始祖なる者、ヴァンパイアマスター35
始祖魔族、藍染惣右介は自分の配下であるグリムジョーに、魔人ユーハバッハの血を大量に注射した。
グリムジョーは魔人ユーハバッハの意識に飲まれそうになりながら、己を保った。
「始祖浮竹と血族の京楽・・・・」
藍染にすりこまれた、敵の名前であった。
すこまれた怒りと憎悪は、グリムジョーの心を真っ黒に染め上げた。
「殺す。俺が殺す」
ただ血を求めて、グリムジョーは歩き始める。
魔国アルカンシェルで、グリムジョーは藍染を手にかけていた。
自分をこんな風にした藍染に、耐えきれなくなったのだ。
ぐしゃりと、藍染の顔を床に叩きつけて、その脳みその中身をぶちまけてやった。
でも、藍染は不老不死だ。
ゆっくりと傷を再生する藍染を最後まで見守ることもなく、グリムジョーは魔国アルカンシェルを後にするのだった。
-------------------------------------------------------------
「浮竹、そのまま動かないで」
古城で、京楽は浮竹をモデルにして絵を描いていた。
「ちょっと見せろ」
「ああ、動いちゃだめだよ!」
浮竹が見た京楽の絵は、例えるならピカソであった。
「これのどこが俺なんだ」
「ほら、こことかちゃんと髪長いし、君のエロティックな瞳もここにちゃんとあるし、桜色の唇だってここに」
スパーーン。
ハリセンをうならせて、浮竹は京楽の頭を殴った。
「恥ずかしいこと言うな!」
「まぁまぁ。続き描きたいから、もう一回座ってモデルになって?」
始めはヌードモデルをしろと言われて、京楽の頭をハリセンが殴り続けたら、普通の姿でいいと言われた。
ソファーに腰かけて、ただ動くこともできずにじっとしてるのは、苦痛だったが。
やがて2時間ほどが経って、絵は完成した。
絵具で塗られた絵は、やはりピカソのようであった。
「ほら、どこからどこを見ても、君にそっくりでしょ?」
「俺がこんな姿なら、顔から目と唇がはみ出ている」
「あくまで君の個性を重点的に描いたから」
瞳は赤く、真紅だった。
背中には、出していなかったヴァンパイアの翼が描かれていた。
「俺かどうかはさておき、とりあえずヴァンパイアを描いたことだけは分かる」
「やだなぁ、そんなに僕の絵が気に入ったの?アトリエとして使ってる部屋に、君の絵は何枚もあるから、壁にでも飾ろうか?」
「やめろ、この美しい古城の中身が損なわれてしまう」
美しく高い調度品が溢れる古城に、京楽の絵を交えると、そこだけ不毛な空間ができそうな気がして、浮竹は断っていた。
「やほー。遊びにきたわよ」
「お、乱菊じゃないか」
「乱菊ちゃん、ちょっとだけお久しぶり」
この前、乱菊が遊びにきたのは今から1カ月ほど前。
ちょうど、浮竹が女神に攫われて4カ月が経った頃だった。
浮竹は相変わらず強いが、京楽は再覚醒をして、今までと比べ物にならないくらい強くなっていた。
「相変わらず、京楽さんの魔力の高さには驚きの言葉しか浮かばないわ」
「僕も、強くなりたくてね。きっかけがあって、再覚醒したんだよ」
「その再覚醒の内容、詳しく聞きたいけど、駄目よね?」
乱菊は、そっと京楽の手をとって、神々の谷間に誘導した。
「いくら乱菊ちゃんでも、言えないね。浮竹が嫉妬しちゃからね」
「おい、京楽、その手はなんだ」
乱菊の神々の谷間に手をつっこんでいる状態に、気づけばなっていて、京楽は焦った。
「いや、これは乱菊ちゃんが勝手に」
「問答無用!」
スパーンとハリセンで叩かれて。京楽は少しだけ涙目になるのであった。
「いやーん、やっぱりこの古城のご飯おいしいわ~」
「好きなだけ滞在するといい」
「じゃあ、お言葉に甘えて、1週間ほどここに泊まってもいいかしら?」
「ゲストルームはいくつもあるし、どれも空いてる。好きなようにするといい」
「やったあ!」
乱菊は、それから1週間泊まった。
その間に、京楽は乱菊にモデルになってくれと頼み、乱菊の肖像画を2枚完成させた。
「うーん、なんていのかしら。斬新だと言われれば、斬新ね」
「僕の浮竹は駄作っていうんだよ。僕の芸術を理解してくれなくてね」
「うーん。でも、プロの人が見たら、何か意見くれるかもね」
「僕にも浮竹にも、プロの芸術家の知り合いなんていないよ?」
「あたしにつてがあるの。ちょっと任してちょうだい」
そうして、乱菊は京楽の絵の何枚かをもって、出かけてしまった。
帰ってもってきたのは、金貨の袋だった。
「凄いわよ、京楽さん。先生が大絶賛なの。絵を売ってくれって言われて売っちゃたけど、別にかまわないわよね?」
「うん、僕はかまわないよ」
「信じられん。あの京楽の絵が売れたのか」
にわかに信じがたくて、その画商の名を聞くと、そこそこ有名な画商で、浮竹もその画商から何枚か高価な絵をかって、古城に飾っていた。
「あの絵がなぁ」
浮竹は、まだ納得がいかないようだった。
「もう、浮竹も素直に僕を褒めてよ!」
「ああ、良かったな京楽。あんな幼稚園児の落書きのような絵が評価されるなんて」
「酷い、何気にけなしてる!」
「まぁ、祝いだ。今日は俺が何か作って・・・・・」
「わあああ!お祝いとかいいから、今日は僕が作るね!」
そう言って、京楽はキッチンに向かってしまった。
その日の夕食を食べて、次の日の朝には乱菊はガイア王国の、古城に近い街にある屋敷に帰っていった。
-----------------------------------------------------------------------
「あのー、浮竹さん、京楽さん、これ届け物なんすけど」
現れたのは、一護だった。
「誰からだい、一護君」
「ブラッディ・ネイから」
浮竹は荷物を受け取り、中身を見る。
そして中身を流し台に捨てて、容器をゴミ箱に放り投げた。
「何が入ってたんすか?」
「媚薬だ。おまけに強烈なやつ」
「ええ、勿体ない!」
京楽が、流し台を見るが、全部綺麗に流れた後だった。
「京楽に飲ませたら、お前朝まで俺を犯すだろう!ブラッディ・ネイは変なものしか送ってこない。この前は、大人のおもちゃだったか・・・叩き壊したが」
「はは・・・・」
一護は、乾いた笑いを浮かべるのであった。
「じゃあ、俺の用は済んだんで、戻りますね」
ピリリリリリ。
いきなり、警告音が響いた。
「な、なんすか?」
「侵入者だ。一護君は、安全な場所に避難していてくれ。奥のゲストルームにでも入っていてくれ」
「はい」
「行くぞ、京楽」
「うん、分かってるよ」
侵入者は、若い男だった。
「藍染の匂いと、魔人ユーハバッハの匂いがぷんぷんする」
「魔人ユーハバッハの血を、大量に注射されてるようだね」
「俺はグリムジョー・ジャガージャック。大人しく、殺されやがれ!」
グリムジョーは、鋭い爪で襲い掛かってきた。
「なんて速さだ!反応速度がはやい」
「足場を悪くしよう」
浮竹は、そう言って、足場を沼地にかえた。
「ちっ、これくらいで俺の素早さを奪ったつもりか!」
「浮竹!」
グリムジョーの爪が、浮竹の肩に触れた。
鮮血が舞う。
「よくも浮竹に傷を・・・!」
京楽は、その神に匹敵しうる魔力をとがらせて、グリムジョーに向けては放つが、グリムジョーは特技のスピードで、それを避けてしまった。
「く、ちょこまかと・・・・・」
「フリーズアイビー!」
浮竹が呪文を唱えた。
それは氷の蔦となってグリムジョーの体にまといつき、グリムジョーの動きを封じた。
「今だ、京楽!」
「うん、分かってるよ!」
京楽は、自分の血でできた槍で、グリムジョーの腹を貫ていた。
「がはっ」
「グリムジョー!?」
出てきたのは、一護だった。
「一護君、危ない!」
怪我を負ったものの、致命傷にはなりえず、グリムジョーは尖らせた爪で一護に襲いかかろうとした。
「一護!?一護じゃねぇか!」
グリムジョーは、振り上げていた手を下げた。
「やっぱりグリムジョーだ。懐かしいな」
「一護君、知り合いか?」
「ああ、浮竹さん。こいつ、ヴァンピールなんだ。生まれ故郷で一時期一緒に暮らしてた」
「今回の敵が、一護の知り合いだったとはな。止めた止めた。強そうで勝てそうにねぇし、命は惜しいしな」
そう言って、グリムジョーは尖らせていた爪を元に戻した。
殺気が消えて、一護の知り合いということもあって、浮竹と京楽も昂っていた魔力を通常に戻す。
「君は、魔人ユーハバッハの血に汚染されているね。取り除いてあげるから、こっちいおいで」
「なんだと?そんなこともできるのか?」
グリムジョーは半信半疑で京楽に近寄る。
京楽は魔法陣を描きだすと、グリムジョーの中の血液から、魔人ユーハバッハの血だけを取り除いた。
魔人ユーハバッハの血は、蠢いて次の標的に京楽を選んだ。
「おっと、危ない危ない」
京楽は自分の血を燃やし、ついでに魔人ユーハバッハの血を燃やして蒸発させた。
「これで、君はもう大丈夫だ」
その言葉に、グリムジョーが簡単に動く。前よりもスピードは落ちているが、いつもの自分の肉体だった。渦巻くような血液の濁りが消えていた。
腹の傷も塞がっていた。
ふと、グリムジョーが一護を見た。
「一護、今てめぇは何してやがるんだ」
「ああ、血の帝国で聖女ルキアの守護騎士をしてるぜ」
「守護騎士だぁ?面白そうじゃねぇか。俺も混ぜろとはいわねぇが、お前についていく」
「え、まじかよ。まぁ、俺のだちだし、ルキアに迷惑かけないなら、連れていってもいいぜ」
一護の言葉を受けて、グリムジョーは嬉しそうにしていた。
グリムジョーは戦いが好きだった。戦いの中で己を見つけていた。
「やっぱお前とのバトルが一番滾るからな。一護、今度俺と勝負しろ」
「とりあえず、ルキアの許可を得てからだな」
「話は決まったな。じゃあな、始祖の浮竹とその血族の京楽。藍染からお前らを殺せって命令されてたが、俺にはあいつの言葉を守る義理はねぇ。あばよ」
そう言って、突然襲いかかってきた藍染の手の者は、自分たちに危害をほとんど加えずに、血の帝国に一護と一緒に帰ってしまった。
「なんだか、台風のような子だったね」
「それより京楽、お前いつの間に魔人ユーハバッハの血を取り除けるようになったんだ?」
「ん、再覚醒してからだね。今度、君に魔人の血が入っても、僕が浄化できるから、安心していいよ」
「いや、まずそんな状態になってたらピンチだろ」
二人とも顔を見合わせて、血の帝国に行ってしまったグリムジョーの成功を祈った。
-------------------------------------------------------------------
「グリムジョーめ!あの裏切者が!」
魔国アルカンシェルでは、藍染が怒りに顔を歪ませていた。
「拾って育ててやった恩を忘れるとは・・・・・」
「藍染様」
「なんだ!」
「寵姫アルテナ様がお見えです」
「愛しいあなた」
ゆらりと、女神アルテナの魂を宿した女性が現れた。女神アルテナは、創造神ルシエードに滅ぼされる直前に、魂だけの存在となり、このアビスの世界に逃れてきていた。
「愛しいあなた。今度は、私たちの子がいくわ。注いでやった女神の力で、あのにっくき始祖浮竹と、その血族京楽を殺してやるのよ」
魂だけの存在となった女神アルテナは、アビスで女神の器を探して、藍染と出会った。藍染は、器にと、魔人ユーハバッハの血を与えた寵姫を差し出してきた。
その器は、嘘のようによく女神アルテナの魂と交じりあい、女神アルテナは復活した。女神としての力は魂にあった。憎き始祖ヴァンパイア浮竹とその血族京楽を葬れるなら、女神アルテナはなんでもした。
「女神と始祖魔族の子、セイラン」
「はい、母様」
女神アルテナは、藍染との間に子を産んでいた。子はセイランと名付けられた女の子であった。
臨月までに1カ月、あと4か月をかけて、セイランは10歳まで成長した。
「さぁ、行ってらっしい。始祖魔族と血族京楽を、いたぶってくるのよ」
「はい、母様」
セイランの顔には、なんの感情も生まれていなかった。
あくまで、女神アルテナにとっても、藍染にとっても、駒にしか過ぎなかった。
「女神アルテナ、次の子を産んでくれ」
「いいわ、愛しいあなたのためなら、何人でも産んであげる」
女神アルテナと、藍染は口づけを交わし合いながら、次の子を作るために寝所に引きこもるのだった。
グリムジョーは魔人ユーハバッハの意識に飲まれそうになりながら、己を保った。
「始祖浮竹と血族の京楽・・・・」
藍染にすりこまれた、敵の名前であった。
すこまれた怒りと憎悪は、グリムジョーの心を真っ黒に染め上げた。
「殺す。俺が殺す」
ただ血を求めて、グリムジョーは歩き始める。
魔国アルカンシェルで、グリムジョーは藍染を手にかけていた。
自分をこんな風にした藍染に、耐えきれなくなったのだ。
ぐしゃりと、藍染の顔を床に叩きつけて、その脳みその中身をぶちまけてやった。
でも、藍染は不老不死だ。
ゆっくりと傷を再生する藍染を最後まで見守ることもなく、グリムジョーは魔国アルカンシェルを後にするのだった。
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「浮竹、そのまま動かないで」
古城で、京楽は浮竹をモデルにして絵を描いていた。
「ちょっと見せろ」
「ああ、動いちゃだめだよ!」
浮竹が見た京楽の絵は、例えるならピカソであった。
「これのどこが俺なんだ」
「ほら、こことかちゃんと髪長いし、君のエロティックな瞳もここにちゃんとあるし、桜色の唇だってここに」
スパーーン。
ハリセンをうならせて、浮竹は京楽の頭を殴った。
「恥ずかしいこと言うな!」
「まぁまぁ。続き描きたいから、もう一回座ってモデルになって?」
始めはヌードモデルをしろと言われて、京楽の頭をハリセンが殴り続けたら、普通の姿でいいと言われた。
ソファーに腰かけて、ただ動くこともできずにじっとしてるのは、苦痛だったが。
やがて2時間ほどが経って、絵は完成した。
絵具で塗られた絵は、やはりピカソのようであった。
「ほら、どこからどこを見ても、君にそっくりでしょ?」
「俺がこんな姿なら、顔から目と唇がはみ出ている」
「あくまで君の個性を重点的に描いたから」
瞳は赤く、真紅だった。
背中には、出していなかったヴァンパイアの翼が描かれていた。
「俺かどうかはさておき、とりあえずヴァンパイアを描いたことだけは分かる」
「やだなぁ、そんなに僕の絵が気に入ったの?アトリエとして使ってる部屋に、君の絵は何枚もあるから、壁にでも飾ろうか?」
「やめろ、この美しい古城の中身が損なわれてしまう」
美しく高い調度品が溢れる古城に、京楽の絵を交えると、そこだけ不毛な空間ができそうな気がして、浮竹は断っていた。
「やほー。遊びにきたわよ」
「お、乱菊じゃないか」
「乱菊ちゃん、ちょっとだけお久しぶり」
この前、乱菊が遊びにきたのは今から1カ月ほど前。
ちょうど、浮竹が女神に攫われて4カ月が経った頃だった。
浮竹は相変わらず強いが、京楽は再覚醒をして、今までと比べ物にならないくらい強くなっていた。
「相変わらず、京楽さんの魔力の高さには驚きの言葉しか浮かばないわ」
「僕も、強くなりたくてね。きっかけがあって、再覚醒したんだよ」
「その再覚醒の内容、詳しく聞きたいけど、駄目よね?」
乱菊は、そっと京楽の手をとって、神々の谷間に誘導した。
「いくら乱菊ちゃんでも、言えないね。浮竹が嫉妬しちゃからね」
「おい、京楽、その手はなんだ」
乱菊の神々の谷間に手をつっこんでいる状態に、気づけばなっていて、京楽は焦った。
「いや、これは乱菊ちゃんが勝手に」
「問答無用!」
スパーンとハリセンで叩かれて。京楽は少しだけ涙目になるのであった。
「いやーん、やっぱりこの古城のご飯おいしいわ~」
「好きなだけ滞在するといい」
「じゃあ、お言葉に甘えて、1週間ほどここに泊まってもいいかしら?」
「ゲストルームはいくつもあるし、どれも空いてる。好きなようにするといい」
「やったあ!」
乱菊は、それから1週間泊まった。
その間に、京楽は乱菊にモデルになってくれと頼み、乱菊の肖像画を2枚完成させた。
「うーん、なんていのかしら。斬新だと言われれば、斬新ね」
「僕の浮竹は駄作っていうんだよ。僕の芸術を理解してくれなくてね」
「うーん。でも、プロの人が見たら、何か意見くれるかもね」
「僕にも浮竹にも、プロの芸術家の知り合いなんていないよ?」
「あたしにつてがあるの。ちょっと任してちょうだい」
そうして、乱菊は京楽の絵の何枚かをもって、出かけてしまった。
帰ってもってきたのは、金貨の袋だった。
「凄いわよ、京楽さん。先生が大絶賛なの。絵を売ってくれって言われて売っちゃたけど、別にかまわないわよね?」
「うん、僕はかまわないよ」
「信じられん。あの京楽の絵が売れたのか」
にわかに信じがたくて、その画商の名を聞くと、そこそこ有名な画商で、浮竹もその画商から何枚か高価な絵をかって、古城に飾っていた。
「あの絵がなぁ」
浮竹は、まだ納得がいかないようだった。
「もう、浮竹も素直に僕を褒めてよ!」
「ああ、良かったな京楽。あんな幼稚園児の落書きのような絵が評価されるなんて」
「酷い、何気にけなしてる!」
「まぁ、祝いだ。今日は俺が何か作って・・・・・」
「わあああ!お祝いとかいいから、今日は僕が作るね!」
そう言って、京楽はキッチンに向かってしまった。
その日の夕食を食べて、次の日の朝には乱菊はガイア王国の、古城に近い街にある屋敷に帰っていった。
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「あのー、浮竹さん、京楽さん、これ届け物なんすけど」
現れたのは、一護だった。
「誰からだい、一護君」
「ブラッディ・ネイから」
浮竹は荷物を受け取り、中身を見る。
そして中身を流し台に捨てて、容器をゴミ箱に放り投げた。
「何が入ってたんすか?」
「媚薬だ。おまけに強烈なやつ」
「ええ、勿体ない!」
京楽が、流し台を見るが、全部綺麗に流れた後だった。
「京楽に飲ませたら、お前朝まで俺を犯すだろう!ブラッディ・ネイは変なものしか送ってこない。この前は、大人のおもちゃだったか・・・叩き壊したが」
「はは・・・・」
一護は、乾いた笑いを浮かべるのであった。
「じゃあ、俺の用は済んだんで、戻りますね」
ピリリリリリ。
いきなり、警告音が響いた。
「な、なんすか?」
「侵入者だ。一護君は、安全な場所に避難していてくれ。奥のゲストルームにでも入っていてくれ」
「はい」
「行くぞ、京楽」
「うん、分かってるよ」
侵入者は、若い男だった。
「藍染の匂いと、魔人ユーハバッハの匂いがぷんぷんする」
「魔人ユーハバッハの血を、大量に注射されてるようだね」
「俺はグリムジョー・ジャガージャック。大人しく、殺されやがれ!」
グリムジョーは、鋭い爪で襲い掛かってきた。
「なんて速さだ!反応速度がはやい」
「足場を悪くしよう」
浮竹は、そう言って、足場を沼地にかえた。
「ちっ、これくらいで俺の素早さを奪ったつもりか!」
「浮竹!」
グリムジョーの爪が、浮竹の肩に触れた。
鮮血が舞う。
「よくも浮竹に傷を・・・!」
京楽は、その神に匹敵しうる魔力をとがらせて、グリムジョーに向けては放つが、グリムジョーは特技のスピードで、それを避けてしまった。
「く、ちょこまかと・・・・・」
「フリーズアイビー!」
浮竹が呪文を唱えた。
それは氷の蔦となってグリムジョーの体にまといつき、グリムジョーの動きを封じた。
「今だ、京楽!」
「うん、分かってるよ!」
京楽は、自分の血でできた槍で、グリムジョーの腹を貫ていた。
「がはっ」
「グリムジョー!?」
出てきたのは、一護だった。
「一護君、危ない!」
怪我を負ったものの、致命傷にはなりえず、グリムジョーは尖らせた爪で一護に襲いかかろうとした。
「一護!?一護じゃねぇか!」
グリムジョーは、振り上げていた手を下げた。
「やっぱりグリムジョーだ。懐かしいな」
「一護君、知り合いか?」
「ああ、浮竹さん。こいつ、ヴァンピールなんだ。生まれ故郷で一時期一緒に暮らしてた」
「今回の敵が、一護の知り合いだったとはな。止めた止めた。強そうで勝てそうにねぇし、命は惜しいしな」
そう言って、グリムジョーは尖らせていた爪を元に戻した。
殺気が消えて、一護の知り合いということもあって、浮竹と京楽も昂っていた魔力を通常に戻す。
「君は、魔人ユーハバッハの血に汚染されているね。取り除いてあげるから、こっちいおいで」
「なんだと?そんなこともできるのか?」
グリムジョーは半信半疑で京楽に近寄る。
京楽は魔法陣を描きだすと、グリムジョーの中の血液から、魔人ユーハバッハの血だけを取り除いた。
魔人ユーハバッハの血は、蠢いて次の標的に京楽を選んだ。
「おっと、危ない危ない」
京楽は自分の血を燃やし、ついでに魔人ユーハバッハの血を燃やして蒸発させた。
「これで、君はもう大丈夫だ」
その言葉に、グリムジョーが簡単に動く。前よりもスピードは落ちているが、いつもの自分の肉体だった。渦巻くような血液の濁りが消えていた。
腹の傷も塞がっていた。
ふと、グリムジョーが一護を見た。
「一護、今てめぇは何してやがるんだ」
「ああ、血の帝国で聖女ルキアの守護騎士をしてるぜ」
「守護騎士だぁ?面白そうじゃねぇか。俺も混ぜろとはいわねぇが、お前についていく」
「え、まじかよ。まぁ、俺のだちだし、ルキアに迷惑かけないなら、連れていってもいいぜ」
一護の言葉を受けて、グリムジョーは嬉しそうにしていた。
グリムジョーは戦いが好きだった。戦いの中で己を見つけていた。
「やっぱお前とのバトルが一番滾るからな。一護、今度俺と勝負しろ」
「とりあえず、ルキアの許可を得てからだな」
「話は決まったな。じゃあな、始祖の浮竹とその血族の京楽。藍染からお前らを殺せって命令されてたが、俺にはあいつの言葉を守る義理はねぇ。あばよ」
そう言って、突然襲いかかってきた藍染の手の者は、自分たちに危害をほとんど加えずに、血の帝国に一護と一緒に帰ってしまった。
「なんだか、台風のような子だったね」
「それより京楽、お前いつの間に魔人ユーハバッハの血を取り除けるようになったんだ?」
「ん、再覚醒してからだね。今度、君に魔人の血が入っても、僕が浄化できるから、安心していいよ」
「いや、まずそんな状態になってたらピンチだろ」
二人とも顔を見合わせて、血の帝国に行ってしまったグリムジョーの成功を祈った。
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「グリムジョーめ!あの裏切者が!」
魔国アルカンシェルでは、藍染が怒りに顔を歪ませていた。
「拾って育ててやった恩を忘れるとは・・・・・」
「藍染様」
「なんだ!」
「寵姫アルテナ様がお見えです」
「愛しいあなた」
ゆらりと、女神アルテナの魂を宿した女性が現れた。女神アルテナは、創造神ルシエードに滅ぼされる直前に、魂だけの存在となり、このアビスの世界に逃れてきていた。
「愛しいあなた。今度は、私たちの子がいくわ。注いでやった女神の力で、あのにっくき始祖浮竹と、その血族京楽を殺してやるのよ」
魂だけの存在となった女神アルテナは、アビスで女神の器を探して、藍染と出会った。藍染は、器にと、魔人ユーハバッハの血を与えた寵姫を差し出してきた。
その器は、嘘のようによく女神アルテナの魂と交じりあい、女神アルテナは復活した。女神としての力は魂にあった。憎き始祖ヴァンパイア浮竹とその血族京楽を葬れるなら、女神アルテナはなんでもした。
「女神と始祖魔族の子、セイラン」
「はい、母様」
女神アルテナは、藍染との間に子を産んでいた。子はセイランと名付けられた女の子であった。
臨月までに1カ月、あと4か月をかけて、セイランは10歳まで成長した。
「さぁ、行ってらっしい。始祖魔族と血族京楽を、いたぶってくるのよ」
「はい、母様」
セイランの顔には、なんの感情も生まれていなかった。
あくまで、女神アルテナにとっても、藍染にとっても、駒にしか過ぎなかった。
「女神アルテナ、次の子を産んでくれ」
「いいわ、愛しいあなたのためなら、何人でも産んであげる」
女神アルテナと、藍染は口づけを交わし合いながら、次の子を作るために寝所に引きこもるのだった。
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