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始祖なる者、ヴァンパイアマスター34

「浮竹・・・・・」

むざむざ、愛しい者を攫われた京楽は、自分の力のなさに嘆き悲しんだ。

血の暴走は止まらず、自分自身を傷つけながら、血の竜巻を起こしていた。

体が燃えるように熱かった。

何かが、自分の中で弾けていた。

ふと、京楽の傍に違う女神が立っていた。

「女神アルテナ、よくも浮竹を!浮竹を返せ!」

それは、浮竹を攫って行った女神アルテナによく似ていた。

「私は女神アルテナの妹、女神クレス」

「そんな存在が、僕になんの用だ!」

「女神アルテナから、伴侶を取り戻したいのでしょう?私の血を飲みなさい。あなたは再覚醒を始めています。私の血を飲めば、再覚醒を成功させるでしょう」

京楽は、その言葉に逡巡した。

「他意はありません。愚かな姉の後始末をしたいだけです。私の血を飲めば、あなたの再覚醒は確実なものとなるでしょう。ただ、私の血を飲むのはきっかけです。始祖ヴァンパイアの血族であることには、変わりありません」

「血を飲めば、強くなれるのかい?その再覚醒とやら・・・この熱い体の鼓動が、どうにかなるのかい?」

「再覚醒をすれば、少なくとも、女神アルテナから伴侶を連れ戻すくらいには、なれるでしょう」

その言葉に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。

女神クレスは、聖杯を取り出し、その中に己の血を注いでいく。

「このまま女神アルテナに愛しい伴侶を奪われたまま嘆くか、それとも私の血を飲んで再覚醒し終わり、女神アルテナから愛しい伴侶を連れ戻すか・・・決めるのは、あなた次第です」

京楽は、やや戸惑いがちに聖杯を手にとった。

そして、中身を一気に飲み干した。

「ああああああ!!!!」

激しい痛みが、京楽を襲った。

「痛いでしょう、苦しいでしょう。でも、それを乗り越えた時、あなたは神の子の血族として、再覚醒するでしょう」

女神クレスは、それだけを言い残して、世界から消えてしまった。

「うああああああ!!」

京楽は苦しんだ。

その、気が狂いそうな痛みと苦しみは、三日三晩続いた。

次に京楽が目覚めた時、己から湧き上がる魔力に驚いた。

「魔力が・・・浮竹くらいになってる・・・・」

じっと目をこらす。

確かに、女神アルテナの残滓と浮竹の気配を感じ取った。

「浮竹を、返せ・・・・」

空間を破り、京楽は女神アルテナの支配下にある空間に、忍び込む。

「誰!?侵入者よ!」

女神アルテナは、自分を守護する使徒たちを、京楽に向けた。

京楽は、猛毒でもあるその血の刃だけで、使徒たちを葬っていた。

「ここは私、女神アルテナの聖域。何人たりとも、無断で立ち入ることは許さないわ」

「許さないのは、僕のほうだよ・・・・・」

ゆらりと揺らめくその魔力は、創造神ルシエードの子、浮竹の魔力のようであった。

「来ないで!この子がどうなってもいいの!?」

女神アルテナは、自分の傍にいた浮竹の首の動脈に、ミスリルの短剣を向けた。

「く、卑怯な」

神の愛の不死の呪いをもっていても、神に殺されるとどうなるか分からない。

「ふふふ。あなたも、この子のように、私の虜にしてあげる」

女神アルテナが近付いてくる。

その魅了の魔法にかかったふりをして、女神アルテナに近づいた。

女神アルテナの胸を、京楽の血の刃が貫いていた。

「ぐふっ・・・そんな馬鹿な・・・女神である私が・・この血の匂い、そうか、女神クレスか!」

女神アルテナは、美しいその容貌を醜くして、叫んだ。

「死んでおしまいなさい、あなたなんて!」

神の呪いがふりかかる。それは即死魔法だった。

でも、京楽はそれを魔法で反射していた。

「ぐ・・・こうなったら、その血、奪うまでよ!」

女神アルテナは、京楽の体から血を抜き取ろうとした。

反対に、自分の血を抜き取られていた。

「ひああああ!?私の、生命の源が!」

女神アルテナは、浮竹にしがみついた。

「助けて、愛しいあなた。私を助けて・・・・」

浮竹は動いた。

まだ女神アルテナの術中にあるだろうと、京楽は攻撃を止めた。

「浮竹、戻っておいで?君のいるべき場所はそこじゃない。僕の隣だ」

浮竹の翡翠の瞳に、光が戻っていく。

「いかないで、愛しいあなた!私を助けなさい!あの、京楽という血族を始末なさい!」

ゆらりと、浮竹の魔力が蠢いた。

女神アルテナでも、ぞっとするくらいの魔力であった。

「こんな存在が、神の子であるなんて・・・どうして、神ではないの?」

そんなことを言う女神アルテナの心臓を、浮竹は自分の血の刃で貫いていた。

「いやああああああ、私の体が!」

美しかった女神アルテナは、神としての力に耐えきれないほどに体が破損していた。

「許さない。絶対に、許さない」

肉体を捨てて、アストラル体となって、浮竹と京楽に襲いかかった。

その、神の証であるアストラル体を、浮竹は血の刃で斬り裂いていた。

「俺は創造神ルシエードの子、始祖ヴァンパイアマスターにして、神の子・・・・」

浮竹は、京楽と手を握りあった。

「京楽、いけるか?」

「僕はいつでもOKだよ」

二人の神に匹敵する魔力が、うねり、波となる。

「あ・・・・助けて」

女神アルテナは、その時になって自分が虜にした存在が、神である自分を超えているのだと知った。

浮竹は精霊神を宿らせて、魔人ユーハバッハの血液を浄化してもらった後、魔力が更にあがった。

そしてついこの間、創造神ルシエードが、始祖浮竹のために生み出した力の残滓である人間の姿をした浮竹を吸収したことで、魂に神格を宿していた。

「助けて・・・・」

「勝手なことを言う。俺を好きなように操っておいて・・・・・」

「助けてくれれば、女神の祝福を与えるわ!不老不死になれるのよ!」

「残念だが、俺は元々不老不死だ」

女神アルテナは、創造神ルシエードの子が神のように不老不死であると知らなかった。

「じゃ、じゃあ金義財宝を好きなだけあげる!」

「金には困ったことはない」

「じゃ、じゃあ・・・・・」

浮竹は、酷薄に笑った。

「この世界から、消えてなくなれ。どうせ、サーラの世界に本体があるんだろう?」

「何故、それを・・・・・・」

女神アルテナは目を見開いた。

「まぁ、こちらもほぼ本体と同じように構築されてある。死ねば、少しは本体にもダメージがくだろう」

「もう、この世界に干渉しないでね。バイバイ」

京楽が、浮竹と手を握りあいながら、空いていた手で女神アルテナに手を振った。

「「ゴッドフェニックス・バーストロンド」」

二人が放った魔法は、二羽のフェニックスの形を纏い、女神アルテナのアストラル体を焼いた。

「いやあああああああ!!!!」

「僕の浮竹に手を出したことを、後悔させてあげる」

火だるまになりながら、転げまわる女神アルテナに、京楽は猛毒の血を滴らせた。

それはじゅわっと音を立てて、女神アルテナの顔を焼いた。

「本体に届くように、女神クレスの血を混ぜておいた。じゃあね」

「いやああああ、私の、私の美貌が!私の顔があああああ!!!」

しばらくのたうちまわった後、女神アルテナはこの世界から消えた。


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「いやああ、私の美貌が、私の顔が!!」

異世界サーラで、女神アルテナの本体は身悶えていた。

アビスの世界で葬られた分身体は、限りなくオリジナルに近くしておいた。

そのせいで、受けた傷も、本体にまで届いた。

女神アルテナは、自慢の美貌が焼けただれていることを知り、自分より身分が下の処女の女神を呼び出すと、殺してその生き血を顔に塗った。

焼けただれていた美貌は、元に戻っていた。

「この私が、ヴァンパイアとその血族如きに・・・・覚えてらっしゃい、必ず後悔させてやる」

復讐心に燃えるが、サーラとアビスの世界へのゲートは閉じてしまっている。

「誰か、誰か女神クレスを呼びなさい!」

下働きの者たちに命じて、自分の実の妹を呼び出した。

「あなたも、分身体をアビスに残していたのね。あなたのせいで、私は屈辱を味わったわ、覚悟はできているんでしょうね?」

「これは、なんだと思います?」

女神クレスは、さっき女神アルテナが殺した下級女神の魂を、保護していた。

「何故、魂がここに!」

「同族殺しは極刑。忘れたわけでは、ありませんね?」

「違うのよ、違うのよこれは!」

「創造神ルシエード。あなたが、決めてください」

現れた、6枚の翼をもつ美しい創造神は、一言だけ言った。

「滅びよ」

その言葉だけで、女神アルテナはさらさらと灰になっていく。

「創造神ルシエード、私はあなたに愛されたかっただけ・・・・・」

それだけ言い残すと、女神アルテナは灰となって消えていった。

「女神アルテナは、あなたの子に干渉しました。どうしますか?」

「あれは、私の手を離れている。私はあれをどうこうしようと思わない」

「御意」

女神クレスは、創造神ルシエードに優雅に礼をすると、女神アルテナが創造神ルシエードの怒りを買い、処刑されたと他の神々にふれて回った。

創造神ルシエードは、神の世界のヒエラルキーのTOPに位置していた。

同格の神々は他にもいたが、皆違う世界で神として君臨し、好き放題していた。

創造神ルシエードは、世界に干渉しない。

創造神として世界を作りあげ、生命を生み出し、しばらくはその世界に留まるが、世界が安定したら、その世界を去った。

アビスとサーラをはじめ、今まで10個の世界を作り上げてきた。

アビスとサーラは双子のような存在で、世界そのものは似ていなかったが、そこに住まう住民である種族は似ていた。

他の世界には、ヴァンパイアは作らなかった。

アビスとサーラの世界にだけ、ヴァンパイアという種族が存在した。

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「浮竹、ああよかった。戻ってきてくれたんだね?」

「京楽、すまない。心配をかけた。それにしても見違えたぞ。いつの間に、そんなに強くなったんだ?魔力に至っては、俺と同等くらいじゃないか」

「女神アルテナに君が攫われた後、再覚醒してね。女神アルテナの妹女神クレスの血を飲んだら、再覚醒を終えたんだよ」

その言葉に、浮竹がそっぽを向く。

「ふん、どうせ女神クレスとやらがさぞかし綺麗だったんだろうな。そんな女神から血をもらえてよかったな」

「浮竹、嫉妬してるの?」

「な、違う!」

浮竹は顔を真っ赤にさせた。

「ああ、嫉妬する浮竹はかわいいね」

京楽は、腕の中に浮竹を抱き込んだ。

「一緒にお風呂入ろ。その後は・・・ね?」

お風呂に入り、身を綺麗にしてから、浮竹はいつもの寝室の天蓋つきのベッドに押し倒されいた。

「ああああ!」

硬くなった京楽のものが、浮竹の中を出入りしていた。

「んああ!」

ずりずりと中のいいところをすりあげて、最奥まで届く京楽のものに、浮竹は涙を零しながら求める。

「あ、春水の、いっぱいちょうだい?俺を満たして」

ペロリと唇を舐める妖艶な浮竹に、京楽は夢中になっていた。

「何度だって、出してあげるよ。君が望むまで」

すでに、浮竹の中で一度熱は弾けていた。

同時に、浮竹のものも弾けて、自分の腹に白い液体を零していた。

それを、京楽が舐めとる。

「やあああ」

「君の体液は甘い。もったいない」

ぺろりと全部なめて、京楽は浮竹の首筋に噛みついて、ジュルジュルと血液を啜った。

「あああああ!!!」

最奥をごりっと抉られながら、吸血されて、浮竹はいきながら吸血されることの快感にも酔わされていた。

「ひあああ!?」

結腸の中を、ごりごりと京楽のものが入っていく。

はじめて味わう感触に、浮竹は泣きながら、許しを請うた。

「やあああ、もうやめ、春水、春水」

「君の中に何度何度でも注いであげるっていったでしょ?」

京楽は、浮竹の最奥に精液を注ぎこんだ。

「ひあう!やあああ!!」

ぷしゅわああと、浮竹は潮をふいていた。

「やああ、潮でちゃう、やだあああ」

「もっと感じて?僕だけのものだよ、十四郎」

「あ、春水、春水」

名を呼ばれて、京楽は浮竹に口づけた。

「十四郎・・・愛してるよ」

「あ、俺も愛してる、春水」

二人は熱い抱擁をしあいながら、更に乱れていった。


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「グリムジョー、期待しているよ」

魔族の始祖である藍染は、十刃の一人であるグリムジョーに魔人ユーハバッハの血を注射した。

「うおおおおおお」

駆け巡る熱い鼓動を抑え込む。

「俺は俺だ!魔人ユーハバッハなどに乗っ取られててたまるか!」

そう言って、藍染に更に魔人ユーハバッハの血を注射される。

「ははははは!私こそ神だ!この世界は全て私のものだ!さぁいっておいでグリムジョー。その大量の魔人ユーハバッハの血で、世界を赤に染め上げるのだ」

藍染は、そう言って笑い続けるのであった。

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