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始祖なる者、ヴァンパイアマスター57

魔女エルは、京楽に最後の別れにと古城に会いに来ていた。

浮竹は、それが気に入らなかったが、魔女のエルに京楽の周囲をうろうろされたくなくて、しぶしぶ魔女エルを古城に招きいれた。

「このワインを飲んで。私も飲むから。それで最後ですから」

京楽は、ワイングラスに注がれたワインをなんの疑いもせずに飲む。

青いワインだった。この世界のワインは青や緑、オレンジ、紫などいろんな色があるので、浮竹も気にしていなかった。

青いワインを飲んだ京楽は、ワイングラスを落とした。

パリン!

けたたましい音がして、浮竹が京楽の名を呼ぶ。

「京楽!」

「気安く話しかけないでくれるかな。僕は、エルが好きなんだ」

「は?」

浮竹は固まった。冗談にしては、性質が悪い。

「エル・・・君を愛している。君が大好きだ」

魔女エルを、京楽は抱きしめていた。

「京楽!!!」

「うふふふ、京楽さんは私のものよ!」

狂った顔で笑う魔女エルに、京楽は惚れ薬でも飲まされたのかと、京楽を正気づけようとして、その頬をひっぱたいた。

「京楽、帰ってこい!」

「君みたいな始祖に用はないよ。僕はエルと共に生きる」

魔女のエルは、京楽と口づけしていた。

体が燃えるように熱かった。これが、嫉妬という感情なのだろうか。

「魔女エル、京楽に何を飲ませた!」

「女神の秘薬よ。きっとエリクサーでも治せないわ」

「そんなこと、分からないだろう」

魔女エルはホウキを取り出した。

それにエルが跨り、後ろに京楽を乗せた。

「あははは、京楽さんは私がいただいていくわ。男同士で愛し合うなんて不毛なのもこれで終わりよ。私と京楽さんは結婚して幸せな家庭を築き、子供にも恵まれるの」

魔法を放とうとしたが、京楽が巻き添えになると、我慢する。

「京楽!!」

「じゃあね、浮竹さん。永遠にさようなら」

「じゃあ、浮竹。長い間世話になったね」

「京楽ーーーー!!」

京楽と魔女エルはどこかへ飛び去ってしまった。

「・・・・・京楽のアホ」

浮竹は少しだけ泣いていた。

「俺から京楽を奪うだと?その行為がどれだけ俺を怒らせたのか、知らしめる必要があるな」

浮竹は錬金術士の館からエリクサーをあるだけもってきた。

「神の秘薬・・・・エクリサーは神の涙。どうか、効いてくれ」

浮竹は祈りながら、エリクサーをアイテムポケットに大切そうにしまいこんで、京楽の魔力を探知するのだった。

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「ああ、いいわ、京楽さん」

魔女エルと京楽は睦み合っていた。

「エル大好きだ。僕の主・・・・」

「ああん」

身をくねらす魔女エルに、それ以上に行為でがきなくれて、京楽は愕然とした。

「勃たない・・・」

「そ、そんなに急く必要はないんだから。ゆっくり、一緒に歩んでいきましょう?」

魔女エルは、裸のまま京楽にしな垂れかかった。

「そうだね。子供は、生まれたらでいい。僕は君を愛している。それだけで十分・・・・」

「京楽さん?」

「何か、大切な存在を忘れている気がする・・・」

「気のせいよ!それより、食事にしましょう?」

「ああ、僕が作るよ。戦闘メイドにも手伝ってもらって・・・あれ、戦闘メイドは?」

京楽が訝しがる。

「そ、そんな存在はじめからないわ!」

「頭が痛い・・・・」

「京楽さん!私が食事をつくるから、京楽さんは休んでいて!」

魔女エルは服を着ると、京楽をベッドに寝かせた。

女神の秘薬は効果は絶大だが、すでに最愛の者がいる京楽には、何か違う作用がおきているようで、魔女エルは不安になりながらも、京楽と共に過ごすのであった。

ピンポーーン。

チャイムが鳴った。

魔女の里の外れに新居を構えたのだが、魔女の知人でもやってきたのかと、扉を開ける。

そこには、浮竹がいた。

「浮竹さん!京楽さんは、渡さないわよ!」

浮竹はスリッパはかずに土足であがると、京楽のいる部屋までやってきて、扉を開けた。

「京楽!」

「君は・・君は誰?」

「俺は浮竹十四郎。お前の主で、お前は俺の血族のヴァンパイアロードであり、神喰らいの魔神だ」

「血族・・・主・・・・魔神。頭が・・・・」

浮竹は、アイテムポケットからエリクサーを出すと、それを口に含んで京楽に飲ませた。

「何を・・・・」

「全ての状態異常を治す神の涙と呼ばれている、エリクサーだ」

「僕は、何も異常なんてない。エルが好きなんだ」

その言葉を聞いても、浮竹は取り乱さなかった。

「必ず、京楽、お前を取り戻す。魔女エル、俺も今日からここに住むからな」

「な!部外者は出て行って!」

魔女エルは、驚いて浮竹にクッションを投げつけた。

「僕からもお願いするよ。何か、とても大切なことを忘れている気がするんだ。この浮竹って子が近くにいたら、思い出せる気がする」

「京楽さん、京楽さんは私のものよ!」

浮竹は、くつくつと笑いだした。

「必死だな。せいぜいあがくといいさ」

「浮竹だっけ。もっと傍においでよ」

ごく当たり前のように、京楽は浮竹の近くにくると、顎に手をかけてキスをしていた。

「京楽さん!何をしているの!!」

「え、は、本当だ!ごめんね、浮竹」

浮竹は、もう一度エリクサーを口に含むと、京楽に飲ませる。

「何を飲ませているの!」

「エリクサーだが?」

エリクサーと聞いて、魔女エルは慌て出した。

「無駄よ!女神の秘薬はエリクサーでも治らないと、藍染様がおっしゃっていたんだから」

「ほう。藍染からもらった惚れ薬か」

浮竹は、残忍に笑った。

「藍染と通じているということは、死を覚悟しているんだろう?」

「助けて、京楽さん!」

京楽は、浮竹と魔女エルの間に割って入った。

「エルを傷つけるのは、許さないよ。エルは、僕の全てなんだ」

浮竹は、左手の薬指にしているピジョンブラッドのスタールビーを見せた。

「お前の手も、はまっているはずだ」

「本当だ・・・どうして。ねぇ、エルは知ってる?どうして、僕と浮竹が同じペアリングをしているの?」

「ああああああああ!!!」

魔女エルは、包丁を取り出して、それで浮竹の胸を刺し貫いていた。

「死んで死んで死んで!!!私と京楽さんの中を引き裂こうとする者は、みんな殺してやる」

浮竹は、平気な顔で傷を再生させる。

「ああああ!!死んで!」

もう一度ふりあげようとしたエルの包丁を、京楽が奪う。

「エル、だめだ。人を傷つけてはだめだ」

「こいつは人じゃないわ!ヴァンパイアマスターよ!」

「ヴァンパイアマスター・・・・頭が・・・・・」

「素直に、京楽を解放しろ。そうすれば、命だけは助けてやる」

残酷に笑う浮竹に、魔女エルはきっと睨みつけた。

「嫌よ!京楽さんは私のものよ。私だけを見て、私だけを愛してくれると誓ったわ!」

「それが薬の効果でも?」

「そうよ!薬の効果でも、女神の秘薬よ!エリクサーでも解けなかった!もう、あなたに成す術はないのよ!諦めて帰ってちょうだい!」

「嫌だね。俺も今日からここに住む」

「京楽さん、何か言ってやって!」

魔女エルは、浮竹を追い出してくれるものだと信じていた。

「浮竹。君がよければ、こんな狭い家だけど、一緒に暮らそう」

「そんな・・・・京楽さん」

「どうしたんだい、エル。愛しているよ」

「うふふふ。京楽さんの愛は、私のものよ」

「本当にそうかな?」

浮竹は、血の魔法を使って、自分の指を切った。

にじみ出る鮮血に、ごくりと京楽が唾を飲みこむ。

「ああ、おいしそう・・・」

「ダメよ、京楽さん!あの人の血は猛毒なの!」

「そうなの?おいしそうなのに・・・・・・」

「私の!私の血を飲んで!処女の生き血よ!浮竹さんの血よりもずっとずっとおいしいはずだわ!」

魔女エルは、首を差し出す。

それに、京楽が噛みついて血をすする。

一口分も飲まない間に、京楽は牙をひきぬいた。

「どうしたの、京楽さん」

「まずい」

「え?」

「君の血がまずい。どうしてだい?君を愛しているなら、君の血は甘いはずだ」

不機嫌になる京楽の目の前に、ワイングラスが置かれた。

それに、浮竹が自分の手首をきって、滴り落ちる血を集めた。

「俺の血だ。飲んでみろ」

「浮竹の、血・・・・・」

ワイングラスを手にとり、魔女エルが止める間もなく、京楽は浮竹の血が入ったワイングラスの中身を飲み干した。

「甘い・・・甘すぎて、眩暈がする」

魔女エルは、絶望に顔を歪めた。

その日から、魔女エルに家には京楽の他に浮竹も住みつくことになった。

クスクスクス。

他愛ない会話をして、微笑み合う二人を、それでも京楽を手放すことができなくて、魔女エルは不思議な気持ち見つめていた。

「エルどうしたの。君を愛しているよ」

京楽はエルに愛を囁く。浮竹には愛を囁かない。

それでも、魔女エルといるより浮竹と一緒に過ごす時間のほうが、京楽には多かった。

「今日は一緒に寝よう」

「ええ、そうね!」

エルの寝室にやってきた京楽は、エルを求めた。

途中で違和感を感じた。

「やっぱり、勃たない・・・どうしてだろう。こんなにもエルを愛して、エルの子供が欲しいのに・・・・・・・」

「俺が相手してやろうか?」

ふと、眠っていたと思っていた浮竹が、寝室に入ってきた。

「浮竹!」

あられもない姿でいた京楽は、衣服を整えると、浮竹を抱きしめた。

「どうしてだろう。君を愛していないのに、体は君を求めている」

京楽のものは、浮竹を欲っして勃起していた。

「出てってちょうだい!さぁ、京楽さん、さっきの続きをしましょう?」

「うん、そうだね。おやすみ、浮竹」

「おやすみ、京楽」

浮竹はゲストルームに戻ってしまった。

硬く勃ちあがっていたものは、魔女エルの裸を見たとたん、萎えていた。

「あれ、どうして・・・僕は、浮竹に欲情しているのかな?」

「そ、そんなことないわ!いい加減、出ていってもらわないとね?」

魔女エルは、どうにかしてこの新居から邪魔者である浮竹を追放したがっていた。

「だめだよ!浮竹が出ていくなら、僕も出ていく」

「京楽さん・・・・・・」

もはや、薬の効果は薄れ始めていた。

刷り込み現象のように、エルに愛を囁くが、京楽の意識は浮竹に向かっていた。

「京楽さん、私と一緒に死んで?あの世で、永遠に一緒になりましょう?」

エルは包丁をもちだして、京楽の心臓を突き刺した。

次に自分の手首を切ろうとして、凄い殺気を感じてはっとなった。

「いやああ、私は!京楽さん、京楽さん」

「どけ、じゃまだ」

浮竹は、魔女エルを突き飛ばした。

魔神であっても、京楽はただのヴァンパイアロードだ。不老不死ではない。

心臓が再生されていくのを確認しながら、浮竹は念の為に傷口に自分の血を注ぎこみ、京楽を抱きしめた。

「ここまで愚かだったとは・・・・俺だけならいざ知らず、愛してるはずの京楽を傷つける。それがお前の愛し方か、魔女エル」

「違うの!違うのよ!!」

「もう、お前はいらない。死ね」

「いやあああああ!!京楽さんは私ものよ!私から奪わないでええええええ」

「ゴッドフェニックス!」

浮竹は、炎の不死鳥を呼び出すと、魔女エルを灰に変えてしまった。

「あれ・・・僕は何をしていたんだろう。浮竹?」

「京楽、お帰り」

浮竹は、涙を滲ませていた。

「なんだかよく分からいけど、ただいま」

こうやって、京楽はエルの死で惚れ薬の効果が切れて解放されて、浮竹の元に戻ってきた。

「本当に、お前という男は・・・・」

事情を聞いて、何度も謝る京楽に、浮竹はツーンを態度をとんがらせていた。

「そもそも、愛しい伴侶がいるのに、女なんかに近寄られて、変なものを飲まされるお前が悪い」

「だから、ごめんてば」

「ふん」

「今日の夜、たっぷり愛してあげるから」

耳元でそう囁かれて、真っ赤になる浮竹であった。


---------------------------------------------------


「いいか、これはお仕置きだ。俺がいいっていうまで、これを外すなよ」

京楽のものは、根本が戒められていた。

「ああ・・・・十四郎。いかせてよ」

「だめだ。これはお仕置きなんだから」

騎乗位になって、浮竹は精液を弾けることができず、ずっと硬さを保ったままのそれを、自分の蕾にあてがい、ゆっくりと飲みこんでいく。

「あああ・・・・」

白い喉を見せ妖艶に笑う浮竹に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。

「んあっ」

下から僅かに突き上げられて、浮竹は声を漏らす。

「お仕置きなんだから・・・ひあっ」

ごりっと奥に入ってくるものに、浮竹が驚く。

根元を戒められているというのに、京楽は我慢しながらも浮竹を貪った。

「あああ!」

これでは、どっちがお仕置きをされているのか分からない。

「んああああ!」

ごりごりっと奥をすりあげられて、浮竹はせがんだ。

「春水、いっぱいだしてくれ」

「じゃあ、これとってもいいよね」

「仕方ない。とっていいぞ。ひあああああ!!」

浮竹の奥で、京楽はびゅるびゅると濃い精子を思い切り流し込んでいた。

いつもの2倍の時間をかけての射精に、浮竹もいっていた。

「あ、やあ、子種受けながらいっちゃううう」

「吸血もしてあげる」

肩に噛みつかれて、血をごくりと飲まれる。

その快感にも支配されて、お仕置きどころではなくなっていた。

「ああ、お仕置きが・・・ひあっ」

「我慢した後で出すのって、すごい快感。たまにはこういうのもいいね」

「ひああああ」

京楽は騎乗位から浮竹を押し倒して、ごりっと中を抉る。

その感覚に、浮竹はまたオーガズムでいっていた。

「ああああ!」

「ほら、十四郎、お仕置きは?」

「もう、やああっ」

「結局、僕がリードする羽目になるんだね」

薄く笑いながら、京楽は浮竹を突き上げる。

「やあああ」

「十四郎、かわいい」

「やあ、春水、お仕置き・・・」

浮竹は、自分の意思で京楽を締め上げる。

「んっ、そんなにされたら僕がもたなくなる」

浮竹の奥に精液を流し込む。

また締め付けられて、京楽は2回連続していっていた。

「確かに、お仕置き、だね。僕をこんな風にさせるなんて。十四郎、すごいね、君の中うねってしめつけてくる。熱いよ」

「あああん、春水、春水」

求められるままに口づける。

「んっ」

舌と舌が絡み合うキスを繰り返す。

もう、お仕置きとか関係なく、普通に交わっていた。

「んあああああ!!」

「くっ」

浮竹の最奥に精液を注ぎ込む。

浮竹はもう精を出し尽して、オーガズムでいくばかりであった。

「春水、愛してる。お前は?」

「僕も十四郎、君だけを愛しているよ」

「魔女エルにも愛を囁いていたくせに」

「あれは薬の効果だよ。僕が心から愛しているのは、十四郎、君だけだ」

お互いを抱しめあいながら、口づけを交わしていた。

「もう、惚れ薬なんて飲まされたりするなよ」

「そういう君も、記憶をいじられたりして、元血族にさらわれたりしないようにね」


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「そうか。魔女エルは滅んだか。もともと、うまくいくとは思っていなかった」

藍染は、城でワインを飲んでいた。

「魔女の里にいた魔族は、浮竹と京楽により滅ぼされました。どうなさいますか」

「放っておけ」

「はっ」

そう言って、部下は下がっていった。

「あなた」

「女神オリガか」

「言われた通り、攫ってきたわ」

「この子が、浮竹と京楽の友人か。まだ子供だが、守護騎士ということは、それなりに力があるんだろう。次回はこの子にいってもらおうか」

女神オリガが、血の帝国から攫ってきたのは、ルキアの守護騎士である日番谷冬獅郎であった。

冬獅郎は藍染の血を与えられて、狂暴化するのだった。




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