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始祖なる者、ヴァンパイアマスター36

「あーんあーん」

小さな女の子が泣いていた。

「どうしたんだ?」

浮竹はその場にしゃがみこんで、女の子と視線を合わせた。

「母様が、命令するの。私、それが嫌で逃げてきたの」

「そうか。じゃあ、俺たちの古城においで」

女の子は、浮竹に手をひっぱられて、古城にやってくる。

その背中を、小さな女の子が刺していた。

「どうして・・・・・」

「あははは!死んで、始祖浮竹!」

再び刃物を手に、女の子は浮竹が動かなくなるまで刺しまくった。

「次は、あなたの番よ?」

ニタァと笑う女の子に恐怖して、京楽は気づけば浮竹の血まみれの体を抱えて、逃げ出していた。

がばり。

起きる。

全身に、ぐっしょりと汗をかいていた。

「ん・・・京楽?まだ夜明け前だぞ・・・」

隣には、ちゃんと無事な浮竹がもぞもぞと眠たげに寝返りを打っていた。

「夢・・・・でも、ただの夢じゃないね。予知夢というやつかな」

京楽は、寝汗を流すためにシャワーを浴びにいった。

シャワーを浴びて、また眠気が襲ってきたので、京楽はまた寝た。

次の夢は、浮竹と花畑で花の冠を作りあって、それを被せ合う、平和な夢だった。

「うーん浮竹、愛してるよ・・・」

そんな言葉を口にして、京楽は結局昼過ぎまで寝過ごすのであった。

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「小さな女の子に気をつけろ?」

「うん。君が刺される夢を見たんだ」

「ただの、夢だろう?」

「いや、あれは予知夢だと思う。女神クレスの血を口にして再覚醒してから、たまに未来の君の姿を見ていた」

浮竹が首を傾げる。

「それは、当たっていたのか?」

「うーん、微妙だね。ただの夢だった時もあるし、全然当たってない時もあるし、ごくまれに見た夢が本当に現実になった時もある」

浮竹は頷いた。

「よし、じゃあ俺は小さな女の子の傍には行かない。それでいいだろう?」

「うん、そうして。何か用があった時は、僕が対応するから」


冒険者ギルドに行くと、ラニとレニと会った。

「あ、浮竹様・・・・・・」

「元気にしていたか、ラニもレニも」

ラニとレニは涙を浮かべて、浮竹に泣きついた。

「うわあああん。裏切ってごめんなさい、浮竹様」

「ごめんなさい、浮竹様」

「冒険者として、立派にやっていけてるようだな」

涙をふいて、ラニとレニははにかんだ。

「私たち、Cランク冒険者になりました。今はBランク冒険者のパーティーにいます」

「Bランクへの昇格も間近だって、ギルドマスターが言ってました」

「そうか。よかったな、ラニとレニ。藍染に、何かされていないな?」

「はい。父様には何もされていませんし、コンタクトもありません」

「このまま成長して、立派な冒険者になるんだぞ、ラニ、レニ」

「「はい!」」

ラニとレニはそう言って、冒険者ギルドの外に出て行ってしまった。

「浮竹。言ったよね。小さな女の子には気をつけてって」

仏頂面で、京楽が浮竹を見下ろしていた。

「ラニとレニは13歳くらいだろう。そんなに、小さな女の子じゃない。それに、藍染とは決別したようだし」

「それでも、僕は心配なの!14歳くらい以下の女の子の近くには行かないこと。いいね?」

「なんだか、浮気を疑われている夫の気分だ」

そう口にして、浮竹と京楽は冒険者ギルドのギルドマスターと会った。

「すまない、急に呼び出して」

「いや、別にいい。それより、依頼の内容は?」

「ガイア王国の闘技場で、今度冒険者ギルドが主催する、闘技大会があるんだ。君たちには、是非闘技に参加して欲しい。どうだろう?」

「俺たちは目立ちたくない」

「僕もだね」

「君たちが、認識阻害の魔法をかけたヴァンパイアであるということは、すでに俺とごく一部の者も知っている。冒険者ギルドで今後も活動したいなら、出てくれないか」

「それは脅しか?」

「どうとってもらってもかまわない。ただ、闘技場に出てくれればいい」

「わざと負けてもいいのか?」

「Sランク冒険者のTOPとして、モンスターと戦う予定になっている。相手はモンスターだから、手加減する必要はないぞ。あと、参加してくれるなら、この間A級ダンジョンで発見された古代の魔法書を10個進呈しよう」

「参加するぞ、京楽」

「ええええ、浮竹!?ほんとにもう、魔法書をちらつかされたら、弱いんだから・・・」

こうして、浮竹と京楽は、闘技場でSランク冒険者として、モンスターと戦うことになるのであった。

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わああああああ。

闘技場が、熱で溢れかえっていた、

たくさんの冒険者や王国の騎士、それに腕に自信のある者が参加して、白熱のバトルを繰り広げていた。

参加者は全員で150人。

それぞれ、6つのブロックに分かれて、戦っていた。

6つのブロックからの勝利者が、準々決勝、準決勝、決勝と試合を進めていく。

浮竹と京楽は、優勝した王国騎士の騎士団長と刃を交えることもなく、特別セレモニーとして用意さえたモンスターと戦うことになった。

「うわぁ、あれドラゴンじゃないか!」

「本当だ!ドラゴンを、あのたった二人のSランク冒険者が倒すのか?」

みんな、ざわついていた。

ドラゴンが檻から出される。

大分弱っていたが、それでもドラゴンだ。

飛翔して、ドラゴンブレスを吐き出した。

「魔法兵、前へ!」

王国騎士団の魔法兵たちが、観客たちに被害がいかないように、結界を張った。

それは、浮竹と京楽が逃げ出すのを防ぐ役割もしていた。

「こんなドラゴン程度で、逃げると思われているなら、そんなことはないと思い知らせてやろう。いくぞ、京楽」

「うん」

二人は、灼熱の業火を身にまとう。

「「フレアランスフィールド!!」」

真っ赤な炎の槍が、ドラゴンの周囲を取り囲み、一気に射出される。

「ぎゃおおおおおおおお!!」

ドラゴンは、断末魔の悲鳴をあげて、どおおおんと倒れた。

「おーっと、これは強い!さすがガイア王国一のSランク冒険者、浮竹十四郎と京楽春水だーーー!!」

マイクをもったナレーターが、浮竹と京楽を皆に紹介するかのように、マイクをもってこっちにやってきた。

そのマイクをぶんどって、浮竹は一言。

「俺たちは強い。未踏破のS級ダンジョンも踏破した」

「おーっと、ここで魔法使い浮竹の言葉がでたー!剣士京楽は、魔法も使えたのですね?」

認識阻害の魔法で、浮竹はエルフの魔法使いに、京楽はハーフエルフの剣士に見えていた。

「あ、やば・・・・・」

京楽は再覚醒してから、身体強化とエンチャト系以外の普通の攻撃魔法も使えるようになっていた。そもそも、その気になれば浮竹の血族であるので、浮竹の魔法は使うことはできたが、京楽はそれを嫌っているようで、自分から魔法を使うことは少なかった。

「京楽、ずらかるぞ」

「待ってよ、浮竹!」

わぁぁあという歓声の合間に手を振りながら、浮竹と京楽は闘技場を後にした。

ギルドの戦士受付所で、報酬の魔法書10冊を受け取り、浮竹はアイテムポケットにそれを入れた。

「お兄ちゃん、すごいね!」

現れたのは、10歳くらいの男の子だった。

女の子ではなかったので、京楽は安心して浮竹の元へ行かせた。

「つめが甘いんだよね」

「がはっ」

男の子は、帽子をとった。

波打つ紫の髪をした、女の子だった。

浮竹は胸を特殊な金属で刺されて、吐血していた。

「きゃああああああ!!」

通行人たちが突然のことに悲鳴をあげる。

京楽は、とっさに浮竹を抱えて古城に戻るゲートを開けて、そこに飛び込んだ。

距離は近かったので、京楽でも帰還の魔法は使えた。

そのゲートに、女の子も一緒についてきていた。

「私の名はセイラン。女神アルテナと、始祖魔族藍染の子」

浮竹は胸に刺さった短剣を投げ捨てた。

「女神アルテナの子・・・これまた、厄介だな」

なんとか血の魔法を使って、止血だけはしておいた。特殊な銀を使っていて、浮竹はダメージを受けていた。

「うふふふ。この特殊な銀は、ヴァンパイアロードを屠るために特別に開発されたもの。傷がすぐに癒えないでしょう」

「浮竹、大丈夫!?」

「ああ、傷はそれほど深くはない。止血はしておいた。再生に時間はかかるが、問題はない」

「よくも僕の浮竹を・・・・・・」

ざわりと、京楽の血が踊り出す。

「特殊な銀を味わえ!」

そう言って、セイランは銃を取り出すと、浮竹と京楽めがけて発砲した。

ドロリと、その弾丸は、京楽の血の炎によって溶かされた。

「そんなばかな!」

セイランが叫ぶ。

「お返しだよ」

「きゃあああああ!!!」

血の炎に囲まれて、セイランは生きながら焼かれた。

「嘘よ、全部嘘!アルテナ母様から、藍染父様から無理やり殺せと命令されたの!私の意思じゃないわ!」

その言葉に、京楽は血の炎をおさめる。

「あははは、死ねぇ!」

京楽の腹を、特殊な銀の短剣が貫いていた。

「京楽!」

京楽はニタリと笑った。

その笑みに、セイランは恐怖を感じて、京楽から距離を取ろうとする。

けれど、特殊な銀をの柄をもった手が、離れなかった。

「子供だからって、容赦はしないよ」

「いやあああああああ!!」

セイランの体が燃え上がる。

再び生きたまま焼かれた。

でも、先ほどの炎よりも高い熱で、セイランが魔法でなんとかしようとしても、炎は消えなかった。

「京楽、大丈夫か?」

「浮竹こそ、大丈夫?」

「ばか、内臓がはみ出しているじゃないか!今、血で癒す」

浮竹は、自分の血を操り、深い京楽の傷を癒した。

「いやああ、助けてええええ!死にたくない!!」

「そのまま、死んでしまうといいよ。女神アルテナも藍染も、僕らにとっては敵だ。その子供というだけで、万死に値する」

「京楽?」

いつもと違う酷薄な京楽に、浮竹が戸惑いがちにその服を引っ張った。

「ん、どうしたの浮竹」

灰となってしまったセイランを確認して、京楽は優しい声を出した。

「いや、なんかいつもの京楽と違うなと思って」

「僕だって、残酷になれるよ。君を傷つけ者は、誰であっても許さない」

「ん・・・京楽、元のお前に戻ってくれ」

浮竹が京楽を抱きしめると、京楽は渦巻く血の海をひっこめて、いつもの京楽に戻っていた。

「うん、心配かけてごめんね、浮竹」

「元に戻ったのなら、それでいいんだ」

優しい鳶色の瞳を確認して、浮竹は京楽を抱きしめ続けていた。

---------------------------------------------------------

「藍染って、まるでゴキブリだね」

「それは前から俺も思ってた」

風呂場でそんな会話をしながら、お互いの体を髪を洗い合った。

「あ・・・・・」

京楽の手が、浮竹のものを撫であげた。

「ばか、風呂場だぞ」

「別にいいじゃない。ベッドに行くまで、待てないよ」

「んあああ」

京楽の手にしごかれて、浮竹は京楽の手に欲望を放っていた。

「ああ!」

シャワーで、その手の精液ごと泡が流されていく。

「念のために、ここにもローション置いておいて正解だったね」

「春水の、バカ・・・・・」

そう言いながらも、浮竹の体は貪欲に京楽を求めた。

「あ・・・・・」

京楽の手が、浮竹の胸の先端をつまみあげる。

「んっ」

浮竹のものは、また勃ちあがりかけていた。

京楽はローションを浮竹の蕾に垂らして、意地悪く言う。

「自分でならしてみて?」

「あ、や・・・」

そう言いながらも、おずおずと浮竹は自分の蕾に手を入れて、中をぐちゃぐちゃにかき混ぜた。

「あ、春水のじゃないと、いいところに届かない。春水、お前をくれ」

「エロくなっちゃったねぇ。ご褒美をあげなくちゃね」

「ひあああああああ!!!」

京楽の熱に引き裂かれて、浮竹は精液を放っていた。

「やあああ」

「こんなに飲みこんで、淫らだね?」

「やっ」

「ほら、鏡に映ってるよ」

結合部を鏡で見せられて、浮竹は眩暈を覚えた。

「やあああ!春水、今日のお前は意地悪だ・・・・・」

「ごめんごめん。優しく愛してあげるよ」

「あ、あ、あ、あ!」

京楽が刻むリズムと一緒に、浮竹が声を漏らす。

「ああああ!!!」

京楽が、浮竹のうなじに噛みついて、血を吸った。

パシャンと、お湯の中に浸かった。

「ああ、や、お湯が入ってくる・・・・あああ」

「ああ、君は僕のものだって、体に刻みこんであげないとね?」

「ひあ!」

ごりっと、結腸にまで入ってきた京楽のものを、浮竹は自然と締め付けていた。

「んっ、中に出すよ?受け止めてね」

「ひああああああ!!!」

びゅるびゅると勢いよく、京楽の精子が浮竹の胎の奥に注がれる。

「まだまだ、いっぱいあげるからね?」

「あ、やあああああ」

結局、二人はのぼせた。

「やっぱり、お風呂でエッチはしないほうがいいね。声が響いていいけど、のぼせちゃう」

「のぼせるまで、お前がエロいことをするからだ!」

浮竹は、氷水を飲んだ。

それを、口移しで京楽にも与えた。

「んっ」

舌を絡められて、浮竹が京楽の頭をこづく。

「もう、今日はしないぞ」

「うん、分かってるよ」

のぼせた体を冷やしてから、二人は寝間着を着てベッドに横になる。

浮竹は、すぐにすうすうと眠りに旅立っていった。

「僕の再覚醒は、君を守るためにあるんだよ・・・・・・・」

京楽は、眠りに旅立った浮竹の白い長い髪を、飽きもせずずっと撫で続けるのであった。


-----------------------------------------------------------------------

「また失敗か。まぁいい、次の子はもういる」

藍染は、巨大な試験官の中に漂う、8歳くらいの男の子を見ていた。

「お前の名は、ゼラムだ。さぁ、生まれておいで」

試験官の中の黄金の水が吐き出されて、ゼラムと名付けられた、女神アルテナと藍染の子は、自分の父を見上げた。

「おとうさま?」

「そうだ。私が君の父親だ。母親は女神だ。君は選ばれた子だ。何をすればいいか、分かっているね?」

「始祖の、浮竹と、血族の、京楽を、葬る・・・・・・」

たどたどしい言葉で、ゼラムがそう口にした。

もう、魔人ユーハバッハに血は使っていなかった。

使っても、意味がないと分かったのだ。

女神との間に生まれた子は、飛躍的な身体能力をもっていた。

「ぼく、殺す。始祖、浮竹と、血族、京楽を」

ゆっくりとゼラムは立ち上がり、服を着て、藍染を見上げた。

「おとうさま、ぼく、行ってくる」

「ああ、行っておいで」

幼い我が子を、死地に追いやるように、藍染は笑った。

「ゼラム、君には浮竹の細胞を混ぜておいた。再生能力だけなら、きっと血族の京楽を超えるはずだ」

藍染は知らなかった。

血族の京楽が再覚醒し、浮竹と互角なほどに魔力があがっているのを。

強くなっているのを。

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