱出した。
「なんで!?なんで魂が狩れないの!?」
「あいにくと、俺の魂は俺の体と一体でな!」
「そんなことがあるか!こうなったら、そっちの魔神の魂を狩ってやる!」
ゼーレの鎌の咢に、京楽は魔神の咢を向けた。
「いやあああ、ゼーレが、ゼーレが食べられちゃう!あたしの大切なゼーレが!」
「じゃあ、返すよ」
京楽は、ゼーレの魂を死神のキララに返した。
ゼーレの魂は、死神の鎌となり、キララの魂そのものを狩った。
「いやあああ!!」
キララはなんとか魂の半分だけで済ませて、今度こそ浮竹と京楽の魂を狩ろうと、ゼーレの鎌を向けた。
「エターナルアイシクルフィールド!」
「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」
魔力をたくさん込められた、2つの禁呪を受けて、ゼーレの鎌は魔法を吸収しながら、刃の部分の罅を広げて、砕け散ってしまった。
「うそおおおお!!!ゼーレ、ゼーレ!!」
キララは泣いた。
その涙は宝石となって、地面に散らばった。
「よくもゼーレを!殺してやる!」
「武器を失った死神に、何ができるっていうの?」
「うるさいうるさいうるさい!!」
キララは魔法を唱えた。
「ファアイアロー!」
確かに威力がすごっかったが、そんな下位魔法で浮竹と京楽がどうにかなるわけでもない。
「死神かぁ。あんまりおいしくなさそうだけど、その魂、食べてあげる」
「いやああああああああ!!!!」
魔神の咢が開き、バリバリとキララは魂を食われた。
「あああ・・・ゼーレ・・・・ナウセルお父様・・・・」
それだけを言い残して、キララの肉体だけが残った。
「燃やしてしまおう」
「いや、もっといい方法があるよ」
京楽は、凶悪な笑みを浮かべた。
キララの四肢と首を切断し、胴体を2つに斬り分けて、箱に入れて密封し、それを藍染の居城にまで運ぶように式を放つ。
「僕の浮竹に手を出そうとしたらどうなるか、ちゃんと知らせてあげないとね?」
浮竹は、京楽の残酷な部分も受け入れた。
本当は、キララの持っていた人間の魂を大量に食いたかったに違いない。だが、京楽は浮竹との誓いを守るために、あえて人間の魂を食わなかった。
魂たちは、天に昇っていった。
ゼーレの魂は、結局京楽が食べてしまった。
-------------------------------------------------------------
「すみませーん、藍染様からのお届け物でーす」
「あら、あの方からの届け物ってなにかしら。すこし、匂うわね。なんの匂いかしら」
女神アルテナは、今は城を抜け出している藍染からの贈り物だと思ってそれを受け取った。
中身をあけると、血が滴り落ちた。
「いやああああああああ!!!」
中身は、体をバラバラに切断された、キララの遺体だった。
うじが沸いており、腐りはじめて異臭を放っていた。
「いやよ、いやよ!!!」
女神アルテナは腰をぬかつつも、「ゴッドフェニクス」と唱えて、キララの遺体を焼いた。
「あはははは!アルテナ姉さま、みーつけた」
「女神オリガ?」
「藍染様がねぇ、アルテナ姉さまを実験台に使う許可をくれたの」
「な、何を言っているの!?」
「今度は、アルテナ姉さまが実験台になる番よ?」
そんな力がどこにあるのか、女神オリガが長い女神アルテナの髪をひっぱり、ずるずるとその体を引きずっていく。
「痛いわ、やめて、離して!!」
「アルテナ姉さま、私が嫌だって、やめてって言ったのに、私に子を孕ませたでしょ?アルテナ姉さまには、どんな種族の子供でも産める、道具になってもらうの」
「いやあああああああ!!女神オリガ、私が悪かったわ、やめてええ」
女神オリガにずるずると引きずられながら、実験体の失敗作たちのいる、ぶよぶよした肉の塊がある部屋の試験官の中に、女神アルテナは放り込まれた。
「ばいばい、アルテナ姉さま」
女神オリガの隣には、夫であるはずの藍染が立っていた。
「愛しいあなた!助けて!!」
「もう君にはうんざりだよ。私の許可なく、子を孕んだり、こんなかわいい女神オリガに邪神や死神の子を孕ませたりして・・・・・」
「うふふ。藍染様は、創造神イクシードの代わりになってくれるって誓ってくれたわ」
「藍染!裏切るの!!」
「私を裏切っていたのは、君だろう」
「始祖魔族如きの存在で、女神である私に・・・きゃあああ!!!!」
試験官の中に、ドリルが入ってきて、女神アルテナの体を穴だらけにした。
「ああ、だめよ。子宮は傷つけないで」
次にビームカッターがでてきて、女神アルテナの体から子宮と卵管を取り出す。
それを保存して、試験官の中では元女神アルテナであった肉塊が蠢き、合体してぶよぶとした肉体を作り出す。その肉体の中に、女神アルテナの子宮は埋め込まれた。
「あは、完成した。これで、どんな子種でも孕める。よかったわね、アルテナ姉さま」
アルテナの魂は、肉体を去ろうとした。
けれど、藍染の魔法で肉体に縛られた。
(いやあああああああああ)
魂の叫び声は、誰にも聞こえなかった。
神のアストラル体を作ることもできず、女神アルテナの意識はただの肉塊に飲みこまれていくのだった。
神ではあるが、邪神や魔神に近かった。
女の子だった。見た目はまだ幼い13歳くらいだった。
名前を、キララと名付けられた。
星のように輝く瞳をもっていた。死神の元の始まりは、聖帝国にする神族であった。
なので、キララの瞳も宝石となりうるし、その涙はいろんな宝石になった。
「キララ、涙を流してちょうだい」
「はい、女神アルテナ様」
キララは感情を抑制していた。
無駄な反抗心を抱かぬように育てられた。
キララは。女神アルテナの言いつけ通り泣いた。それは極上のダイヤモンドとなって地面にカツンカツンと落ちた。
「うふふふ。これで装飾品には困らないわね」
地面に転がっているダイヤモンドを手に、女神アルテナは迷う。
「このまま浮竹と京楽の元に向かわせていいんだけれど・・・この宝石を生み出す力は惜しいわ。失うのは嫌ね」
女神アルテナは、キララの魂を二つにわけて、肉体も二つにわけた。
「あなたたちは、これで別々の死神よ」
「「はい、女神アルテナ様」」
「そっちのキララ。仕事よ。浮竹と京楽を、死神の力でその魂を屠るのよ」
「はい、女神アルテナ様。その魂を刈り取って、食べてもいいの?」
「ええ、もちろんよ」
女神アルテナは微笑む。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
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「ほらポチとタマ、ドラゴンステーキだぞ」
「るるるるるる」
「りんりんりん」
ポチとタマはよく浮竹に懐いていた。
よくその頭や上半身に噛みついた。
「あははは、ポチ、真っ暗だぞ」
頭に噛みつかれて、浮竹は笑っていた。
「ちょっと、タマ、やめてよ痛いから!」
浮竹がポチから抜け出すと、タマが京楽を噛んでいた。
京楽は股間をタマにかじられていた。
「ぶはっ」
浮竹は吹き出していた。
「ちょっと、浮竹笑ってないでどうにかしてよ。真剣に痛いんだけど」
「タマ、そんな男のイチモツをかじっていたら、性病がうるぞ」
「りんりんりん」
タマは、京楽の股間にかみつくのをやめて、浮竹にじゃれついた。
「浮竹ひどい!」
京楽はわっと泣き真似をする。放置していたが、ずっとそのままなので、仕方なく浮竹は京楽の頭を撫でた。
「ちゃんとタマにかじっちゃだめだって教えておくから、すねるな」
「性病はないでしょ!僕はかかったこともないよ。そもそも僕がかかってるなら、君も・・・」
言葉の続きを、赤くなった浮竹がハリセンでしばいていた。
「タマ、もう一回かじっていいぞ」
「りんりんりん」
「ぎゃああああああああ」
そんな和やか時間が流れていった。
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「また、疫病か・・・・・」
アラルの町に出ると、路地裏にいっぱい死体が放置されていた。
ガイア王国の至る場所で、疫病が流行っていた。
冒険者ギルドにいくと、人はほとんどいなくて、受付嬢も病気なのかいなかった。
ギルドマスターに、深刻な顔で呼び出された。
「この疫病は、先週から流行り出して・・・致死率20%だ」
「特効薬は?」
「まだ、王国宮廷錬金術士が、王族と貴族に配った分だけだ。ここに、闇ルートで入手した特効薬がある。君はミスリルランクの錬金術士なんだろう、薬の分析と大量生産を頼みたい。報酬は白金貨500枚だ。どうだろうか」
つまりは、大金貨5千枚分だ。
流石の報酬の高さに、浮竹の心も動いた。元より、このガイア王国が疫病で滅んでは困る。
アラルの町をはよく食料を買い出しにくる町でもある。
「分かった、引き受けよう」
「本当か!」
ギルドマスターが顔を輝かせた。
「期待して、いいんだな?」
「薬の分析のために、この特効薬はもっていくが、いいか?」
「もちろんだ。俺は特効薬を飲んでいて病気にかからない。何か手伝うことがあったら、遠慮せずに言ってくれ」
「分かった。足りない材料があったら、かき集めてもらう」
浮竹と京楽は、冒険者ギルドを後にした。
「浮竹、よかったの?あんな依頼引き受けて」
「このままにするわけにもいかないだろう。アラルの町が滅んでしまう。ガイア王国の王族貴族は特効薬があるから大丈夫だろうが、それが国民に浸透するまでにどれだけの犠牲者がでるか、分かったもんじゃない」
「それもそうだね」
京楽は、裏路地を見て、ため息を零した。
「王族、貴族だけが助かっても、民が死ねば国は機能しないよ。それを国王はわかってるのかな」
「分かっているだろう。そのうち民にも救いの手を差し伸べるだろうが、それまでに、老人と子供から先に死んでいく」
京楽は、特効薬を飲んだ。
味から分析を始める。
「マンドレイクのエキスだな。それにドラゴンの血・・・そんなものか。まぁ、マンドレイクは人間の世界では手に入りにくいからな」
浮竹は早速古城に戻る、錬金術の館で、京楽に中庭に生えていたマンドレイクを大量に引っこ抜いて洗ってもらい、釜に大量にぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんで煮始めた。
「とりあえず、特効薬の完成だ。これを薄めたものを配布する。小瓶が大量に必要だな・・・」
浮竹は、何かの呪文を唱えた。
すると、空の小瓶がたくさんでてきた。
「小さな無機物を複製する民間魔法だ。特別なものは複製できない。小瓶程度なら複製可能だ」
浮竹と京楽は、釜の中身を水で薄めた特効薬を大量に作り、冒険者ギルドに納入した。
あとは、魔女の里と乱菊にレシピを渡しておいた。これで、この疫病も収まるはずだと、浮竹は思った。
「なーんだ。ヴァンパイアは、疫病にかからないのか」
「誰だ!」
冒険者ギルドから古城の帰り道の途中で、幼い13歳くらいの、魔女の恰好をしてホウキにのった少女に話しかけられた。
「うふふふ。あたしは死神のキララ。この王国に疫病のウィルスを巻き散らした、犯人だよ」
「貴様!藍染の手の者か!」
「藍染~?ああ、あのぱっとしない女神アルテナ様の夫か」
「女神アルテナってことは、やっぱり藍染関係の手の者だね。浮竹、気をつけて。この子、本当に死神だよ。魂を狩る」
「うーん、そっちのお兄さん正解」
キララがニッと笑うと、ホウキから飛び降りて、巨大な鎌を構えた。
「さて、狩りの時間だよ」
「狩られるのはお前だ!」
浮竹は、渦巻く血を槍に変えてキララに襲い掛かる。
キララは、それを巨大な鎌で断ち切ってしまった。
「わたしの鎌はねぇ、魔法を吸い取るの。だから、あんたたちの得意な魔法はなんの意味もないんだよねぇ」
浮竹は舌打ちした。
「そんなことはどうでもいい。ここは町中だ。場所を変えるぞ!」
浮竹はヴァンパイアの翼を生やすと、空を飛んだ。
京楽も同じように空を飛ぶ。
「あ、待ってよ!」
キララも、巨大な鎌をホウキに変えて、それに乗って浮竹と京楽の後を追った。
行きついたのは、古城の近くにある森の外れの草原だった。
「ここなら、人間に見られることもないし、巻き込むこともないだろう」
浮竹は、静かに怒っていた。
何の関係もない人間を巻き込んだ、死神のキララに対して、明確な殺意を抱いていた。
「あは、そっちの白髪のお兄さん怒ってる。もしかして、関係ない人間巻き込んだこと怒ってるのお?でも、お陰であたしはいっぱい魂を狩り取れて満足なんだけどなー」
キララの前に、たくさんの魂が浮かんでいた。
「そっちの魔神のお兄さんにあげる。いっぱいあるから、邪神になれるよ?」
「僕はそんな魂はいらないし、邪神にもならない」
「なんでぇ?邪神になったら、やりたい放題できるんだよ?」
「それで、勇者か上位神に滅ぼされるんでしょ。まっぴらごめんだね」
「ちぇっ、うまくいくと思ったのに。普通魔神なら、魂を見ただけで食い始めるのに、どぉしてぇ?」
「僕は、浮竹の血族の魔神だからね!サンダーボルテックス!」
「きゃあ、雷怖い」
キララは、ホウキを巨大な鎌に変えて、京楽の魔法を吸い取った。
「エターナルフェニックス!」
浮竹も、魔法をキララに向けて放つ。
「魔法なんて怖くないもん。このゼーレの鎌が、全てすいとって・・・ゼーレ?」
ゼーレという名の鎌は、刃の部分が赤くなっていた。
「やっぱりな。吸い取るといっても限度があるようだ。魔神クラスの禁呪を2つも吸い取ったんだ。それ以上吸わせるなら、そのゼーレの鎌とやらが耐えきれなくなって、砕けるぞ」
「そんなことないもん!いくよ、ゼーレ!」
キララは鎌を手に、浮竹と京楽を斬ろうとした。
けれど、二人は13歳くらいの少女が振るう鎌の攻撃を簡単に避けた。
「その鎌、身長と筋力にあっていない。もっとまともな武器で攻撃してきたらどうだ」
「うるさい。ゼーレ、魂を刈り取っちゃえ!」
ゼーレの鎌は咢’(あぎと)を開き、浮竹の魂を食おうする。
それに、浮竹は笑んで咢から脱出した。
「なんで!?なんで魂が狩れないの!?」
「あいにくと、俺の魂は俺の体と一体でな!」
「そんなことがあるか!こうなったら、そっちの魔神の魂を狩ってやる!」
ゼーレの鎌の咢に、京楽は魔神の咢を向けた。
「いやあああ、ゼーレが、ゼーレが食べられちゃう!あたしの大切なゼーレが!」
「じゃあ、返すよ」
京楽は、ゼーレの魂を死神のキララに返した。
ゼーレの魂は、死神の鎌となり、キララの魂そのものを狩った。
「いやあああ!!」
キララはなんとか魂の半分だけで済ませて、今度こそ浮竹と京楽の魂を狩ろうと、ゼーレの鎌を向けた。
「エターナルアイシクルフィールド!」
「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」
魔力をたくさん込められた、2つの禁呪を受けて、ゼーレの鎌は魔法を吸収しながら、刃の部分の罅を広げて、砕け散ってしまった。
「うそおおおお!!!ゼーレ、ゼーレ!!」
キララは泣いた。
その涙は宝石となって、地面に散らばった。
「よくもゼーレを!殺してやる!」
「武器を失った死神に、何ができるっていうの?」
「うるさいうるさいうるさい!!」
キララは魔法を唱えた。
「ファアイアロー!」
確かに威力がすごっかったが、そんな下位魔法で浮竹と京楽がどうにかなるわけでもない。
「死神かぁ。あんまりおいしくなさそうだけど、その魂、食べてあげる」
「いやああああああああ!!!!」
魔神の咢が開き、バリバリとキララは魂を食われた。
「あああ・・・ゼーレ・・・・ナウセルお父様・・・・」
それだけを言い残して、キララの肉体だけが残った。
「燃やしてしまおう」
「いや、もっといい方法があるよ」
京楽は、凶悪な笑みを浮かべた。
キララの四肢と首を切断し、胴体を2つに斬り分けて、箱に入れて密封し、それを藍染の居城にまで運ぶように式を放つ。
「僕の浮竹に手を出そうとしたらどうなるか、ちゃんと知らせてあげないとね?」
浮竹は、京楽の残酷な部分も受け入れた。
本当は、キララの持っていた人間の魂を大量に食いたかったに違いない。だが、京楽は浮竹との誓いを守るために、あえて人間の魂を食わなかった。
魂たちは、天に昇っていった。
ゼーレの魂は、結局京楽が食べてしまった。
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「すみませーん、藍染様からのお届け物でーす」
「あら、あの方からの届け物ってなにかしら。すこし、匂うわね。なんの匂いかしら」
女神アルテナは、今は城を抜け出している藍染からの贈り物だと思ってそれを受け取った。
中身をあけると、血が滴り落ちた。
「いやああああああああ!!!」
中身は、体をバラバラに切断された、キララの遺体だった。
うじが沸いており、腐りはじめて異臭を放っていた。
「いやよ、いやよ!!!」
女神アルテナは腰をぬかつつも、「ゴッドフェニクス」と唱えて、キララの遺体を焼いた。
「あはははは!アルテナ姉さま、みーつけた」
「女神オリガ?」
「藍染様がねぇ、アルテナ姉さまを実験台に使う許可をくれたの」
「な、何を言っているの!?」
「今度は、アルテナ姉さまが実験台になる番よ?」
そんな力がどこにあるのか、女神オリガが長い女神アルテナの髪をひっぱり、ずるずるとその体を引きずっていく。
「痛いわ、やめて、離して!!」
「アルテナ姉さま、私が嫌だって、やめてって言ったのに、私に子を孕ませたでしょ?アルテナ姉さまには、どんな種族の子供でも産める、道具になってもらうの」
「いやあああああああ!!女神オリガ、私が悪かったわ、やめてええ」
女神オリガにずるずると引きずられながら、実験体の失敗作たちのいる、ぶよぶよした肉の塊がある部屋の試験官の中に、女神アルテナは放り込まれた。
「ばいばい、アルテナ姉さま」
女神オリガの隣には、夫であるはずの藍染が立っていた。
「愛しいあなた!助けて!!」
「もう君にはうんざりだよ。私の許可なく、子を孕んだり、こんなかわいい女神オリガに邪神や死神の子を孕ませたりして・・・・・」
「うふふ。藍染様は、創造神イクシードの代わりになってくれるって誓ってくれたわ」
「藍染!裏切るの!!」
「私を裏切っていたのは、君だろう」
「始祖魔族如きの存在で、女神である私に・・・きゃあああ!!!!」
試験官の中に、ドリルが入ってきて、女神アルテナの体を穴だらけにした。
「ああ、だめよ。子宮は傷つけないで」
次にビームカッターがでてきて、女神アルテナの体から子宮と卵管を取り出す。
それを保存して、試験官の中では元女神アルテナであった肉塊が蠢き、合体してぶよぶとした肉体を作り出す。その肉体の中に、女神アルテナの子宮は埋め込まれた。
「あは、完成した。これで、どんな子種でも孕める。よかったわね、アルテナ姉さま」
アルテナの魂は、肉体を去ろうとした。
けれど、藍染の魔法で肉体に縛られた。
(いやあああああああああ)
魂の叫び声は、誰にも聞こえなかった。
神のアストラル体を作ることもできず、女神アルテナの意識はただの肉塊に飲みこまれていくのだった。
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