始祖なる者、ヴァンパイアマスター33-2
それから、90階層の財宝の間で一晩明かしてから、一気に最深の120階層まで降りた。
120階層のラスボスは、本物にそっくりのコピーだった。
「ちっ、ここまで正確にコピーされるとやりにくい。京楽は補助を。平子が俺を叩け。俺が平子を叩いて、京楽も叩く」
コピーは真っ黒な泥人形でできていたが、持っている魔力から身体能力、魔法までコピーされていた。
「ファイアロンド!」
浮竹のコピーが打ってきた魔法を、平子の魔法がかき消す。
「フレアサークル!」
ごおおおおと燃やされても、浮竹のコピーはぴんぴんしていた。
2時間ほどを費やして、3人はやっとコピーを倒した。
「ああ、もう魔力がすっからかんだ」
「僕もだよ」
「俺もや。魔力切れの時の為に、魔力回復のポーションもってきといたんや。分けたるわ」
「ありがとう、助かる」
「ほんと、助かるよ」
3人は、魔力回復のポーションを飲んだ。
その味のまずさに、水を飲む。
「少しだけ魔力が回復した。これでダンジョンの入り口まで転移できそうだ」
浮竹は、最後の財宝の間をあけた。
金銀財宝から珍しい生き物のはく製、毛皮、貴重なマジックアイテム、それに古代の魔法書があった。
「古代の魔法書がこんなに!見ろ、京楽、平子!」
二人は、魔力切れでポーションで少しは回復したものの、疲れて眠ってしまっていた。
「仕方ないな」
浮竹はテントを出すと、平子と京楽の体を運び、テントの中に寝かせて毛布をかけた。
「今日は、ここで休憩してから、明日帰るか・・・・」
浮竹も、疲労感から眠気を催して、いつの間にか眠ってしまった。
----------------------------------------------------------------
「浮竹、起きて、浮竹」
「ん・・・・・・?」
「魔法書が、奥の棚からたくさんでてきたんだ」
「何!」
浮竹は、がばりと起き上がった。
「浮竹は魔法書を覚えてコレクションするのが趣味なんやろ?俺は別に新しい魔法なんていらんから、全部持って帰り」
「ありがとう、平子!」
浮竹は、思い切り平子に抱き着いて、スリスリしていた。
「平子君、浮竹は渡さないよ・・・・・」
「ちょお、誤解やって!ぎゃああああ」
京楽にハリセンでしばかれて、平子はドラゴンでもあるので、金銀財宝を欲しそうに見ていた。
「ああ、欲しいなら好きなだけもっていけ。俺は古代の魔法書があればそれでいいからな」
「ええんか?この広間の金銀財宝、全部持って帰るで?」
「いいぞ。別に、金には困ってない。倒したレッドドラゴンをギルドで売れば、ここにある財宝くらいの値段はつく」
「ほんじゃ、遠慮なくもらうわ」
平子は、自分のアイテムポケットに大切そうに金銀財宝を収めた。
「ああ、俺の金銀財宝のコレクションがまた増えたわ。この前、留守の間に大分盗まれてしもうたからなー」
「ああ、浮竹みたいにドラゴンの金銀財宝だけぶんどって、逃げるような存在がそっちにもいるんだ」
「京楽、人聞きの悪いことを言うな!ちゃんと、ドラゴンを殺さず勝利して、戦利品をいただいてるだけだ」
浮竹は、京楽の頭を小突いた。小突かれながらも、京楽は構ってもらえて嬉しそうだった。
「真竜の、竜族を意味もなく殺すことはできないからね」
「あー、こっちではドラゴンの全てが人の形とって、人の言葉しゃべるわけやないからな。昨日のレッドドラゴンは、竜族やないねんろ?」
「そうだ。ただのドラゴンだ。竜族はこの世界には200体ほどしかいないからな。貴重だし、強いからよほどの事情がない限り、手を出さない」
「始祖の竜、カイザードラゴンとは友達なんだよ、僕ら」
「へぇ、すごいんやな。始祖の竜か・・・こっちの世界にもおったけど、不老不死じゃないから、冒険者に倒されて死んでもうたわ」
「カイザードラゴンは不老不死だからな」
「始祖の呪いは、この世界独特のもんやな」
しんみりした空気を追い払うように、浮竹は古代の魔法書をアイテムポケットに入れて、古城で見るつもりだった。
「さぁ、踏破したし戻ろう」
120階層のS級ダンジョンを踏破したとして、ギルドでまた注目を無駄に集めてしまった。
平子は冒険者ギルドに登録したばかりのEランク冒険者なのに、浮竹と京楽と一緒にS級ダンジョンを踏破して、受付嬢を失神させた。
「いやぁ、悪いことてもうたかな」
ギルドの解体工房で、15体のレッドドラゴンの死体を出すと、ギルドマスターも青い顔をしていた。
「ぜ、全部で大金貨6万5千枚になります・・・これ以上は出せません。ギルドが破産してしまいます」
以前のように、金貨かと思っていたら、ドラゴンの素材が不足しているということで、大金貨で買い取ってもらえた。
財布の中が潤った。
そのお金で、浮竹はさっそく魔法屋に出かけて、怪しい古代の魔法書5冊を金貨500枚で買ったりしていた。
「さぁ、とにかく古城に戻ろう。魔法書を見るためにも」
魔法書を手に、目をきらきらさせている浮竹は可愛かった。
「じゃあ、戻ろか」
「うん、戻ろう」
3人は、こうしてまだ未踏破だったダンジョンを攻略して、帰っていった。
-------------------------------------------------------------
2週間ほど、平子は古城で厄介になった後、血の帝国でドラゴンの竜族が守護すべき金銀財宝のある遺跡があいてると聞いて、平子はそこに行きたいと言い出した。
「いいのか?サーラの世界に戻らなくて」
「あっちの世界は刺激がなくてつまらんねん。女神とその使徒がいばり散らかしててな。服従しろとうっさいねん。このアビスの世界が、よほど心地ええわ」
「じゃあ、この世界に残るのか?」
「うん、そうするわ」
平子の言葉に、京楽が心配そうになる。
「でも、サーラの世界とのゲートはもうすぐ閉じちゃうんでしょ?本当にいいの?」
「他の神々は帰っていったけど、俺は神いうたかて、神界に入れる神とちゃうからな。大丈夫や。たまに遊びに行ってもええか?」
「もちろんだ。盛大にもてなそう」
「おおきに。ほな、俺行くわ」
「元気でな!」
「元気でね!」
こうして、星の精霊ドラゴン平子真子は、この世界、アビスの存在となった。
----------------------------------------------------------------
浮竹は、S級ダンジョンで手に入れた魔法書を読んでいた。
ちなみに、S級ダンジョンで手に入れた魔法書の数は162冊。
大量だった。
売れば、古城がいくつも買える金になるだろう。
「これも民間魔法か・・・・効果はぱっとしないな」
S級ダンジョンで手に入れた魔法のほとんどは民間魔法で、効果は微妙で、役に立ちそうな魔法書は5冊だった。
それぞれ、違う属性を組み合わせた魔法の魔法書であった。
浮竹はそれを読み、魔法を習得した。
試し打ちしようにも、古城を破壊してしまいそうなので、浮竹はさっそく遊びに来た平子に、次元の空間へと転送してもらい、そこで魔法を放った。
念のために京楽と平子もついてきていた。
「サンダーフレアスピア!」
かっと、青い雷の槍が出現した後で、その場を焦がすような炎が踊った。何もないはずの空間に、罅ができていた。
「ちょお、強すぎへん、その魔法。空間に罅できとるで」
「うーん。威力の調整が難しいな。サンダーフレアスピア!」
さっきより出力を下げて魔法を使うと、いいかんじだった。
「じゃあ、他の魔法も試し打ちするか」
そうやって、次元の空間は浮竹の魔力で揺れた。
「堪忍や。もう、この空間保ってられへん」
「僕も、シールドこれ以上はれないよ」
浮竹の魔法は、その威力の高さを知らずに最大限にまで引き延ばしてしまって、炎やら雷やらが京楽や平子のところにまできて、それを京楽がシールドを張って防いでいた。
「ああ、ありがとう。お陰でどんな魔法か分かった。どれも禁呪に匹敵する。使う時は威力を下げて使う」
「使うことがないよう、祈っておくよ」
「空間から出るで」
3人は、元の古城の中庭に戻っていた。
「今日は、平子の分まで俺が夕食を作ってやろう」
「え、浮竹、料理できたんかいな?」
「ばっちりだ!」
京楽は、顔を真っ青にして首を横に振っていた。
「ま、まぁ食べてみいひんことには、美味いか不味いかもわからんからな」
その日の夕食は、いつの日にか見たことのある、緑色の蠢くカレーだった。
「すごい匂いしとるな。マンドレイクとドラゴンの血、ぶちこんだんやな」
「お、分かるのか」
「マンドレイクもドラゴンの血も大好物やで」
そう言って、平子はスプーンでカレーを口に入れた。
「なんやこれ、めっちゃすごい味するやん。おもしろうて、もっと食べたなるわ。おかわり」
ついでに、京楽は食べ終えて気絶していた。
「お、俺の料理を分かるとは、なかなかだな」
京楽が気が付いた時には、平子は3回おかわりをした後だった。
「平子君、毒消しのポーションと胃腸薬を!」
「そんなものいらへんで?おいしかったし」
「浮竹の料理がおいしい・・・・かわいそうに、今までろくな食べ物食べてこなかったんだね」
涙ながらに、京楽は平子の肩を叩いた。
「まぁ、いつもは竜化して獲物丸のみやからな。毒とか酸もったモンスターは大好物やで」
「つまり、浮竹の毒料理に耐性があるということかい・・・・・」
「おい京楽、誰の料理が毒料理だって・・・・・?」
「いや、違う、これは言葉のあやで・・・・うぎょええええええええ」
口の中に緑色で蠢くカレーと、生きたままのマンドレイクをつっこまれて、京楽はまた意識を失った。
--------------------------------------------------------------------
そうして、平子は血の帝国に、浮竹が作った料理の数々をアイテムポケットに入れて、帰ってしまった。
「浮竹、いい加減機嫌治してよ」
「つーん」
「ああ、ツンデレのツンになってる。君が大好きだよ、十四郎」
耳元で囁かれて、浮竹は赤くなった。
「何をする!」
「君を抱きたい」
「きょ、京楽・・・・」
「春水って呼んで?いつもみたいに」
「あ、春水・・・・・」
ベッドの上に押し倒されて、浮竹は情欲で濡れた瞳で京楽を見つめていた。
「んっ」
京楽のキスを受け入れて、浮竹は自分から舌を絡めた。
「あっ」
胸の先端を甘噛みされて、浮竹は震えた。
衣服を脱がしていく京楽を、ただ見つめていた。
「んっ」
ぴちゃりと浮竹のものに舌が這う。
「ひあ!」
その刺激に耐え切れず、浮竹は精を京楽の口の中に放っていた。
「んっ・・・・」
「どしうたの十四郎、今日はいつもみたいに乱れないんだね?」
「あ・・・春水」
蕾を指でぐちゃぐちゃに解される。
「んあっ!」
貫かれて、浮竹は喘いだ。
「春水、春水」
ただひたすらに、京楽を求めた。
「あ・・・・・・・」
じんわりと広がっていく京楽の熱を感じながら、浮竹は安らかな眠りに落ちて行った。
------------------------------------------------
「ここが、星の精霊ドラゴン、平子真子の言っていた、創造神ルシエード様の子がいる場所・・・・・・」
それは、女神だった。
サーラの世界に存在する、女神アルテナ。サーラとアビスの世界が繋がった時、こちら側の世界に降りてきていた。
女神は、創造神ルシエードを愛していた。だが、創造神ルシエードが愛していたのは、始祖のヴァンパイアであり、我が子である浮竹十四郎。
その存在が、欲しくなった。
喉から手が出るほど。
その存在を手に入れれば、きっと創造神ルシエードも振り向いてくれるに違いない。
そんな妄想に憑りつかれた女神は、神の力に抗う術を持たぬ浮竹に、魅了の呪文をかけた。
「愛している、アルテナ」
「うふふふ。嬉しい。私も愛しているわ、浮竹」
「浮竹、しっかりして!浮竹!」
女神アルテナは、空間を開いた。そこに、浮竹を誘い入れる。
「ぼうやの浮竹は、私がもらってあげる。私は女神アルテナ」
「浮竹ーーーーー!!」
京楽は、血の暴走を始めていた。
再覚醒が、静かに始まろうとしていた。
120階層のラスボスは、本物にそっくりのコピーだった。
「ちっ、ここまで正確にコピーされるとやりにくい。京楽は補助を。平子が俺を叩け。俺が平子を叩いて、京楽も叩く」
コピーは真っ黒な泥人形でできていたが、持っている魔力から身体能力、魔法までコピーされていた。
「ファイアロンド!」
浮竹のコピーが打ってきた魔法を、平子の魔法がかき消す。
「フレアサークル!」
ごおおおおと燃やされても、浮竹のコピーはぴんぴんしていた。
2時間ほどを費やして、3人はやっとコピーを倒した。
「ああ、もう魔力がすっからかんだ」
「僕もだよ」
「俺もや。魔力切れの時の為に、魔力回復のポーションもってきといたんや。分けたるわ」
「ありがとう、助かる」
「ほんと、助かるよ」
3人は、魔力回復のポーションを飲んだ。
その味のまずさに、水を飲む。
「少しだけ魔力が回復した。これでダンジョンの入り口まで転移できそうだ」
浮竹は、最後の財宝の間をあけた。
金銀財宝から珍しい生き物のはく製、毛皮、貴重なマジックアイテム、それに古代の魔法書があった。
「古代の魔法書がこんなに!見ろ、京楽、平子!」
二人は、魔力切れでポーションで少しは回復したものの、疲れて眠ってしまっていた。
「仕方ないな」
浮竹はテントを出すと、平子と京楽の体を運び、テントの中に寝かせて毛布をかけた。
「今日は、ここで休憩してから、明日帰るか・・・・」
浮竹も、疲労感から眠気を催して、いつの間にか眠ってしまった。
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「浮竹、起きて、浮竹」
「ん・・・・・・?」
「魔法書が、奥の棚からたくさんでてきたんだ」
「何!」
浮竹は、がばりと起き上がった。
「浮竹は魔法書を覚えてコレクションするのが趣味なんやろ?俺は別に新しい魔法なんていらんから、全部持って帰り」
「ありがとう、平子!」
浮竹は、思い切り平子に抱き着いて、スリスリしていた。
「平子君、浮竹は渡さないよ・・・・・」
「ちょお、誤解やって!ぎゃああああ」
京楽にハリセンでしばかれて、平子はドラゴンでもあるので、金銀財宝を欲しそうに見ていた。
「ああ、欲しいなら好きなだけもっていけ。俺は古代の魔法書があればそれでいいからな」
「ええんか?この広間の金銀財宝、全部持って帰るで?」
「いいぞ。別に、金には困ってない。倒したレッドドラゴンをギルドで売れば、ここにある財宝くらいの値段はつく」
「ほんじゃ、遠慮なくもらうわ」
平子は、自分のアイテムポケットに大切そうに金銀財宝を収めた。
「ああ、俺の金銀財宝のコレクションがまた増えたわ。この前、留守の間に大分盗まれてしもうたからなー」
「ああ、浮竹みたいにドラゴンの金銀財宝だけぶんどって、逃げるような存在がそっちにもいるんだ」
「京楽、人聞きの悪いことを言うな!ちゃんと、ドラゴンを殺さず勝利して、戦利品をいただいてるだけだ」
浮竹は、京楽の頭を小突いた。小突かれながらも、京楽は構ってもらえて嬉しそうだった。
「真竜の、竜族を意味もなく殺すことはできないからね」
「あー、こっちではドラゴンの全てが人の形とって、人の言葉しゃべるわけやないからな。昨日のレッドドラゴンは、竜族やないねんろ?」
「そうだ。ただのドラゴンだ。竜族はこの世界には200体ほどしかいないからな。貴重だし、強いからよほどの事情がない限り、手を出さない」
「始祖の竜、カイザードラゴンとは友達なんだよ、僕ら」
「へぇ、すごいんやな。始祖の竜か・・・こっちの世界にもおったけど、不老不死じゃないから、冒険者に倒されて死んでもうたわ」
「カイザードラゴンは不老不死だからな」
「始祖の呪いは、この世界独特のもんやな」
しんみりした空気を追い払うように、浮竹は古代の魔法書をアイテムポケットに入れて、古城で見るつもりだった。
「さぁ、踏破したし戻ろう」
120階層のS級ダンジョンを踏破したとして、ギルドでまた注目を無駄に集めてしまった。
平子は冒険者ギルドに登録したばかりのEランク冒険者なのに、浮竹と京楽と一緒にS級ダンジョンを踏破して、受付嬢を失神させた。
「いやぁ、悪いことてもうたかな」
ギルドの解体工房で、15体のレッドドラゴンの死体を出すと、ギルドマスターも青い顔をしていた。
「ぜ、全部で大金貨6万5千枚になります・・・これ以上は出せません。ギルドが破産してしまいます」
以前のように、金貨かと思っていたら、ドラゴンの素材が不足しているということで、大金貨で買い取ってもらえた。
財布の中が潤った。
そのお金で、浮竹はさっそく魔法屋に出かけて、怪しい古代の魔法書5冊を金貨500枚で買ったりしていた。
「さぁ、とにかく古城に戻ろう。魔法書を見るためにも」
魔法書を手に、目をきらきらさせている浮竹は可愛かった。
「じゃあ、戻ろか」
「うん、戻ろう」
3人は、こうしてまだ未踏破だったダンジョンを攻略して、帰っていった。
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2週間ほど、平子は古城で厄介になった後、血の帝国でドラゴンの竜族が守護すべき金銀財宝のある遺跡があいてると聞いて、平子はそこに行きたいと言い出した。
「いいのか?サーラの世界に戻らなくて」
「あっちの世界は刺激がなくてつまらんねん。女神とその使徒がいばり散らかしててな。服従しろとうっさいねん。このアビスの世界が、よほど心地ええわ」
「じゃあ、この世界に残るのか?」
「うん、そうするわ」
平子の言葉に、京楽が心配そうになる。
「でも、サーラの世界とのゲートはもうすぐ閉じちゃうんでしょ?本当にいいの?」
「他の神々は帰っていったけど、俺は神いうたかて、神界に入れる神とちゃうからな。大丈夫や。たまに遊びに行ってもええか?」
「もちろんだ。盛大にもてなそう」
「おおきに。ほな、俺行くわ」
「元気でな!」
「元気でね!」
こうして、星の精霊ドラゴン平子真子は、この世界、アビスの存在となった。
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浮竹は、S級ダンジョンで手に入れた魔法書を読んでいた。
ちなみに、S級ダンジョンで手に入れた魔法書の数は162冊。
大量だった。
売れば、古城がいくつも買える金になるだろう。
「これも民間魔法か・・・・効果はぱっとしないな」
S級ダンジョンで手に入れた魔法のほとんどは民間魔法で、効果は微妙で、役に立ちそうな魔法書は5冊だった。
それぞれ、違う属性を組み合わせた魔法の魔法書であった。
浮竹はそれを読み、魔法を習得した。
試し打ちしようにも、古城を破壊してしまいそうなので、浮竹はさっそく遊びに来た平子に、次元の空間へと転送してもらい、そこで魔法を放った。
念のために京楽と平子もついてきていた。
「サンダーフレアスピア!」
かっと、青い雷の槍が出現した後で、その場を焦がすような炎が踊った。何もないはずの空間に、罅ができていた。
「ちょお、強すぎへん、その魔法。空間に罅できとるで」
「うーん。威力の調整が難しいな。サンダーフレアスピア!」
さっきより出力を下げて魔法を使うと、いいかんじだった。
「じゃあ、他の魔法も試し打ちするか」
そうやって、次元の空間は浮竹の魔力で揺れた。
「堪忍や。もう、この空間保ってられへん」
「僕も、シールドこれ以上はれないよ」
浮竹の魔法は、その威力の高さを知らずに最大限にまで引き延ばしてしまって、炎やら雷やらが京楽や平子のところにまできて、それを京楽がシールドを張って防いでいた。
「ああ、ありがとう。お陰でどんな魔法か分かった。どれも禁呪に匹敵する。使う時は威力を下げて使う」
「使うことがないよう、祈っておくよ」
「空間から出るで」
3人は、元の古城の中庭に戻っていた。
「今日は、平子の分まで俺が夕食を作ってやろう」
「え、浮竹、料理できたんかいな?」
「ばっちりだ!」
京楽は、顔を真っ青にして首を横に振っていた。
「ま、まぁ食べてみいひんことには、美味いか不味いかもわからんからな」
その日の夕食は、いつの日にか見たことのある、緑色の蠢くカレーだった。
「すごい匂いしとるな。マンドレイクとドラゴンの血、ぶちこんだんやな」
「お、分かるのか」
「マンドレイクもドラゴンの血も大好物やで」
そう言って、平子はスプーンでカレーを口に入れた。
「なんやこれ、めっちゃすごい味するやん。おもしろうて、もっと食べたなるわ。おかわり」
ついでに、京楽は食べ終えて気絶していた。
「お、俺の料理を分かるとは、なかなかだな」
京楽が気が付いた時には、平子は3回おかわりをした後だった。
「平子君、毒消しのポーションと胃腸薬を!」
「そんなものいらへんで?おいしかったし」
「浮竹の料理がおいしい・・・・かわいそうに、今までろくな食べ物食べてこなかったんだね」
涙ながらに、京楽は平子の肩を叩いた。
「まぁ、いつもは竜化して獲物丸のみやからな。毒とか酸もったモンスターは大好物やで」
「つまり、浮竹の毒料理に耐性があるということかい・・・・・」
「おい京楽、誰の料理が毒料理だって・・・・・?」
「いや、違う、これは言葉のあやで・・・・うぎょええええええええ」
口の中に緑色で蠢くカレーと、生きたままのマンドレイクをつっこまれて、京楽はまた意識を失った。
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そうして、平子は血の帝国に、浮竹が作った料理の数々をアイテムポケットに入れて、帰ってしまった。
「浮竹、いい加減機嫌治してよ」
「つーん」
「ああ、ツンデレのツンになってる。君が大好きだよ、十四郎」
耳元で囁かれて、浮竹は赤くなった。
「何をする!」
「君を抱きたい」
「きょ、京楽・・・・」
「春水って呼んで?いつもみたいに」
「あ、春水・・・・・」
ベッドの上に押し倒されて、浮竹は情欲で濡れた瞳で京楽を見つめていた。
「んっ」
京楽のキスを受け入れて、浮竹は自分から舌を絡めた。
「あっ」
胸の先端を甘噛みされて、浮竹は震えた。
衣服を脱がしていく京楽を、ただ見つめていた。
「んっ」
ぴちゃりと浮竹のものに舌が這う。
「ひあ!」
その刺激に耐え切れず、浮竹は精を京楽の口の中に放っていた。
「んっ・・・・」
「どしうたの十四郎、今日はいつもみたいに乱れないんだね?」
「あ・・・春水」
蕾を指でぐちゃぐちゃに解される。
「んあっ!」
貫かれて、浮竹は喘いだ。
「春水、春水」
ただひたすらに、京楽を求めた。
「あ・・・・・・・」
じんわりと広がっていく京楽の熱を感じながら、浮竹は安らかな眠りに落ちて行った。
------------------------------------------------
「ここが、星の精霊ドラゴン、平子真子の言っていた、創造神ルシエード様の子がいる場所・・・・・・」
それは、女神だった。
サーラの世界に存在する、女神アルテナ。サーラとアビスの世界が繋がった時、こちら側の世界に降りてきていた。
女神は、創造神ルシエードを愛していた。だが、創造神ルシエードが愛していたのは、始祖のヴァンパイアであり、我が子である浮竹十四郎。
その存在が、欲しくなった。
喉から手が出るほど。
その存在を手に入れれば、きっと創造神ルシエードも振り向いてくれるに違いない。
そんな妄想に憑りつかれた女神は、神の力に抗う術を持たぬ浮竹に、魅了の呪文をかけた。
「愛している、アルテナ」
「うふふふ。嬉しい。私も愛しているわ、浮竹」
「浮竹、しっかりして!浮竹!」
女神アルテナは、空間を開いた。そこに、浮竹を誘い入れる。
「ぼうやの浮竹は、私がもらってあげる。私は女神アルテナ」
「浮竹ーーーーー!!」
京楽は、血の暴走を始めていた。
再覚醒が、静かに始まろうとしていた。
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