始祖なる者、ヴァンパイアマスター32
藍染に突然呼ばれ、犯された魔女の女は、孕んで僅か10日で臨月を迎え、子を出産した。
男児であった。
ルクレチアと名付けられた。
「ああ、愛しいルクレチア。お前のお陰で、母さんは故郷に戻れるのよ」
藍染の寵姫は、皆、美しいからと故郷から無理やりつれてこられた、ある意味の人質でもあった。
ルクレチアの母は、故郷である魔女の里に帰された。
ルクレチアは、僅か半月で16歳くらいの見た目まで成長した。
ルクレチアに与えた魔人ユーハバッハの血は、ルクエレチアをネクロマンサーにした。
ルクレチアには言葉を理解する知能はあったが、自由意思はもたせなかった。
自我はあったが、藍染の言いなりになるように作られた。
「さぁいけ、私のかわいい息子よ。そのネクロマンサーの力で、血の帝国を荒らし、始祖とその血族京楽を引き付けて、封印するのだ!」
「はい、お父様」
もう、ラニとレニのような失敗は繰り返さない。
そう藍染は心に決めて、息子を成長促進の魔法を使って育てた。
「このネクロマンサーの力で、血の帝国をアンデットで満たして、必ずや始祖浮竹とその血族京楽を封印してみせます」
「いい子だ、ルクレチア」
----------------------------------------------------
血の帝国中で、死んだはずのヴァンパイアがアンデット化して、復活する事件が相次いでいた。
藍染の気配を感じたブラッディ・ネイは、すぐに実の兄である浮竹に知らせて、助力をこうた。
「アンデットが出ているだって?」
「そうなんだ、兄様。中には、村一つを滅ぼすアンデットの群れが確認された。ネクロマンサーの存在が確認されたけど、藍染の匂いがするんだ。あと、魔人ユーハバッハの血の匂いもした」
「藍染の子か何かか」
「多分、そう思う。でも、すでにネクロマンサーで死者だ。騎士団を向かわせたけど、みんな瘴気にやられて倒れてしまった」
ブラッディ・ネイは精鋭の騎士団を失って、今ピンチに陥っていた。
「だから、俺と京楽の出番というわけか」
「毎回毎回、藍染もこりないねぇ」
「ラニとレニの件はまだボクも怒っているんだよ、兄様」
「あの件はすまなかったと思っている」
娘にした藍染の双子の娘ラニとレニは、藍染と通じていた。
浮竹は一度刺され、心臓に魔人ユーハバッハの血液が凝固した宝石を砕かれて入れられて、浮竹そのものに魔人ユーハバッハの意識を宿した。
8人の精霊王たちのお陰でなんとかなったが、もしも精霊王と契約していなかったら、今頃好きなように体をユーハバッハに使われていただろう。
そして、それを誰かに封印されていたに違いない。
「もう、同じ過ちは繰り返さない。東洋の俺から、邪気を払うお札ももらったしな。藍染の手の者にも効くそうだ」
「ああ、浄化のお札だね」
それを聞いて、ブラッディ・ネイが微笑んだ。
「なんだ、浄化のお札。そんなものがあるなら、今回のアンデット事件は兄様に任せていいよね?」
「念のため、白哉、恋次君、ルキア君、一護君、冬獅郎君を借りていく。アンデットはいろんなところに沸いているんだろう?」
「それがね、一直線なんだ。この宮殿に向かって、進んでいる」
「ブラッディ・ネイ、お前を狙っているのか?」
浮竹は、ブラッディ・ネイを見た。
ブラッディ・ネイは首を横に振った。
「分からない。もしそうなら、すでにこの宮殿を襲っているはすだよ」
「多分、僕らをおびき寄せるためじゃないかな」
京楽の言葉に、浮竹は頷いた。
「ブラッディ・ネイ。帝都を封鎖しろ」
「うん。もう準備は整ってるし、侵攻されそうな地域の民の避難も済ませてる」
「ブラッディ・ネイにしてはうまくやってるね」
「余計なお世話だよ、ひげもじゃ」
こうして、浮竹と京楽は、白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎たちと共に、アンデットの群れと対峙するのであった。
--------------------------------------------
アンデットは、たいていがスケルトンだったが、グールやゾンビもいた。
下位の低級アンデットの群れではあるが、数が数だけに、帝国の騎士団が瘴気に飲まれて倒れるのが分かるほど、空気が淀んで濁っていた。
「神の息吹を。ゴッドブレス!」
ルキアが、瘴気を祓う魔法を唱えてくれた。
「いくぜ、うおおおお!」
恋次は竜化して、炎のドラゴンブレスで敵を焼き払う。
白哉は避難していない者がいないか確かめていた。
ルキアは常に清浄な空気を維持するのに手いっぱいで、その守りは一護と冬獅郎に任せていた。
「お札・・・・始めて使うが、効いてくれよ」
浮竹が手にしたお札は、邪気を払い浄化の力のある護符だった。東洋の浮竹からもらったものだった。
光が満ちた。
お札の光を浴びたアンデットの軍団が、ボロボロと灰となっていく。
「効いてるね!今だよ!」
恋次が、ドラゴンブレスで、アンデットの軍隊の中央にいたボスであろうネクロマンサーを攻撃した。
「笑止!この程度の炎で焼かれる俺ではない。俺の名はルクレチア。藍染様の息子にして、お前たちを屠る者だ!」
ルクレチアは、ネクロマンサーであると同時に、すでに死者であった。
「浄化の札か。厄介な・・・・・・」
浮竹は、真っ赤なヴァンパイアの翼を広げて、お札でアンデットの軍隊を少しずつ小さくしていいく。
長く行列ができていたアンデットたちは、今は丸い円形に追い込まれていた。
「京楽、チェンジだ。お札をもって、更にアンデットを消してくれ」
「分かったよ」
浮竹が、京楽にお札を渡し、今度は京楽が浄化の護符でアンデットを葬っていった。
「おのれ、始祖浮竹!その血族京楽め!」
ネクロマンサーは、呪いの言霊を吐くが、それは反射された。
「まぶしい・・・・」
お札の効果で、それまでネクロマンサーの体を守っていた瘴気が、消えた。
「いけ、フェニックス!」
浮竹は炎の最高位精霊フェニックスを呼ぶと、ネクロマンサーを攻撃した。
「はははは!俺に炎は効かぬ!魔人ユーハバッハの血を注がれた俺に、魔法など効かぬ!
だが、かすかにルクレチアの顔に罅が入った。
「これしきの傷!」
瘴気を生み出し、ルクレチアは傷を癒してしまった。
「いけ、不死の軍団たちよ!」
だが、ルクレチアの操るアンデットたちは、次々と灰になっていく。
「ええい、浄化の札など、こうしてくれる!」
瘴気を、浄化の札にあてた。
浄化の札は、その瘴気も浄化した。
「くそ、くそおおお!!」
ルクレチアは、悔しそうに叫んで、自分の血をアンデットたちに与えた。
「これで、我が軍はそのような札など、効かぬ!」
「そうか?じゃあこれならどうだ!」
浮竹は、浄化の札を中心にして、またもや炎の最高位精霊フェニックスを召還すると、その破壊と再生の炎に、浄化の炎が足されて、アンデットたちを燃やしていった。
「そんなばかな!」
ルクレチアを覆っていた瘴気が、取り払われる。
「いけ、京楽!」
「おおおお!!」
ミスリル銀の魔剣に、聖属性を付与させて、京楽はルクレチアを袈裟懸けに斬った。
ぶわりと濃い瘴気にあてられて、京楽が怯む。
「おのれ、おのれ!!!」
傷口を再生させながら、ルクレチアは、また瘴気に潜んだ。
いつの間にか、アンデットの群れは消えていた。
ルクレチアが吸収したのだ。
浮竹は、手元に戻ってきたお札で、再び瘴気を祓う。
「ぬおおおおおおお」
ルクレチアは吠えた。
その血が溢れるたびに、地面から強化されたアンデットが這い出してきた。
「どうやら、お札の効果も魔人ユーハバッハには決定的には効かないようだね」
「でも、弱らせることには成功している!」
強化されたアンデットたちは、白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎でなんとかしてくれていた。
「俺たちは、とにかくあの親玉を叩こう!」
「分かったよ!」
浮竹と京楽は、互いの魔力を練り、うねらせて、槍の形を形成した。
それに、お札の効果をエンチャントする。
更に、フェニックスの炎を纏わせて、その上からもお札の効果をエンチャントした。
二重のお札の効果と、破壊と再生を司る精霊の炎と、純粋な魔力槍が、ルクレチアめがけて射出された。
まずはお札の効果で、瘴気を祓い、次の炎で肉体を焼き、更にお札の効果でに腐肉を更に焼いて、露出した心臓部のコアめがけて、純粋な魔力の槍が貫いた。
「おおおおお!!」
「うおおおおお!!」
浮竹と京楽は、純粋な魔力の槍に更に魔力をこめた。
「藍染様・・・・父様、俺は・・・・・・」
どさりと、ルクレチアは倒れた。
「俺は・・・・あなたに、愛され・・・たかった・・・・・」
ボロボロと灰となっていくルクレチアを、浮竹と京楽が哀しそうに見ていた。
「今度生まれ変わってきたら、世界を自由に羽ばたく鳥になるといい」
そう言って、浮竹は鳥の形をした式神を、崩れていくルクレチアの傍に置いた。
「鳥に・・・・俺は、鳥になる・・・・」
ボロボロと崩れていくルクレチアの体からかけたコアの一部が式に宿り、式は意思をもった小鳥となって青空に羽ばたいていった。
「いいの、浮竹。コアの一部を宿らせちゃったよ」
「大丈夫だ。あの式は、お札で清めておいたから、邪悪な存在だと宿れない」
「あのネクロマンサーの子は、元々はネクロマンサーじゃなかったんだね」
「きっと、藍染の息子として生まれてきて、魔人ユーハバッハの血のせいで、ネクロマンサーになったんだろう」
「無事ですか、浮竹殿、京楽殿!」
心配してかけつけてきたルキアに、京楽がその場に座りこんだ。
「ごめん、ルキアちゃん、魔力回復の魔法をかけて。浮竹と魔力を練り合わせて槍を作ったけど、ごっそり魔力をもっていかれて、魔力切れだよ」
「あの程度で音をあげるなど、情けないぞ京楽」
「そうは言ってもねぇ。君の体に精霊神が入った後で、君は爆発的に魔力をあげた。あいにく、こっちはそこまで魔力はないよ。君の3分の1くらいだ」
「前は2分の1といっていただろう」
「それだけ、君が強くなたってことさ」
ルキアから魔力回復の魔法を受けながら、飛び立っていった鳥が大空を旋回し、青い羽毛が降ってきた。
「おやすみ、ルクレチア。いい夢を」
青い小鳥となり、世界へ自由に羽ばたいていくルクレチアを、皆見上げていた。
-------------------------------------------------------------------------------
「今日は、皆に勝利を祝して、俺の手料理を振舞ってやる」
「ええ、浮竹殿の手料理ですか!?」
ルキアが顔を輝かせた。
「お前、料理なんてできたのか?」
「こら、冬獅郎、失礼だろうが!浮竹さん、うちの冬獅郎がすみません」
「京楽?」
浮竹は、京楽の名を呼んだ。
「一番に、お前に食べてほしいんだが」
「ブラッディ・ネイ!乱菊ちゃんの毒消しポーションとかある!?」
「あるが、それがどうかしたの?」
「みんなの分を用意しといて。あと胃腸薬も」
「兄様の手料理くらいで、大げさな・・・・・」
「今日は、海鮮パスタにしてみた」
その物体を見た、皆が顔を青くした。
パスタが青くてビチビチはねていた。
海鮮というが、貝はどす黒く、エビはショッキングピンクだった。
「た、食べてみないと味は分からないからな」
そう言って恋次は一口食べて、倒れた。
白哉もルキアも一護も冬獅郎も、みんな食べて倒れた。
「あれ、おかしいなぁ。マンドレイクぶちこんで、他にもいろいろぶち込んで茹でただけなんさが」
浮竹は、自分で味見してみた。
「うん、うまい。ブラッディ・ネイもどうだ?」
「に、兄様の手料理なら喜んで!」
青い顔をしながら、ブラッディ・ネイは一口食べて泡をふいた。
「きゃああ、ブラッディ・ネイ様が!」
「しっかりして!」
寵姫たちが、慌ただしく医者を呼んできた。
医者は、みんなの容態を見て、次に浮竹の手料理を見た。
「これはなんとも・・・・」
一応、浮竹はブラッディ・ネイの実の兄なので、皇族ということになっている。
不敬なことは言えなくて、困っているところに京楽がかけつけてきた。
「あああ、またやってる!」
「京楽、皆が俺の料理を口にして、倒れたんだ。どこかで毒でも盛られていたのだろうか?」
君の料理のせいだとは言えなくて、京楽は言葉を濁す。
「ああ、医者がきてたの。みんなにこのポーションと胃腸薬を飲ませて」
城に備蓄されていた、乱菊の薬をもって、かけつけてきたのだ。
医者は、それらを皆に飲ませたが、味のショックからか、皆はまだ倒れてうーんうーんとうなっていた。
「京楽なら、俺の手料理、残さず食ってくれるよな?」
キラキラした期待の眼差しで見られて、京楽は覚悟を決めて浮竹の海鮮パスタを口にした。
かっと目を見開いた。
その姿のまま、京楽は気絶していた。
この件があり、浮竹は宮殿のキッチンに出入り禁止の令を、ブラッディ・ネイに受けることになるのだった。
男児であった。
ルクレチアと名付けられた。
「ああ、愛しいルクレチア。お前のお陰で、母さんは故郷に戻れるのよ」
藍染の寵姫は、皆、美しいからと故郷から無理やりつれてこられた、ある意味の人質でもあった。
ルクレチアの母は、故郷である魔女の里に帰された。
ルクレチアは、僅か半月で16歳くらいの見た目まで成長した。
ルクレチアに与えた魔人ユーハバッハの血は、ルクエレチアをネクロマンサーにした。
ルクレチアには言葉を理解する知能はあったが、自由意思はもたせなかった。
自我はあったが、藍染の言いなりになるように作られた。
「さぁいけ、私のかわいい息子よ。そのネクロマンサーの力で、血の帝国を荒らし、始祖とその血族京楽を引き付けて、封印するのだ!」
「はい、お父様」
もう、ラニとレニのような失敗は繰り返さない。
そう藍染は心に決めて、息子を成長促進の魔法を使って育てた。
「このネクロマンサーの力で、血の帝国をアンデットで満たして、必ずや始祖浮竹とその血族京楽を封印してみせます」
「いい子だ、ルクレチア」
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血の帝国中で、死んだはずのヴァンパイアがアンデット化して、復活する事件が相次いでいた。
藍染の気配を感じたブラッディ・ネイは、すぐに実の兄である浮竹に知らせて、助力をこうた。
「アンデットが出ているだって?」
「そうなんだ、兄様。中には、村一つを滅ぼすアンデットの群れが確認された。ネクロマンサーの存在が確認されたけど、藍染の匂いがするんだ。あと、魔人ユーハバッハの血の匂いもした」
「藍染の子か何かか」
「多分、そう思う。でも、すでにネクロマンサーで死者だ。騎士団を向かわせたけど、みんな瘴気にやられて倒れてしまった」
ブラッディ・ネイは精鋭の騎士団を失って、今ピンチに陥っていた。
「だから、俺と京楽の出番というわけか」
「毎回毎回、藍染もこりないねぇ」
「ラニとレニの件はまだボクも怒っているんだよ、兄様」
「あの件はすまなかったと思っている」
娘にした藍染の双子の娘ラニとレニは、藍染と通じていた。
浮竹は一度刺され、心臓に魔人ユーハバッハの血液が凝固した宝石を砕かれて入れられて、浮竹そのものに魔人ユーハバッハの意識を宿した。
8人の精霊王たちのお陰でなんとかなったが、もしも精霊王と契約していなかったら、今頃好きなように体をユーハバッハに使われていただろう。
そして、それを誰かに封印されていたに違いない。
「もう、同じ過ちは繰り返さない。東洋の俺から、邪気を払うお札ももらったしな。藍染の手の者にも効くそうだ」
「ああ、浄化のお札だね」
それを聞いて、ブラッディ・ネイが微笑んだ。
「なんだ、浄化のお札。そんなものがあるなら、今回のアンデット事件は兄様に任せていいよね?」
「念のため、白哉、恋次君、ルキア君、一護君、冬獅郎君を借りていく。アンデットはいろんなところに沸いているんだろう?」
「それがね、一直線なんだ。この宮殿に向かって、進んでいる」
「ブラッディ・ネイ、お前を狙っているのか?」
浮竹は、ブラッディ・ネイを見た。
ブラッディ・ネイは首を横に振った。
「分からない。もしそうなら、すでにこの宮殿を襲っているはすだよ」
「多分、僕らをおびき寄せるためじゃないかな」
京楽の言葉に、浮竹は頷いた。
「ブラッディ・ネイ。帝都を封鎖しろ」
「うん。もう準備は整ってるし、侵攻されそうな地域の民の避難も済ませてる」
「ブラッディ・ネイにしてはうまくやってるね」
「余計なお世話だよ、ひげもじゃ」
こうして、浮竹と京楽は、白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎たちと共に、アンデットの群れと対峙するのであった。
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アンデットは、たいていがスケルトンだったが、グールやゾンビもいた。
下位の低級アンデットの群れではあるが、数が数だけに、帝国の騎士団が瘴気に飲まれて倒れるのが分かるほど、空気が淀んで濁っていた。
「神の息吹を。ゴッドブレス!」
ルキアが、瘴気を祓う魔法を唱えてくれた。
「いくぜ、うおおおお!」
恋次は竜化して、炎のドラゴンブレスで敵を焼き払う。
白哉は避難していない者がいないか確かめていた。
ルキアは常に清浄な空気を維持するのに手いっぱいで、その守りは一護と冬獅郎に任せていた。
「お札・・・・始めて使うが、効いてくれよ」
浮竹が手にしたお札は、邪気を払い浄化の力のある護符だった。東洋の浮竹からもらったものだった。
光が満ちた。
お札の光を浴びたアンデットの軍団が、ボロボロと灰となっていく。
「効いてるね!今だよ!」
恋次が、ドラゴンブレスで、アンデットの軍隊の中央にいたボスであろうネクロマンサーを攻撃した。
「笑止!この程度の炎で焼かれる俺ではない。俺の名はルクレチア。藍染様の息子にして、お前たちを屠る者だ!」
ルクレチアは、ネクロマンサーであると同時に、すでに死者であった。
「浄化の札か。厄介な・・・・・・」
浮竹は、真っ赤なヴァンパイアの翼を広げて、お札でアンデットの軍隊を少しずつ小さくしていいく。
長く行列ができていたアンデットたちは、今は丸い円形に追い込まれていた。
「京楽、チェンジだ。お札をもって、更にアンデットを消してくれ」
「分かったよ」
浮竹が、京楽にお札を渡し、今度は京楽が浄化の護符でアンデットを葬っていった。
「おのれ、始祖浮竹!その血族京楽め!」
ネクロマンサーは、呪いの言霊を吐くが、それは反射された。
「まぶしい・・・・」
お札の効果で、それまでネクロマンサーの体を守っていた瘴気が、消えた。
「いけ、フェニックス!」
浮竹は炎の最高位精霊フェニックスを呼ぶと、ネクロマンサーを攻撃した。
「はははは!俺に炎は効かぬ!魔人ユーハバッハの血を注がれた俺に、魔法など効かぬ!
だが、かすかにルクレチアの顔に罅が入った。
「これしきの傷!」
瘴気を生み出し、ルクレチアは傷を癒してしまった。
「いけ、不死の軍団たちよ!」
だが、ルクレチアの操るアンデットたちは、次々と灰になっていく。
「ええい、浄化の札など、こうしてくれる!」
瘴気を、浄化の札にあてた。
浄化の札は、その瘴気も浄化した。
「くそ、くそおおお!!」
ルクレチアは、悔しそうに叫んで、自分の血をアンデットたちに与えた。
「これで、我が軍はそのような札など、効かぬ!」
「そうか?じゃあこれならどうだ!」
浮竹は、浄化の札を中心にして、またもや炎の最高位精霊フェニックスを召還すると、その破壊と再生の炎に、浄化の炎が足されて、アンデットたちを燃やしていった。
「そんなばかな!」
ルクレチアを覆っていた瘴気が、取り払われる。
「いけ、京楽!」
「おおおお!!」
ミスリル銀の魔剣に、聖属性を付与させて、京楽はルクレチアを袈裟懸けに斬った。
ぶわりと濃い瘴気にあてられて、京楽が怯む。
「おのれ、おのれ!!!」
傷口を再生させながら、ルクレチアは、また瘴気に潜んだ。
いつの間にか、アンデットの群れは消えていた。
ルクレチアが吸収したのだ。
浮竹は、手元に戻ってきたお札で、再び瘴気を祓う。
「ぬおおおおおおお」
ルクレチアは吠えた。
その血が溢れるたびに、地面から強化されたアンデットが這い出してきた。
「どうやら、お札の効果も魔人ユーハバッハには決定的には効かないようだね」
「でも、弱らせることには成功している!」
強化されたアンデットたちは、白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎でなんとかしてくれていた。
「俺たちは、とにかくあの親玉を叩こう!」
「分かったよ!」
浮竹と京楽は、互いの魔力を練り、うねらせて、槍の形を形成した。
それに、お札の効果をエンチャントする。
更に、フェニックスの炎を纏わせて、その上からもお札の効果をエンチャントした。
二重のお札の効果と、破壊と再生を司る精霊の炎と、純粋な魔力槍が、ルクレチアめがけて射出された。
まずはお札の効果で、瘴気を祓い、次の炎で肉体を焼き、更にお札の効果でに腐肉を更に焼いて、露出した心臓部のコアめがけて、純粋な魔力の槍が貫いた。
「おおおおお!!」
「うおおおおお!!」
浮竹と京楽は、純粋な魔力の槍に更に魔力をこめた。
「藍染様・・・・父様、俺は・・・・・・」
どさりと、ルクレチアは倒れた。
「俺は・・・・あなたに、愛され・・・たかった・・・・・」
ボロボロと灰となっていくルクレチアを、浮竹と京楽が哀しそうに見ていた。
「今度生まれ変わってきたら、世界を自由に羽ばたく鳥になるといい」
そう言って、浮竹は鳥の形をした式神を、崩れていくルクレチアの傍に置いた。
「鳥に・・・・俺は、鳥になる・・・・」
ボロボロと崩れていくルクレチアの体からかけたコアの一部が式に宿り、式は意思をもった小鳥となって青空に羽ばたいていった。
「いいの、浮竹。コアの一部を宿らせちゃったよ」
「大丈夫だ。あの式は、お札で清めておいたから、邪悪な存在だと宿れない」
「あのネクロマンサーの子は、元々はネクロマンサーじゃなかったんだね」
「きっと、藍染の息子として生まれてきて、魔人ユーハバッハの血のせいで、ネクロマンサーになったんだろう」
「無事ですか、浮竹殿、京楽殿!」
心配してかけつけてきたルキアに、京楽がその場に座りこんだ。
「ごめん、ルキアちゃん、魔力回復の魔法をかけて。浮竹と魔力を練り合わせて槍を作ったけど、ごっそり魔力をもっていかれて、魔力切れだよ」
「あの程度で音をあげるなど、情けないぞ京楽」
「そうは言ってもねぇ。君の体に精霊神が入った後で、君は爆発的に魔力をあげた。あいにく、こっちはそこまで魔力はないよ。君の3分の1くらいだ」
「前は2分の1といっていただろう」
「それだけ、君が強くなたってことさ」
ルキアから魔力回復の魔法を受けながら、飛び立っていった鳥が大空を旋回し、青い羽毛が降ってきた。
「おやすみ、ルクレチア。いい夢を」
青い小鳥となり、世界へ自由に羽ばたいていくルクレチアを、皆見上げていた。
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「今日は、皆に勝利を祝して、俺の手料理を振舞ってやる」
「ええ、浮竹殿の手料理ですか!?」
ルキアが顔を輝かせた。
「お前、料理なんてできたのか?」
「こら、冬獅郎、失礼だろうが!浮竹さん、うちの冬獅郎がすみません」
「京楽?」
浮竹は、京楽の名を呼んだ。
「一番に、お前に食べてほしいんだが」
「ブラッディ・ネイ!乱菊ちゃんの毒消しポーションとかある!?」
「あるが、それがどうかしたの?」
「みんなの分を用意しといて。あと胃腸薬も」
「兄様の手料理くらいで、大げさな・・・・・」
「今日は、海鮮パスタにしてみた」
その物体を見た、皆が顔を青くした。
パスタが青くてビチビチはねていた。
海鮮というが、貝はどす黒く、エビはショッキングピンクだった。
「た、食べてみないと味は分からないからな」
そう言って恋次は一口食べて、倒れた。
白哉もルキアも一護も冬獅郎も、みんな食べて倒れた。
「あれ、おかしいなぁ。マンドレイクぶちこんで、他にもいろいろぶち込んで茹でただけなんさが」
浮竹は、自分で味見してみた。
「うん、うまい。ブラッディ・ネイもどうだ?」
「に、兄様の手料理なら喜んで!」
青い顔をしながら、ブラッディ・ネイは一口食べて泡をふいた。
「きゃああ、ブラッディ・ネイ様が!」
「しっかりして!」
寵姫たちが、慌ただしく医者を呼んできた。
医者は、みんなの容態を見て、次に浮竹の手料理を見た。
「これはなんとも・・・・」
一応、浮竹はブラッディ・ネイの実の兄なので、皇族ということになっている。
不敬なことは言えなくて、困っているところに京楽がかけつけてきた。
「あああ、またやってる!」
「京楽、皆が俺の料理を口にして、倒れたんだ。どこかで毒でも盛られていたのだろうか?」
君の料理のせいだとは言えなくて、京楽は言葉を濁す。
「ああ、医者がきてたの。みんなにこのポーションと胃腸薬を飲ませて」
城に備蓄されていた、乱菊の薬をもって、かけつけてきたのだ。
医者は、それらを皆に飲ませたが、味のショックからか、皆はまだ倒れてうーんうーんとうなっていた。
「京楽なら、俺の手料理、残さず食ってくれるよな?」
キラキラした期待の眼差しで見られて、京楽は覚悟を決めて浮竹の海鮮パスタを口にした。
かっと目を見開いた。
その姿のまま、京楽は気絶していた。
この件があり、浮竹は宮殿のキッチンに出入り禁止の令を、ブラッディ・ネイに受けることになるのだった。
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