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始祖なる者、ヴァンパイアマスター53

「あ・・・・」

アルテナの肉便器から生まれてきた子、神竜のエルルは、自分の母であったものを見て、おぞましく感じてドラゴンブレスを吐いていた」

「ぎゃああああ」

肉便器は言葉をしゃべった。

「この肉塊には、意識があるのか?」

「助けて!私は女神アルテナよ!」

「うわぁ、しゃべる肉便器・・・きもち悪い!」

エルルは、もう一度ドラゴンブレスを吐いた。

ただその肉塊は焦げることもなく、そこにあった。

「エルル」

「はい、藍染様」

「それは大事な肉便器だ。傷つけないように。次の子は、始祖のカイザードラゴンの子だ。きっと、強い子が生まれる」

藍染は、裏ルートで恋次の精液を手に入れていた。

恋次がこれを知ったら、憤慨しまくって肉便器アルテナも邪神となった藍染も殺そうとするだろうが、藍染は住んでいた城を放棄して、魔国アルカンシェルを出て、隣のイデア王国の古城に住むことにした。

配下の者、寵姫たち、その世話をする者たちに、女神オリガ、その子キララ、後は肉便器アルテナと大移動だった。

試験官などの大切な道具も移動させた。

電力は、藍染が雷の魔法で起こすので、常に試験官の中には何かがいた。

ゴポポポ・・・。

試験官の中では、偶然東洋の八岐大蛇の邪神の血を手に入れたので、それを栽培したものがゴポリと中で蠢いていた。

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浮竹は、女性の多いスイーツ食べ放題の店に京楽ときていた。

「あああ、視線が恥ずかしい」

京楽は、恥ずかしがっていた。

浮竹の前にはたくさんのケーキや甘いお菓子が置かれてあり、その細い体のどこに入るのが、次々にスイーツを平らげていった。

「次はパフェだ」

パフェを全種食べ終える。

「次はアイス」

いろんな味のアイスを食べた。

「ふう、満足だ」

浮竹が満足する頃には、食べ放題の時間は終わっており、明らかな赤字に手に店員は顔を青くしていた。

「ま、まいどありがとうございました~」

とりあえず、営業スマイルは忘れない店員に、二人分の金を払って外に出た。

「浮竹、食べ過ぎだよ。お腹壊しても知らないよ?」

「この程度、大丈夫だ。それより京楽、お前全然たべてなかっただろう。食べ放題なのに、勿体ない」

「いや、ちゃんとジャンボパフェとミルフィーユケーキと、マンゴー味のアイス食べてたたからね!?」

「そんなの、食べたうちの入らない」

浮竹は不満そうであった。

「いや、君がおかしいだけで、僕の胃は普通だから、それだけ食べればお腹いっぱいになるからね?」

「この店は気に入った。また来よう」

「いや、多分出禁になるんじゃないかなぁ」

念のため、京楽がまた来てもいいかと店員に尋ねると、店員は首を横に振った。

「やっぱり、出禁くらったみたいだよ」

「ちょっと食べただけなのに」

「店にとっては大損害だよ」

浮竹がぷくーっと頬を膨らませて、そっぽを向いた。

「こんな店、買いつぶしてやる」

本当にしそうな浮竹の手を握って、京楽は歩きだす。

「京楽?」

「ん、なんでもないよ」

桜の木の下にやってくると、桜が満開だった。

「明日、二人でお花見でもしようか」

「いいな」

浮竹はさも楽しそうに、桜の花を数個とって、自分の髪と京楽の髪に飾った。

「こういうのは、浮竹、君の方が似合ってる」

京楽は、浮竹の髪に自分の分の桜を飾った。

「似合っているか?」

くるくると、白い髪をなびかせて回る浮竹に、京楽は慈愛に満ちた眼差しを注いでいた。


次の日は、よい天気だった。

人の手があまり入っていない山奥までヴァンパイアの翼で飛ぶと、花見をすると京楽が決めた場所に降りた。

「わああ」

浮竹は、空を見上げた。

空も大地も、ピンク色に染め上げられていた。

「けっこう、いい場所でしょ。狂い咲きの桜の花の樹の群れだよ。この桜の木の下には、死体がある」

「え」

「冗談だよ。何、本気にしたの?」

クスリと笑う京楽にからかわれたのだと知って、浮竹は頬を膨らませた。

「お弁当だして、食べようか」

「そうだな」

ちらちらと散っていく桜の花びらを見ながら、洋風のお弁当に酒はワインだった。

ワインを飲み干して、浮竹は桜の枝を折り、アイテムポケットに入れた。、

「どうするの、それ」

「錬金術で苗にする。庭に埋めて、俺の血を注げば一夜で満開だ」

「あの古城に桜か。それも悪くないかもね」

ふと、穏やか時間を邪魔する無粋な連中が現れたと知り、浮竹は眉を顰めた。

「いるのは分かっている。出てこい」

まず現れたのは、肉塊だった。

試験官の中で育った、東洋の邪神の血を栽培した化け物だった。

その敵は、ぶよぶよしていて形が不安定だった。

「あははは、死んじゃえ」

肉塊は、言葉を操った。

しゅるしゅると、影から黒蛇を出して浮竹と京楽を追い詰める。

「これって、東洋の僕の技じゃない」

「どこかで見たと思ったら、やっぱりそうか。あいつ、血でも取られたのか」

「ファイアオブファイア!」

魔法で焼いても、次々に猛毒をもつ黒蛇を召還する。

「エターナルフェニクス!!」

浮竹は炎の禁呪をその名もなき化け物にぶつけた。

しゅるるる!

黒蛇たちがシールド代わりになって、本体を守る。

「厄介だな。東洋の邪神の血か」

浮竹も京楽も、その化け物が東洋の友人である邪神でもある者の血から、できていることはわかっいた。

「東洋の僕も邪神だったねぇ、サンダーボルテックス!」

雷に焦がされながらも、しゅるしゅると永遠に黒蛇を召還し続ける化け物に、浮竹と京楽は氷の魔法を出そうとした。

その化け物は、東洋の邪神がニタリと笑んで攻撃してくる幻影と幻聴を聞いていた。

「うわあああああああああ」

いきなりでもがき苦しむ、名もなき化け物に、今だと二人は氷の禁呪を放つ。

「「エターナルアイシクルワールド!」」

蛇は寒さに弱い。

凍り付いて、直に動かなくなった。

やがて氷のクリスタルの中で、化け物は自壊し、血の海へと還っていった。

「ふん、自信満々だった割に自壊とは、情けない」

次に現れたのは、真竜だった。

10メートルはあるだろうドラゴンだった。

「俺はエルル。肉便器アルテナとエンシェントドラゴンの子だ。神竜と呼んでもらおうか」

巨大なドラゴンを見上げて、浮竹と京楽はぶはっと吹き出していた。

「また出てきたぞ!肉便器アルテナ様の子供だ!」

「あはははは!肉便器アルテナ様、そっちで流行ってるの?ばっかじゃないの?」

浮竹と京楽の言葉に、エルルは怒ってドラゴンブレスを吐いた。

炎だったが、浮竹と京楽はカウンターバリアを張って、ドラゴンブレスはそれを吐いたエルルの元に返っていく。

「うわあああ!!」

自分のドラゴンブレスで体を焦げさせる。

「肉便器アルテナ様の子供は弱いねぇ」

「これでもくらえ!」

今度はアシッドブレス、酸の吐息だった。

常人なら骨も残らず溶けるだろうが、二人は水のバリアを張っていた。

酸を大量に含んだ水を、二人は神竜と名乗るエルルに向かって浴びせた。

「ひああああ、体が焼けるうう!!」

エルルはのたうちまわり、竜化を解いて人型になった。

金色の髪に青い瞳の、まだ幼い少年だった。

敵が幼いからといって、手加減したり油断したりする二人ではない。

「あーあ、ドラゴンのままなら竜素材になったのに。残念だよ。サンダーボルテックス」

「カウンターマジックシールド!」

京楽の放った雷の魔法は、跳ね返されて浮竹を焦がした。

「何をする、京楽!」

「ええ、僕のせいじゃないよ。魔法の反射だよ!」

「どうでもいい。さっきの邪神の血の化け物も、元を正せば全部お前のせいだ」

「ええ、それはあまりにも理不尽じゃない!?」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!」

「ぎゃああああ!!!」

全身を業火で焼かれて、そのまま灰になるかと思ったが、エルルは竜化した。

「踏みつぶしてくれる」

炎を全身にまとわせたまま、暴れるので地面にはクレーターができた。

「わわ、危ない!」

京楽は浮竹を抱き抱えると、ヴァンパイアの翼を出して空に逃れた。

「今度こそ死ね!」

エルルは、アシッドブレスを吐いた。

京楽は水のバリアをはる。

それを押しのけて、アシッドブレスは二人に迫ろうとしていた。

「ファイアテンペスト」

浮竹が炎の礫の交じった嵐を起こすと、エルルの放ったドラゴンブレスは自分のほうに戻ってきた。

「ぎゃあああああああ!!!」

骨をも溶かす酸を浴びて、エルルは地面に倒れた。

「おのれ、おのれえええ」

エルルは、神竜である。

唯のドラゴンではない。

まだ生きていた。

「そは禁忌。我生まれしは禁断の名のもとに。世界よ我を喰らいて力となせ!ブラックファイア!」

ボウッ。

黒い炎が生み出された。

それは、エルルの体を包み灰とした。地面も、桜の木も、森の木々や草も燃やして灰にしていく。

「自分の命を犠牲にする闇の禁呪だ!逃げても何処までもおってくるぞ」

「じゃあ、飲みこんじゃえばいいんじゃない?」

「どこに?」

「君の空間に」

「ああ・・・・・ブラックホール」

同じ闇の魔法が発動する。

浮竹の出したブラックホールは、周囲の灰ごと黒い炎も飲みこんでいく。

「ばかな・・・・俺の最高の魔法が・・・・・」

ブラックファイアに灯っていた、エルルの命の残滓は、そう言い残して消えてしまった。

「このブラックホール、消すのが大変なんだよな」

「そうなの?」

「消えろ!」

浮竹は魔力をぶつけて、ブラックホールを無にした。

「うわ、ごっそり魔力が減ったね。ああ、まだ魂が残ってるね。おいしそうだから、食べちゃおう」

京楽は、神竜エルルの魂を、魔神の咢で噛み砕いた。

浮竹は、魔力をごっそり減らされて、しんどそうだった。

「お前の血をよこせ。それで回復させる」

京楽は首元を差し出してきた。

浮竹はそれに噛みつき血を啜り、京楽の魔力を自分のものに変換した。

「さすがにもう、襲ってこないよな?」

「2匹もいたんだし、もういないんじゃない?藍染はゴキブリだけど、複数の強い敵をぶつけてくるような卑怯な真似はあまりしない」

「藍染は、ゴキブリだけど、ゴキブリならゴキブリ並みに対処にしようがあるということか」

「そうだね」

一方、古城では。

「はーっくしょん」

藍染は、くしゃみをしていた。

「邪神である私の存在を、誰か噂しているな。ふははは、上位神だな?」

いや、全然違った。

神は神だけど、魔神と神格を魂に持つ始祖ヴァンパイアだった。


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「ああ、早く生まれておいで、愛しい藍染様の子供・・・」

イデア王国の古城で、藍染は着実に勢力を伸ばしつつあった。

邪神としての自分の血を井戸水に混ぜて、市民を操り、イデア王国の王族たちを捕らえると処刑して、自分がイデア王国の国王になった。

「藍染様ばんざーーい」

「藍染様!!」

洗脳された市民たちは、藍染と女神オリガが王宮に入っていくのを喜んだ。

王国直属の近衛騎士や普通の騎士団の人間も、洗脳されていた。

貴族の大半は、藍染に忠誠を誓った。

誓わなかった貴族は、見せしめとして処刑された。

「ここは、私の新たなる王国だ。女神オリガ、君は王妃だ」

「嬉しい、藍染様」

死神キララは、そんな二人を遠くから見つめていた。

王宮には、藍染の手の者たちや寵姫の他に、蠢く物体が入った試験官などが王宮の地下に設置されていった。

かの肉便器アルテナは、地下深くに置かれた。

栄養をとる口がないので、いつも点滴を投与されていた。

「今に見ていなさい・・・・絶対に後悔させてやる」

肉便器になっても、まだ女神アルテナの魂は肉塊にしがみつていた。

「次は、始祖竜の子だ。子種を入手するのに苦労した。強い子を産んでくれ」

肉便器に、数滴しか入手できなかった始祖竜、阿散井恋次の子種を注ぐ。

「覚えてなない、藍染・・・・」

「まだ、魂は張り付いているのか。キララ」

「はい、愛染様」

キララは、死神の鎌を取り出した。

「この口うるさい女神の魂を、狩ってくれ」

「はい、藍染様」

「やめて、やめてええええ!!」

キララは、死神の鎌で女神アルテナの魂を狩りとった。

「うふふ、綺麗な色。女神の魂って、こんなに綺麗なんだ」

魂だけの存在となってしまったアルテナは、沈黙した。

まだ何かを叫んでいたが、封じ込められて、ただの魂となっていた。

女神アルテナの魂は、封じ込められていたが逃げ出して、メイドとして雇われいた少女の中に宿るのだった。

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