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小説掲載プログ
03 2024/04 28 29 30 05

始祖なる者、ヴァンパイアマスター41

「本当に、大丈夫だろうね?」

「しつこいな、俺を信じろ!」

「だって君、不器用そうだから」

京楽は浮竹に小突かれて、そのまま口を閉ざした。

京楽の髪が大分伸びてきたので、浮竹がカットすることになったのだ。

浮竹は、いつも京楽に髪を切ってもらっていた。その京楽はというと、いつも近くの町の美容院で切ってもらっていた。

それが気に食わなくて、浮竹が自分で切ると言い出したのだ。

あえて、鏡のない部屋に通されて、ブラシでやや癖のある長い黒髪をすいていく。

「お前の髪、硬そうにみえて柔らかいんだとな」

京楽の髪を一房手に取り、ひっぱった。

「あいたた、ひっぱらないでよ」

「す、すまん。じゃあ、切るぞ?」

「もうさっぱり、短くしちゃって」

人間の頃の京楽は、髪が短かった。

あの頃の髪型を思い出して、はさみでばっさりといった。

「あ”」

「え、何?何か起こったの!?」

「な、なんでもない!」

どうしよう。

浮竹はいきなり京楽の頭に10円ハゲをこさえてしまった。

「ええい、なるようになれ!」

そのまま、勢いで髪を短くしていると、10円ハゲが4つできた。

「ああああ~~~~~~」

「ちょっと、鏡見せて!」

京楽は、浮竹の手から手鏡を奪うと、自分の顔を見た。

「なんじゃこりゃああああああ!!」

京楽の悲鳴が、古城中に響き渡るのだった。


結局、浮竹の血を口にして、元の長さと同じくらいまで京楽は髪を伸ばした。

「美容院いってくる」

「俺もいく」

「どうして。君の髪は、この間僕が切ったでしょう?それ以上短くしたいの?」

明らかに髪を短くするのに不満気な京楽に、浮竹は小声で。

「お前と、離れていたくない」

そう口にして、カーッと真っ赤になった。

「浮竹、かわいい!」

抱きしめてついでに口づけてくる京楽に、浮竹は脅し入れる。

「また、10円はげこさえたいのか?」

「いえ、ごめんなさい。調子に乗りすぎました」

「分かればいい」

そうして、古城から一番近くの町、アラルの町にやってきた。

冒険者ギルドにもついでに顔を出した。

今急ぎの依頼はないようで、これといったクエストもなかったので、浮竹も京楽も、冒険者ギルドを後にする。

風の噂で、アリス・マキナというSランク冒険者が、4人パーティーで40階層あるS級ダンジョンを踏破したと聞いて、頑張っているのだなと思った。


「ここが、僕の行きつけの美容院」

「あ~らいらっしゃ~い。春水ちゃん、今日は髪のカットだけ?髪も洗いましょうか?ひげもそる?」

店長はオカマだった。

時折ひげのない京楽がいるのは、この美容院のせいだと分かって、浮竹は面白くなさそうに、そソファーに腰かけた。

「あら~。こっちのかわいい子は、春水ちゃんのいい子?」

じろじろと見られて、浮竹はたじたじになった。

「もう、店長、そういうのはやめてって言ってるでしょ!」

「あら、この前の金髪のかわいい子と違うのね。どっちが本命?」

店長の言葉に、浮竹がゴゴゴゴと怒る。

「やん、怒っちゃや!」

「京楽、金髪の子とは・・・・・・」

「わあああ!乱菊ちゃんだよ!いい美容院教えてって言われて、一度だけ一緒にきたんだ」

浮竹はほっとした。

まさか、京楽が浮気なんて、そんなことするわけはないとは分かっていたが、それでも肝が冷えた。

「ファッション雑誌か・・・・」

今を時めくモデルやらが、表紙を飾っていた。

「あら、そっちの白い髪のかわいこちゃん・・・・」

「浮竹だ。浮竹でいい」

「浮竹ちゃん、良ければこの美容院の専属モデルにならない?あなたくらいの綺麗な子を探していたのよね~~~」

「悪いが、断る。顔をあまり知られたくない」

「あら残念だわぁ」

店長はくねくねと動いた。

見た目がいいオカマならいいが、けつ顎で、マッチョな姿に圧化粧をして、ふりふりのゴシックロリータの服を着たオカマを見続けては、気分も悪くなるというもので、浮竹は一生懸命雑誌を見るふりをした。

「あら、それ、逆さまよ?」

「ああ、気が動転していた」

見ていた雑誌を反対にもって、浮竹は心を無にした。

オカマの店長の存在を、なかったことにした。

「いや~~ん。京楽ちゃん、魔力がすごーい!どうしたの、この魔力!

「ああ、ちょっとわけがあってね」

店長は京楽の髪を洗い、魔法で熱風をだして乾かすと、ブラシで癖のある京楽の髪をまっすぐにして、髪を切っていった。

リズミカルに、チョキチョキと切っていく。

その技が欲しくて、気づけば浮竹はオカマの店長の傍にきて、その手をじっと見ていた。

「いやん、浮竹ちゃん。求愛なら、後でね?うふん」

浮竹は精神に1000のダメージを受けた。

「求愛・・・」

ズーンと沈みこんで、ソファーにまた腰をかけて、ファッション雑誌に適当に目を通した。

いつも、京楽が買ってくる適当な服を着ているつもりだったが、それがファッション世界ではやっている衣服だと知って、浮竹は京楽に後で礼を言おうと思った。

「あっは~~~ん。じゃあ、ひげ剃るわね?」

「ああ、頼むよ」

髭をそられてしまい、髪を切られた京楽は、いつもと違った風に見えて、浮竹はドキドキしていた。

「どうだい、浮竹。似合うかい?」

「け、け、け」

「け?毛?」

「けしからん!!!」

京楽を抱きしめて、つるつるしたほっぺに頬ずりをして、口づけていた。

「ちょっと、浮竹、店長が見てる!」

じーっと穴があくほど、店長の熱い視線を感じた。

「春水ちゃん、あたし、ずっと春水ちゃんのことが好きだったの」

「京楽は渡さないぞ!」

「浮竹ちゃんも素敵だし、よかったら3Pで、あたしと(以下放送禁止用語)とか、しない?」

浮竹と京楽は、金を払ってその場から逃げ出した。


「ま、まさか店長はオカマなだけでなく、そっちの趣味もあったとは・・・・・」

「僕、好きだとか告白されちゃった。今度から、あの美容院いけないね。代わりの美容院探さないと」

二人して、手を繋いで歩きだした。

このアビスの世界は同性愛者が多いので、不思議がる者はいなかった。

人類の3分の2が男性で、残りの3分の1が女性である。当然、あぶれた者の中には、浮竹と京楽のような関係になる者も多かった。

「猫の魔女乱菊のところに行こう。この前依頼していた魔道具が、そろそろ出来上がっているはずだ」

アラルの町の外れにある、屋敷を訪れた。

チャイムを鳴らすと、神々の谷間も露わな乱菊が出てきた。

「乱菊、ちゃんと衣服を着ろ!」

「あら、シャワー浴びてたのよ。気配であなたたちだって分かったから、出てきただけよ。ちゃんと自己防衛はできるし、心配しなくてもいいわよ?」

「と、とにかく乱菊ちゃん、服を着て!」

浮竹も京楽も真っ赤になっていた。

「そうそう、頼まれていた魔道具、できたわよ?」

それは、小さな水晶玉だった。

「こんなに小さいのか?」

「女神アルテナとやらの、侵入を防ぐ効果があるわ。血の帝国全てを覆いつくすほどに範囲を広げておいたから」

「約束の大金貨2万枚だ。小切手で払う」

「毎度あり~~~♪」

乱菊は、らんらんと鼻歌を歌いながら、その神々の谷間に小切手を入れた。

乱菊への用も終わり、二人は古城に帰還した。

それから、急いで血の帝国にいき、ブラッディ・ネイに水晶玉を渡して、それはブラッディ・ネイが首飾りにして自分に身に着けた。

「ボクが血の帝国の中心だからね。これでいいでしょ、兄様?」

「古城に遊びに来るときは、それを寵姫にでも身に付けさせておけ」

「分かってるよ、兄様」

そのまま、浮竹と京楽はブラッディ・ネイの宮殿に一晩泊まり、翌日古城に戻っていった。

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「あー。とえあえず女神アルテナについては、血の帝国に関しては一安心だ」

「そうだね。でも、気をつけないといけないよ。また、女神アルテナと藍染の子供がくるかもしれない。あのレキとサニアって子も、二人の子供だったようだし。よくもまぁ、こんな短期間で4人も子供を作って、ある程度の年齢まで仕上げたものだよ」

「禁呪だな。人体に使用してはいけない、成長促進の秘術を使っているんだろう」

そんなことを言っていると、来客の知らせがきた。

リンリンリン。

誰かと思い、姿を見ると、オカマの店長がフードを深く被った子供を連れてきていた。

「なぜ、オカマの店長がこの古城を知っている」

「前に、つけられたことがあったんだ。その時に知ったんじゃないかな?迷惑きわまりないことだけど」

とりあえず、浮竹と京楽は、客人として迎え入れるつもりで扉を開いた。

「死ね!」

いきなりの攻撃に、浮竹は対処しきれずに、胸を血の刃で貫かれていた。

「子供!?浮竹にそっくりだ!」

「いやあああああ!!浮竹ちゃんになにするの!」

オカマの店長は、迷子になった浮竹の弟を連れてきたのだと説明しながら、浮竹の傷を見てくれた。

「幸い、致命傷じゃないわ」

浮竹が傷を癒していく姿を見ても、驚かない。

何故かと思っていると、店長は人間とヴァッパイアの間に生まれたハーフのヴァンピールだった。

「この子、敵なのね!?」

「ああ、そうだ。わざわざ連れてきて、ありがた迷惑だ」

「どのみち、あなたたちを襲っていたわ。私は力になれそうにないから、奥に引っ込んでいるわね?」

「そうしてくれ」

京楽は、魔力をどす黒く染め上げていた。

「よくも僕の浮竹を・・・・・」

「何故、俺と同じ姿をしている!」

「そうなるように、あんたの血から作られたからだよ、始祖の浮竹。僕はイザベル。お前たちを殺せないまでも、痛めつけて僕は自由になるんだ!」

ニタリと、京楽が笑った。

「僕の愛しい浮竹と同じ姿をしていたら、攻撃を加減されるとでも思ったのかい?」

猛毒の京楽の血を注がれて、イザベルは苦しんだ。

「なぜ、血族の血に毒が・・・!」

「東洋のお札を吸収したからね。僕の血は、浮竹以外には猛毒だよ」

「化け物が!」

「嬉しいね。最高の褒め言葉だよ」

ニターっと、京楽は不気味に笑った。

それを、浮竹が不安そうに、心配そうに見ていた。

「死ね!!」

血の刃を作り出して、攻撃してくるも、魔力は浮竹の半分以下で、京楽は獲物を弄ぶようにじわりじわりとイザベルを追い詰めた。

「さぁ、君の番だよ」

イザベルは血の鎌を作り出すと、京楽を無視して、浮竹に向かっていた。

「フレイムウィンド!」

炎をまとった風に追いやられて、血の鎌は浮竹には届かず、イザベルは舌打ちした。

「僕と同じはずの存在なのに!」

「全然違うよ。僕の浮竹は、君みたいに醜くない」

京楽は血の刃をいくつも作ってイザベルを更に追い詰める。

イザベルは、再生が追い付かない体を捨てた。

「な、アストラル体!神だというのか!」

「正確には、神の魂をもっているだけさ。僕は、イザベル。でも、女神リンデルでもある!」

アストラル体となったイザベルは、浮竹を魔力で締め上げようとして、愕然とする。

「始祖浮竹、何故お前の魂に神格がある!お前も、神だというのか!」

「なんのことだかわらかんな!ゴットフェニックス!」

アストラル体には通常攻撃は効きにくい。

不死鳥をまとった炎が、イザベルのアストラル体を襲った。

「熱い、熱い、熱い!」

転げまわるが、神であるために易々と死ねない。

「あははは。神の魂を宿したことに後悔するんだね。君が死ぬまで、業火で燃やしてやろう」

「京楽?」

浮竹が、また不安そうに京楽を見た。

「僕は大丈夫。さぁ、続きといこうか、イザベルとやら?」

「もう、いっそ一思いに殺してくれ」

「そんなわけにはいかないねぇ。浮竹を傷つけた代償は高いよ?」

「ああああああああ」

自我が崩壊しそうになるまで、炎でじっくりいたぶり、京楽は満足した。

「もう、死んでもいいよ」

「僕は神なのに、なんで・・・・・ああああ、父さま母さま」

そう言い残して、イザベルは完全な灰となって滅んでいった。

「京楽?」

「どうしたの、浮竹?」

そこには、いつも通りの京楽がいた。

「戦闘だと、お前が別人のように感じる」

「そう。でも、僕は僕だよ?」

「ああ、分かっている。俺が心配すぎなだけなんだろう」

「ごめん。君を不安にさせてしまったね?ごめんね?」

頭を撫でらて、キスをされた。

それを、オカマの店長は全部見ていた。

「いや~~ん、愛しい姫の為に魔王になる京楽ちゃん!萌えだわ~~」

「お前はさっさと出ていけ!」

浮竹はヴァンピールであるために、記憶は奪わず、古城に続く森へのゲートをあけて、そこに店長を放り込んだ。

「また、私の美容院、利用してね?」

うっふんとウィンクされて、浮竹と京楽は顔を青くした。

「もう、二度と利用しない」

「そうしろ。あいつは、別な意味でやばい」

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「あれが、始祖浮竹。創造神ルシエードのただ一人の神の寵児か・・・・・・」

オカマの店長・・・・いや、創造神イクシードは、始祖の浮竹を見て、納得した。

「ルシエードの子らしい。血族に甘すぎるところとか、昔のルシエードにそっくりだ」

創造神イクシードは、魂に神格のある浮竹を神にするかしないかの調査にやってきたのだ。

「少なくとも、神にするには未熟すぎる。血族の暴走も止められないのでは、話にならない」

「あら、きていたの」

古城の外の森で、妖艶な美女と創造神イクシードは巡り合った。

「女神アルテナ。お前は極刑になったはず!」

「うふふふ。魂だけの存在になって、このサーラに逃げてきたの」

「お前の存在は、神々の怒りを買っている!滅べ!」

その絶対の力は、働かなかった。

「やはり、ヴァンピールの依代には限界があるか。女神アルテナ、この世界から去れ。さもなくば、神々の怒りでお前の魂は永遠の氷獄へ閉じ込められるであろう」

「ふん、創造神イクシード。神になるのは、私の夫藍染よ」

「あれは神になれぬ。魂に神格がないし、その資格もない」

「いずれ、彼は神になるわ。その側には、私がいるの」

ゆらりと、女神アルテナは消えてしまった。

「女神アルテナを敵に回しているのか・・・一応、ルシエードの耳にいれておくか」

創造神イクシードは、依代であったヴァンピールの体から離れて、サーラの世界へ帰還する。

「あらやだ私、どうしちゃたっのかしら。浮竹ちゃんの弟を古城にまで連れていったのは覚えているけど・・・・・・」

店長には、創造神イクシードに憑依されていた間の記憶はなかった。

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「まただめだったか・・・・・」

「あなた・・・・・・」

「魂が神でもだめだと?ふざけるな!」

藍染は、ものに当たり散らしていた。

「今度は、私の分身体がいくわ。血の帝国であいつらの大切やつらの命を奪って、あの始祖浮竹と血族京楽を、あっと言わせてみせるわ」

「女神アルテナ・・・・それは面白い策だ」

女神アルテナは知らなかった。

自分の存在が、分身体であろうとも、血の帝国に入れないようにされていることを。


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