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小説掲載プログ
03 2024/04 28 29 30 05

始祖なる者、ヴァンパイアマスター43

魔神となった京楽は、以前の京楽とあまり変化はなかった。

ただ、身にまとう膨大な魔力と、魔神であるせいで、最初は浮竹を驚かせてしまったが、京楽が以前と変わらいと知って、浮竹の態度も依然と同じで変わっていなかった。

「それにしても、勇者の称号をもらったと思ったら、次に魔神になるなんてな」

「魔神だからといって、特別何かをしなければいけないわけじゃないからね」

「お前は忙しいやつだな」

「だって、魔神になったのも、君を守りたい一心でなったものだから」

「普通、伴侶を守りたいといって、魔神になるなど、聞いたことがない」

「僕は後悔してないよ。君を守る力を手に入れた。魔神となったことで、更に魔力もあがった。だから、後悔はしていない」

京楽は、まるで自ら望んで魔神になった気がした。

「昔は俺がお前を守っていたのにな。お前は再覚醒するわ、魔神になるわでややこしい。今じゃ、俺がお前に守られている」

「元々、血族は主を守るために存在する。僕は、君を守れるなら魔神だろうと邪神だろうと、なんにでもなってやる」

浮竹は、京楽に抱きしめられていた。

「新しいS級ダンジョンが見つかったんだ。魔神であるお前の力を確認するついで、踏破するのはどうだ?」

「いいね。さっそく行こうか」

京楽は乗り気だった。

浮竹と京楽は、二人分の水と食料を用意して、その新しいS級ダンジョンに向かった。

一番近い町まで空間転移で移動し、そこから馬車で3日もかかる僻地にあった。

新発見されたばかりなので、他のSランク冒険者がちらほら見えた。

ざわざわと、他のSランク冒険者に騒がれた。未踏破のS級ダンジョンを何度も攻略した、ダンジョン荒らしのSランク冒険者だと言われた。

何度同じダンジョンを踏破するのも勝手だし、そもそもダンジョンは攻略するためにあるのだ。

冒険者が寄り付かなくなったダンジョンでは、間引きする者が現れず、モンスターの異常繁殖があってスタンピードという、ダンジョンからモンスターが溢れかえり、近くの村や町を襲うことがある。

なので、ダンジョンには定期的に冒険者が入るように、異常繁殖したモンスターの討伐依頼が出て、報酬金をはずんでもらえたりするので、冒険者が全く立ち入らないダンジョンはなかった。

「あれ、Sランク冒険者の浮竹と京楽じゃないか」

「ああ、ガイア王国一のSランク冒険者で、ドラゴンダンジョンも突破したという噂のやつらか」

他の冒険者から見ると、浮竹はエルフ魔法使い、京楽はハーフエルフの魔剣士に見えた。

元は剣士の見た目だったのだが、再覚醒してから魔法を使えるようになったので、魔剣士に変えておいたのだ。

「まるで、僕たち見せ物だね」

「気にするな。行くぞ」

浮竹は、S級ダンジョンに入ろうとする。

それを、他の5人のSランク冒険者が阻んだ。

「おっと、先に俺らが踏破する。お前らは、大人しく帰りな」

「ダンジョンは自由に攻略できる。お前たちにその権限はない」

先に行こうとする浮竹の肩を、人間の弓戦士が掴んだ。

「おや、動いてもいいのかい?エルフの魔法使いといっても、しょせん魔法使い。こちらの風のヒューイにかかれば・・・・・」

京楽は、瞳を真紅にして、ちゃきっと魔剣を抜いて、すぐに元に戻した。

「ぎゃああああ、服がああああ!!」

「うわああ、なんだ!?」

「一体どうなってるんだ!」

5人のSランク冒険者は、武器防具を破壊されて、パンツ一丁になっていた。一人、女性が混じっていたので、女性の衣服には手を出さなかったが、武器と防具は破壊した。

「お前たちのしわざか!」

5人パーティーのリーダーが、パンツ一丁のまま、浮竹に殴りにかかる。

「ファイア」

「あちーーー!!あちあち、俺の自慢の赤い髪が!」

「毛根が死滅するまで焼いておいたから」

京楽ににーっこりと微笑まれて、Sランク冒険者のパーティーはへなへなと力尽きた。

「なんだよ・・・あいつ、魔神じゃねーか!」

分かる者は分かるようで、聖職者の青年は、パンツ一丁だが、神に祈った。

「ああ、神よ、あの忌まわき魔神に罰を!」

「へぇ、僕に罰を。じゃあ、僕が君に罰を与えても平気だね?」

「へ?」

「ファアイサークル」

「あちちちち、あちゃーーーー!!」

聖職者の青年は、頭を燃やされて毛根が死滅していた。

「毛根まで死なせておいたから、今度からはハゲのままでいるか、かつらでもかぶりなよ」

Sランク冒険者の5人は、「ギルドに訴えてやる」と言って逃げていった。

それを、他のSランク冒険者が見ていたが、浮竹と京楽は気にせずダンジョンに入っていった。

1階層。

見るからに怪しい宝箱があった。

「宝箱だ!」

「はいはい、ミミックだね」

「暗いよ怖いよ狭いよ息苦しいよ~~~」

上半身をばたばたさせて、浮竹はもがいていた。

「よいしょっと」

京楽は浮竹を助け出すと、ミミックにとどめをさす。

「ぎゅいいいい」

魔神の魔力吸って、銀色から刀身を真紅に染め上げた、元ミスリル銀の魔剣は、完全なる魔剣になっていた。

「お、魔法書。らっきー」

浮竹は魔法書をアイテムポケットに入れた。

「それにしても、その魔剣随分禍々しくなったな」

「そうだね。僕が使っているせいだろうね」

「魔剣ラグナロク。元々その魔剣は、そう呼ばれていたが、力をなくしていた。魔剣ラグナロクが名前だ。京楽、その魔剣の名を呼べば、離れていても召還できるだろう」

「へえ、そんな魔剣なんだ。魔剣ラグナロクだね。覚えておくよ」

二人は、敵を倒しながら宝箱を見つけては、浮竹がかじられていた。

2階層にくると、ミミックに齧られている他のSランク冒険者と鉢合わせた。

「助けてくれ!ミミックに仲間が!このままじゃあ、ミミックごと破壊するしかない!仲間も危険だ!」

助けを求めてくる冒険者に、浮竹はそのミミックにかまれていた冒険者のけつを蹴った。

「うわああああ!?」

驚いた冒険者は顔を更にミミックに近づけさせて、ミミックはおえっとなって冒険者を吐き出した。

「ミミックにかじられた時は、体をミミックの奥までくいこませると、ミミックはおえっとなって吐き出すから、吐き出した後のミミックを退治して、ドロップしたアイテムを回収するといい」

そう言って、浮竹はミミックを倒してしまった。

後に出てきた宝者は、ミスリルのインゴットだった。

「これは、俺たちのものだぞ!」

「そうだそうだ!後からやってきたくせに、俺たちの宝をとろうとするな!」

ミスリルのインゴットを前にした醜い人間の争いに、浮竹も京楽も辟易しながら何も言わずに去って行った。

「なぁ、京楽」

「なんだい?」

「人間って醜いな。特に金が絡むと」

「まぁ、さっきの奴らも命がけで冒険者やってるんだろうし、仕方ないよ。僕らみたいに踏破はできないだろうし」

10階層にいくと、ボスは倒れたばかりで、財宝の間が開いていた。

ボスの近くに死体が二つ。

相打ちしたのだろう。

財宝の間にも、死体が二つ転がっていた。

財宝に埋もれるように死んでいた男女の遺体を見て、浮竹はせめて安らかに眠れるようにと、苦手な聖属性の魔法を使って、死体を弔うと、その魂は京楽に吸い込まれていった。

「お前が魔神なの、忘れてた。魔神は死者の魂を食う」

「僕はそんなの食べたくないよ」

すると、吸い込まれていった魂がぽぅっと浮き出て、天に昇っていった。

「どうやら、お前の意思でどうにかできるようだな」

「ならありがたいね」

10階層の宝は放置して、20階層までやってきた。

出てきたのは、炎の精霊サラマンダー。

精霊がボスなのは珍しく、浮竹と京楽は協力しあい、氷の魔法を使って仕留めた。

「我、汝の精霊とならん」

倒したことで、強制契約が成立し、浮竹と京楽がサラマンダーを使役できるようになっていた。

浮竹はともかく、京楽は精霊を使役するのは初めてのようで、用もないのに何度もサラマンダーを呼び出して、怒られていた。

財宝の間にいくと、金銀財宝の他に古代の魔導書が10冊、後ミミックの宝箱があった。

「宝箱!」

キラキラ目を輝かせて、浮竹は宝箱をあける。

やっぱりミミックで、浮竹はかじられていた。

「怖いよ暗いよ狭いよ息苦しいよ~~~」

「はいはい」

京楽が助け出すと、浮竹は京楽の魔剣を手に、ミミックを倒してしまった。

「ふむ。切れ味がすごいことになってるな」

浮竹は、魔剣ラグナロクを京楽に返した。

ミミックを倒した後には、古代の魔道具が出現した。

「何々・・・・ドラゴン化する魔道具。ふむ、いらないな」

そうは言いつつも、魔道具屋で高く売れるので、アイテムポケットにしまいこむ。

30階層、40階層と進み、1日で50階層にまできていた。

ボスがレッドドラゴンの群れだった。

「京楽、お前ひとりで倒してみろ」

「お安いごようだよ」

京楽は、魔剣ラグナロクを手に、ドラゴンの炎のブレスを弾き、首を一刀両断してしまった。

「ぎゃおおおおおお!!」

「ぐるるるるる!」

襲いかかってくるレッドドラゴンを、すぱすぱと切っていく。

魔神になっただけあって、強すぎた。

もはや、ドラゴンさえも雑魚だ。

それは浮竹にも同じことだったが、京楽の実力がちょっと知れて、浮竹は嬉しそうだった。

「お前を血族にした頃は、こんな対等の力関係になれるとは思っていなかった」

「僕も、君を守れるくらいの存在になれるとは思ってなかったよ」

「強くなったな、京楽」

「うん」

「魔神であるが、今後も俺の血族として縛られてくれ。俺の血族である限り、お前が魔神から邪神になることはない。邪神になったら、神々に滅ぼされるからな」

「魔神のままでいいよ。邪神になんてなりたくない」

「ああ、お前はそのままでいい」

その日は、50階層の財宝の間で眠った。テントを出して、布団をしいて毛布をかぶって寝た。
ちなみに夕飯は、ドラゴンステーキだった。

ポチには、ドラゴンステーキを、劣化防止の魔法をかけて、1週間分出しておいたので安心だった。

次の日は、最後の90階層までやってきた。

ボスは真竜の、竜族であった。というか、恋次だった。

「またお前か!またバイトか!」

浮竹がつっこんでいた。

「いやあ、すみません。またドラゴンブレス吐いて、白哉さんの服ぼろぼろにしちまって・・・
金が緊急で必要になって、ダンジョンマスターの古代エルフから、前借りで大金貨3万枚かりちまって」

カイザードラゴンであり、竜族の始祖である恋次は強い。

でも、仲間うちに争うのは嫌なので、浮竹は恋次に声をかける。

「降参か、京楽と一対一の対決か。どっちかを選べ」

「降参っす。なんなんですか、京楽さん、魔神になっちゃってるじゃないっすか」

「まぁ、深い事情があってねぇ」

「ただ、俺を守りたいと病んでいって、残酷になっていったら、魔神になっていただけだ」

「魔神ってそんな簡単になれるものでしたっけ」

「カルマを相当積んでいるらしいぞ、京楽は。そのせいで魔神になった」

「なるほど。まぁ、降参っすけど、流石に戦ってもいない相手に財宝はあげれないので、今回は諦めちゃくれないすかね」

「まぁ、京楽の力をためすためのダンジョン攻略だから、財宝は諦めよう」

「じゃあ、お礼にダンジョンマスターからもらった古代の魔導書10冊あげます」

「何、古代の魔法書だと!?」

浮竹は目を輝かせて、恋次から魔法書を10冊受け取ると、大事そうにアイテムポケットの中にしまいこんだ。

「じゃあ、一応踏破ということで」

「すんませんね、俺がラスボスで」

「まぁ、このダンジョンのお陰で、僕は自分の力がどれくらいか分かって満足だけどね」

「こいつ、レッドドラゴンをスパスパ包丁で切るかのように、魔剣で殺してた」

「ええ、あのレッドドラゴンの群れを・・・って、その魔剣めちゃくちゃ呪われてるじゃないっすか!」

恋次が、竜化を解いて人になると、京楽の腰にあった剣を見て驚いていた。

「ええ、これ呪われてるの?」

今度は、京楽が驚いた。

「禍々しいの、半端じゃいっすよ。多分、普通の人間が扱ったら、魂を徐々に食われていきますね」

浮竹は、朗らかに笑った。

「俺も使ってみたが、どうってことなかった。他の人間が使うはずもないし、京楽のための魔剣なんだから、それくらいの曰くつじゃないとな。借りにも魔神なんだし」

「はぁ・・・」

恋次は納得したのか分からないが、帰還用の空間転移の魔法陣を起動してくれた。

「じゃ、俺はまだバイトの期間が残ってるんでこれで」

「ああ。白哉にもう、ドラゴンブレス吐くんじゃないぞ」

「肝に命じておきます」

そのまま、浮竹と京楽は、S級ダンジョンから戻ると、3日かけて馬車で移動して最寄りの空間転移の魔法陣のある町までやってきた。

空間転移して、古城に近いアラルの町までくると、早速冒険者ギルドにいって、ドラゴンの素材やら、財宝の間で手に入れたミスリル銀の武器防具、魔道具、古代の遺物などを売り払う。

財宝だけで、大金貨9万枚になった。

素材の方は、レッドドラゴンの群れがあったので、大金貨3万5千枚だった。

最後の財宝を手に入れていれば、大金貨13万枚は固かっただろうが、残念ながら恋次を倒すわけにもいかないので、最後の財宝の間には行っていない。

それでも大金貨9万枚は、Sランク冒険者でもなかなか手に入れられない額だった。

浮竹は錬金術と古代の魔法書などに湯水の如く金を使うので、金はいくらあってもいい状態になっていた。

増える一方のように見えて、時折S級ダンジョンで金を稼がなけばやっていけないくらい、浮竹の金の使い方は荒かった。

--------------------------------------

古城に戻ると、14歳くらいの少女がいた。

「あは、やっと帰ってきた」

「誰だ?」

「あたし、魔王グレス!ほんとに魔神なんだーーー嬉しい!」

魔王グレスは、銀色の瞳で食い入るように京楽を見ていた。

「浮竹、気をつけて。藍染の匂いがする」

「つまりは、敵か!」

ざっと身構える浮竹と京楽に、魔王グレスは笑って二人の間を通り抜けた。

「な!」

「く!」

ぶしゅわああと、二人は胸から血を噴き出していた。

それを再生させると、今度は背中を切られていた。

「京楽、目を閉じろ!目の前の魔王グレスは幻影だ。本体は別にある!」

京楽は目を閉じた。

禍々しい気配を察知して、そちらに向かって炎の魔法を放つ。

「ゴッドフェニックス!」

「きゃああ!くそ、魔神が!仲間にしようと思っていたけど、止めだ!」

炎で体の一部を燃やされて、魔王グレスは分身体を何体も作り出した。

「ワールドエンド」

世界の終末の魔法は、真っ暗な闇となって、浮竹と京楽以外の存在を無にしていく。

「なにさ!あたしの分身体じゃあ、相手にならないっていうの!」

「その通りだよ。おまけに君は浮竹を傷つけた。ねぇ、死んで?」

魔神である京楽は、その禍々しい魔力を一気に解き放つ。

「な、この魔力・・・女神の魂を食ったな!?」

「ええ、そうなの?ああ、そういえば前回の敵は女神リンデルとか言っていたね。知らずに、その魂を食べちゃったのかもね。だって僕、魔神だし」

「なんて悪食な魔神だ・・・うわああああ」

炎の魔法でいたぶられて、魔王グレスは姿を消した。

「浮竹、後ろだ!」

「分かっている!エターナルフェニックス!」

炎の不死鳥が姿を現して、魔王グレスを包み込む。

魔王グレスは体を焼かれながらも、逃げ出していた。

その場に分身体をいくつも作り出して。

「数が多いが、雑魚だ。任せていいか、京楽」

「うん、任せて!」

「エターナルアイシクルワールド!」

氷の禁呪で、魔王グレスの分身体全滅した。

「もう近くにはいないようだよ」

「打ちもらしたか。まぁいい。あの程度の魔王なら、次に攻めてきても大丈夫だろう」

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(邪毒蟒蛇!)

(廻流蟒蛇!)

二人の東洋の浮竹と京楽は、いきなり襲い掛かてきた、怪我をした少女に向かって技を放っていた。

「ばかな・・・もう一組の、浮竹と京楽だと。ふざげるな、あたしは魔王グレスだ!」

魔王グレスは、二人の技を受けて体にたくさんの罅をいれる。

((燐光晦冥蛇毒!!))

二人の東洋の浮竹と京楽の技を喰らい、魔王グレスは体を粉々にして滅びていく。

(どうやら、西洋のボクらの敵のようだね)

(勝手に倒してしまったけれど、大丈夫だっただろうか)

「ああ、君たちか」

念のために、魔王グレスを追いかけ来た西洋の京楽と出会った。

(君・・・また、力があがってるね?禍々しい気配がする)

「うん。僕、魔神になっちゃたんだ」

一方、東洋の浮竹は、東洋の京楽の背中に隠れてしまった。

(魔神・・・いきつくとこまで、いってしまったみたいだね)

「それより、魔王グレスがここにいたはずなんだけど」

(ああ、あの魔王とか名乗ってた少女は、俺たちが倒してしまった。まずかっただろうか?)

「ううん、そんなことないよ?」

「京楽、どうなって・・・・東洋の俺と京楽じゃないか!」

(ごめん、キミたちの敵、ボクらで倒しちゃた)

「いや、手間が省けて助かった。古城に来い。もてなしてやろう」

こうして、東洋の浮竹と京楽は、西洋の浮竹と京楽の敵を倒して、古城を訪れるのであった。

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