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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

西洋の浮竹と京楽は、東洋の浮竹と京楽の元に遊びに来ていた。

「遊園地にいきたい。このパンフレットに書いてある、ジェットコースタートやらに乗りたい」

そう、西洋の浮竹は言い出した。

「ごめんね。浮竹ってば、遊園地に行きたいとって聞かなくてね」

(お、今回は貸し切りじゃないのか?)

(いつもほいほい貸し切りにしてたら、お金がもたないよ)

(それもそうだな)

「いや、貸し切りにしようかと思って交渉してみたが、駄目だった。他のお客さんがいっぱいくるからと言われた」

しょぼんと落ち込む西洋の浮竹に、東洋の浮竹はその頭を撫でた。

いつもとは正反対であった。

(人がいっぱいいて賑わっている遊園地もきっと楽しいぞ)

「そうか?そうだな。人で賑わっている中ではしゃぐのも楽しいかもな」

西洋の浮竹はすぐに調子を取り戻して、4人分のお弁当をそれぞれ西洋と東洋の京楽が作って、出発となった。

電車で揺られること1時間。

目的の遊園地についた。

人がたくさんいた。

「あ、あったあれだ!東洋の俺、並ぼう!」

西洋の浮竹が、ジェットコースターを指さした。東洋の浮竹の手を握り、列に並んだ。

平日なので、まだ人ごみは少ないほうであった。

ジェットコースターの列に並んで、西洋の浮竹はわくわくしていた。東洋の浮竹も、ドキドキしてきた。

やがて順番がきて、ジェットコースターに乗りこんだ。

「うわああああああ」

(わああああああ)

両方の浮竹は、その勢いに叫び声をあげていた。

「落ちる、落ちる!」

(大丈夫だ。ちゃんと落ちないようになっている)

「のわああああああああ」

西洋の浮竹は、悲鳴をあげながらも楽しんでいた。

東洋の浮竹も楽しんでいた。

ただ、西洋と東洋の京楽は青い顔をしていた。

「ぎゃあああああ」

(うわわわ)

ジェットコースターから降りる頃には、西洋と東洋の京楽はぐったりとなっていた。

「京楽、お前たちはああいうの苦手なのか」

「高いところは別に平気だよ。でもあのスピードでぐるぐる回られたら、気分が悪くなる」

(ボクは、純粋に高いところがだめだよ)

「なら、無理して付き合ってくれなくてもよかったんだぞ?」

(そうだぞ、春水)

(君を一人で行かせれないからね)

「右に同じく」

しばらく休憩してから、4人はミラーハウスに入り、鏡にぶつかったりしながら、クリアした。

「あれ、これも鏡か。こっちも鏡・・・えええい、ライトニング・・・ムガーー」

魔法をぶっぱしそうになった西洋の浮竹を、西洋の京楽が口を封じてなんとか凌いだ。

「こっちの世界で魔法は禁止だよ」

「すまん。つい癖で魔法を使いそうになる」

(魔法はだめだぞ、西洋の俺)

「ああ、分かった」

(物わかりが早くて助かるね)

絶叫ものは避けて、メリーゴーランドやコーヒーカップに乗った。

ちなみに、西洋の浮竹はコーヒーカップを回し過ぎて、目を回していた。

「あああ・・・・星が回ってる」

「あんなにコーヒーカップを回すからだよ」

(ちょうどいいし、お昼休憩にしようか)

4人は休憩所でお昼を食べることにした。

「うまいな。京楽たちの作った弁当だけあって、おいしい」

(うん、おいしいな)

サンドイッチを中心に、卵焼き、焼いたしゃけ、ウィンナー、ポテトサラダ、カレーコロッケ、唐揚げが入っていた。

「口に合うならよかったよ」

(ウィンナーはたこさんにしておいたよ。ああ、十四郎ほっぺについてる)

東洋の京楽は、東洋の浮竹のほっぺたについていた米粒をとって、自分で食べてしまった。

それに、東洋の浮竹は真っ赤になっていた。

それを見た西洋の京楽は、わざと自分のほっぺたにご飯粒をつけた。

「京楽、ついてるぞ」

そう言って、ハンカチで思い切りごしごしふかれて、西洋の浮竹はちょっとがっかりしていた。

「ああ、僕の浮竹はやっぱり浮竹だね」

「何を言っている」

ポテトサラダを頬張って、西洋の浮竹は西洋の京楽の顔をのぞきこんだ。

「顔が赤いな。熱でもあるのか?」

額と額をくっつけられて、西洋の京楽は嬉しそうにしていた。

「熱もないし、それだけ元気そうなら大丈夫だな、次はお化けや屋敷に行こう」

昼食を食べ終えた4人は、お化け屋敷の列に並んだ。

お化け屋敷は大がかりの仕掛けがしてあったが、妖である東洋の浮竹と京楽は平気そうで、西洋の浮竹と京楽も、モンスターのいるような世界に住んでいるせいで、平気だった。

「本物の幽霊でも出てこないと、怖くないな。まぁ、本物の幽霊が出ても成仏させるだけだが」

「幽霊なんか出てきたら困るよ。成仏させるのに時間かかりそう」

西洋の浮竹と京楽は、そんなことを言っていた。

(妖怪に慣れているせいか、ちっとも怖くなかった。でも、それなりに面白かった)

(お化け屋敷から幽霊が定番だろうけど、その幽霊を生身の人間がしてるんじゃねぇ)

東洋の浮竹と京楽は、怖くはないが、それなりに楽しんでいるようだった。

お化け屋敷の外は人込みに紛れており、西洋の浮竹は西洋の京楽を探した。

「おい、そっちに京楽はいなかったか?」

(いや、見てないぞ)

(僕も見てないね)

「まさか、迷子?」

3人は、西洋の京楽を探したが、一向に見つからなかった。

「仕方ない、迷子のお知らせしてもらおう」

(それってけっこう恥ずかしいような)

(確かに恥ずかしいね)

「俺のところの京楽は、こっちの世界には慣れていないからな。迷子のお知らせをしてもらったほうが早く見つかる」

西洋の浮竹は、西洋の京楽の恥ずかしさなど知ったことではないと、迷子センターに向かった。



その頃西洋の京楽はというと、西洋の浮竹と東洋の浮竹と京楽を見失ってしまい、一人途方にくれていた。

「どうしよう」

きょろきょろと3人の姿を探すが、完全にはぐれてしまった。

魔力で探知しようにも、人が多すぎて無理だった。


その頃。

西洋の浮竹と、東洋の浮竹と京楽は迷子センターに来ていた。

「ここにもいない。呼び出してもらおう」

ピンポンパーン。

音がした。

「迷子のお知らせです。西洋の京楽様、迷子になられているので、お連れの方が迷子センターにまで来ています。どうぞ、迷子センターにおこしください」

場内アナウンスで迷子だと言われて、西洋の京楽は火が出るほど恥ずかしくなった。

穴があったら入りたいとは、このことだろうか。

道を歩いている人に尋ねて、迷子センターの場所を教えてもらうと、西洋の浮竹は駆け足で急いだ。

「迷子のお知らせです。西洋の京楽様を探しています。年齢は・・・」

「ああもう、そんな放送しないで!」

真っ赤になりながら、西洋の京楽は迷子センターにまでやってきた。

「京楽、探したんだぞ」

(よかった、見つかって)

(迷子の放送をされた気分はどうだい?)

「穴があったら入りたいほどに恥ずかしい」

そんな西洋の京楽に、3人とも笑って、見つかってよかったと安堵した。

遊園地を一通り回って、最後に観覧車に乗ることにした。

「東洋の京楽は、高いところがだめなのだろう?待っているか?」

(ううん、十四郎と一緒に乗るよ)

「そうか。じゃあ俺は京楽と一緒に乗ろう。なんでも、一番てっぺんでキスすると、永遠の恋人同士になれるそうだぞ」

「何そのジンクス。早く乗ろう!」

西洋の京楽は、西洋の浮竹の手をとって観覧車に乗った。

その次の観覧車に、東洋の浮竹と京楽が乗り込んだ。


てっぺんにまでくると、西洋の京楽は西洋の浮竹にディープキスをかましていた。

「んんっ」

牙を伸ばされて、吸血までされた。

「んあっ」

何処からかハリセンを取り出すと、それで西洋の京楽の頭を殴った。

「盛るな!」

「ええ、でもてっぺんですると結ばれるんでしょう?もう結ばれてるけど」

西洋の浮竹は赤くなって、何度もスパンスパンと西洋の京楽の頭を殴るのであった。

一方、東洋の浮竹と京楽は、てっぺんにくると、まずその景色を楽しんだ。

それから、啄むような優しいキスを、東洋の京楽は東洋の浮竹に与えた。

(こんなことしなくても、ボクたちは永遠の恋人同士だけどね)

(春水、恥ずかしいからそのへんで止めてくれ)

東洋の浮竹は、真っ赤になって、でも東洋の京楽の胸の中にいるのだった。


「どうだった?こっちは盛ってきたから、成敗した」

「グスン」

ハリセンで叩かれたようで、西洋の京楽は自分の頭を撫でていた。

「浮竹ってば酷いんだよ。ちょっとディープキスして吸血したくらいで・・・・」

「ばか、それは夜の誘いになるって知っててやったんだろうが!」

「えへへへ」

「えへへじゃない」

スパーン。

西洋の京楽は、また西洋の浮竹にハリセンでしばかれていた。


(ボクたちは、普通だったよ。てっぺんでキスはしたけど)

(わーわー!春水、ばらすな!)

(別にいいじゃない。向こうはもっとすごいことになってたみたいだし)

「うん、凄かった。乱れてる浮竹って、色っぽくて・・・」

「京楽、一度灰になるか?」

ゴゴゴゴと、怒った西洋の浮竹に謝りまくって、西洋の京楽はなんとか許してもらった。

夕方になり、遊園地のレストラン夕食をとった。

値段は少し高かったが、そこそこのおいしさだった。

(この後、7時から花火があがるんだ)

「花火!」

西洋の浮竹には、かなり無縁の代物で、花火大会やら普通の家庭でする花火も好きだった。

「浮竹ってば、花火が大好きだからね」

(そうなのか、西洋の俺)

「ああ。あの花のように色鮮やかに咲いて、すぐに散ってしまう風情が好きだ」

(じゃあ、特等席用意しないとね)

東洋の京楽の言葉に、皆頷いた。

ひゅるるるるぱぁあぁん。

ひゅるるるぱああぁあん。

打ちあげられていく花火を、建物の屋上から見ていた。

「綺麗だな・・・・」

「うん、綺麗だね」

(僕の十四郎には負けるけどね)

(こら春水、今は花火を楽しめ!)

(ちゃんと楽しんでるよ?)

(じゃあなんで俺の顔ばっか見ている)

(キミの瞳に映った花火を、見ているの)

「熱いな」

「わあ、熱いなぁ」

西洋の浮竹と京楽は、純粋に花火を見上げて楽しみながら、東洋の二人の邪魔はすまいと、少し離れた。

花火は15分ほど続き、終わってしまった。

「帰ろうか。最後のいいものが見れた。花火を目にするのは数年ぶりだ」

「付き合ってくれてありがとうね、東洋の僕と浮竹」

(いや、こっちこそありがとう。おかげですごく楽しかった)

(うん。こんな一日も悪くないね)

4人は、満足して雑居ビルまで戻った。

ちなみに帰りは、西洋の浮竹もちでタクシーだった。

何気に一万円札を渡し、釣りはいらないと言った。

(今度、外で花大会しようか)

「家庭用の、花火か?」

(うん)

「いいな、それ。俺も混ざってもいいか?」

(もちろんだよ。むしろは花火が好きって君のためにやるんだから、是非参加して)

西洋の浮竹は、ほろりとなって、東洋の自分の頭を撫でた。

「東洋の俺はいいやつだな。いや、そんなこと最初から分かってたけど」

「えへへへ」

撫でられて、褒められて、東洋の浮竹は恥ずかしそうにしていた。

「おっと、もうこんな時間だ。浮竹、そろそろ帰るよ」

「ええ、もうちょっといたい」

「ミミックのポチに餌あげてないでしょ」

「そうだった。あ、東洋の俺からもった金魚は元気にしているぞ。血を与えたから、元気すぎるくらいだ」

(それはよかった)

(ふあ・・・・ボク、眠くなってきちゃった)

時刻は0時をまわりそうだった。

「じゃあ、また。元気でな!」

「元気でね!」

(西洋の俺も、元気でな!)

(西洋のボクも、達者でいてよね)

そうして別れをすませて、二人は去っていった。


「ポチ、えさだぞ~~~」

「るるるるーーー」

ミミックのポチは、浮竹の上半身に噛みついた。

「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよ~~~~」

「何やってるのさ、浮竹」

「ポチがあらぶってる」

ポチから浮竹を救出して、京楽はぽちの頭を撫でた。

「るるる」

がぶりと噛まれて、京楽は手をさすった。

「ほら、ポチの大好物のドラゴンステーキだぞー」

「るるっるるーーーーーーーー♪」

ポチは、浮竹の手ごとかじりついた。

でも、綺麗にドラゴンステーキだけを持って行った。

「かわいいなぁ、ポチは」

「世界中を探しても、ミミックを飼ってるのは君くらいだよ」

「何せ、ミミック教の教祖様でもあられるからな」

ポチの頭を、浮竹は撫でた。

ポチは噛みつかなかった。

「また、むこうに遊びにいこうな、京楽」

「うん。今回は手土産とかなかったから、何か作ってもっていくよ」

そんなことを話し合い、風呂に入って天蓋つきのベッドで一緒に就寝した。

夢の中で、ポチと花火をしていた。

「んーポチ、むにゃむにゃ」

東洋の浮竹と京楽もでてきた。

肝心の西洋の京楽は、なぜか水を汲んだバケツだったりするのだった。

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