始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝
西洋の浮竹と京楽は、東洋の浮竹と京楽の元に遊びに来ていた。
「遊園地にいきたい。このパンフレットに書いてある、ジェットコースタートやらに乗りたい」
そう、西洋の浮竹は言い出した。
「ごめんね。浮竹ってば、遊園地に行きたいとって聞かなくてね」
(お、今回は貸し切りじゃないのか?)
(いつもほいほい貸し切りにしてたら、お金がもたないよ)
(それもそうだな)
「いや、貸し切りにしようかと思って交渉してみたが、駄目だった。他のお客さんがいっぱいくるからと言われた」
しょぼんと落ち込む西洋の浮竹に、東洋の浮竹はその頭を撫でた。
いつもとは正反対であった。
(人がいっぱいいて賑わっている遊園地もきっと楽しいぞ)
「そうか?そうだな。人で賑わっている中ではしゃぐのも楽しいかもな」
西洋の浮竹はすぐに調子を取り戻して、4人分のお弁当をそれぞれ西洋と東洋の京楽が作って、出発となった。
電車で揺られること1時間。
目的の遊園地についた。
人がたくさんいた。
「あ、あったあれだ!東洋の俺、並ぼう!」
西洋の浮竹が、ジェットコースターを指さした。東洋の浮竹の手を握り、列に並んだ。
平日なので、まだ人ごみは少ないほうであった。
ジェットコースターの列に並んで、西洋の浮竹はわくわくしていた。東洋の浮竹も、ドキドキしてきた。
やがて順番がきて、ジェットコースターに乗りこんだ。
「うわああああああ」
(わああああああ)
両方の浮竹は、その勢いに叫び声をあげていた。
「落ちる、落ちる!」
(大丈夫だ。ちゃんと落ちないようになっている)
「のわああああああああ」
西洋の浮竹は、悲鳴をあげながらも楽しんでいた。
東洋の浮竹も楽しんでいた。
ただ、西洋と東洋の京楽は青い顔をしていた。
「ぎゃあああああ」
(うわわわ)
ジェットコースターから降りる頃には、西洋と東洋の京楽はぐったりとなっていた。
「京楽、お前たちはああいうの苦手なのか」
「高いところは別に平気だよ。でもあのスピードでぐるぐる回られたら、気分が悪くなる」
(ボクは、純粋に高いところがだめだよ)
「なら、無理して付き合ってくれなくてもよかったんだぞ?」
(そうだぞ、春水)
(君を一人で行かせれないからね)
「右に同じく」
しばらく休憩してから、4人はミラーハウスに入り、鏡にぶつかったりしながら、クリアした。
「あれ、これも鏡か。こっちも鏡・・・えええい、ライトニング・・・ムガーー」
魔法をぶっぱしそうになった西洋の浮竹を、西洋の京楽が口を封じてなんとか凌いだ。
「こっちの世界で魔法は禁止だよ」
「すまん。つい癖で魔法を使いそうになる」
(魔法はだめだぞ、西洋の俺)
「ああ、分かった」
(物わかりが早くて助かるね)
絶叫ものは避けて、メリーゴーランドやコーヒーカップに乗った。
ちなみに、西洋の浮竹はコーヒーカップを回し過ぎて、目を回していた。
「あああ・・・・星が回ってる」
「あんなにコーヒーカップを回すからだよ」
(ちょうどいいし、お昼休憩にしようか)
4人は休憩所でお昼を食べることにした。
「うまいな。京楽たちの作った弁当だけあって、おいしい」
(うん、おいしいな)
サンドイッチを中心に、卵焼き、焼いたしゃけ、ウィンナー、ポテトサラダ、カレーコロッケ、唐揚げが入っていた。
「口に合うならよかったよ」
(ウィンナーはたこさんにしておいたよ。ああ、十四郎ほっぺについてる)
東洋の京楽は、東洋の浮竹のほっぺたについていた米粒をとって、自分で食べてしまった。
それに、東洋の浮竹は真っ赤になっていた。
それを見た西洋の京楽は、わざと自分のほっぺたにご飯粒をつけた。
「京楽、ついてるぞ」
そう言って、ハンカチで思い切りごしごしふかれて、西洋の浮竹はちょっとがっかりしていた。
「ああ、僕の浮竹はやっぱり浮竹だね」
「何を言っている」
ポテトサラダを頬張って、西洋の浮竹は西洋の京楽の顔をのぞきこんだ。
「顔が赤いな。熱でもあるのか?」
額と額をくっつけられて、西洋の京楽は嬉しそうにしていた。
「熱もないし、それだけ元気そうなら大丈夫だな、次はお化けや屋敷に行こう」
昼食を食べ終えた4人は、お化け屋敷の列に並んだ。
お化け屋敷は大がかりの仕掛けがしてあったが、妖である東洋の浮竹と京楽は平気そうで、西洋の浮竹と京楽も、モンスターのいるような世界に住んでいるせいで、平気だった。
「本物の幽霊でも出てこないと、怖くないな。まぁ、本物の幽霊が出ても成仏させるだけだが」
「幽霊なんか出てきたら困るよ。成仏させるのに時間かかりそう」
西洋の浮竹と京楽は、そんなことを言っていた。
(妖怪に慣れているせいか、ちっとも怖くなかった。でも、それなりに面白かった)
(お化け屋敷から幽霊が定番だろうけど、その幽霊を生身の人間がしてるんじゃねぇ)
東洋の浮竹と京楽は、怖くはないが、それなりに楽しんでいるようだった。
お化け屋敷の外は人込みに紛れており、西洋の浮竹は西洋の京楽を探した。
「おい、そっちに京楽はいなかったか?」
(いや、見てないぞ)
(僕も見てないね)
「まさか、迷子?」
3人は、西洋の京楽を探したが、一向に見つからなかった。
「仕方ない、迷子のお知らせしてもらおう」
(それってけっこう恥ずかしいような)
(確かに恥ずかしいね)
「俺のところの京楽は、こっちの世界には慣れていないからな。迷子のお知らせをしてもらったほうが早く見つかる」
西洋の浮竹は、西洋の京楽の恥ずかしさなど知ったことではないと、迷子センターに向かった。
その頃西洋の京楽はというと、西洋の浮竹と東洋の浮竹と京楽を見失ってしまい、一人途方にくれていた。
「どうしよう」
きょろきょろと3人の姿を探すが、完全にはぐれてしまった。
魔力で探知しようにも、人が多すぎて無理だった。
その頃。
西洋の浮竹と、東洋の浮竹と京楽は迷子センターに来ていた。
「ここにもいない。呼び出してもらおう」
ピンポンパーン。
音がした。
「迷子のお知らせです。西洋の京楽様、迷子になられているので、お連れの方が迷子センターにまで来ています。どうぞ、迷子センターにおこしください」
場内アナウンスで迷子だと言われて、西洋の京楽は火が出るほど恥ずかしくなった。
穴があったら入りたいとは、このことだろうか。
道を歩いている人に尋ねて、迷子センターの場所を教えてもらうと、西洋の浮竹は駆け足で急いだ。
「迷子のお知らせです。西洋の京楽様を探しています。年齢は・・・」
「ああもう、そんな放送しないで!」
真っ赤になりながら、西洋の京楽は迷子センターにまでやってきた。
「京楽、探したんだぞ」
(よかった、見つかって)
(迷子の放送をされた気分はどうだい?)
「穴があったら入りたいほどに恥ずかしい」
そんな西洋の京楽に、3人とも笑って、見つかってよかったと安堵した。
遊園地を一通り回って、最後に観覧車に乗ることにした。
「東洋の京楽は、高いところがだめなのだろう?待っているか?」
(ううん、十四郎と一緒に乗るよ)
「そうか。じゃあ俺は京楽と一緒に乗ろう。なんでも、一番てっぺんでキスすると、永遠の恋人同士になれるそうだぞ」
「何そのジンクス。早く乗ろう!」
西洋の京楽は、西洋の浮竹の手をとって観覧車に乗った。
その次の観覧車に、東洋の浮竹と京楽が乗り込んだ。
てっぺんにまでくると、西洋の京楽は西洋の浮竹にディープキスをかましていた。
「んんっ」
牙を伸ばされて、吸血までされた。
「んあっ」
何処からかハリセンを取り出すと、それで西洋の京楽の頭を殴った。
「盛るな!」
「ええ、でもてっぺんですると結ばれるんでしょう?もう結ばれてるけど」
西洋の浮竹は赤くなって、何度もスパンスパンと西洋の京楽の頭を殴るのであった。
一方、東洋の浮竹と京楽は、てっぺんにくると、まずその景色を楽しんだ。
それから、啄むような優しいキスを、東洋の京楽は東洋の浮竹に与えた。
(こんなことしなくても、ボクたちは永遠の恋人同士だけどね)
(春水、恥ずかしいからそのへんで止めてくれ)
東洋の浮竹は、真っ赤になって、でも東洋の京楽の胸の中にいるのだった。
「どうだった?こっちは盛ってきたから、成敗した」
「グスン」
ハリセンで叩かれたようで、西洋の京楽は自分の頭を撫でていた。
「浮竹ってば酷いんだよ。ちょっとディープキスして吸血したくらいで・・・・」
「ばか、それは夜の誘いになるって知っててやったんだろうが!」
「えへへへ」
「えへへじゃない」
スパーン。
西洋の京楽は、また西洋の浮竹にハリセンでしばかれていた。
(ボクたちは、普通だったよ。てっぺんでキスはしたけど)
(わーわー!春水、ばらすな!)
(別にいいじゃない。向こうはもっとすごいことになってたみたいだし)
「うん、凄かった。乱れてる浮竹って、色っぽくて・・・」
「京楽、一度灰になるか?」
ゴゴゴゴと、怒った西洋の浮竹に謝りまくって、西洋の京楽はなんとか許してもらった。
夕方になり、遊園地のレストラン夕食をとった。
値段は少し高かったが、そこそこのおいしさだった。
(この後、7時から花火があがるんだ)
「花火!」
西洋の浮竹には、かなり無縁の代物で、花火大会やら普通の家庭でする花火も好きだった。
「浮竹ってば、花火が大好きだからね」
(そうなのか、西洋の俺)
「ああ。あの花のように色鮮やかに咲いて、すぐに散ってしまう風情が好きだ」
(じゃあ、特等席用意しないとね)
東洋の京楽の言葉に、皆頷いた。
ひゅるるるるぱぁあぁん。
ひゅるるるぱああぁあん。
打ちあげられていく花火を、建物の屋上から見ていた。
「綺麗だな・・・・」
「うん、綺麗だね」
(僕の十四郎には負けるけどね)
(こら春水、今は花火を楽しめ!)
(ちゃんと楽しんでるよ?)
(じゃあなんで俺の顔ばっか見ている)
(キミの瞳に映った花火を、見ているの)
「熱いな」
「わあ、熱いなぁ」
西洋の浮竹と京楽は、純粋に花火を見上げて楽しみながら、東洋の二人の邪魔はすまいと、少し離れた。
花火は15分ほど続き、終わってしまった。
「帰ろうか。最後のいいものが見れた。花火を目にするのは数年ぶりだ」
「付き合ってくれてありがとうね、東洋の僕と浮竹」
(いや、こっちこそありがとう。おかげですごく楽しかった)
(うん。こんな一日も悪くないね)
4人は、満足して雑居ビルまで戻った。
ちなみに帰りは、西洋の浮竹もちでタクシーだった。
何気に一万円札を渡し、釣りはいらないと言った。
(今度、外で花大会しようか)
「家庭用の、花火か?」
(うん)
「いいな、それ。俺も混ざってもいいか?」
(もちろんだよ。むしろは花火が好きって君のためにやるんだから、是非参加して)
西洋の浮竹は、ほろりとなって、東洋の自分の頭を撫でた。
「東洋の俺はいいやつだな。いや、そんなこと最初から分かってたけど」
「えへへへ」
撫でられて、褒められて、東洋の浮竹は恥ずかしそうにしていた。
「おっと、もうこんな時間だ。浮竹、そろそろ帰るよ」
「ええ、もうちょっといたい」
「ミミックのポチに餌あげてないでしょ」
「そうだった。あ、東洋の俺からもった金魚は元気にしているぞ。血を与えたから、元気すぎるくらいだ」
(それはよかった)
(ふあ・・・・ボク、眠くなってきちゃった)
時刻は0時をまわりそうだった。
「じゃあ、また。元気でな!」
「元気でね!」
(西洋の俺も、元気でな!)
(西洋のボクも、達者でいてよね)
そうして別れをすませて、二人は去っていった。
「ポチ、えさだぞ~~~」
「るるるるーーー」
ミミックのポチは、浮竹の上半身に噛みついた。
「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよ~~~~」
「何やってるのさ、浮竹」
「ポチがあらぶってる」
ポチから浮竹を救出して、京楽はぽちの頭を撫でた。
「るるる」
がぶりと噛まれて、京楽は手をさすった。
「ほら、ポチの大好物のドラゴンステーキだぞー」
「るるっるるーーーーーーーー♪」
ポチは、浮竹の手ごとかじりついた。
でも、綺麗にドラゴンステーキだけを持って行った。
「かわいいなぁ、ポチは」
「世界中を探しても、ミミックを飼ってるのは君くらいだよ」
「何せ、ミミック教の教祖様でもあられるからな」
ポチの頭を、浮竹は撫でた。
ポチは噛みつかなかった。
「また、むこうに遊びにいこうな、京楽」
「うん。今回は手土産とかなかったから、何か作ってもっていくよ」
そんなことを話し合い、風呂に入って天蓋つきのベッドで一緒に就寝した。
夢の中で、ポチと花火をしていた。
「んーポチ、むにゃむにゃ」
東洋の浮竹と京楽もでてきた。
肝心の西洋の京楽は、なぜか水を汲んだバケツだったりするのだった。
「遊園地にいきたい。このパンフレットに書いてある、ジェットコースタートやらに乗りたい」
そう、西洋の浮竹は言い出した。
「ごめんね。浮竹ってば、遊園地に行きたいとって聞かなくてね」
(お、今回は貸し切りじゃないのか?)
(いつもほいほい貸し切りにしてたら、お金がもたないよ)
(それもそうだな)
「いや、貸し切りにしようかと思って交渉してみたが、駄目だった。他のお客さんがいっぱいくるからと言われた」
しょぼんと落ち込む西洋の浮竹に、東洋の浮竹はその頭を撫でた。
いつもとは正反対であった。
(人がいっぱいいて賑わっている遊園地もきっと楽しいぞ)
「そうか?そうだな。人で賑わっている中ではしゃぐのも楽しいかもな」
西洋の浮竹はすぐに調子を取り戻して、4人分のお弁当をそれぞれ西洋と東洋の京楽が作って、出発となった。
電車で揺られること1時間。
目的の遊園地についた。
人がたくさんいた。
「あ、あったあれだ!東洋の俺、並ぼう!」
西洋の浮竹が、ジェットコースターを指さした。東洋の浮竹の手を握り、列に並んだ。
平日なので、まだ人ごみは少ないほうであった。
ジェットコースターの列に並んで、西洋の浮竹はわくわくしていた。東洋の浮竹も、ドキドキしてきた。
やがて順番がきて、ジェットコースターに乗りこんだ。
「うわああああああ」
(わああああああ)
両方の浮竹は、その勢いに叫び声をあげていた。
「落ちる、落ちる!」
(大丈夫だ。ちゃんと落ちないようになっている)
「のわああああああああ」
西洋の浮竹は、悲鳴をあげながらも楽しんでいた。
東洋の浮竹も楽しんでいた。
ただ、西洋と東洋の京楽は青い顔をしていた。
「ぎゃあああああ」
(うわわわ)
ジェットコースターから降りる頃には、西洋と東洋の京楽はぐったりとなっていた。
「京楽、お前たちはああいうの苦手なのか」
「高いところは別に平気だよ。でもあのスピードでぐるぐる回られたら、気分が悪くなる」
(ボクは、純粋に高いところがだめだよ)
「なら、無理して付き合ってくれなくてもよかったんだぞ?」
(そうだぞ、春水)
(君を一人で行かせれないからね)
「右に同じく」
しばらく休憩してから、4人はミラーハウスに入り、鏡にぶつかったりしながら、クリアした。
「あれ、これも鏡か。こっちも鏡・・・えええい、ライトニング・・・ムガーー」
魔法をぶっぱしそうになった西洋の浮竹を、西洋の京楽が口を封じてなんとか凌いだ。
「こっちの世界で魔法は禁止だよ」
「すまん。つい癖で魔法を使いそうになる」
(魔法はだめだぞ、西洋の俺)
「ああ、分かった」
(物わかりが早くて助かるね)
絶叫ものは避けて、メリーゴーランドやコーヒーカップに乗った。
ちなみに、西洋の浮竹はコーヒーカップを回し過ぎて、目を回していた。
「あああ・・・・星が回ってる」
「あんなにコーヒーカップを回すからだよ」
(ちょうどいいし、お昼休憩にしようか)
4人は休憩所でお昼を食べることにした。
「うまいな。京楽たちの作った弁当だけあって、おいしい」
(うん、おいしいな)
サンドイッチを中心に、卵焼き、焼いたしゃけ、ウィンナー、ポテトサラダ、カレーコロッケ、唐揚げが入っていた。
「口に合うならよかったよ」
(ウィンナーはたこさんにしておいたよ。ああ、十四郎ほっぺについてる)
東洋の京楽は、東洋の浮竹のほっぺたについていた米粒をとって、自分で食べてしまった。
それに、東洋の浮竹は真っ赤になっていた。
それを見た西洋の京楽は、わざと自分のほっぺたにご飯粒をつけた。
「京楽、ついてるぞ」
そう言って、ハンカチで思い切りごしごしふかれて、西洋の浮竹はちょっとがっかりしていた。
「ああ、僕の浮竹はやっぱり浮竹だね」
「何を言っている」
ポテトサラダを頬張って、西洋の浮竹は西洋の京楽の顔をのぞきこんだ。
「顔が赤いな。熱でもあるのか?」
額と額をくっつけられて、西洋の京楽は嬉しそうにしていた。
「熱もないし、それだけ元気そうなら大丈夫だな、次はお化けや屋敷に行こう」
昼食を食べ終えた4人は、お化け屋敷の列に並んだ。
お化け屋敷は大がかりの仕掛けがしてあったが、妖である東洋の浮竹と京楽は平気そうで、西洋の浮竹と京楽も、モンスターのいるような世界に住んでいるせいで、平気だった。
「本物の幽霊でも出てこないと、怖くないな。まぁ、本物の幽霊が出ても成仏させるだけだが」
「幽霊なんか出てきたら困るよ。成仏させるのに時間かかりそう」
西洋の浮竹と京楽は、そんなことを言っていた。
(妖怪に慣れているせいか、ちっとも怖くなかった。でも、それなりに面白かった)
(お化け屋敷から幽霊が定番だろうけど、その幽霊を生身の人間がしてるんじゃねぇ)
東洋の浮竹と京楽は、怖くはないが、それなりに楽しんでいるようだった。
お化け屋敷の外は人込みに紛れており、西洋の浮竹は西洋の京楽を探した。
「おい、そっちに京楽はいなかったか?」
(いや、見てないぞ)
(僕も見てないね)
「まさか、迷子?」
3人は、西洋の京楽を探したが、一向に見つからなかった。
「仕方ない、迷子のお知らせしてもらおう」
(それってけっこう恥ずかしいような)
(確かに恥ずかしいね)
「俺のところの京楽は、こっちの世界には慣れていないからな。迷子のお知らせをしてもらったほうが早く見つかる」
西洋の浮竹は、西洋の京楽の恥ずかしさなど知ったことではないと、迷子センターに向かった。
その頃西洋の京楽はというと、西洋の浮竹と東洋の浮竹と京楽を見失ってしまい、一人途方にくれていた。
「どうしよう」
きょろきょろと3人の姿を探すが、完全にはぐれてしまった。
魔力で探知しようにも、人が多すぎて無理だった。
その頃。
西洋の浮竹と、東洋の浮竹と京楽は迷子センターに来ていた。
「ここにもいない。呼び出してもらおう」
ピンポンパーン。
音がした。
「迷子のお知らせです。西洋の京楽様、迷子になられているので、お連れの方が迷子センターにまで来ています。どうぞ、迷子センターにおこしください」
場内アナウンスで迷子だと言われて、西洋の京楽は火が出るほど恥ずかしくなった。
穴があったら入りたいとは、このことだろうか。
道を歩いている人に尋ねて、迷子センターの場所を教えてもらうと、西洋の浮竹は駆け足で急いだ。
「迷子のお知らせです。西洋の京楽様を探しています。年齢は・・・」
「ああもう、そんな放送しないで!」
真っ赤になりながら、西洋の京楽は迷子センターにまでやってきた。
「京楽、探したんだぞ」
(よかった、見つかって)
(迷子の放送をされた気分はどうだい?)
「穴があったら入りたいほどに恥ずかしい」
そんな西洋の京楽に、3人とも笑って、見つかってよかったと安堵した。
遊園地を一通り回って、最後に観覧車に乗ることにした。
「東洋の京楽は、高いところがだめなのだろう?待っているか?」
(ううん、十四郎と一緒に乗るよ)
「そうか。じゃあ俺は京楽と一緒に乗ろう。なんでも、一番てっぺんでキスすると、永遠の恋人同士になれるそうだぞ」
「何そのジンクス。早く乗ろう!」
西洋の京楽は、西洋の浮竹の手をとって観覧車に乗った。
その次の観覧車に、東洋の浮竹と京楽が乗り込んだ。
てっぺんにまでくると、西洋の京楽は西洋の浮竹にディープキスをかましていた。
「んんっ」
牙を伸ばされて、吸血までされた。
「んあっ」
何処からかハリセンを取り出すと、それで西洋の京楽の頭を殴った。
「盛るな!」
「ええ、でもてっぺんですると結ばれるんでしょう?もう結ばれてるけど」
西洋の浮竹は赤くなって、何度もスパンスパンと西洋の京楽の頭を殴るのであった。
一方、東洋の浮竹と京楽は、てっぺんにくると、まずその景色を楽しんだ。
それから、啄むような優しいキスを、東洋の京楽は東洋の浮竹に与えた。
(こんなことしなくても、ボクたちは永遠の恋人同士だけどね)
(春水、恥ずかしいからそのへんで止めてくれ)
東洋の浮竹は、真っ赤になって、でも東洋の京楽の胸の中にいるのだった。
「どうだった?こっちは盛ってきたから、成敗した」
「グスン」
ハリセンで叩かれたようで、西洋の京楽は自分の頭を撫でていた。
「浮竹ってば酷いんだよ。ちょっとディープキスして吸血したくらいで・・・・」
「ばか、それは夜の誘いになるって知っててやったんだろうが!」
「えへへへ」
「えへへじゃない」
スパーン。
西洋の京楽は、また西洋の浮竹にハリセンでしばかれていた。
(ボクたちは、普通だったよ。てっぺんでキスはしたけど)
(わーわー!春水、ばらすな!)
(別にいいじゃない。向こうはもっとすごいことになってたみたいだし)
「うん、凄かった。乱れてる浮竹って、色っぽくて・・・」
「京楽、一度灰になるか?」
ゴゴゴゴと、怒った西洋の浮竹に謝りまくって、西洋の京楽はなんとか許してもらった。
夕方になり、遊園地のレストラン夕食をとった。
値段は少し高かったが、そこそこのおいしさだった。
(この後、7時から花火があがるんだ)
「花火!」
西洋の浮竹には、かなり無縁の代物で、花火大会やら普通の家庭でする花火も好きだった。
「浮竹ってば、花火が大好きだからね」
(そうなのか、西洋の俺)
「ああ。あの花のように色鮮やかに咲いて、すぐに散ってしまう風情が好きだ」
(じゃあ、特等席用意しないとね)
東洋の京楽の言葉に、皆頷いた。
ひゅるるるるぱぁあぁん。
ひゅるるるぱああぁあん。
打ちあげられていく花火を、建物の屋上から見ていた。
「綺麗だな・・・・」
「うん、綺麗だね」
(僕の十四郎には負けるけどね)
(こら春水、今は花火を楽しめ!)
(ちゃんと楽しんでるよ?)
(じゃあなんで俺の顔ばっか見ている)
(キミの瞳に映った花火を、見ているの)
「熱いな」
「わあ、熱いなぁ」
西洋の浮竹と京楽は、純粋に花火を見上げて楽しみながら、東洋の二人の邪魔はすまいと、少し離れた。
花火は15分ほど続き、終わってしまった。
「帰ろうか。最後のいいものが見れた。花火を目にするのは数年ぶりだ」
「付き合ってくれてありがとうね、東洋の僕と浮竹」
(いや、こっちこそありがとう。おかげですごく楽しかった)
(うん。こんな一日も悪くないね)
4人は、満足して雑居ビルまで戻った。
ちなみに帰りは、西洋の浮竹もちでタクシーだった。
何気に一万円札を渡し、釣りはいらないと言った。
(今度、外で花大会しようか)
「家庭用の、花火か?」
(うん)
「いいな、それ。俺も混ざってもいいか?」
(もちろんだよ。むしろは花火が好きって君のためにやるんだから、是非参加して)
西洋の浮竹は、ほろりとなって、東洋の自分の頭を撫でた。
「東洋の俺はいいやつだな。いや、そんなこと最初から分かってたけど」
「えへへへ」
撫でられて、褒められて、東洋の浮竹は恥ずかしそうにしていた。
「おっと、もうこんな時間だ。浮竹、そろそろ帰るよ」
「ええ、もうちょっといたい」
「ミミックのポチに餌あげてないでしょ」
「そうだった。あ、東洋の俺からもった金魚は元気にしているぞ。血を与えたから、元気すぎるくらいだ」
(それはよかった)
(ふあ・・・・ボク、眠くなってきちゃった)
時刻は0時をまわりそうだった。
「じゃあ、また。元気でな!」
「元気でね!」
(西洋の俺も、元気でな!)
(西洋のボクも、達者でいてよね)
そうして別れをすませて、二人は去っていった。
「ポチ、えさだぞ~~~」
「るるるるーーー」
ミミックのポチは、浮竹の上半身に噛みついた。
「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよ~~~~」
「何やってるのさ、浮竹」
「ポチがあらぶってる」
ポチから浮竹を救出して、京楽はぽちの頭を撫でた。
「るるる」
がぶりと噛まれて、京楽は手をさすった。
「ほら、ポチの大好物のドラゴンステーキだぞー」
「るるっるるーーーーーーーー♪」
ポチは、浮竹の手ごとかじりついた。
でも、綺麗にドラゴンステーキだけを持って行った。
「かわいいなぁ、ポチは」
「世界中を探しても、ミミックを飼ってるのは君くらいだよ」
「何せ、ミミック教の教祖様でもあられるからな」
ポチの頭を、浮竹は撫でた。
ポチは噛みつかなかった。
「また、むこうに遊びにいこうな、京楽」
「うん。今回は手土産とかなかったから、何か作ってもっていくよ」
そんなことを話し合い、風呂に入って天蓋つきのベッドで一緒に就寝した。
夢の中で、ポチと花火をしていた。
「んーポチ、むにゃむにゃ」
東洋の浮竹と京楽もでてきた。
肝心の西洋の京楽は、なぜか水を汲んだバケツだったりするのだった。
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